特定技能2号は支援義務がない?支援不要のメリットと誤解してはいけないポイントを解説

特定技能2号 支援

日本国内における人手不足の解決策の一つとして、特定技能外国人材の活用が急速に進んでいます。

中でも、在留期間に上限がなく、より高度な技能を持つ「特定技能2号」の資格は、優秀な人材を長期的に確保し、企業の持続的な成長に貢献する可能性を秘めていることから、大きな注目を集めています。

特定技能1号の分野のうち特定の産業のみ特定技能2号へ移行が認められていますが、特定技能2号の対象の職種に従事する外国人を採用すると、受入れ企業に課される「支援義務」が不要になります。

そのため、特定技能2号になれば、1号のような手厚い支援は不要になり、コストや負担が大幅に軽減されると期待されている方も少なくないでしょう。

本記事では、特定技能2号における支援義務の免除というポイントに焦点を絞り、特定技能1号との制度的比較や支援が免除されるメリット、誤解してはならない注意点を解説します

目次

特定技能1号における「支援」とは?

生活支援の説明をイメージした画像

特定技能2号の支援義務の免除の意義を理解するために、まず、特定技能1号の外国人を受け入れる企業に対し、どのような支援が法的に義務付けられているのかを把握しておくことが大切です

特定技能1号外国人に対する支援は、異文化の地である日本で、安定的かつ円滑に就労し生活を送るために極めて重要です。

義務的支援の10項目と内容

特定技能1号の受入れ企業は、外国人本人に対して、以下の10項目にわたるきめ細やかな支援を実施する義務を負います。

これらの支援は、自社のリソースで行うか、出入国在留管理庁長官の登録を受けた専門機関である「登録支援機関」に全ての業務を委託することが可能です

義務的支援10項目
項目
事前ガイダンスの実施

雇用契約締結後、かつ在留資格関連の申請を行う前に、労働条件(給与、労働時間、休日など)、具体的な業務内容、入国・在留に関する諸手続き、そして保証金の徴収や違約金の定めが契約に含まれていないことなど、極めて重要な情報を、本人が十分に理解できる言語(母国語など)で、対面またはオンラインで3時間以上かけて丁寧に説明します

項目
出入国する際の送迎

外国人が初めて日本に入国する際には、到着した空港や港に出迎え、そこから事業所または住居まで確実に送り届ける必要があります

また、雇用契約が終了し帰国する際には、住居から出国する空港や港まで同行し、保安検査場を通過するまで見送ることが求められます。

項目
適切な住居の確保に係る支援・生活に必要な契約に係る支援

外国人が安心して生活できる適切な住居(例:個室7.5㎡以上など一定の広さ基準を満たすもの)を確保するための支援を行います

具体的には、連帯保証人となる、社宅を提供する、賃貸物件探しの情報提供や不動産業者への同行などが含まれます。

さらに、銀行口座の開設、携帯電話の契約、電気・ガス・水道といったライフラインの契約締結など、日本での生活を始める上で不可欠な各種契約手続きを円滑に行えるようサポートします。

項目
生活オリエンテーションの実施

入国後、速やかに、日本での社会生活を円滑に送るための情報提供を行います。

これには、交通ルールやゴミの分別方法、医療機関の利用手順、災害発生時の対応方法(避難場所、連絡手段など)といった日常生活に関する知識に加え、入管手続き、労働関係法令の概要、人権侵害を受けた場合の相談窓口など、法的保護に必要な情報も含まれます。

これも本人が理解できる言語で、8時間以上かけて行う必要があります

項目
公的手続き等への同行・書類作成の補助

必要に応じて、居住地の市区町村役場での住民登録、マイナンバーカードの申請、国民健康保険や国民年金への加入手続き、納税に関する手続きなど、外国人本人が行うべき各種行政手続きに同行し、申請書類の作成などを補助します

項目
日本語学習機会の提供

本人が日本語能力の維持・向上を希望する場合、地域の日本語教室の情報提供や入学手続きの案内、日本語学習教材(書籍、アプリ、オンラインコースなど)の情報提供、あるいは企業内での日本語学習機会の提供などを行います

項目
相談・苦情への対応

職業生活上(例:仕事内容、人間関係、ハラスメント)、日常生活上(例:近隣トラブル、病気)、または社会生活上(例:差別的扱い)の様々な相談や苦情に対して、本人が十分に理解できる言語で親身に対応し、必要な助言や指導、関係機関への橋渡しを行います

項目
日本人との交流促進に係る支援

外国人が地域社会に溶け込み、孤立することを防ぐため、地域住民との交流の場(自治会のお祭りやイベント、ボランティア活動など)に関する情報提供や参加の呼びかけ、日本の文化や習慣を理解するための行事(例:地域の伝統行事、スポーツ交流会など)への参加を促すような支援を行います

項目
転職支援(受入れ側の都合による雇用契約解除時の措置)

受入れ企業の倒産や業績悪化による人員整理など、外国人本人の責任ではない理由で雇用契約を解除せざるを得ない場合、次の受入れ先(転職先)を探すための支援を行います

具体的には、求人情報の提供、推薦状の作成、ハローワークへの同行などが含まれます。

項目
定期的な面談の実施・行政機関への通報

受入れ企業の支援責任者または支援担当者が、外国人本人及びその直属の上司など監督する立場にある者と、それぞれ定期的に(少なくとも3ヶ月に1回以上)面談を実施します

面談では、労働状況、生活状況、支援計画の実施状況などを確認し、問題があれば改善を図ります。

また、労働基準法違反や人権侵害などの重大な問題が発覚した場合には、速やかに関係行政機関に通報する義務があります。

支援の目的と企業に求められる体制・コスト

これらの多岐にわたる支援は、外国人が日本の言語や文化、生活習慣の違いから生じる様々な困難を乗り越え、安心して働き、安定した生活を送ることができるようにすることを目的としています。

これにより、彼らが本来持つ能力を最大限に発揮し、日本社会の一員として円滑に活動できるようになることが期待されています。

しかしながら、企業側にとっては、これら10項目の支援を適切かつ継続的に実施するためには、相応の体制整備とコスト負担が伴います。

自社で全ての支援を行う場合には、専門知識を持つ支援担当者の配置や育成、多言語対応、そして各支援活動にかかる時間的・人的リソースの確保が必要です

登録支援機関に委託する場合でも、外国人一人あたり月額数万円程度の委託費用が発生することが一般的であり、雇用人数が増えればその負担も大きくなります。

特に、リソースが限られる中小企業にとっては、この支援義務が特定技能外国人材の活用を躊躇させる一因となっていることも否定できません。

特定技能2号における支援義務の免除とは?

クエスチョンマークを手にした木の模型

特定技能2号になると支援義務が不要になります。

つまり、特定技能1号で課されていた前述の10項目の支援計画の策定・実施義務が、特定技能2号の外国人材を受け入れる際に不要となることを意味します

なぜ2号では支援義務が免除される?

特定技能2号の外国人材に対して、1号のような包括的な支援義務が課されない主な理由は、日本社会でより自立して活動できる能力と経験を有している想定されているためです

主な理由
相当期間の日本在留と社会適応の経験

特定技能2号へ移行する外国人の多くは、特定技能1号として数年間日本で就労し、生活してきた実績があります。

この期間を通じて、日本の社会ルール、生活習慣、文化に対する理解が深まり、日常生活における様々な場面での対応能力が向上していると考えられます

日本語のコミュニケーション能力

特定技能1号の資格取得時点で、一定レベルの日本語能力(JLPT N4程度またはJFT-Basic合格)が求められています

その後、日本での数年間の就労・生活経験を積むことで、教科書的な知識だけでなく、職場や日常生活で実際に使われる、より実践的で流暢な日本語コミュニケーション能力が自然と向上していることが一般的です。

これにより、情報の理解や意思疎通における困難が大幅に軽減されていると想定されます。

熟練した技能の保有

特定技能2号の資格を得るためには、各分野で定められた熟練した技能水準を有していることを試験等で証明する必要があります。

これは、単に業務をこなせるだけでなく、他の従業員への指導や、より高度な判断が求められる業務を自律的に遂行できるレベルを意味します

このような高い専門性と職業的自立性は、生活面での自立性にも繋がると期待されます。

生活基盤の安定と自己解決能力の向上

長期間の就労を通じて、一定の経済的基盤が形成され、生活に必要な各種契約(住居、通信、金融など)や行政手続きについても、自身で情報を収集し、対応できる能力が身についていると見なされます

また、日本での生活における問題解決の経験も蓄積されていると考えられます。

このような背景から、特定技能1号の外国人材に対して義務付られていた手厚く広範な支援は、2号の外国人材には必ずしも必要ではない、という判断がなされています。

特定技能2号の対象分野
  1. 建設
  2. 造船・舶用工業
  3. ビルクリーニング
  4. 素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業
  5. 自動車整備
  6. 航空
  7. 宿泊
  8. 農業
  9. 漁業
  10. 飲食料品製造業
  11. 外食業

なお、介護分野については、既存の在留資格「介護」があるため、特定技能2号の対象外とされています。

支援が不要になるメリット

メリットをイメージした画像

支援が不要になることは、特定技能2号人材を受け入れる企業にとって、具体的に以下のような大きなメリットをもたらす可能性があります。

直接的な経済的コストの大幅な削減
登録支援機関への委託費用の消滅

特定技能1号の支援を登録支援機関に委託していた企業にとっては、この委託費用(外国人一人あたり月額2万円~5万円程度が相場)が完全に不要となります

雇用人数が多ければ多いほど、このコスト削減効果は大きくなります。

自社支援にかかる経費の削減

自社で支援体制を構築していた場合でも、支援担当者の人件費、支援活動に伴う諸経費(例:出入国時の送迎交通費、生活オリエンテーション資料の多言語翻訳費用、日本語学習教材の購入費用など)を大幅に削減できます

事務的・人的負担の劇的な軽減
支援計画書の作成・届出業務からの解放

特定技能1号では、個々の外国人ごとに詳細な支援計画書を作成し、出入国在留管理庁に届け出る必要がありましたが、2号ではこれが不要になります

支援実施状況の記録・管理業務の削減

10項目の支援を適切に実施したことを記録し、管理する業務も大幅に軽減されます

定期的な報告義務などの実務軽減

特定技能1号では、支援の実施状況等を定期的に出入国在留管理庁に報告する義務がありましたが、2号ではこの報告義務も基本的にはなくなります(ただし、受入れ状況に関する定期届出など、一部の届出義務は残ります)。

支援担当者の業務負荷軽減

これまで支援業務に多くの時間を割いていた人事担当者や現場管理者は、その分のリソースを他の重要な業務(採用戦略、人材育成、生産性向上策など)に振り向けることができるようになります

より柔軟で実質的なサポートへのシフトできる

画一的な義務としての支援から解放されることで、企業は、個々の特定技能2号外国人の真のニーズや、自社の状況に合わせた、より柔軟で効果的なサポートを提供しやすくなります

例えば、全員に一律の日本語学習機会を提供するのではなく、本人のキャリアプランや業務上の必要性に応じて、より専門的な研修機会を提供するといった、質の高いサポートに注力できます。

これらのメリットは、特にリソースが限られる中小企業にとって、特定技能2号人材の受け入れをより現実的な選択肢とする上で、非常に大きな後押しとなるでしょう。

支援不要でも誤解してはいけないポイント

ポイントを説明している女性従業員

法律で定められた支援の義務はなくなりますが、これは企業が外国人従業員に対して一切の関心や配慮を示さなくて良いということでは決してありません。

むしろ、この義務からの解放は、企業がより主体的かつ柔軟に、個々の外国人材の状況やニーズに応じた、真に効果的なサポートとは何かを考え、実践する機会と捉えるべきです

良好な雇用関係というのは、単に法的な義務を果たすだけで自動的に構築されるものではありません。それは、日々のコミュニケーション、相互の信頼、そして人間的な配慮の積み重ねによって育まれるものです。

特定技能2号外国人材は、確かに日本での生活や業務に一定の習熟度を持ち、自立性が高いと見なされますが、それでもなお、異文化の地で生活し、働く上での細かな不安やキャリアに関する悩み、あるいは家族に関する心配事を抱えている可能性は十分にあります。

企業が「法的義務がないから」という理由で、こうしたサインを見過ごしたり、相談の機会を設けなかったりすれば、彼らは次第に孤立感を深め、仕事へのモチベーションを失い、最悪の場合、より手厚いサポートを期待できる他の企業へと流出してしまうリスクも否定できません。

それは、企業にとって大きな損失であるばかりでなく、時間とコストをかけて育成してきた貴重な人材を手放すことにも繋がります。

したがって、企業としては、法的義務の有無に関わらず、彼らが長期的に安心してその能力を最大限に発揮できるような職場環境を維持・向上させるための自主的な努力を継続することが必要です

これには、定期的にコミュニケーションの機会を設けること、キャリアパスに関する相談に応じること、必要に応じて生活面での情報提供やアドバイスを行うこと、そして何よりも、彼らを単なる「労働力」としてではなく、共に企業の未来を創る「仲間」として尊重する姿勢を示すことが含まれます。

このような人間的な配慮と継続的な関与こそが、真の信頼関係を築き、彼らの長期的な定着と活躍を促す土壌となるでしょう。

特定技能2号の支援まとめ

サポートをイメージした画像

特定技能2号における支援義務の免除は、受入れ企業にとって、コスト削減や事務負担軽減という直接的なメリットをもたらします。

これにより、特にリソースに限りがある企業においても、特定技能2号という選択肢がより現実的なものとなり、外国人材活用の裾野が広がる効果が期待されます。

しかしながら、支援義務がないという言葉の表面だけを捉え、外国人材に対しては何の配慮も必要ないと考えるのは、長期的な視点で見れば賢明な判断とは言えません。

特定技能2号外国人が持つ高い専門性と潜在能力を最大限に引き出し、「この会社で長く働きたい」と感じてもらい、ひいては企業の持続的な成長と競争力強化に貢献してもらうためには、法的義務の有無を超えた、企業側の真摯な姿勢と、自主的かつ戦略的なサポートが不可欠です

特定技能制度を正しく理解し、そのメリットを最大限に活かしつつも、共に働く仲間としての必要な配慮を怠らないことこそが、特定技能2号人材と共に輝かしい未来を築き、変化の激しい時代を勝ち抜くための、企業にとって最も賢明な道筋と言えるのではないでしょうか。

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この記事を書いた人

三木 雅史(Masafumi Miki) 株式会社E-MAN会長
1973年兵庫県たつの市生まれ / 慶応義塾大学法学部法学科卒
・25歳で起業 / デジタルガレージ / 電通の孫請でシステム開発
・web通販事業を手掛ける
・2006年にオンライン英会話を日本で初めて事業化
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