外国人の育成就労制度の政府方針は?技能実習・特定技能との違いや企業に求められる対応 2025 7/10 全てのコラム 日本語教育・日本語学習法 特定技能・技能実習 2025年7月10日 「育成就労制度って結局どんな制度なの?」「これまでの技能実習制度から何が変わるの?」 育成就労の政府方針について正しく理解するには、新制度の目的である「人材育成」と「人材確保」の両立、転籍緩和や日本語能力要件などの具体的な変更点、そして技能実習制度・特定技能制度との違いを把握することが重要です。 本記事では、育成就労制度の政府方針の詳細、既存制度との比較、企業・外国人材それぞれの対応ポイント、今後のスケジュールなどを詳しく解説していきます。 目次育成就労制度とは?外国人材受入れの基本方針 育成就労制度は、従来の技能実習制度に代わって2024年6月に成立した新しい外国人材受入れのための制度です。 政府は、これまでの「国際貢献」を主目的とした技能実習制度から大きく方向転換し、「人材育成」と「人材確保」を両立させる制度として位置づけています。 この制度の最大の特徴は、特定技能1号水準の技能を育成することを明確な目標とし、外国人材が日本で長期的にキャリアを形成していく道筋を示している点です。 政府は、深刻化する労働力不足への対応と同時に、外国人材の権利保護と適正な受入れ環境の整備を両立させることを目指しています。 従来の技能実習制度では、実習生の転籍が厳しく制限されていましたが、育成就労制度では一定の条件下で転籍が可能となり、外国人材の就労の自由度が大幅に向上します。 また、監理・支援体制も強化され、より適正で透明性の高い制度運営が期待されています。 あわせて読みたい 育成就労制度とは?技能実習との違いや要件をわかりやすく解説 2027年に、日本の外国人材制度が大きく改正されます。 これまで長く運用されてきた技能実習制度は廃止され、新たに「育成就労制度」が施行される予定です。 育成就労制… 育成就労制度で変わる3つの重要ポイント 政府が推進する育成就労制度において、特に注目すべき3つの重要ポイントがあります。 転籍緩和による人材流動性の向上 特定技能への円滑な移行 監理体制の強化 この変更により、企業は長期的な人材確保戦略を立てやすくなり、外国人材はより安心して日本で働き続けることができる環境が整備されます。 転籍緩和で人材の流動性を向上 技能実習制度の最大の課題であった転籍制限が、育成就労制度では大幅に緩和されます。 従来は原則として転籍が認められていませんでしたが、育成就労制度では1年経過後にやむを得ない事情がある場合や合理的な理由がある場合は転籍が可能となります。 この転籍緩和により、外国人材は自分に適した職場環境を選択する自由度が高まり、企業側も労働条件や待遇の改善により人材の定着を図る必要が生じます。 企業にとっては人材育成への投資が流出するリスクも伴うため、魅力的な職場環境の構築と継続的な人材育成が競争力アップの鍵となります。 転籍時には、受入れ企業が変更される際の適切な引き継ぎ体制の構築も求められるでしょう。 特定技能1号への円滑な移行と日本語要件の強化 育成就労制度は、特定技能1号への移行を前提とした制度設計となっています。 育成就労期間中に特定技能1号水準の技能を習得し、所定の技能評価試験に合格することで、スムーズに特定技能1号に移行できる仕組みが整備されています。 また、新制度では、入国時に日本語能力試験(JLPT)N5相当以上の日本語能力が要件として設定されます。 これは、外国人材の日本社会への適応を促進し、職場でのコミュニケーション能力を向上させることを目的としています。 企業は、外国人材の日本語学習を支援する体制を整備し、継続的な日本語能力向上のための研修を提供することが求められます。 これにより、外国人材の生産性向上と職場への定着率向上が期待できます。 支援・監理体制の強化 育成就労制度では、外国人材の保護と企業への監理・指導機能が大幅に強化されます。 新しい管理体制では、外国人材からの相談対応、不適正な受入れ企業への指導、適正な制度運営のための監視機能を担います。 外国人材は労働条件や生活面での問題について、より気軽に相談できる体制が整備され、企業側は、コンプライアンス遵守と人材育成の質向上に向けた努力が求められます。 この体制により、制度全体の透明性と信頼性が向上し、持続可能な外国人材受入れが実現される見込みです。 あわせて読みたい 育成就労における監理支援団体とは?技能実習の監理団体との違い 育成就労制度の導入に伴い、技能実習制度における「監理団体」は「監理支援機関」へと名称が変更され、その役割と許可要件が大幅に厳格化されます。 これにより、外国人… 技能実習制度と特定技能制度との違いを比較 育成就労制度を理解するためには、既存の技能実習制度と特定技能制度との違いを正確に把握することが重要です。 以下の表で、各制度の主要な特徴を比較しています。 項目技能実習制度育成就労制度特定技能制度目的国際貢献・技能移転人材育成・人材確保即戦力としての人材確保対象技能水準初心者レベル特定技能1号水準を目指す特定技能1号水準以上在留期間最長5年最長3年1号:最長5年、2号:更新可能転籍原則不可1年経過後に条件付きで可能可能日本語能力要件なし入国時N5相当以上分野により異なる家族帯同不可不可2号のみ可能特定技能への移行技能評価試験等が必要円滑な移行が可能– 育成就労制度では、就労期間中に特定技能1号水準の技能を習得し、必要な日本語能力を身につけることで、特定技能1号への移行が可能になります。 この連携により、外国人材は初心者レベルから段階的にスキルアップし、最終的には特定技能2号へと発展していくキャリアパスを描くことができます。 企業にとっても、育成就労期間中に人材を育成し、特定技能移行後は即戦力として活用できるという長期的な人材確保戦略が立てやすくなります。 あわせて読みたい 育成就労制度と特定技能制度の関係は?移行要件や企業が押さえるべきポイント 育成就労制度は、これまでの技能実習制度に代わる新たな外国人材の受け入れ制度です。制度の施行は2027年に予定されており、現在はその準備期間として関係機関が体制整… 【企業向け】育成就労制度導入で変わる外国人材受け入れの注意点と準備 育成就労制度の導入により、企業の外国人材受け入れ体制には大きな変化が求められます。 短期的な労働力確保ではなく、計画的な人材育成と適正な受入れ環境の整備に取り組む必要があります。 育成計画の策定と遵守の義務化 企業には、育成就労計画の策定と適切な実施が義務づけられます。 この計画には、技能習得のための具体的な研修内容、日本語学習支援、生活指導などが含まれ、外国人材が特定技能1号水準に到達するための道筋を明確に示す必要があります。 育成計画の実施状況は、定期的な監査の対象となり、計画未達成の場合は改善指導や受入れ停止措置が取られる可能性があります。 企業は、専門的な技能指導だけでなく、日本語教育や生活支援のための体制整備、指導者の確保と育成にも取り組む必要があります。 計画的な人材育成により、外国人材の技能向上と企業の生産性向上の両立が可能になります。 費用負担の見直しと公正な受け入れ体制の構築 育成就労制度では、外国人材の初期費用負担の適正化が重要な課題となります。 渡航費や送出し機関への費用について、企業側の負担割合が増加する可能性があり、透明性の高い費用分担の仕組みが求められます。 企業は、外国人材から不当な費用を徴収することを防ぐため、費用の内訳を明確にし、適正な受入れ体制を構築する必要があります。 また、住居の確保、生活必需品の準備、銀行口座開設支援など、外国人材の生活基盤整備についても、企業が積極的に関与することが期待されています。 あわせて読みたい 育成就労制度の問題点とは?技能実習制度との違いと新制度の課題 技能実習制度の課題を抜本的に解決すべく、2027年に導入が予定されているのが育成就労制度です。技能実習制度は、新制度の施行と同時に廃止されることが決定しています… 【外国人材向け】育成就労制度がもたらす変化と日本で働くメリット 育成就労制度は、日本で働く外国人材にとって多くのメリットをもたらします。 転籍の自由度向上とキャリアアップの機会拡大により、外国人材は自分に適した職場環境を選択し、長期的なキャリア形成を図ることができます。 転籍の自由度向上とキャリアアップの機会 育成就労制度では、1年経過後に条件付きで転籍が可能となります。 これにより、労働条件や職場環境に問題がある場合でも、適切な手続きを経て転籍することができます。 転籍は、企業側の労働条件改善や待遇向上を促進する効果が期待されます。 また、異なる企業での経験を積むことで、技能の多様化や日本語能力の向上も図られ、特定技能への移行がよりスムーズに行われることが期待されます。 外国人材は、自分のキャリア目標に応じて最適な職場環境を選択し、段階的にスキルアップしていくことが可能になります。 日本語能力向上のため支援と生活面でのサポート強化 育成就労制度では、日本語能力の向上が重要な要素として位置づけられています。 企業は、外国人材の日本語学習を支援する体制を整備し、継続的な学習機会を提供することが求められます。 これにより、外国人材は職場でのコミュニケーション能力を向上させ、より効果的に業務に従事できるようになります。 また、相談・支援体制の強化により、労働条件や生活面での問題について気軽に相談できる環境が整備されます。 不当な労働からの保護、住居や生活に関する支援、緊急時の対応など、外国人材が安心して日本で生活できるためのサポート体制が充実します。 このような支援により、外国人材は日本社会により良く適応し、長期的なキャリア形成を図ることができます。 参考:育成就労制度の概要|出入国在留管理庁 あわせて読みたい 育成就労制度を利用するメリットは?制度の特徴や注意点もわかりやすく解説 2027年の施行が予定されている「育成就労制度」は、これまでの技能実習制度に代わる新たな外国人の雇用制度として注目を集めています。 人手不足が深刻化する日本におい… 育成就労制度の今後のスケジュールと動向 育成就労制度は、2024年6月に関連法案が成立し、公布の日から3年以内に施行される予定です。 現在、政府は施行に向けた詳細な制度設計と準備を進めており、関係省庁や関連機関による協議が継続されています。 法案の成立から施行までのロードマップ 育成就労制度の施行までには、基本方針の策定、分野別運用方針の決定、外国人育成就労機構の設立準備など、多くの準備作業が必要です。 2027年の間に、段階的に制度の詳細が決定され、関係者への説明会や研修が実施される予定です。 企業や送り出し機関は、この準備期間中に新制度に対応した体制整備を進める必要があります。 特に、育成計画の策定方法、日本語教育の実施体制、適正な費用負担の仕組みなどについて、具体的なガイドラインが示される予定です。 外国人材も、新たな日本語能力要件に対応するため、事前の学習準備が重要になります。 今後の運用状況と制度見直しの可能性 育成就労制度は、施行後も継続的な評価と見直しが予定されています。 政府は、制度の運用状況を定期的に検証し、必要に応じて制度の改善や調整を行う方針を示しています。 企業は、政府や関連機関からの最新情報を定期的に確認し、制度変更に柔軟に対応できる体制を整えることが重要です。 育成就労制度の政府方針 まとめ 育成就労制度は、日本の外国人材受け入れ政策において重要な転換点となります。 従来の技能実習制度が抱えていた課題を解決し、外国人材の権利保護と企業の人材確保を両立させる新しい仕組みとして期待されています。 この制度の核心である「人材育成」と「人材確保」の目的は、企業と外国人材の双方にとってWin-Winの関係を築く可能性を秘めています。 企業は、長期的な視点で人材育成に投資し、外国人材は段階的にスキルアップしながら日本でのキャリアを形成していくことができます。 育成就労制度は、日本社会の持続可能な発展と多様性の促進に貢献する重要な制度となるでしょう。 関係者は、制度の詳細な内容を継続的に把握し、適切な準備と対応を進めることが求められます。 全てのコラム 日本語教育・日本語学習法 特定技能・技能実習 よかったらシェアしてね! 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