日本語を学んでいる外国人に向けた試験の一つに、日本語能力試験(JLPT)があります。
そもそも日本語能力試験とはどのような試験で、レベル分けはどのようになっているのか疑問をお持ちになっている方もいらっしゃるでしょう。
そこで、この記事では、日本語能力試験の概要やレベル、合格基準、受験スケジュールなどの情報をまとめました。
日本語能力試験(JLPT)とは?
はじめに、日本語能力試験(JLPT)の歴史と概要、およびレベル分けや難易度について解説します。
JLPTとは?
JLPTは、日本語を母国語としない人を対象に日本語の能力を認定する試験です。
国際交流基金および日本国際教育支援協会の共催により、1984年からスタートしました。
2024年第1回(7月実施)の試験では、国内海外あわせて68,0453人が受験し、このうち約3分の2にあたる41,4605人が海外の会場で受験されています。
また、N5〜N1のどのレベルも日本国内よりも海外で多くの方が受験しており、特にN2の受験者が最も多くなっています。
JLPTの各レベルの紹介
JLPTの試験は、日本語を使って何ができるのかに焦点をあてて、最もやさしいN5から最も難しいN1までの5段階にレベル分けされています。
各レベルの難易度、求められる能力、学習目安の詳細は次のとおりです。
N5
N5は、基本的な日本語をある程度理解することができるレベルです。
ひらがな、カタカナ、日常生活でよく用いられる漢字をマスターし、定型文であれば読んで理解できます。
会話についても、日常生活でよく耳にする内容で、かつ短く、ゆっくりした速度であれば対応できます。
語彙量の目安は、約800語です。
N4
N4は、基本的な日本語を理解することができるレベルです。
よく使用される基本的な語句であれば、身近な話題や文章を読んで理解できます。
会話については、日常生活や身の回りの内容で、かつゆっくりした速度であれば聞き取れるとともにおおよその意味が理解できます。
語彙量の目安は、約1500語です。
N3
N3は、日常的な場面で使われる日本語をある程度理解することができるレベルです。
日常的な話題であれば文章を読んで理解でき、難しい文章の場合は、やさしい言葉に言い換えてもらえれば、だいたい意味を理解できるようになります。
会話については、あまり早くない会話であれば聞き取れ対応できます。
語彙量の目安は、約3000語です。
N2
N2は、国際基準(CEFR)のB2に相当し、「日常的な場面で使われる日本語の理解に加え、より幅広い場面で使われる日本語を、ある程度理解することができる」レベルです。
幅広いジャンルの日本語で書かれた文章に対応できるようになり、新聞や雑誌などでわかりやすく書かれた文章であればおおよそ理解できます。
会話については、早口でなければニュースを十分聞き取れ理解できます。
語彙量の目安は、約6000語です。
N1
N1は、国際基準(CEFR)のC1に相当し、「幅広い場面で使われる日本語を理解することができる」レベルです。
幅広いジャンルの話題、新聞や雑誌、論文、あるいは抽象的な文章も読み取れ、理解できるようになります。
会話については、早口でなければ会話やニュースを問題なく聞き取れ、要旨や論理構成まで理解できます。
語彙量の目安は、約10000語です。
試験科目および試験時間
JLPTの試験科目および試験時間は次のとおりです。
レベルにより試験科目、試験時間のいずれも異なっています。
また、解答方法は全てマークシート式です。
レベル | 試験科目<試験時間> | ||
---|---|---|---|
N5 | 言語知識(文字・語彙)<20分> | 言語知識(文法)・読解<40分> | 聴解<30分> |
N4 | 言語知識(文字・語彙)<25分> | 言語知識(文法)・読解<55分> | 聴解<35分> |
N3 | 言語知識(文字・語彙)<30分> | 言語知識(文法)・読解<70分> | 聴解<40分> |
N2 | 言語知識(文字・語彙・文法)・読解<105分> | 聴解<50分> | |
N1 | 言語知識(文字・語彙・文法)・読解<110分> | 聴解<55分> |
日本語能力試験(JLPT)の試験科目別の得点と合否基準について
ここでは、試験科目別の得点と合否基準を説明します。
試験科目別の得点
JLPTでは、N5・N4とN3〜N1で試験科目と得点が異なります。
試験科目 | 得点 |
---|---|
言語知識(文字・語彙・文法)および読解 | 120点 |
聴解 | 60点 |
総合得点 | 180点 |
試験科目 | 得点 |
---|---|
言語知識(文字・語彙・文法) | 60点 |
読解 | 60点 |
聴解 | 60点 |
総合得点 | 180点 |
合否基準一覧
JLPTの合否基準は、下記の2点です。
- 総合得点が合格点以上であること
- 各試験科目の基準点をクリアしていること
両方を満たさないと、合格とは認められません。
レベル別の、総合得点の合格点、試験科目の基準点は次のとおりです。
レベル | 総合得点の合格点 | 言語知識・読解の基準点 | 聴解の基準点 |
---|---|---|---|
N5 | 80点 | 38点 | 19点 |
N4 | 90点 | 38点 | 19点 |
レベル | 総合得点の合格点 | 言語知識の基準点 | 読解の基準点 | 言語知識の基準点 |
---|---|---|---|---|
N3 | 95点 | 19点 | 19点 | 19点 |
N2 | 90点 | 19点 | 19点 | 19点 |
N1 | 100点 | 19点 | 19点 | 19点 |
日本語能力試験(JLPT)を受験する際の申し込み手続き
ここでは、日本における個人でのJLPTの申し込みや試験当日の注意点を解説します。
なお、団体で受験あるいは海外で受験する場合は、試験を受ける国や地域の実施都市および実施機関に確認してください。
試験申し込み手続きの流れ
試験申し込み手続きの流れは次のとおりです。
実施日程を日本国際教育支援協会のホームページで確認
日本国際教育支援協会のホームページで「MyJLPT」を登録(無料)
日本国際教育支援協会のホームページで受験を申し込み、受験料を支払う
日本国際教育支援協会から受験票が届く
試験実施
日本国際教育支援協会から試験結果が届く
実施日程を日本国際教育支援協会のホームページで確認
日本国際教育支援協会のホームページで「MyJLPT」を登録(無料)
日本国際教育支援協会のホームページで受験を申し込み、受験料を支払う
日本国際教育支援協会から受験票が届く
試験実施
日本国際教育支援協会から試験結果が届く
2024年第2回の試験は、12月1日(日)に実施されますが、すでに申し込み受付は終了しており受験できません。
受験を希望される方は、最短でも2025年第1回となります。
例年どおりであれば7月に実施される予定です。
2025年2月上旬に日本国際教育支援協会により公表される実施日程を確認しましょう。
出典:日本語能力試験公式サイト
試験申し込み手続きの必要書類
JLPTは、2020年よりインターネットでの申し込みのみとなっており、書類の郵送など必要はありません。
ただし、申し込みに際し顔写真が必要となるため、あらかじめ写真かWEBカメラなどで撮影したデータ(JPEG、480×640ピクセル以上、5MB以下)を用意しておきます。
また、身体の障害などにより受験時に配慮を希望される方は、受験上の配慮申請書の提出が必要です。
試験当日の持ち物と注意点
試験当日の持ち物
試験当日に必要な持ち物や注意点を確認しておきましょう。
試験当日の持ち物は、
- 受験票
- 筆記用具(HBの鉛筆またはシャープペンシル、消けしゴム(ケースははずす))
- メモリー機能のない腕時計
- 本人確認書類(パスポート、在留カードなど)
です。
試験当日の注意点
- 試験開始時刻以降は、中に入ることができない(不合格となる)ので、開始時刻には必ず席についておきます。また、交通機関の遅れによる遅刻は認められていません。試験当日は、時間に余裕をもって行動しましょう。
- 試験時間中に、スマートフォン、スマートウォッチなど電子機器を使用すると、ただちに失格となります。ただ、電源を切るなどの理由で触れても失格となるので、試験開始前に電源を切ってバックに入れておきます。
- マークシートに解答する際、ボールペンを使用すると採点されません。必ず鉛筆またはシャープペンシルを用いましょう。
- 体や服に数字や文字が書いてある場合も不正とみなされるので注意が必要です。
日本語能力試験(JLPT):まとめ
日本語能力試験(JLPT)は、日本語を学ぶ外国人にとって、日本語能力を測定する非常に重要な試験です。
N5からN1までの5段階のレベルがあり、それぞれ文字・語彙・文法・読解・聴解の能力が総合的に測られます。
合格するためには、総合得点が合格点を超えることと、各試験科目で基準点をクリアすることの両方が必要です。
苦手な分野の学習を強化して、総合的な日本語力を身につけられるように、計画的に学習を進めていきましょう。