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技能実習生に必要な日本語力とは?現場で役立つ教育と支援方法

技能実習 日本語

外国人技能実習生を受け入れるうえで、日本語力は欠かせない要素のひとつです。

日常生活に不自由なく適応し、職場での指示や安全管理を正確に理解するためには、一定の日本語レベルが求められます。

しかし、必要とされる言語力は業種や業務内容によって異なり、一律ではありません。

本記事では、実習生にどの程度の日本語力が求められるのか、そしてそれが業務や生活にどう影響するのかを、具体例を交えて分かりやすく解説します

目次

技能実習生に求められる日本語レベル

会話をイメージした2つの吹き出し

技能実習生が日本で働く上で、最低限求められる日本語レベルは、JLPTのN5からN4程度とされています。

ここでは、レベル別の特徴や、なぜこの程度の日本語力が必要なのかを詳しく見ていきましょう。

JLPT N5〜N4レベルとは?

日本語能力試験(JLPT)のN5・N4で求められる日本語能力は、以下のようになっています。

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レベル内容到達度の目安
N5基本的な文型・語彙を使って、ゆっくり話された日常表現を理解できるあいさつ、自己紹介、簡単な買い物などが可能
N4基本的な日本語をある程度理解し、ゆっくりとした会話であれば応答できる簡単な業務指示の理解、職場のあいさつ、連絡事項のやりとりが可能

技能実習の制度上、N5・N4レベルが義務付けられているわけではありません。

しかし、日常生活での自立と職場内での最低限のコミュニケーションを確保するためには、N4レベルの日本語が必要といわれています

また、実習生が従事する業務の種類によっても、必要とされる日本語力は異なります。

例えば以下のような違いがあります。

単純作業中心(食品加工・清掃業など)
  • 基本的な命令形や数詞の理解で対応可能

【例】

「これを5こ入れてください」「きれいにふいてください」

対人対応がある職種(介護・建設・農業など)
  • 相手の話を正確に聞き、返答できる会話力が求められる

【例】

「これを5こ入れてください」「きれいにふいてください」

機械や危険物を扱う業務
  • 安全面から、専門用語や警告表示の理解が不可欠

【例】

「非常停止ボタンはここです」「点検後はスイッチを切ってください」

また、日本語能力は、仕事だけでなく生活の質にも大きく影響します。

  • 買い物や役所手続きでのやりとり
  • 近隣住民とのあいさつや会話
  • 病院での問診票の記入や、薬の説明の理解

こうした日常生活に関するやりとりが円滑にできることは、技能実習生の精神的な安定やストレス軽減にも直結します。

また、日本語が話せることで地域住民との信頼関係も築きやすくなり、地域に溶け込んでいるという安心感につながります。

日本語の学習を通して文化を理解できる

日本語学習は言語の習得にとどまらず、日本の文化や価値観への理解を深める大切な手段でもあります

日本には「空気を読む」「遠回しな表現」など、文脈に依存した独特のコミュニケーション文化があります。

言語を学ぶ中で、こうした文化的背景も自然に身につけることができ、誤解やトラブルの回避に役立ちます

特に以下のような点は、日本語の学習を通して学ぶことが多いです。

  • 敬語や丁寧語の使い分け(年長者や上司への対応)
  • 礼儀・マナーに関する表現(あいさつ、謝罪など)
  • 暗黙の了解に関する表現(「ちょっと…」「考えておきます」など)

こうした文化的な理解が深まることで、実習生が職場や地域社会に馴染みやすくなり、日本での生活や仕事への適応力も高まります。

技能実習生の日本語学習|入国前と入国後

積み上げられた日本語学習のための教材

技能実習生の日本語教育は、入国前と入国後で段階的に行われます。

入国前に送り出し機関で基礎的な日本語を学習し、入国後は監理団体による講習や企業内でのOJTを通じて実践的な言語スキルを習得します。

ここでは、日本語教育の流れと内容、そして継続学習の重要性について詳しく解説します。

入国前の日本語教育の実態と課題

日本の企業で働くことを希望する技能実習生は、入国前に母国にある「送り出し機関」で日本語教育を受けます。

一般的な学習期間は6か月程度で、JLPTのN5~N4相当の内容が中心です

この段階で扱う内容には主に以下のようなものがあります。

  • あいさつ、自己紹介
  • 数字、時刻、日常会話の基礎
  • 日本の礼儀や文化、マナー
  • 日本語での簡単な指示の聞き取り練習

入国後の日本語講習の全体像とポイント

技能実習制度においては、技能実習生が入国した後、監理団体による講習(2か月程度)が義務付けられています

この講習では、実習生が日本語の初級者の場合、以下のような内容となっています。

  • 日常生活で必要な基本的なコミュニケーション力を習得
  • 質問されたことに正しく返答する
  • 日本での生活についての情報の理解
  • 日本の文化や社会にについての基本的な理解

参考:監理団体が行う入国後講習の標準的な日本語学習プログラム|厚生労働省

しかし、このような学習だけでは、実務をこなすのが難しい場合も少なくありません。

例えば、「作業手順書」や「専門用語」などに対応できるだけの語彙力が不足しており、最初は業務が理解できず、戸惑うケースが多発します。

企業や監理団体は、事前の日本語学習には限界があることを前提として、業務開始後のフォローアップ体制を整えることが極めて重要です。

現場配属後の継続的な日本語教育の必要性

オフィス内での休憩時間の談話

実際に現場で働き始めた技能実習生は、教科書通りの日本語では通用しない現実に直面することが少なくありません。

技能実習生が現場で苦労する主な日本語の壁には、以下のようなものがあります。

専門用語の理解不足

たとえば建設現場では「スラブ」「アンカー」などの業界用語が飛び交います。

このような専門用語は、事前学習や独学ではカバーしきれません。

丁寧語とカジュアルな表現の使い分けが難しい

「〜してください」や「〜してくれ」など、指示の口調の違いを理解するのに時間がかかることがあります。

曖昧な表現が理解しづらい

「ちょっとやっといて」や「あとでね」など、意味が曖昧な表現も技能実習生には理解しづらく、混乱の原因になります。

「仕事で使う日本語」に特化した教育

現場で役立つ日本語力を養うには、「仕事で使う言葉」の指導が必要不可欠です

例えば、以下のような対策が有効です。

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課題解決策
専門用語が分からない業務ごとに使う日本語のリストを作成して配布
表現の違いが難しいロールプレイングで丁寧語/普通形/命令形の使い分けを練習
曖昧な日本語が理解できない図解や実演を用いて指示の意味を補足

会話練習の機会を現場で増やすには?

実践的な会話練習は、教室よりも現場でこそ効果を発揮します。

以下のような施策が効果的です。

OJT(On the Job Training)での声掛けを意識的に行う

「これ、できる?」「意味わかる?」など、対話型の指示で会話力を引き出します。

ロールプレイの導入

「朝礼」「作業開始」「終了報告」「ミスの報告」など、よくあるシーンを再現して練習します。

業務外でも話す機会を作る

食堂や休憩中に、簡単な日本語で会話することが練習になります。

日本語を“教える”だけでなく、“使う場面を設ける”ことで、日本語力の定着が早まります

非言語コミュニケーションの活用も効果的

言葉の壁を乗り越えるには、視覚で補う工夫をするのもおすすめです。

写真付きマニュアルの活用

言葉が完全に通じなくても、「見ればわかる」写真付きマニュアルは非常に有効です

作業手順を1つずつ写真やイラストで示すことで、実習生が視覚的に理解しやすくなり、指示を正確に守ることができます。

特に、道具の使い方や作業の順序、安全確認の方法などは、文字だけよりも視覚情報の方が記憶に残りやすく、ミスの防止にもつながります。

ピクトグラム(図解記号)の導入

ピクトグラムとは、視覚的に意味を伝えるマークや図記号のことで、言葉が通じにくい場面で特に役立ちます。

たとえば「火気厳禁」や「立入禁止」などの注意喚起を、絵や記号で表現することで、実習生が直感的に理解できます。

日本語がまだ十分でない実習生にとって、こうした視覚的サインは安全性を保つためにも重要です

さらに、ピクトグラムは施設内の表示や作業区分にも活用でき、作業環境の分かりやすさ向上にもつながります。

ジェスチャーや表情の使い方の工夫

言葉が通じにくい場面では、ジェスチャーや表情などの非言語コミュニケーションも大きな助けになります。

たとえば、うなずく、手で示す、笑顔で応対するなど、ちょっとした身振り手振りが相手に安心感を与え、信頼関係を築く第一歩になります。

言葉だけでなく、伝え方そのものにも意識を向けることで、コミュニケーションの質が大きく向上します

現場で使える日本語力を育てる日本語カフェ

日本語カフェ

日本語カフェの会話トレーニングコースは、N5〜N3レベルの学習者向けのオンライン講座です。

実践的な会話に必要な表現や言い回しを学び、日常生活や職場で円滑にコミュニケーションが取れる力を身につけることを目指します。

  • 実際の場面を想定した練習で「使える表現」を習得
  • クイズ形式で学びを定着
  • オンライン完結、どこからでも受講可能

現場でのコミュニケーションを強化したい企業担当者や実習生に特におすすめのコースです

自分のペースで学べて、繰り返し復習もできるので、忙しい人でも続けやすい環境が整っています。

無料体験も実施中です。まずはお気軽にお試しください。

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まとめ|日本語教育で技能実習をより良いものに

吹き出しを手にした日本で働く外国人社員

技能実習生の日本語力向上は、単に言語スキルを高めるだけではありません。

現場での作業効率、安全性、職場の人間関係、そして実習生の自信や定着率にも直結する、制度の根幹を支える重要な要素です。

企業や監理団体が積極的に日本語教育に取り組むことで、実習生一人ひとりのポテンシャルを最大限に引き出し、組織全体の発展にもつながります。

また、実習生の日本語レベルは人それぞれなので、習熟度に応じた柔軟な教育アプローチを取り入れることも大切です

本記事で紹介した内容を、ぜひ貴社の外国人の教育方針や制度運用に取り入れ、技能実習生が安心して活躍できる職場環境づくりを進めていきましょう。

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この記事を書いた人

三木 雅史(Masafumi Miki) 株式会社E-MAN会長
1973年兵庫県たつの市生まれ / 慶応義塾大学法学部法学科卒
・25歳で起業 / デジタルガレージ / 電通の孫請でシステム開発
・web通販事業を手掛ける
・2006年にオンライン英会話を日本で初めて事業化
・2019年外国人の日本語教育を簡単、安価にするため
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