日本では、少子高齢化の影響により、さまざまな産業で人手不足が深刻化しています。
特に、介護・建設・宿泊・外食業などでは、日本人労働者だけでは十分な人材を確保することが難しくなっています。
その解決策の一つとして導入されたのが「特定技能制度」です。
特定技能制度では、即戦力となる外国人労働者を受入れ、特定の産業分野で就労できる仕組みが整えられています。
しかし、実際に特定技能外国人を採用するには、受入れの基準や手続き、費用などをしっかり理解し、適切に進めることが重要です。
本記事では、特定技能外国人の採用の流れを詳しく解説し、費用や手続きのポイントについても紹介します。
特定技能制度を活用しようと考えている企業担当者の方は、ぜひ参考にしてください。
- 特定技能外国人の雇用に必要な要件と注意点
- 特定技能外国人を採用する流れ
- 雇用契約を作成する際の注意点
- 雇用契約締結後に必要な手続き
- 採用後に企業が実施すべき支援
![](https://nihongocafe.jp/c/wp-content/uploads/2024/12/Advantages-and-Disadvantages-of-Specified-Technical-Foreigners-300x168.png)
特定技能制度の概要
![運送業 特定技能制度の概要](https://nihongocafe.jp/c/wp-content/uploads/2025/02/Recruitment-Process.jpg)
特定技能制度の目的とは?
特定技能制度は、日本の深刻な人手不足を解消するために導入された制度です。
即戦力となる外国人労働者を受け入れ、特定の産業分野で就労できるようにすることを目的としています。
日本の人手不足と特定技能制度の必要性
日本では、高齢化や少子化の影響により、多くの産業で労働力不足が深刻化しています。
そのため、外国人を採用し、業務を円滑に進められる環境を整えることが求められています。
特定技能制度には、以下の目的があります。
- 人手不足の解消:慢性的な労働力不足に対応し、企業の生産性を維持する
- 即戦力の確保:一定の技能や日本語能力を持つ外国人を雇用し、業務の効率化を図る
特定技能制度には、「特定技能1号」と「特定技能2号」の2種類があり、それぞれ在留資格の期間や就労可能な業種、要件が異なります。
特定技能外国人の対象となる分野は16分野あります。
- 介護
- ビルクリーニング
- 工業製品製造業
- 建設
- 造船、舶用工業
- 自動車整備
- 航空
- 宿泊
- 自動車運送業
- 鉄道
- 農業
- 漁業
- 飲食料品製造業
- 外食
- 林業
- 木材産業
特定技能外国人の雇用に必要な要件と注意点
![チェックリスト 特定技能外国人の雇用に必要な要件と注意点](https://nihongocafe.jp/c/wp-content/uploads/2025/02/Recruitment-Process-2.jpg)
企業が満たすべき3つの基準
特定技能外国人を採用する企業は、単に人材を確保するだけではなく、受け入れ企業としての適正な基準を満たしている必要があります。
これは、外国人労働者が安心して働ける環境を整え、制度の適正な運用を確保するために定められたものです。
ここでは、企業がクリアすべき3つの基準について詳しく解説します。
1. 受け入れ企業自体の基準
特定技能外国人を採用する企業は、一定の法令遵守基準を満たしていなければなりません。
以下のポイントが重要となります。
外国人労働者の管理が適切に行われているかが問われます。雇用管理がずさんな企業では、新たな外国人の受け入れが許可されません。
労働基準法や最低賃金法を遵守し、外国人に適正な雇用環境を提供しているかが審査されます。例えば、過去に未払い賃金問題を起こした企業は、特定技能外国人の受け入れが難しくなります。
特定技能外国人を雇用する際、斡旋費用などを本人に負担させてはいけません。企業がこのような行為を行っていないかが厳しくチェックされます。
現金払いではなく、給与を銀行口座に振り込むことで、外国人労働者の適正な報酬支払いを保証し、透明性を確保する必要があります。
2. 雇用契約の基準
特定技能外国人と締結する雇用契約には、いくつかの厳格な基準があります。
特に重要なのは以下の点です。
外国人だからといって低賃金で働かせることはできません。
同じ業務に従事する日本人労働者と同等以上の給与を支払うことが義務付けられています。
昇給や福利厚生、労働時間の取り扱いについて、日本人と同じルールを適用することが求められます。
契約満了後、外国人が帰国する際に帰国費用を負担できない場合、企業側がその費用を負担する必要があります。
外国人労働者が母国に一時帰国することを希望した場合、合理的な範囲で休暇を認める必要があります。
3. 支援体制の基準
特定技能外国人が日本で働きながら快適に生活できるよう、企業には適切な支援体制を整えることが求められます。
労働環境や生活に関するサポートを外国人が理解できる言語で提供できるようにすることが求められます。
外国人労働者が職場や日常生活で困っていることがないか、定期的に面談を行い、適切なサポートを提供する必要があります。
初めて外国人労働者を受け入れる企業は、登録支援機関の活用が推奨されます。
これらの基準を満たすことで、企業は特定技能外国人の受け入れが可能となります。
特定技能評価試験と日本語能力試験
特定技能外国人として日本で就労するためには、特定技能評価試験と日本語能力試験の2つに合格する必要があります。
これらの試験は、特定技能制度に基づいて日本の労働環境で適切に業務を行うための基準を満たしているかを確認する目的で実施されています。
ただし、技能実習2号を修了している場合に限り、特定技能評価試験が免除されるため、採用の際には候補者がどの試験を受ける必要があるのかをしっかりと確認することが重要です。
特定技能評価試験とは?
特定技能評価試験は、特定技能1号に該当する16の特定産業分野ごとに実施される試験であり、それぞれの業務に必要な技能や知識を測るものです。
各分野において求められる試験内容は異なりますが、主に以下の2種類の形式で行われます。
- 筆記試験(ペーパーテスト):専門知識を問う内容
- 実技試験:実際の作業に関する技能テスト(一部の職種のみ)
日本語能力試験とは?
特定技能外国人として働くためには、業務上のコミュニケーションが問題なく行えることも求められます。
そのため、日本語能力試験(JLPT)または国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)に合格する必要があります。
- 日本語能力試験(JLPT)N4以上
-
日本語能力試験(JLPT)は、日本語を母語としない人向けの試験で、N5からN1までの5段階があります。
特定技能外国人として働く場合、日常会話がある程度できるレベルのN4以上が求められます。
- 国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)
-
JFT-Basicは日常生活でのコミュニケーションに必要な日本語能力を測定するテストです。
日本語能力試験よりも実施頻度が高く、海外でも受験しやすい点が特徴です。
企業が特定技能外国人を採用する際には、候補者がこれらの試験に合格しているかを確認し、証明書の提出を求めることが重要です。
![](https://nihongocafe.jp/c/wp-content/uploads/2023/10/fcd564e07e05612beddb222d648dccbf-300x168.png)
![](https://nihongocafe.jp/c/wp-content/uploads/2023/10/JFT-Basic-thumbnail-300x168.png)
特定技能外国人を採用する流れを紹介
![ステップバイステップ 特定技能外国人を採用する流れを紹介](https://nihongocafe.jp/c/wp-content/uploads/2024/09/five-steps-helping-foreign-workers-3.jpg)
特定技能外国人を採用するには、様々な手続きを踏む必要があります。
採用には多くの書類提出や審査が必要なため、適切な計画を立てることが重要です。
以下の6つのステップを順番に解説します。
特定技能外国人を採用するには、企業が法令で定められた受け入れ要件を満たす必要があります。
特に「1年以内に行方不明者や解雇者を出していない」「過去5年間、労働関連法令に違反していない」などの基準があり、これらをクリアしなければ採用はできません。
採用したい特定技能外国人を探すには、求人広告の掲載や人材紹介会社を利用する方法があります。
特定技能の試験合格者や、技能実習2号を修了した人材が対象となるため、適切な人材を見極めることが重要です。
採用候補者が決まったら、雇用契約を締結します。
この契約では、給与や労働時間、福利厚生などを明確に記載し、外国人が理解できる言語で提供することが求められます。
特定技能外国人を受け入れる企業は、生活や業務に関する支援計画を作成する必要があります。
住居の確保、日本語教育の提供、相談窓口の設置など、適切なサポート体制を整えることが求められます。
採用が決まった外国人は、在留資格「特定技能」の申請を行います。
申請には、多くの書類提出が必要であり、企業側も関連書類を準備する必要があります。
在留資格が認定されると、いよいよ入社し就業がスタートします。
ハローワークや出入国管理庁等への届け出を忘れないように気をつけましょう。
企業は雇用後も四半期ごとの報告義務があり、継続的なサポートが求められます。
このように、特定技能外国人の採用には多くの手続きが必要ですが、適切なステップを踏むことでスムーズに進めることができます。
事前に準備を進め、計画的に採用を進めましょう。
![](https://nihongocafe.jp/c/wp-content/uploads/2024/02/2-5-1-300x168.png)
雇用契約を作成する際の注意点
![書類チェック 雇用契約を作成する際の注意点](https://nihongocafe.jp/c/wp-content/uploads/2025/02/Recruitment-Process-3.jpg)
特定技能外国人を採用する際には、雇用契約の内容を適正に作成することが重要です。
契約内容が不明確だと後でトラブルの原因となるため、慎重に作成する必要があります。
また、特定技能制度では、外国人労働者が安心して働けるように、日本人と同等以上の待遇を保証することが求められています。
ここでは、雇用契約を作成する際に注意すべきポイントを詳しく解説します。
雇用契約の内容を明確にする
雇用契約には、労働条件を具体的に記載することが義務付けられています。
特に、以下の項目は契約書に明記する必要があります。
- 雇用期間
- 業務内容
- 給与額・支払い方法
- 勤務時間・休憩時間・休日
- 福利厚生・社会保険の加入状況
契約書の内容に不備があると、在留資格の申請が却下される可能性もあるため、必ず正確な情報を記載しなければなりません。
日本語と母国語の両方で契約書を作成する
特定技能外国人が契約内容を十分に理解できるように、契約書は日本語と相手の母国語の両方で作成することが義務付けられています。
外国人労働者が内容を誤解しないように、できるだけ分かりやすい表現を使うことが望ましいです。
また、契約書の翻訳に誤りがあると、労働条件に関するトラブルが発生する可能性があるため、専門の翻訳機関や登録支援機関を利用することも検討すべきです。
雇用条件に関する違法な取り決めをしない
特定技能外国人の雇用契約では、日本の労働法に違反する内容を含めることはできません。
特に以下の点に注意が必要です。
- 違約金や保証金の徴収は禁止
-
外国人労働者が途中で退職した場合に違約金を請求することや、契約時に保証金を徴収することは違法です。
- 労働時間や残業代の未払いに注意
-
特定技能外国人にも、日本人と同じ労働基準法が適用されるため、適正な給与と残業代を支払わなければなりません。
- 帰国費用の取り決めを明記する
-
契約終了後に外国人が帰国できるよう、企業側が帰国費用を負担するケースや、労働者本人が負担する場合の条件を明確に記載することが求められます。
雇用契約の作成は、特定技能外国人の受け入れにおいて最も重要なステップの一つです。
適切な契約を結ぶことで、トラブルを未然に防ぎ、円滑な雇用関係を築くことができます。
![](https://nihongocafe.jp/c/wp-content/uploads/2024/05/f9fd259376f1bb114dea573e096635c6-1-300x168.png)
雇用契約締結後に必要な手続き
![契約書に署名 雇用契約締結後に必要な手続き](https://nihongocafe.jp/c/wp-content/uploads/2025/02/Recruitment-Process-4.jpg)
特定技能外国人との雇用契約を締結した後は、企業が速やかに必要な手続きを進めることが求められます。
特に、在留資格の申請や生活支援の準備などは、早めに進めなければスムーズな就業が難しくなるため、計画的に対応することが重要です。
在留資格の申請を行う
雇用契約締結後、特定技能の在留資格申請を行うことが最優先となります。
申請の際には
- 外国人本人の書類
- 受け入れ企業の書類
- 分野の書類
の3種類の書類が必要です。
在留資格の審査には1.5~3か月程度かかるため、早めに準備を進めることが大切です。
協議会への入会手続きを行う
2024年6月以降、在留資格申請前に特定技能協議会へ入会することが義務付けられています。
企業は協議会に加入し、定められたガイドラインを遵守しなければなりません。
住居や生活サポートの準備
外国人が円滑に生活を始められるように、住居の確保や銀行口座の開設支援を行う必要があります。
登録支援機関を利用する場合は、これらの手続きを委託することも可能です。
契約締結後は、迅速かつ適切な対応を行い、外国人労働者がスムーズに就業できる環境を整えることが重要です。
採用後に企業が実施すべき支援一覧
![空港送迎 採用後に企業が実施すべき支援一覧](https://nihongocafe.jp/c/wp-content/uploads/2025/02/Recruitment-Process-5.jpg)
特定技能外国人を受け入れる企業には、雇用契約の締結後も適切な支援を継続的に行う義務があります。
これは、外国人労働者が日本で安心して働き、生活できる環境を整えるために必要な取り組みです。
支援内容は、特定技能制度に基づいて政府が定めた10項目があり、企業はこれらを適切に実施する必要があります。
ここでは、具体的な支援内容について詳しく解説します。
外国人労働者が入国する前、または雇用開始前に、労働条件や日本での生活ルールについて説明する必要があります。
- 労働時間・給与・休日などの雇用条件
- 日本の労働法や職場でのルール
- 日本の生活習慣や文化に関する基礎知識
このガイダンスは、対面またはオンラインで行うことが認められています。
外国人が日本へ初めて入国する際、または帰国する際には、企業が空港や出発地までの送迎を手配する必要があります。
- 入国時:空港から勤務先や住居までの送迎
- 帰国時:空港の保安検査場までの同行
特定技能外国人が安心して生活できるよう、住居の確保を支援しなければなりません。
- 賃貸住宅の契約サポート(保証人の手配など)
- 水道・ガス・電気・インターネットの契約手続きの支援
- 生活必需品(家具・家電など)の手配
日本での生活を円滑にするために、日常生活に関する情報提供を行います。
- 公共交通機関の利用方法
- ゴミ出しのルールや地域のマナー
- 緊急時の対応(災害時の避難方法など)
外国人労働者は、日本で働くためにさまざまな公的手続きを行う必要があります。
- 住民登録の手続き
- 社会保険や健康保険の加入
- 銀行口座の開設
外国人が職場や日常生活で日本語を理解できるように、日本語学習の機会を提供します。
- 日本語教室の紹介
- 日本語学習教材やオンライン学習プログラムの案内
職場や生活に関する相談や苦情を受け付ける窓口を設置し、適切に対応することが求められます。
- 外国人が理解できる言語での対応
- 必要に応じた助言や指導
外国人労働者が地域や職場に馴染めるように、交流の機会を提供します。
- 地域イベントや職場内の交流会の開催
- 地域住民との関係構築のサポート
企業都合で外国人を解雇する場合、新しい雇用先を見つける支援を行う必要があります。
- 転職活動の支援(求職情報の提供など)
- 推薦状の作成
- 転職までの生活サポート
3か月に1回以上、外国人労働者と面談を行い、就労状況や生活面の問題を把握することが義務付けられています。
企業は、これらの支援を適切に行うことで、特定技能外国人が安心して働ける環境を整え、長期的な雇用関係を維持することができます。
![](https://nihongocafe.jp/c/wp-content/uploads/2024/10/mandatory-support-300x168.png)
![](https://nihongocafe.jp/c/wp-content/uploads/2024/01/1-300x168.png)
支援業務は登録支援機関に委託できる
![登録支援機関 支援業務は登録支援機関に委託できる](https://nihongocafe.jp/c/wp-content/uploads/2024/10/Support-System-for-Foreign-Workers-8.jpg)
登録支援機関を利用するメリット
企業が特定技能外国人を雇用する際、自社で支援業務を行うことも可能ですが、多くの企業は登録支援機関を利用することで、効率的かつ確実に支援を実施しています。
登録支援機関を活用することで、企業の負担を大幅に軽減できるメリットがあります。
- すべての支援業務を一括で委託できる
-
登録支援機関は、政府が定める10項目の支援業務を代行することができ、企業が自ら支援業務を行う手間を省けます。
特に、住居の確保や公的手続きのサポート、定期面談の実施など、多岐にわたる支援をまとめて依頼できる点が大きな利点です。
- 専門知識を持つスタッフが対応
-
特定技能制度に関する専門的な知識を持つスタッフが支援を行うため、手続きミスのリスクを軽減できます。
特に、在留資格申請や法律に関わる対応は専門性が求められるため、経験豊富な機関に任せることでスムーズに進められます。
- 社内の負担を軽減できる
-
支援業務を自社で行う場合、専任の担当者を配置する必要があります。
しかし、登録支援機関を利用すれば、企業の人的リソースを本来の業務に集中させることが可能です。
- 法令違反を防ぐことができる
-
登録支援機関を活用することで、支援業務の不備や法律違反を防ぐことができ、行政からの指導リスクを軽減できます。
特に、報告義務や届出に関するミスを防ぐ点は大きなメリットです。
企業内で支援を行う場合の注意点
企業が登録支援機関を利用せず、自社で支援業務を行う場合、適切な体制を整えなければ支援義務を果たせなくなる可能性があります。
以下の点に注意し、準備を進めることが重要です。
- 支援責任者・担当者を選任する
-
企業は、支援業務を担当する責任者と担当者を選任する必要があります。
担当者は、外国人との定期的な面談を行い、就労状況や生活面の支援を実施しなければなりません。
- 外国人の母国語で対応できる体制を整える
-
支援を実施するためには、外国人が理解できる言語での対応が必要です。
通訳を雇用するか、翻訳ツールを活用するなど、適切なコミュニケーション環境を整えなければなりません。
- 法令を正しく理解し適切な対応を行う
-
特定技能制度に関する法律や手続きを把握し、違反がないように管理することが求められます。
定期的な届出や報告業務を怠ると、雇用資格を失うリスクがあります。
企業内で支援を行う場合、負担は大きくなりますが、コスト削減や企業独自の支援を提供できるメリットもあります。
しっかりと準備を整え、適切な体制を構築することが重要です。
![](https://nihongocafe.jp/c/wp-content/uploads/2024/07/Registered-Support-Agencies-300x168.png)
特定技能外国人の採用にかかる費用の目安
![費用 特定技能外国人の採用にかかる費用の目安](https://nihongocafe.jp/c/wp-content/uploads/2025/02/Recruitment-Process-6.jpg)
採用時に必要な主な費用
特定技能外国人を採用する際には、さまざまな費用が発生します。
企業は事前に必要な費用を把握し、予算を計画的に組むことが重要です。
特定技能外国人を採用する際に発生する費用には、企業が負担すべきものと本人が負担できるものがあります。
日本の特定技能制度では、外国人労働者に過度な費用負担を強いることを禁止しており、企業は適切な費用分担を行わなければなりません。
企業側の負担が義務付けられている費用は以下の通りです。
- 人材紹介手数料(20万~60万円程度/人)
- 送り出し機関への手数料(10〜60万円程度/人)
- 在留資格申請費用(10〜20万円程度/人)
- 住居の初期費用(敷金・礼金など)
- 支援委託費(登録支援機関を利用する場合)(2万~4万円程度/月)
- 生活オリエンテーション費用(1万~3万円程度/人)
- 契約終了後の帰国費用(外国人が負担できない場合)
渡航費(航空券代)については、本人が負担することも可能です。
ただし、企業が渡航費を負担するケースも多く、採用時に契約内容を明確にしておくことが重要です。
また、日本に住んでいる外国人を採用する場合、送り出し機関への手数料はかかりません。
外国人の採用は人材紹介の活用もおすすめ
![人材派遣会社 外国人の採用は人材紹介の活用もおすすめ](https://nihongocafe.jp/c/wp-content/uploads/2025/02/Recruitment-Process-7.jpg)
人材紹介会社の活用方法と特徴
特定技能外国人を採用する際、多くの企業が人材紹介会社を活用しています。
人材紹介会社を利用することで、必要な人材を効率的に確保できるだけでなく、採用プロセス全体をスムーズに進めることが可能です。
特に、特定技能制度に詳しい紹介会社を選ぶことで、外国人労働者の的確な選定ができ、採用後の手続きもサポートしてもらえるのが大きな利点です。
人材紹介会社を利用する場合の流れ
企業が人材紹介会社を利用する場合、主に以下の流れで進められます。
- 紹介会社の選定(特定技能に強い会社を選ぶ)
- 採用要件の確認(どの分野でどのような人材が必要かを決定)
- 候補者の紹介・選考(書類選考・面接の実施)
- 内定・雇用契約の締結
- 在留資格の申請・取得(企業または紹介会社がサポート)
- 入国・就業開始
紹介会社によっては、ビザ申請の支援や住居確保のサポートを含めたトータルサービスを提供するところもあります。
人材紹介会社の特徴とメリット
人材紹介会社を活用する最大のメリットは、企業の負担を軽減できることです。
- 幅広い人材ネットワークを活用できる
-
- 国内外に広がる人材ネットワークを活用し、企業に適した人材を紹介。
- 特定技能試験や日本語能力試験に合格している人材を事前に確認できる。
- 採用プロセスを効率化できる
-
- 採用要件に合う候補者をスクリーニングして紹介してもらえるため、企業側の手間が大幅に削減できる。
- 面接の調整や書類準備を代行することで、スムーズな採用が可能。
- 採用リスクを低減できる
-
- 一部の紹介会社では、候補者の適性や定着率を考慮したマッチングを行うため、早期離職のリスクを減らすことができる。
- 試用期間を設けることで、採用後のミスマッチを防ぐことも可能。
人材紹介会社を利用する際の注意点
人材紹介会社を選ぶ際は、以下のポイントを事前に確認することが重要です。
- 特定技能制度に詳しい会社かどうか
- 過去の実績(成功事例・紹介人数など)があるか
- 紹介手数料の料金体系が明確かどうか
- 採用後のアフターサポートがあるか
適切な人材紹介会社を選定し、活用することで、特定技能外国人の採用をスムーズに進めることができます。
自社採用との違いと比較ポイント
特定技能外国人の採用方法には、大きく分けて「人材紹介会社を活用する方法」と「自社で直接採用する方法」の2つがあります。
それぞれにメリット・デメリットがあり、企業の状況に応じて適切な方法を選ぶことが重要です。
ここでは、自社採用と人材紹介会社を活用する場合の違いを比較し、どの方法が適しているかを考えます。
自社採用と人材紹介会社の比較ポイント
項目 | 自社採用 | 人材紹介会社 |
---|---|---|
採用の手間 | 高い(求人作成・募集・選考をすべて自社で対応) | 低い(紹介会社が候補者を選定し、スクリーニングを実施) |
コスト | 低コスト(手数料不要だが、採用活動費がかかる) | 手数料が発生(年収の20~30%程度) |
人材のマッチング精度 | 企業が直接選定するため、柔軟に対応可能 | 過去の実績や適性を考慮した候補者を紹介 |
採用スピード | 遅い(応募が集まるまで時間がかかる) | 速い(既存の候補者から即座にマッチング可能) |
採用リスク | 高い(適性を見極めるのが難しい) | 低い(事前に適性診断・試用期間を設けられる) |
アフターサポート | 企業自身が対応する必要あり | 一部の紹介会社はフォローアップあり |
どちらの方法が適しているかを考える
- コストを抑えたい企業 → 自社採用が適している
- 採用活動に時間をかけることができる企業向け
- すでに特定技能外国人の受け入れ経験があり、自社で支援体制を整えられる場合
- スピーディーに採用したい企業 → 人材紹介会社の活用が適している
- 急ぎで人材を確保する必要がある場合
- 在留資格申請や支援業務の手間を減らしたい企業
企業ごとの状況に応じて、最適な採用方法を選択することが大切です。
しっかりと準備を整え、適切な体制を構築することが重要です。
熊本県の果樹園では、毎年の収穫時期にアルバイトを雇っていましたが、短期間の雇用が多いため、スタッフの入れ替わりが激しく、新しく採用するたびに研修の時間がかかるという課題がありました。特に、果樹の剪定や受粉作業など、専門的な知識が求められる作業に関しては、経験者が不足していました。
農場は、人材紹介会社を通じて、長期的に働ける特定技能の外国人を採用することを決定しました。紹介会社は、過去に農業経験のある外国人スタッフを優先的に紹介し、面接を経て採用を決定しました。また、事前に日本語研修をすることで、現場での指示の伝達が以前よりスムーズになりました。
採用後は、果樹の剪定や管理の研修を実施し、日本人スタッフがマンツーマンで指導を行いました。また、仕事のモチベーションを維持するために、定期的な面談を行い、職場の悩みや生活面での困りごとを聞く機会を設けました。人材紹介会社も継続的にサポートを行い、行政手続きや住居の手配をサポートしました。
特定技能の外国人スタッフが長期的に働くことで、毎年の研修にかかる時間やコストが削減され、果樹園の作業効率が向上しました。特に、剪定作業や受粉作業の技術が向上し、収穫量の安定化につながりました。
また、外国人スタッフが職場に定着することで、新しいスタッフが入ってきたときに経験者が指導を担当できるようになり、研修体制が強化されました。
![](https://nihongocafe.jp/c/wp-content/uploads/2025/01/94ff8c545e84d56fce5ed28ae893c57d-300x168.png)
特定技能外国人採用のまとめ
![雇用契約書 特定技能外国人の採用のまとめ](https://nihongocafe.jp/c/wp-content/uploads/2025/02/Recruitment-Process-8.jpg)
特定技能外国人の採用は、適切な計画と手続きを踏むことで、スムーズに進めることが可能です。
人材の募集・選考、雇用契約の締結、在留資格申請などの手続きを順番に進めていきましょう。
採用後も、企業には特定技能外国人の生活や就労をサポートする義務があり、適切なフォロー体制を整えることが求められます。
登録支援機関を活用することで、支援業務の負担を軽減できるため、自社で対応が難しい場合は積極的に活用するとよいでしょう。