特定技能外国人を雇用する際、給与の設定は慎重に行う必要があります。
特定技能制度は、介護・建設・製造業・外食業などの人材不足を補うために設けられた在留資格ですが、外国人スタッフの給与は日本人と同等以上でなければなりません。
また、給与は最低賃金以上であることが必須であり、地域別最低賃金と産業別最低賃金のどちらか高い方を基準にする必要があります。
もし最低賃金を下回る給与を設定すると、雇用側が罰則を受ける可能性があり、特定技能外国人の受け入れ自体が制限されることも考えられます。
さらに、給与の決定だけでなく、割増賃金や手当・賞与の支給にも注意が必要です。
この記事では、特定技能外国人の給与を決定する際の条件や注意点を詳しく解説します。
適正な給与を設定することで、特定技能外国人が安心して働ける環境を整え、人材の定着率を向上させることができます。
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特定技能外国人の給与を決める方法は?
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特定技能外国人の給与を決める際は、法最低賃金法、労働基準法などの法令に基づいて決定する必要があります。
特定技能の給与は日本人と同等以上が必須
特定技能外国人を雇用する際、日本人と同等以上の額の給与を支払うことが求められます。
このルールがある理由は、特定技能外国人が日本国内で正当な待遇を受けるためです。
例えば、同じ会社の日本人従業員が月給25万円で働いている場合、同じ業務に従事する特定技能外国人にも同等以上の給与を支払う必要があります。
- ・賃金規定がある場合
-
特定技能外国人も同じ規定に沿って給与を決定する
- ・賃金規定がない場合
-
同じ業界や近隣地域の日本人労働者の給与の相場と比較し、適正な水準を設定する
このように、特定技能外国人の給与は、日本人と同等以上でなければならないという原則を守ることが重要です。
このルールを遵守しない場合、雇用の許可が取り消される可能性があるだけでなく、特定技能外国人の採用が難しくなることも考えられます。
特に在留資格「特定技能1号」や「特定技能2号」の取得・維持には適正な給与の設定が重要なポイントとなります。
また、特定技能制度の対象となる業務分野には介護、建設、製造業、外食業などがあり、分野ごとに平均給与が異なります。
給与を決定する際には、厚生労働省の賃金構造基本統計調査や、同じ職種の日本人の給与水準も参考にしましょう。
特定技能外国人の業界別の給与比較
特定技能外国人の給与は、業界によって大きく異なります。
各業界の給与水準を理解し、適正な給与を設定することが重要です。
業界 | 平均月収の目安 | 特徴 |
---|---|---|
介護業界 | 約21〜25万円程度 | 夜勤手当や資格手当が加算されることが多い |
建設業界 | 約23〜25万円程度 | 危険手当や技能手当が支給される場合がある |
製造業 | 約20〜22万円程度 | シフト制が多く、夜勤手当や時間外手当が重要 |
外食業 | 約22〜25万円程度 | 深夜勤務や休日手当が影響しやすい |
農業 | 約18〜20万円程度 | 季節による変動があり、住居提供がある場合もある |
例えば、建設業界は危険を伴う作業が多いため、特定技能外国人にも危険手当や資格手当が支給されることがあります。
一方で、介護業界では夜勤手当や資格手当が重要な給与要素となります。
業界ごとの給与特性を理解し、特定技能外国人に適正な給与を支払うようにしましょう。
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特定技能の給与は最低賃金以上で設定する
特定技能外国人に支払う給与は、最低賃金を下回ってはいけません。
これは、日本人労働者と同様に、特定技能外国人にも最低賃金法が適用されるためです。
最低賃金には大きく分けて「地域別最低賃金」と「特定最低賃金」の2種類があり、それぞれの基準を満たす必要があります。
- 都道府県別の地域別最低賃金
-
各都道府県ごとに設定され、地域の経済状況に応じて毎年更新される。
- 産業ごとの特定最低賃金
-
特定の業種において最低賃金が定められている。
企業は、この2つの基準のうち、高い方の最低賃金を基準に給与を設定する必要があります。
大阪府の鉄鋼業で特定技能外国人を雇用する場合
- 地域別最低賃金 1,114円
- 鉄鋼業の特定最低賃金 1,120円
となっているため、特定最低賃金1,120円を適用することになります。
最低賃金は毎年変更になるため、厚生労働省の公式情報を確認し、定期的な見直しを行いましょう。
最低賃金以下の給与で雇用するとどうなる?
最低賃金以下の給与で特定技能外国人を雇用すると、労働基準法違反となり、企業は行政指導や罰則の対象になります。
特に、企業の信頼を損なうリスクが大きく、今後外国人労働者の雇用が困難になることも考えられます。
以下のような罰則が課される可能性があります。
- 最低賃金との差額の支払い命令
- 50万円以下の罰金
- 特定技能外国人の受け入れ制限
最低賃金以下での雇用は、労使双方にとって大きなデメリットとなるため、十分気をつけましょう。
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特定技能外国人に給与を支払う際の注意点
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割増賃金の支払い
時間外労働、休日出勤、深夜労働を行った場合、特定技能外国人にも割増賃金を支払う必要があります。
これは、日本人従業員と同様に適用される制度であり、以下のような基準が定められています。
- 時間外労働(残業)
通常賃金の25%以上(1ヶ月60時間を超える場合は50%以上) - 休日労働(法定休日の勤務)
通常賃金の35%以上 - 深夜労働(午後10時〜午前5時の勤務)
通常賃金の25%以上
割増賃金の計算例
例えば、時給1,200円の特定技能外国人が深夜の時間外労働をした場合、最低1,500円(1,200円×1.25)を支払う必要があります。
休日労働が深夜に及んだ場合は、1,800円(1,200円×1.5)が適用されます。
給与の未払いが発生しないよう、適切に労働時間の管理を行いましょう。
手当や賞与を支給
特定技能外国人の給与には、手当や賞与の支給も考慮しなければなりません。
日本人従業員と同等以上の給与を支払うことが義務付けられているため、手当や賞与がある場合は、特定技能外国人にも同じように支給する必要があります。
- 通勤手当:交通費の補助
- 住宅手当:賃貸費用の一部を補助
- 皆勤手当:無遅刻・無欠勤者への報酬
- 職務手当:業務の責任に応じた手当
- 夜勤手当:深夜労働時の特別手当
例えば、日本人従業員が住宅手当を月2万円支給されている場合、特定技能外国人にも同額またはそれ以上を支給しなければなりません。
また、賞与(ボーナス)についても、日本人従業員と同じ基準で支給することが求められます。
給与に関する相談はどこでできる?サポート機関と制度の紹介
特定技能外国人や雇用企業は、給与や手続きなどについて不明点があれば、以下の機関で相談することができます。
- 出入国在留管理庁
-
在留資格や雇用条件に関する相談
- 厚生労働省の外国人雇用サービスセンター
-
労働条件や給与支払いに関する相談
- 労働基準監督署
-
最低賃金や未払い賃金に関する相談
適切な機関に相談することで、法令遵守を徹底し、トラブルを未然に防ぐことが可能です。
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特定技能外国人の給与まとめ
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特定技能外国人の給与は、日本人と同等以上であり、最低賃金を下回らないことが基本ルールです。
地域別最低賃金や産業別最低賃金を考慮し、適正な給与を設定することが企業に求められています。
また、時間外労働や休日出勤には割増賃金を支払う必要があり、手当や賞与も公平に設定しなければなりません。
万が一、企業が最低賃金以下の給与を設定したり、割増賃金の支払いを怠ったりすると、労働基準監督署の指導や罰則を受ける可能性があります。
さらに、特定技能外国人の在留資格の更新ができなくなるリスクもあるため、慎重な対応が必要です。
特定技能外国人の雇用を検討している企業は、厚生労働省の最新情報を確認し、適正な給与体系を整えることが重要です。
また、給与の決定だけでなく、社会保険料や税金の控除に関する説明もしっかり行うことで、特定技能外国人との信頼関係を築くことができます。
特定技能制度を適切に活用し、特定技能外国人が長く働きやすい環境を作っていきましょう。
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