特定技能外国人の雇用を考えている受入れ企業の皆様の中には、特定技能外国人の人材紹介会社の利用を検討している方も多いのではないでしょうか。
ここでは、特定技能外国人の人材紹介会社の主なサービス内容やメリット、選ぶポイントを解説します。また、おさえておきたい特定技能の基本情報もお届けします。
在留資格の「特定技能」とは
「特定技能」とは、2019年4月に定められた在留資格で、日本国内において十分な人材確保が困難であり人手不足に直面する12の特定産業分野で、外国人を労働者として受け入れるために新設されました。
特定技能外国人はアルバイトとして雇用することはできないとされています。
在留資格「特定技能」の特徴
在留資格「特定技能」には、種類や職種の内容、在留期間など他の在留資格とは異なる点がいくつかあります。確認しましょう。
「特定技能」対象の12職種とは?
特定技能外国人が従事できる業務は下記の12の特定産業分野です。
「素形材産業」と「産業機械製造業」「電気・電子情報関連産業」は、2022年5月に1つの分野に統合されました。
【12分野】
- 介護
- ビルクリーニング
- 素形材産業、産業機械製造業、電気・電子情報関連産業
- 建設
- 造船・舶用工業
- 自動車整備
- 航空
- 宿泊
- 農業
- 漁業
- 飲食料品製造業
- 外食業
在留資格「特定技能」1号と2号の違い
在留資格「特定技能」は1号と2号の2種類に分かれています。
日本で就業を希望する外国人が最初に取得するのは、特定技能1号です。
特定技能2号は、12の特定産業分野に従事し、経験豊富なスキルを持つ外国人を対象とした在留資格です。
特定技能1号を修了した外国人が試験に合格すると取得することができます。
下記に特定技能1号と2号の違いをまとめました。
【特定技能1号の特徴】
- 在留期間:通算で上限5年まで(1年を超えず、法務大臣が個々の外国人について指定する期間ごとの更新)
- 在留期間:通算で上限5年まで(1年を超えず、法務大臣が個々の外国人について指定する期間ごとの更新)
- 技能水準:試験などで確認が必要(技能実習2号を修了した外国人は試験を免除)
- 日本語能力:生活や業務に必要な日本語能力を試験などで確認が必要(技能実習2号を修了した外国人は試験を免除)
- 家族の帯同:基本的に不可
- 支援受入れ機関または登録支援機関による支援:対象
【特定技能2号の特徴】
- 在留期間:3年、1年または6カ月ごとの更新
- 技能水準:試験などでの確認が必要
- 日本語能力: 確認は不要
- 家族の帯同:要件を満たせば可(配偶者、子)
- 受入れ機関または登録支援機関による支援:対象外
特定技能と技能実習制度の違い
ここでよく比較される、特定技能と技能実習制度の違いをおさえておきましょう。
特定技能は外国人の労働を目的としていますが、技能実習制度は外国人の技能取得を目的としています。
技能実習法では、「技能実習は、労働力の需給の調整の手段として行われてはならない」(法第3条第2項)と基本理念が表記されています。
下記は主な特定技能1号と技能実習制度の違いです。
【特定技能と技能実習制度の違い】
特定技能1号 | 技能実習生 | |
---|---|---|
目的 | 労働 | 外国人の技能習得 |
在留期間 | 通算5年 | 合計で最長5年 |
入国時の試験 | 技能水準、日本語能力水準を試験で確認 (技能実習2号を良好に修了した者は試験免除。) |
なし (介護職種のみ入国時N4レベルの日本語能力要件あり。) |
業務内容 | 12の職種 | 88職種161作業内容 |
転職 | 可能 (同一の業務区分内や試験によりその技能水準の共通性が確認されている業務区分間であれば可能。) |
原則不可 (実習実施者の倒産などやむを得ない場合や、2号から3号への移行時は転籍は可能。) |
監理団体 | なし | あり (非営利の事業協同組合などが実習実施者への監査その他の監理事業を行う。主務大臣による許可制。) |
支援機関 | あり (個人または団体が受入れ機関からの委託を受けて特定技能外国人に住居の準備などの支援を行う。出入国在留管理庁長官による登録制。) |
なし |
外国人の採用 | 受入れ機関が直接海外で採用活動を行う。または国内外の登録機関などを通じて採用することが可能。 | 通常監理団体と送出機関を通じて行う。 |
特定技能は、在留期間が通算で上限5年までであること、受入れ時には技能や日本語能力を試験によって確認することなどが定められています。
また、特定技能外国人を受け入れる企業は、採用活動や関連業務を登録機関へ委託することが許可されています。
特定技能外国人を受け入れるためには?
政府は、特定技能外国人の受入れ機関に対して「特定技能1号」の活動を安定的かつ円滑に行うことができるようにするための職業生活上、日常生活上または社会生活上の支援の実施に関する計画(1号特定技能外国人支援計画。以下「支援計画」という。)を作成し、当該計画に基づき支援を行わなければならないと定めています。
受入れ機関は、1号特定技能外国人支援計画の一部の実施を第三者に委託することや、その全部の実施を登録支援機関などに委託することができます。
登録支援機関には、特定技能外国人の人材紹介会社や行政書士などがあります。
支援計画の全部の実施を委託した場合は、受入れ機関が実施しなければならない支援体制を実施したものとみなされます。
【受入れ機関の義務】
①外国人と結んだ雇用契約を確実に履行(例:報酬を適切に支払う)
②外国人への支援を適切に実施(支援については、登録支援機関に委託も可。)
③出入国在留管理庁への各種届出
※ ①〜③に違反すると外国人を受け入れができなくなり、出入国在留管理庁からの指導や改善命令などの対象となることもあります。
特定技能外国人の人材紹介会社では、具体的にどのようなサービスを実施しているのでしょうか。詳しくみていきましょう。
特定技能外国人の人材紹介会社の主なサービス
特定技能外国人の人材紹介会社では、会社ごとにさまざまなサービスを展開しています。
下記に特定技能外国人の人材紹介会社が実施している一般的なサービス内容をまとめました。
【主なサービス】
①ヒアリング
・受け入れ企業に仕事内容や採用計画などについてヒアリングを実施。(現地スタッフとオンライン面接を実施している会社もあります。)
②申請書類などの作成
・外国人労働者を受け入れる際の在留資格申請や各種書類作成や行政手続きを支援。
③ 出入国のサポート
・出入国時の空港や事業所の送迎や同行。
④生活サポート
・住居の契約や銀行口座の開設、ライフラインの契約など各種手続きの支援。
・公共機関の利用方法や連絡先、災害時の対応の説明。
・社会保障や納税手続きの支援。
⑤ 日本語学習や日本人との交流機会の提供
・日本のルールやマナーの理解を支援。
・日本語教室や日本語学習教材などの案内。
・地域住民との交流や地域のお祭りなどの行事の案内や参加の促進。
⑥ 相談・苦情への対応
・職場や生活上の相談や苦情対応。
・外国人が十分に理解することができる言語(母国語)での対応
⑦転職支援
・転職サポートや推薦状の作成。
・転職活動を行うための有給休暇の付与や必要な行政手続きの情報提供。
⑧ 定期的な面談・行政機関への通報
・定期的(3カ月に1回以上)な面談の実施。(労働基準法違反などがあれば通報)
特定技能外国人の人材紹介会社のプラン内容は会社によって異なっています。
また、費用に関しては、完全成功報酬型や初期費用が不要、返金制度の設置など会社によってさまざまです。
プランの内容や費用は事前に確認しておきましょう。
見積りの作成依頼や見積もりシュミレーションを活用するなど、しっかりと比較して選ぶことが大切です。
特定技能外国人の人材紹介会社活用のメリット2選
ここでは、特定技能外国人の人材紹介会社を活用するメリットを2つご紹介します。
①安定的な人材採用
特定技能外国人の人材紹介会社では、現地の教育機関との連携や海外のトレーニングセンターを設置している会社があります。
教育機関で学んだ優秀な人材の採用を見込めることが魅力です。
また、特定技能外国人の人材紹介会社とのヒアリングでどのようなスキルを持つ人材を求めているのか、希望を伝えることもできるようです。
ミスマッチを防げることで、採用後すぐにやめてしまわないかというような心配も不要です。
外国人採用に疑問点があり、採用を悩んでいる段階でも気軽に相談してみましょう。
②負担やコスト軽減
初めて特定技能外国人を雇用する場合、必要書類の作成や自社の職種が特定技能の対象に該当するのかの確認など、時間と労力がかかる事務手続きが発生します。
紹介会社などの専門家のサポートがあれば、事務手続きもスムーズです。
大変な事務作業から発生する残業時間の削減になり、人件費などのコスト削減にも繋がります。
特定技能外国人を雇用するために、自社で求人広告を掲載しているにも関わらず、応募がない方もいらっしゃるのではないでしょうか。
特定技能外国人の人材紹介会社を活用することで過剰な求人広告費の削減も見込めるでしょう。
特定技能外国人の人材紹介会社の選び方3選
最後に特定技能外国人紹介会社を選ぶポイントを3つご紹介します。会社探しの参考にしてください。
充実したサポート体制
特定技能外国人の人材紹介会社のサポート体制をしっかりと確認しておくことが大切です。
ニーズに沿った外国人の紹介だけでなく専門家による在留資格取得申請サポートや就労中のコミュニケーションのフォロー体制が整っているのかも会社選びの大切なポイントです。
また、日本語を話すことができる外国人のスタッフがいるとより安心です。
豊富な登録人数
登録人数が多い特定技能外国人の人材紹介会社に依頼することもおすすめです。
登録人数が多ければ多いほど、ニーズに沿った希望している人材に出会う確率も高くなります。
また、大量募集を計画している場合も、プラスに働くでしょう。
対応職種
自社の職種に対応した人材を紹介してもらえるかもポイントです。
特定技能外国人の人材紹介会社によって対応している業種と対応していない業種もあるようです。
必ず確認しておきましょう。
まとめ
特定技能外国人を雇用する受け入れ企業には、さまざまな準備が必要です。
自社だけで対応することが難しい場合は、特定技能外国人の人材紹介会社のサービスをフル活用することもおすすめです。
外国人と気持ちよく仕事をして、ともに成長できる良い環境作りに努めましょう。
※記事内容は執筆時点の情報に基づきます。