企業に代わり、特定技能外国人の支援を行う登録支援機関。
どのような支援を行う機関なのか、何を基準にどの機関を選ぶべきなのか、そもそも委託は必須なのか……。
登録支援機関について、このような疑問を抱いている担当者の方も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、登録支援機関の役割や支援内容、選び方について解説しています。
登録支援機関に支援を委託するメリットについてもまとめているので、参考にしてください。
登録支援機関とは?
企業が特定技能1号(業務に対応するために必要な知識と経験を有している外国人が取得できる就労ビザ・在留資格)を有する外国人を雇用する「特定技能所属機関」に認定されるためには、外国人が安定的かつ円滑に就労できるような支援を行う必要があります。
しかし、義務づけられた支援の種類はかなり多く、専門的な支援も行わなければならないため、自社のみで支援体制を整えられないケースは少なくありません。
そのような自ら支援ができない企業に代わって支援を行う機関が「登録支援機関」です。
登録支援機関には、全ての支援を委託することはもちろん、委託の範囲を決めて一部のみを委託することもできます。
登録支援機関として活動しているのは、人材派遣会社や行政書士・社労士の事務所などです。
技能実習生を受け入れる企業のサポートを行う「監理団体」と役割が似ていますが、監理団体として登録を受けられるのは営利を目的としない法人のみです。
一方、登録支援機関は営利団体や個人でも登録を受けられます。
なお、特定技能2号への支援は必須ではありません。
登録支援機関になるための要件
登録支援機関になるためには、以下の条件を満たしている必要があります。
法令等を遵守しており、問題がない機関である
- 1年以内に特定技能外国人または技能実習生の行方不明者を発生させていない
- 支援の費用を直接または間接的に外国人本人に負担させない
- 刑罰法令違反による罰則(5年以内に出入国または労働に関する法令により罰せられたなど)を受けていない
特定技能外国人の支援が可能である
- 支援責任者及び1名以上の支援担当者を選任している
- 外国人が十分理解できる言語で情報提供等の支援を実施できる体制を有している
また、以下の4点のうちいずれかに該当していなければなりません。
- 団体・個人に関わらず、2年以内に中長期在留者の受入れ実績がある
- 報酬を得る目的で、2年以内に業として外国人に関する各種相談業務に従事した経験を有する
- 選任された支援担当者が、過去5年以内に2年以上中長期在留者の生活相談業務に従事した経験を有する
- 上記の他、これらと同程度に支援業務を適正に実施できると認められている
登録申請を行っている
地方出入国在留管理局、または地方出入国在留管理局支局に以下の申請書類を提出します。
- 登録支援機関登録申請書
- 立証資料
- 手数料納付書
- 返信用封筒
登録支援機関の義務
登録支援機関には、以下の2点が課せられています。
- 外国人への支援を適切に実施すること
- 出入国在留管理庁へ各種届出を行うこと
これらを怠ると登録を取り消されることがあります。
登録支援機関について、詳しくは下記サイトをご覧ください。
登録支援機関の支援内容
特定技能外国人に対する支援は、必ず行わなければならない「義務的支援」と任意で行う「任意的支援」に分けられます。
なお、任意的支援であっても、支援計画に記載した場合は義務となります。
以下に登録支援機関の支援内容を、義務的支援・任意的支援に分けてまとめました。
事前ガイダンス
雇用する外国人が十分に理解できる言語で情報提供を行います。
事前ガイダンスは、雇用する外国人が来日する前に実施しなければなりません。
義務的支援の主な事項は以下の通りです。
- 入国手続きについて
- 労働条件について
- 活動内容について
- 保証金等の支払いや違約金等に関わる契約をしていないこと、今後もしないことについての確認
- 職業生活、日常生活、社会生活に関わる相談・苦情の申出を受ける体制について
- 支援担当者の氏名・電話番号などの連絡先
また、事前ガイダンスの情報提供に関わる任意的支援としては以下が挙げられます。
- 日本の気候や適した服装
- 本国から持参すべきもの・持参すべきでないもの
出入国時の送迎
入国する際は、飛行場から特定技能所属機関までの間の送迎をする必要があります。
出国する際も飛行場まで送迎し、保安検査場の前まで同行して入場を確認しなければなりません。
住居確保・生活に必要な契約支援
住居確保・生活に関わる支援を行う必要があります。
義務的支援の主な事項は以下の通りです。
- 住居探しに関わる情報提供
- 住居探しの補助
- 住居の契約において連帯保証人が必要な場合、連帯保証人になる
- 銀行口座等の開設手続きを案内する・補助する
- ライフラインの契約等を案内する・補助する
また、住居確保・生活に関わる任意的支援としては以下が挙げられます。
- 雇用契約の解除・終了後、次の受け入れ先が決まるまでに住居確保の必要性が生じた場合、上記の支援を行う
- 生活に必要な契約において、契約の解除・契約の変更等を行う場合、必要書類の提供および窓口の案内等を行い、手続きを補助する
なお、住居に関しては、居室が7.5平米以上である必要があります。
生活オリエンテーション
雇用する外国人が日本での生活に適合できるよう、当該外国人が十分に理解できる言語で情報提供を行います。
生活オリエンテーションは、企業が特定技能外国人と雇用契約を締結した後に実施します。
義務的支援の主な事項は以下の通りです。
- 金融機関・医療機関・交通機関の利用方法
- 交通ルール
- 生活ルール・マナー
- 生活必需品の購入方法
- 災害時の対応
- 日本国内で違法とされる行為について
- 所属機関や住居地、社会保障、税などに関わる各種手続きについて
- 相談または苦情の申出ができる機関の連絡先
生活オリエンテーションは、少なくとも8時間以上行うことが求められています。
公的手続き等への同行
社会保障や税などに関わる各種手続きへの同行、書類作成の補助を行う必要があります。
日本語学習の機会の提供
日本語学習の機会の提供に関わる支援を行う必要があります。
義務的支援の主な事項は以下の通りです。
- 生活地域の日本語教室等に関する入学案内の情報を提供し、必要に応じて入学手続きを補助する
- 日本語学習教材等に関する情報を提供し、必要に応じて日本語教材等の入手や日本語講座の利用手続きを補助する
また、日本語学習の機会の提供に関わる任意的支援としては以下が挙げられます。
- 特定技能外国人への日本語指導・講習等の企画・運用を行う
- 日本語能力に関わる試験の受験支援を行う
- 日本語教室等の入学金や月謝、日本語学習教材の費用等を負担する
相談・苦情への対応
雇用する外国人が十分に理解できる言語で、職場や生活に関わる相談・苦情等に対応し、助言や指導を行う必要があります。相談・苦情への対応に関わる任意的支援としては、あらかじめ相談窓口の情報を伝えておくことが挙げられます。
日本人との交流促進
日本人との交流促進に関わる支援を行う必要があります。
義務的支援の主な事項は以下の通りです。
- 地域のお祭りやボランティア活動など、地域住民との交流の場に関する情報を提供する
- 地域の自治会等の案内を行う
- 各行事等への参加の手続きを補助する
- 必要に応じて各行事について説明する
また、日本人との交流促進に関わる任意的支援としては以下が挙げられます。
- 特定技能外国人が行事への参加を希望する場合に有給休暇を付与する
- 勤務時間に配慮する
転職支援(人員整理等の場合)
人員整理等、特定技能所属機関の都合によって雇用契約を解除する場合、以下の支援のいずれかを行う必要があります。
- 次の受入れ先に関する情報を提供する
- 次の受入れ先を探す補助を行う
- 推薦状を作成する
- 職業紹介事業を行うことができる場合、就職先を紹介・あっせんする
また、以下の支援を全て行う必要があります。
- 特定技能外国人が求職活動を行えるよう、有給休暇を付与する
- 離職時に必要な行政手続きについての情報を提供する
- 支援が適切に実施できない場合、代わりに支援を行える者を確保する
定期的な面談・行政機関への通報
支援責任者が外国人及びその上司等と3ヶ月に1回以上の定期的な面談を行い、労働基準法に違反していないか確認します。
違反があった場合は、行政機関へ通報しなければなりません。
登録支援機関への支援委託は不可欠なのか
以下の条件を満たしている企業であれば、支援を内製化することも可能です。
- 直近2年間に外国人労働者の受け入れ実績がある
- 直近2年間に外国人労働者の生活相談業務に従事した職員・役員がいる
初めて外国人を受け入れる企業は上記の条件を満たせないため、登録支援機関への支援委託が必要です。
条件を満たせる企業であっても、雇用する外国人の母国語に対応できる語学力や、法令を理解して支援を実施できる知識がなければ、支援の内製化は難しくなります。
自社で支援体制を整えるための人材を用意でき、支援を数年間継続して行える企業以外は、登録支援機関のサポートを受けるべきでしょう。
登録支援機関に支援を委託するメリット
ここでは、登録支援機関に支援を委託するメリットを解説しています。
受け入れ企業の負担が軽くなる
特定技能外国人を受け入れる際には、多くの準備や支援、煩雑な手続きが必要です。
また、事前ガイダンスや生活オリエンテーションは数時間行わなければならず、受け入れ企業にとっては相当な負担になるでしょう。
登録支援機関に支援を委託すれば、こうした準備や手続きにかかる負担が軽くなり、業務に集中できます。
トラブルの予防に繋がる
登録支援機関が間に入ることで、外国人と受け入れ企業が円滑にコミュニケーションをとれるようになります。
仕事に関する連絡が正しく伝わるようになることや、企業関係者以外の相談先があることは、トラブルの予防に繋がります。
転職されてしまうリスクが減る
技能実習生とは異なり、特定技能外国人は転職が可能です。
外国人が受け入れ企業に対して不満を持ってしまった場合、他社に転職されてしまうリスクが出てきます。
不十分な支援は外国人の不満に直結するので、きめ細かい支援を行うためにも、登録支援機関への支援委託を検討してみましょう。
登録支援機関の選び方
ここでは、登録支援機関の選び方について解説しています。
所在地で選ぶ
義務的支援の中には直接会って行う支援もありますし、委託後も定期的に面談する必要があるため、自社の近くにある登録支援機関を選ぶべきです。
登録支援機関によっては遠距離の支援が得意なところもありますが、可能な限り近場の登録支援機関を活用した方が良いでしょう。
各登録支援機関の住所は、下記サイトから確認できます。
登録支援機関(Registered Support Organization) | 出入国在留管理庁
費用・料金体系で選ぶ
支援委託費の相場は特定技能外国人1人あたり月2万円~3万円だと言われていますが、登録支援機関によって異なります。
また、初期費用がかかったり、支援項目ごとに費用を設定していたりする場合もあれば、月額定額にしている場合もあります。
登録支援機関には長期間支援を委託することになるので、料金設定の分かりやすさで選ぶのもひとつの方法です。
ただ、中には悪質な業者も存在するため、安いという理由だけで登録支援機関を決めてしまうのはおすすめしません。
「どのくらいの費用で、どのような支援をしてくれるのか」「どのような実績があるのか」という部分に焦点を当て、登録支援機関を探していきましょう。
対応言語の多さで選ぶ
雇用したい外国人の母国語だけでなく、他の言語に対応していることも重要です。
1つの国籍の人材しか採用していない場合、国のお祭りなどで一時帰国の時期が重なり、結局人手不足に陥ってしまう可能性もあります。
そのため、数か国から外国人労働者を採用する企業も少なくないのです。
将来的に他の国の人材も採用する可能性を考え、初めから対応している言語が多い登録支援機関を選ぶのも良いでしょう。
人材を紹介してもらえるかどうかで選ぶ
人材紹介と支援を別の機関に依頼するとなると、時間も手間もかかってしまいます。
そのため、できれば人材の紹介から支援までを全て任せられる機関を選ぶのがおすすめです。
協議会に加入しているかどうかで選ぶ
特定技能制度を適切に運用し、特定技能外国人を保護するために設置された機関が「特定技能協議会」です。
特定技能協議会は分野ごとに設置されていて、受け入れ企業は各分野の協議会に加入しなければなりません。
以下の6分野は、受け入れ企業だけでなく登録支援機関も協議会に加入することを義務づけられています。
- 外食業分野
- 飲食料品製造業分野
- 宿泊分野
- 自動車整備業分野
- 航空分野
- 造船・舶用工業分野
この6分野で支援委託を検討している場合、各分野の協議会に加入している登録支援機関を選びましょう。
特定技能外国人を受け入れる際の注意点
ここでは、企業が特定技能外国人を受け入れる際の注意点を解説しています。
雇用形態
特定技能外国人の雇用形態は、フルタイムのみ認められています。
フルタイムとは、以下のような状態のことです。
- 原則労働日数が週5日以上かつ年間217日以上
- 週の労働時間が30時間以上
パートタイムやアルバイトといった雇用形態は認められていません。
給与・労働時間
報酬額や労働時間は日本人と同等でなければなりません。
また、研修・福利厚生施設の利用・その他待遇も日本人と同等である必要があります。
業務内容
特定技能には対応できる業務の範囲が定められており、どのような事由があってもそれ以外の業務を任せることはできません。
また、単純作業のみに従事させ、業務に全く関わらせないことも認められていません。
まとめ
本記事では、登録支援機関の役割や支援内容、選び方について解説してきました。自社で支援体制を整えられない場合、登録支援機関への支援委託が必要です。
登録支援機関には、年単位で継続して支援を委託することになります。住所や費用、対応言語、支援実績などを確認し、安心して委託できる登録支援機関を見極めていきましょう。