特定技能2号は、日本の特定産業分野において高度な技能を持つ外国人労働者が長期的に働くことを可能にする在留資格です。
2019年に導入された特定技能制度の一環として設けられ、特定技能1号の上位資格にあたります。
特定技能2号を取得することで、在留期間の上限がなくなり、家族の帯同も認められるため、外国人労働者にとってより安定した生活が可能になります。
特に、造船分野では2023年の制度改正により対象となる業務区分が拡大され、より多くの外国人労働者が特定技能2号の取得を目指せるようになりました。
本記事では、特定技能2号の概要や求められるスキル、移行要件、企業側の受け入れ要件について詳しく解説します。

造船分野における特定技能2号の業務内容

造船・舶用工業分野では、もともと6つの業務区分(溶接、塗装、鉄工、仕上げ、機械加工、電気機器組立て)が設けられていました。
しかし、最近の制度改正により以下の3つの業務区分に再編され、作業範囲も拡大されました。
※赤文字は、新たに追加された業務
特定技能2号では、特定技能1号で認められていた業務の中でも、より精密な作業や高度な技術が求められる業務に従事することになります。
また、特定技能2号の対象者は、上記の主要業務に加えて、日本人作業員が通常行う関連業務にも従事することができます。
例えば、以下のような業務が挙げられます。
- 読図作業
- 作業の工程を管理)
- 検査業務
- 機器・装置・工具の保守管理
- 機器・装置・運搬機の運転
- 資材の管理や配置
- 部品や製品の養生
- 足場の組立てと解体
- 廃材処理・清掃業務
ただし、関連業務のみを行うことは認められておらず、必ず主要業務を中心に従事することが求められます。
参考サイト:出入国在留管理庁|特定技能2号の対象分野の追加について
特定技能2号で求められるスキル
特定技能2号で造船分野に従事するためには、以下のようなスキルが求められます。
- 専門技術の習得(高度な溶接技術、機械加工技術など)
- 安全管理の知識(作業場での安全対策、設備の適切な取り扱い)
- 図面の理解力(設計図・仕様書の読解)
- チームワーク(日本人作業員との協力体制)
- 日本語のコミュニケーション能力(作業指示の理解、報告・連絡・相談)
特定技能1号と比較すると、より実務経験が豊富で、高度な技術を持つ外国人労働者が対象となります。
特定技能2号に移行するメリット
特定技能2号に移行することで、外国人労働者はさまざまなメリットを得ることができます。
- 長期間安定して働ける
-
特定技能1号の5年間の制限がなくなり、在留資格の更新が無制限にできます。
そのため、日本での長期的な就労が可能になり、企業側も長期間の人材確保がしやすくなります。
- 家族の帯同が可能
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特定技能2号では、配偶者や子供を日本に呼び寄せることができます。
これにより、外国人労働者の生活環境が安定し、仕事に集中しやすくなります。
- キャリアアップの機会が広がる
-
特定技能2号は、熟練した技能を持つ人材に与えられる資格であるため、より高度な業務に従事することができます。
これにより、企業側も優秀な人材を確保しやすくなり、労働者にとってもより良い待遇が期待できます。

特定技能2号に移行するための要件

特定技能2号の申請の手続きをするには、一定の条件を満たす必要があります。
移行方法は、以下の2つがあります。
- 実務経験の要件を満たし、特定技能評価試験または技能検定1級に合格する
- 技能実習2号から移行する
必要な実務経験
試験の受験資格として、実務経験が2年以上必要です。
特定技能2号に移行するための実務経験とは以下の業務のことをいいます。
造船・舶用工業において、複数の作業員を指揮・命令・管理する監督者としての業務
※「監督者」とはグループ長やグループリーダー等といった者をいい、実務経験とは、例えば、自らのグループの各従業員への作業指示、製作物の確認、 安全確保のための設備や作業場環境の点検、作業計画の作成、作業の進捗管 理等を行いながら、造船・舶用工業における業務に従事した経験をいう。
また、実務経験があるかどうかの証明をするために、職場で証明書を記載してもらう必要があります。
特定技能評価試験
この試験は、造船・舶用工業分野で必要とされる技術や知識を測るために行われます。
試験は、次の6つの業務区分ごとに実施されます。
- 溶接
- 鉄工
- 塗装
- 仕上げ
- 機械加工
- 電気機器組立て
試験の概要は以下のとおりです。
- 試験形式
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学科試験(筆記)と実技試験
- 試験内容
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業務区分ごとに異なる(前述の6業務区分に分かれる)
- 受験資格
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特定技能1号の在留資格を持つ者、または技能実習2号修了者
- 試験言語
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日本語(基本的な作業指示が理解できるレベルが求められる)
学科試験で業務知識の確認を行い、実技試験で実際の作業能力を評価します。
試験内容は現場での実務に即したものであり、単なる知識だけではなく、実践的な技術が求められます。
試験の合格基準
- 学科試験
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満点の60%以上が合格ライン
- 実技試験
-
験ごとに異なるが、基準を満たす作業が求められる
試験は年数回実施されるため、事前にスケジュールを確認し、十分な準備をして臨みましょう。

特定技能2号外国人を受け入れる企業側の要件

特定技能2号を取得した外国人を受入れる企業は、一定の条件を満たす必要があります。
これは、特定技能外国人が適切な環境で働けるようにするためのものであり、雇用の健全化を目的としています。
企業が満たすべき要件には、雇用形態や給与の基準、支援体制の整備、特定技能協議会への加入などが含まれます。
これらの要件を適切に理解し、遵守することが、スムーズな受け入れにつながります。
直接雇用の義務
特定技能2号の外国人を受け入れる場合、企業は直接雇用しなければなりません。
これは、特定技能1号と同様のルールであり、派遣契約や業務請負契約による採用は認められていません。
企業が直接雇用することで、雇用主が労働環境を適切に管理し、労働者の権利を保護することが求められています。
直接雇用が義務付けられている理由として、外国人労働者の労働条件の透明性を確保し、不当な労働環境を防ぐ目的があります。
企業は、雇用契約を明確にし、外国人労働者に対して適切な労働条件を提示する必要があります。
報酬・給与の基準
特定技能2号の外国人を雇用する場合、日本人従業員と同等以上の報酬を支払うことが義務付けられています。
これは、日本人と同じ業務を担当する外国人が不当に低い賃金で雇用されることを防ぐための規定です。
具体的には、以下のような給与設定が求められます。
- 日本人従業員と比較し、同等またはそれ以上の給与水準であること
- 基本給、賞与、各種手当が日本人労働者と同じ条件で適用されること
- 昇給やボーナスの制度が公平に適用されること
また、外国人労働者が日本で安定した生活を送れるよう、寮や社宅の提供、生活支援制度の整備も推奨されています。

特定技能協議会への加入
特定技能2号の外国人を受け入れる企業は、特定技能協議会に加入する義務があります。
造船・舶用工業分野においては、国土交通省が設置する協議会があり、受け入れ企業はここに登録する必要があります。
特定技能協議会の役割は以下のとおりです。
- 特定技能外国人の雇用状況の報告
- 業界内の情報共有
- 外国人労働者の労働環境の向上に向けた取り組み
協議会へ加入することで、受け入れ企業同士の情報交換ができ、外国人労働者の労働環境の改善につなげることができます。

特定技能2号造船分野のまとめ

特定技能2号は、船舶の分野に係る外国人労働者にとって、長期間日本で就労し、安定した生活を送るための重要な在留資格です。
特に造船分野では、制度改正により対象業務が拡大され、より多くの外国人労働者にとってキャリアアップの機会が広がりました。
特定技能2号に移行するためには、実務経験や特定技能評価試験の合格などが求められ、受入れ企業側も一定の条件を満たす必要があります。
企業側も適切な雇用環境を整え、外国の優秀な人材を確保するために、特定技能制度の運用をしっかりと理解し、適切な受入れ体制を整える必要があります。
今後の変更や最新情報については、出入国在留管理庁や国土交通省の資料を随時確認し、適切な対応を行いましょう。

