外国人従業員の採用が進む中、日本語能力の向上は企業にとって重要な課題です。
日本語能力が足りないと、業務上のコミュニケーションエラーや、外国人従業員のエンゲージメント低下を招く可能性があります。
そのため、企業として外国人従業員の日本語学習を効果的にサポートする必要があります。
この記事では、外国人従業員の日本語学習を支援したい企業担当者様に向けて、レベル別におすすめの日本語学習テキストと、企業での活用法をご紹介します。
最適な教材を選び、外国人従業員の日本語能力向上、ひいては組織全体の活性化に繋げましょう。
- 日本語学習のテキストの選び方3つ
- レベル別:企業におすすめの日本語学習テキスト10選
- 学習支援で陥りやすい落とし穴と対策

日本語学習のテキストの選び方3つ

外国人従業員の日本語学習を支援する際、テキスト選びは非常に重要です。
適切な教材を選ぶことで、学習効果を高めることができます。
ここでは、企業が日本語学習のテキストを選ぶ際に押さえておきたい3つのポイントをご紹介します。
従業員の学習目的に合っているか
外国人従業員の日本語学習の目的は、個々の職種や業務内容によって異なります。
職種によって求められる日本語スキルが異なるため、従業員の学習目的と業務内容に合わせて教材を選ぶことが重要です。
例えば、同僚とのコミュニケーションを円滑にしたい場合は、日常会話を学べる教材、ビジネスシーンでの日本語能力向上を目指す場合は、ビジネス日本語に特化した教材を選ぶと良いでしょう。
従業員のレベルに適した教材か
従業員の日本語レベルは、これまでの日本語学習の経験などによって異なります。
レベルに合わない教材を選んでしまうと難しすぎて学習が進まなかったり、簡単すぎて学習効果が得られなかったりする可能性があります。
テキストを選ぶ際は、従業員の現在の日本語レベルを把握し、レベルに合った教材を選びましょう。
教材のサンプルページやレビューを確認し、内容が従業員のレベルに合っているかを事前に確認することをおすすめします。
音声教材の有無
音声教材が付属しているテキストを選ぶことで、リスニング力を鍛え、より実践的な日本語を学ぶことができます。
近年では、CDだけでなく、スマホアプリやオンラインで音声を聞ける教材も増えています。
従業員の学習スタイルや環境に合わせて、音声教材の形式も考慮しましょう。

レベル別:企業におすすめの日本語学習テキスト10選

多くの日本語学習テキストの中から、企業での利用におすすめの教材をレベル別に厳選しました。
各教材の特徴と、企業での効果的な活用法を解説します。
初級レベル
みんなの日本語 初級I・II

「みんなの日本語 初級I・II」は、日本語教材として非常に有名なテキストです。
特徴 | 多くの日本語学校で採用されている定番教材 文法、語彙、会話、読み書きをバランスよく学べる 練習問題が豊富で、反復練習に最適 CD付きでスニング、発音練習も可能 |
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企業での活用法 | 日本語研修のメイン教材として導入 体系的なカリキュラムを構築しやすい 別売りの教材(練習問題集、漢字教材など)と組み合わせて、より強化した学習が可能 eラーニングやオンラインレッスンと組み合わせるのも効果的 |
- 日本語教師をしています。文法項目の説明が詳しいので教えやすいです。練習問題も豊富なので、学生の定着度を確認しやすいです。
- 日本語学習者です。この教材のおかげで、日本語の基礎をしっかり身につけることができました。CDを聞きながら発音練習も頑張っています。
やさしい日本語 初級1-3

「やさしい日本語 初級1-3」は、シンプルで分かりやすい日本語教材です。
特徴 | 基本文法を丁寧に解説 各課に練習問題があり、理解度を確認できる CD付きでリスニング練習も可能 |
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企業での活用法 | 体系的な学習が可能なので、日本語研修の基礎教材として最適 CDを活用し、リスニング、発音練習を強化 進捗管理を行い、定期的なフォローアップを実施 |
初級日本語 げんき
![初級日本語げんき[第3版] 初級日本語げんき[第3版]](https://nihongocafe.jp/c/wp-content/uploads/2025/01/13fbbdd39571a29b8756afe80ad9d706.png)
文法説明が英語で書かれているため、英語がわかる人には理解しやすい教材です。
特徴 | 会話練習ができる 文法、語彙、漢字、会話、文化などをバランス良く網羅 CD-ROMとアプリで音声教材を提供 |
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企業での活用法 | 日本語教育の導入段階におすすめ 業務で必要な日常会話や基本的なコミュニケーション能力を習得できる 日本の職場文化やビジネスマナーの基礎を学べる |
- とても丁寧に説明されていて、簡単に理解できました。日本語を学び始めたい人には絶対にお勧めの本です。
- 練習部分が生徒に教える際に使いやすい。
できる?できた!!くらしのにほんご

兵庫県国際交流協会が提供する「できる?できた!!くらしのにほんご」は、生活に必要なスキルを学びながら日本語を習得できる教材です。
特徴 | 実践的な日常会話を学べる 動画教材やPDFが無料で利用可能 日本の生活マナーやルールも学べる 英語、中国語、ベトナム語、スペイン語、ポルトガル語に対応 |
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企業での活用法 | グループワークやロールプレイングを実施 PDF教材を部署内で共有し、OJTの一環として活用 生活シーンに特化しているため、外国人従業員の早期職場定着に貢献 |

中級レベル
できる日本語 初中級

「できる日本語 初中級」は、会話練習に重点を置いた教材です。
特徴 | イラストや写真が豊富で分かりやすい 会話練習ができる 生活に密着したテーマ |
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企業での活用法 | 会話練習を中心に、実践的なコミュニケーション能力を育成 グループ研修で活用し、従業員同士の交流を促進 ロールプレイングやディスカッションを取り入れ、応用力を強化 |
教える側からするとみんなの日本語よりも力が身につくかと思います。
日本語文法ブラッシュアップトレーニング

「日本語文法ブラッシュアップトレーニング」は、文法を復習し、弱点を克服するための教材です。
特徴 | 問題形式で実践的 間違いやすい文法や漢字を重点的に学習 自習にも適している |
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企業での活用法 | 文法に特化しているため、弱点補強に最適 自習用の教材としてもおすすめ 研修と併用し、文法知識の定着を図る |
- 日本語教師です。結構日本語でおしゃべり出来るようになっても初歩的な間違いをする学生が多いです。この本はよくある文法ミスを分かりやすい誤答例で学生の興味を引くように構成されています。さっそく授業に取り入れたいと思います。
- 学習者に問題提起して考えさせるところがとても良い。
中級へ行こう 日本語の文型と表現55

「中級へ行こう」は、「みんなの日本語」初級を終えた学習者向けの教材として定番です。
特徴 | バランスの取れたカリキュラムで、中級レベルの日本語能力を総合的に育成 語彙、文法、読解、聴解、会話、作文の練習が可能 文化的なトピックも取り上げ、日本文化への理解も深まる CD付き |
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企業での活用法 | 中級レベルの日本語研修のメイン教材として最適 レベルアップを目指す従業員に推奨 日本語能力試験N3対策としても有効 読解、作文練習を通して、ビジネス文書作成の基礎を築く |
- 「みんなの日本語の次に使う教材として最適です。中級レベルに必要な文法や語彙がしっかり学べます。」
- 「教材の内容が面白いので、飽きずに学習を続けられます。日本文化についても学べるのが良いです。」
日本語中級J501

「日本語中級J501」は、会話力強化に特化した中級教材です。
特徴 | 様々な場面設定での会話練習ができる ロールプレイング、ディスカッションなど、実践的な練習が多い 自然な会話表現を習得できる CD付き |
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企業での活用法 | 会話力を重点的に伸ばしたい従業員向けの研修に 営業職、接客職など、コミュニケーション能力が求められる職種の従業員に最適 グループワーク、ペアワークを多く取り入れ、積極的な発話を促す ビジネスシーンを想定したロールプレイングで、実践力を養成 |

上級レベル
新装版 商談のための日本語

「新装版 商談のための日本語」は、商談に特化した日本語表現を学べる教材です。
特徴 | 商談特有のフレーズや言い回しを網羅 ケーススタディ形式で実践的 |
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企業での活用法 | 営業職研修など、商談スキルが必要な従業員向けの研修に最適 ケーススタディを活用し、実践的な商談スキルを習得 部署内で共有し、商談対策に活用 |
- 私たちの日本語が勉強している人にとって、この本は非常に役を立つと思います。
タスクで学ぶビジネスメール・ビジネス文書

「タスクで学ぶビジネスメール・ビジネス文書」は、ビジネス文書作成スキルに特化した教材です。
特徴 | ビジネスメール、文書作成に特化 フォーマルな表現、敬語の使い方を習得 |
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企業での活用法 | 事務職、企画職など、文書作成が多い職種の従業員向け研修に最適 グループワークで文書作成を行い、相互添削を実施 作成した文書を部署内で共有し、ナレッジとして蓄積 |
- 授業の参考資料として購入。同じテーマを社内と社外の切り口で関連付けて展開しているところがよかった。生徒によっては、難しい語彙も多いので、これをヒントにして授業をうまく組立たいと思った。

日本語の学習支援で陥りやすい落とし穴と対策

外国人従業員の日本語学習支援は、企業のグローバル化を成功させるために重要です。
しかし、せっかくの取り組みもよく陥りやすい落とし穴を知らずに対策を怠ると、期待した効果を得られないばかりか、従業員のモチベーション低下を招く可能性があります。
ここでは、企業が日本語学習支援で陥りやすい代表的な落とし穴と、その具体的な対策を解説します。
目的が不明確
日本語学習支援の目的が曖昧なまま、なんとなく「必要そうだから」「他社もやっているから」といった理由で進めてしまうケースが見られます。
「日本語が上手くなれば良い」という漠然とした目標設定では、学習内容やレベル、評価方法などが定まらず、効果測定も困難です。
まず、日本語学習支援の目的を明確化しましょう。
「業務におけるコミュニケーション円滑化」「外国人従業員の早期戦力化」「エンゲージメント向上」「離職率低下」など、具体的な目標を設定します。
次に、目標とする日本語レベルを具体的に設定します。
職種や業務内容に応じて、どの程度の日本語能力が必要なのかを考えましょう。
例えば、日常会話レベル、ビジネス会話レベル、日本語能力試験N〇レベルなど、客観的な指標を用いると良いでしょう。
目的と目標レベルを明確にすることで、教材選び、研修内容、評価基準などが設定しやすくなり、効果的な学習支援に繋がります。
レベルのミスマッチ
従業員の日本語レベルを正確に把握しないまま、レベルに合わない教材を選んだり、研修を実施してしまうケースです。
日本語初級レベルの従業員に、ビジネス日本語上級者向けの教材を与えても、難しすぎて学習が進まず、モチベーションを大きく下げてしまいます。
逆に、日本語上級レベルの従業員に、初級レベルの研修を実施しても、退屈で学習効果は期待できません。
日本語学習支援を始める前に、従業員の日本語レベルを正確に把握しましょう。
日本語能力試験やレベルチェックの結果に基づいて、レベル別の教材を選定します。
集合研修の場合は、レベル分けクラスを設けたり、レベル別課題を用意するなどの工夫が必要です。
フォロー不足
教材や研修を提供したら終わり、従業員の学習進捗や課題をフォローしないケースです。
教材を渡しただけ、研修を一度実施しただけでは、なかなか成果は上がりません。
教材提供や研修実施後も、継続的なフォローを行いましょう。
- 定期的な進捗確認: 学習進捗状況を定期的に確認する仕組みを作りましょう。 月に一度のアンケート調査、進捗報告書の提出、面談などの方法があります。
- 相談窓口の設置: 学習に関する悩み を相談できる窓口を設置しましょう。人事担当者だけでなく、日本語が堪能な人材をメンターにするのも有効です。
- 学習コミュニティの形成: 従業員同士が交流し、支え合える学習コミュニティを作りましょう。オンラインのグループチャットを作成したり、交流イベントなどを開催するのも良いでしょう。


まとめ|日本語力アップにおすすめのテキスト

外国人従業員の日本語学習を支援することは、コミュニケーションの円滑化、業務効率の向上など、企業にとって多くのメリットがあります。
今回ご紹介した教材を参考に、従業員のレベルと目的に合った教材を選び、継続的な学習をサポートしていきましょう。
アプリやオンラインサイト、テキスト教材と組み合わせるのも効果的です。
また、研修やeラーニング、OJTなど、様々な方法を組み合わせることで、より効果的な学習支援が実現できます。
教材選びに迷った場合は、従業員の日本語レベルや学習目的、予算などを考慮し、複数の教材を比較検討することをおすすめします。
レビューや評判などの情報を検索して確認してみると良いでしょう。
従業員の意見も参考にしながら、最適な教材を選びましょう。

