特定技能2号で求められる実務経験とは?分野別に必要な経験を紹介

特定技能 2号 実務経験

日本で長期的に働きたい外国人にとって、「特定技能2号」は非常に魅力的な在留資格です。

特定技能1号よりも高い技能レベルが求められますが、その分、在留期間の制限がなく、永住権の申請も目指せる大きなメリットがあります。

この記事では、特定技能2号の取得について、分野別に求められる実務経験の情報をまとめています。

受け入れを検討している企業の方や、特定技能2号を目指す方はぜひ参考にしてください。

目次

特定技能2号とは

ホテル従業員

特定技能2号とは、日本で就労する外国人に与えられる在留資格の一つであり、特に高度な専門性や熟練した技能が求められる分野で働くことを目的としています。

特定技能1号よりもさらに高い技能レベルが必要となるため、取得には一定の実務経験や技能試験の合格が求められます。

特定技能2号の特徴

特定技能2号には、他の在留資格と比べて大きな特徴がいくつかあります。

まず、在留期間の更新に上限がないため、実質的に日本で長期間働き続けることが可能です。

さらに、一定の条件を満たせば永住権の申請も視野に入るため、将来的な生活設計が立てやすいメリットがあります。

また、特定技能1号で義務付けられている登録支援機関による支援が不要になる点もポイントです。

なお、特定技能2号では家族の帯同も認められており、配偶者や子どもと一緒に日本で暮らせることも魅力の一つです。

スクロールできます
項目特定技能1号特定技能2号
対象分野16分野11分野
求められる技能レベル基礎的な技能熟練した技能
在留期間の更新更新可、最長5年まで更新可、期限なし(無制限)
永住権の申請資格原則なし条件を満たせば可能
家族の帯同原則不可可能(配偶者・子ども)
登録支援機関による支援必須不要

取得のために必要な条件

特定技能2号を取得するには、分野別に実施される試験への合格や、一定年数以上の実務経験が求められます

ただし、分野ごとに必要な実務経験の年数や求められる内容は異なります。

事前に各分野の要件を正確に把握しておきましょう。

また、実務経験については、経験を証明するための書類を提出する必要があります。

特定技能2号の対象分野

特定技能2号はすべての分野で認められているわけではありません。

以下の11分野のみで取得が可能です。

11分野
  1. 外食業
  2. 飲食料品製造業
  3. 建設業
  4. 製造業
  5. 農業
  6. 漁業
  7. 宿泊業
  8. 自動車整備業
  9. 造船・舶用工業
  10. ビルクリーニング
  11. 航空業

【分野別】特定技能2号で必要な実務経験

空港で働く従業員

特定技能2号で求められる実務経験は、以下のようになっています。

外食業

外食業分野で特定技能2号を取得するためには、一定の実務経験が求められます。

単に飲食店で働いた経験があるだけでは不十分であり、具体的な指導・監督経験が必要になります。

このため、食品衛生法に基づく営業許可を受けた飲食店で、2名以上のアルバイトや特定技能外国人を指導・監督しながら働いた経験が2年間以上求められます。

ここで重要なのは、単なる作業員ではなく、指導や店舗管理の補助に関わっていたかどうかです。

例えば、副店長やサブマネージャーのような役割を担っていた場合、その経験が特定技能2号取得に直結します。

また、外食業では接客の場面が多いため、日本語能力試験N3以上の日本語力も必要です。

参考:農林水産省|食品産業分野の特定技能2号に関するQ&A

飲食料品製造業

飲食料品製造業分野で特定技能2号を取得するためには、複数の作業員を指導し工程管理を行った実務経験が2年以上求められます。

このとき、対象となる作業員には、技能実習生やアルバイト、他の特定技能外国人も含まれます。

つまり、現場でリーダーシップを発揮し、チームをまとめながら作業を進めた経験が必要ということです。

例えば、ライン長や班長のようなポジションでの経験が想定されています。反対に、指導経験がない単なる作業者だった場合は、要件を満たさないので注意が必要です。

参考:農林水産省|食品産業分野の特定技能2号に関するQ&A 

建設業

建設業分野で特定技能2号を取得するには、現場で2人以上の作業者を指導し作業に従事した経験や、工程管理を行った経験が必要となります。

必要な経験年数は、職種によって異なります。

  • CCUSによる能力評価基準の設定がある職種

「レベル3相当」の就業日数(職長+班長)が必要。

  • CCUSによる能力評価基準の設定がない職種

「3年(勤務日数645日)以上」の就業実績が必要。

建設業の分野においては、建設キャリアアップシステム(CCUS)による能力評価基準のレベル3に相当する経験を求められることが多く、該当する職種での就業日数を満たす必要があります。

また、CCUSの評価基準が設定されていない職種については、職長・班長として3年以上(勤務日数645日以上)の実務経験が必要となります。

一方で、CCUSの評価基準がある職種では短期間の経験で足りる場合もあるため、うまく条件を確認すれば、比較的早期に特定技能2号を取得できるケースもあります。

参考:国土交通省|建設分野の2号特定技能外国人に求める「建設現場において複数の建設技能者を指導しながら作 業に従事し、工程を管理する者(班長)としての実務経験」について

製造業

製造業分野では、3年以上の実務経験が求められます。

班長やリーダーとしての経験は必須ではなく、あくまでも製造現場で継続して従事してきたことが重視されます。

ただし、単純作業だけでなく、一定以上の技能が身についていることが前提となるため、試験対策やスキル向上にも力を入れておきましょう。

参考:特定技能外国人材制度|製造業における特定技能外国人材受入れに関するFAQ

農業

農業分野で特定技能2号を取得するには、耕種農業または畜産農業での実務経験が必要です。

経験年数は立場によって異なり、管理者であれば2年以上、管理者でなければ3年以上の経験が求められます。

ここで言う管理者とは、単に作業をこなすだけではなく、自然条件の変化や家畜の状態に応じた判断を行い、複数の作業員を指導・監督できる人物のことを指します。

例えば、畑での作業指示を行いながら収穫計画を立てる役割や、畜舎で動物の健康管理を行いながらスタッフをまとめる立場等であれば、管理者として認められます。

参考:出入国在留管理庁|農業分野

漁業

漁業分野で特定技能2号を取得するには、リーダーの補佐や作業員を指導し作業に従事した経験や、工程管理に関わった経験が求められます。

また、2年以上の実務経験が必要です。例えば、漁船の作業員を指導したり、養殖場で管理業務を補助した経験がこれに該当します。

漁業分野では評価試験の合格の他、「日本語能力試験N3以上」の合格も求められます。

言葉の壁があると現場指導が難しくなるため、日常的な日本語コミュニケーション能力が重要視されています。

参考:水産庁|特定技能外国人の受入れ制度について(漁業分野)

宿泊業

宿泊業分野では、フロント業務や接客、レストランサービスなど、宿泊施設の各業務に携わりながら2年以上の指導経験を積むことが求められます。

複数の同僚や後輩を指導・監督しながら業務を進めた実績が重視されます。

例えば、ホテルのフロントチームでリーダーとして勤務し、業務指示を出していた経験があると要件を満たしやすくなります。

参考:宿泊分野特定技能2号評価試験|宿泊業技能試験センター

自動車整備業

自動車整備業で特定技能2号を取得する場合、取得ルートによって実務経験の要否が変わるのが特徴です。

「自動車整備分野特定技能2号評価試験」に合格した場合には、地方運輸局長の認証を受けた事業場で3年以上の実務経験が求められます。

認証整備工場で点検・整備作業を担当してきた実績が必要です。

一方で、「自動車整備士技能検定試験2級」に合格している場合は、実務経験が必要ありません。

これは、自動車整備士として十分な技能を有するとみなされるからです。

ただし、評価試験合格ルートが主流であるため、基本的には3年以上の実務経験が必要と考えて準備を進めたほうが安心です。

参考:出入国在留管理庁|自動車整備分野

造船・舶用工業

造船・舶用工業分野で特定技能2号を取得するためには、複数の作業員を指揮・命令・管理する監督者として2年以上の実務経験を積んでいることが条件です。

例えば、グループリーダーとして作業指示を出したり、安全管理や制作物の品質チェックを担当していた経験があれば、該当します。

ただ単に作業をこなしていた期間だけでは要件を満たせないため注意が必要です。

参考:法務省|造船・舶用工業分野2号特定技能外国人に求められる実務経験に係る証明書

ビルクリーニング

ビルクリーニング分野では、複数の作業員を指導しながら建物内部の清掃に2年以上従事した経験が求められます。

対象となる建物は特定建築物であり、一般の住宅は含まれません。

商業ビルやオフィスビル、学校などで、清掃チームをまとめながら作業に当たっていた場合が該当します。

参考:出入国在留管理庁|ビルクリーニング分野

航空業

航空業分野には、「空港グランドハンドリング業務」と「航空機整備業務」の2つの職種があります。

空港グランドハンドリング業務では、空港の現場において、技能者を指導し作業に従事した経験が求められます。

また、航空機整備業務では、航空機の整備現場で専門的な知識や高い技術力を必要とする作業に3年以上携わった経験が必要です。

参考:国土交通省|航空分野2号特定技能外国人に求められる実務経験に係る証明書

特定技能2号への移行事例を紹介

レストランマネージャー

実務経験の条件をクリアして、特定技能2号への移行できた事例を紹介します。

飲食料品製造業の事例

事例:冷凍食品工場でラインリーダーを務めた場合

ネパール出身のCさんは、特定技能1号で冷凍餃子製造工場に勤務していました。

勤務開始から1年後、工場長の推薦を受け、製造ラインのリーダーとしての役割を任されることになりました。

担当した管理業務は以下の通りです。

  • 衛生管理
    作業開始前の手洗いチェックリストの確認、作業中の衛生ルール(手袋交換、帽子着用)の指導。
  • 安全衛生管理
    工場内の安全ルール(機械操作時の注意点や緊急時対応手順)を新人に説明し、事故防止教育を担当。
  • 品質管理
    製造ラインでの餃子の成形ミス・焼きムラがないかを定期チェックし、発見時には原因をフィードバック。
  • 納期管理
    ラインごとの製造スケジュールを把握し、作業進捗が遅れている場合はスタッフ増員の提案を行う。
  • コスト管理
    製造中の材料ロスを減らすため、作業効率化(包餡量の標準化など)の改善提案を実施。
  • 従業員管理
    アルバイト・技能実習生を含む5〜8名のスタッフを担当し、シフト調整・出勤管理をサポート。
  • 原材料管理
    その日の製造量に合わせた皮・餡の発注数量を確認し、適切な使用量管理をサポート。

このように製造・加工だけでなく工程全体を見渡しながら指導・管理する立場として2年以上の経験を積みました。
実務記録(指導記録、衛生チェック記録、改善提案書など)を保管していたため、特定技能2号申請時にもスムーズに証明できました。

外食業の事例

事例:ファミリーレストランで副店長補佐を務めた場合

フィリピン出身のDさんは、特定技能1号でファミリーレストランにホールスタッフとして勤務開始。

勤務1年目から店長の指導のもと、副店長補佐の業務を少しずつ担当するようになりました。

担当した管理補助業務は次のとおりです。

  • 衛生管理全般
    店舗内の衛生点検リスト作成と、週1回の衛生巡回を担当。
    キッチンスタッフへの手洗い・清掃チェック指導を実施。
  • 求人・雇用に関する事務
    アルバイト求人広告の草案作成、面接スケジュール調整、採用後のオリエンテーション資料作成を補助。
  • 顧客情報の管理
    常連客へのバースデークーポン案内リストを作成し、予約管理システムの更新をサポート。
  • 会計事務管理
    毎日の売上レポート作成をサポートし、伝票ミスの修正や、現金管理の簡単なダブルチェックを担当。
  • 食材・消耗品・備品の補充・発注・数量管理
    在庫リストをもとに、ドリンク・調味料・消耗品の発注数を店長に提案し、過剰在庫の削減に貢献。

さらに、スタッフ教育係として、

  • 新人アルバイトへの接客マニュアル研修
  • ホール・キッチン合同の月例ミーティングでの司会進行

なども任され、店舗運営を支える存在となりました。

こうした幅広い店舗運営補助・指導実績により、特定技能2号(外食業)の条件を満たし、無事にステップアップできました。

特定技能2号実務経験まとめ

建設現場監督

特定技能2号は、日本で長く働きたい外国人にとって、非常に大きなチャンスをもたらす在留資格です。

在留期間の更新が無制限であり、家族帯同も認められるため、安定した生活基盤を築くことが可能になります。

ただし、取得するためには分野ごとに定められた高度な技能や、実務経験年数を満たす必要があります。

特に、指導や管理といったリーダーシップ経験が重視される分野が多いため、単なる作業経験だけでは不十分なケースもある点には注意が必要です。

これから特定技能2号を目指す方は、早めに自分の分野で求められる条件を確認し、求められる実務経験への対応や試験の準備を着実に進めていきましょう。

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この記事を書いた人

三木 雅史(Masafumi Miki) 株式会社E-MAN会長
1973年兵庫県たつの市生まれ / 慶応義塾大学法学部法学科卒
・25歳で起業 / デジタルガレージ / 電通の孫請でシステム開発
・web通販事業を手掛ける
・2006年にオンライン英会話を日本で初めて事業化
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