外国人材の雇用を検討している企業にとって、特定技能の「機械金属加工」は、日本の製造業を支える上で不可欠な技術分野であり、多くのニーズがあります。
本記事では、 機械金属加工について、具体的な仕事内容や資格取得のための試験、企業が外国人材を受け入れる際の手続き等の情報を詳しく解説します。
この記事を読めば、特定技能「機械金属加工」に関する疑問や不安が解消され、次の行動へスムーズに移れるでしょう。
特定技能「機械金属加工」とは?

特定技能とは、特定産業分野において人手不足の問題を解消するため、外国人材の受入れを可能にする在留資格です。
この制度は、2019年4月に施行され、即戦力となる外国人材を日本が受け入れるための仕組みとして注目されています。
特定技能は現在16の分野に分かれており、その中でも「工業製品製造業分野」は、日本のものづくりを支える基幹産業です。
この工業製品製造業分野の中に、「機械金属加工」という区分が設けられています。
機械金属加工分野は、自動車部品、家電製品、産業機械など、私たちの生活に不可欠なあらゆる製品の製造において、金属を加工する専門的な技術や知識を必要とします。
具体的には、材料を溶かしたり、削ったり、形を変えたり、溶接したりといった作業が含まれます。
近年、日本国内の製造業では少子高齢化による労働力不足が深刻化しており、特に高い技術を持つ人材の確保が急務です。
このような背景から、即戦力となる外国人材を特定技能「機械金属加工」として受け入れることが、日本のものづくりを維持・発展させる上で極めて重要視されています。
特定技能「機械金属加工」で従事できる具体的な仕事内容と技能

特定技能「機械金属加工」の職種で従事できる業務は多岐にわたります。
ここでは、その主要な業務区分と、それぞれの具体的な仕事内容、そして求められる技能について詳しく見ていきましょう。
【特定技能1号・2号共通】主要業務区分と関連技能
特定技能「機械金属加工」区分に含まれる業務は、以下のように細かく定義されています。
これは、工業製品製造業分野において、金属を加工し、製品を製造する上で不可欠な技術です。
| 鋳造(ちゅうぞう) | 金属を溶かし、型に流し込んで製品を作る技術。 |
|---|---|
| 鍛造(たんぞう) | 金属を熱して叩いたり、プレスしたりして形を整える技術。 |
| ダイカスト | 溶かした金属を高圧で金型に流し込み、精密な製品を短時間で大量生産する技術。 |
| 機械加工 | 金属材料を旋盤、フライス盤、研削盤などの工作機械を使って、削ったり穴を開けたりして正確な形に仕上げる技術。 |
| 金属プレス加工 | 金型とプレス機械を使い、金属板を打ち抜いたり、曲げたりして成形する技術。 |
| 鉄工 | 鉄骨や鋼材などを加工・組み立てて、構造物や機械の部品を作る技術。 |
| 工場板金 | 金属板を切断、曲げ、溶接などによって加工し、製品の筐体や部品を製作する技術。 |
| 仕上げ | 機械加工やその他の加工でできた部品の表面を研磨したり、バリを取り除いたりして、最終的な精度や外観を整える技術。 |
| 機械検査 | 完成した機械部品や製品が、設計通りの寸法や品質基準を満たしているかを確認する技術。 |
| 機械保全 | 機械が正常に稼働し続けるよう、点検、修理、部品交換などを行う維持管理の技術。 |
| 電気機器組立て | 電気部品や電子部品を組み合わせて、電気製品や電子機器を製造する技術。 |
| プラスチック成形 | 熱して溶かしたプラスチック材料を金型に流し込み、製品を成形する技術。 |
| 塗装 | 製品の表面に塗料を塗り、保護や装飾を行う技術。 |
| 溶接 | 金属部品の接合部に熱や圧力を加えて結合させる技術。 |
| 工業包装 | 製品を安全に輸送・保管するため、適切な材料と方法で包装する技術。 |
| 強化プラスチック成形 | ガラス繊維などで強化されたプラスチック材料を成形する技術。 |
| 金属熱処理 | 金属を加熱・冷却することで、硬さや強度などの性質を変化させる技術。 |
これらの業務は、それぞれ専門的な知識と技能を必要とします。
企業は、外国人材がこれらの業務のいずれかに従事する計画を立て、受け入れることになります。

特定技能「機械金属加工」の取得要件と試験対策

特定技能「機械金属加工」の在留資格を取得するためには、定められた要件を満たし、試験に合格する必要があります。
特定技能には「1号」と「2号」があり、それぞれ要件が異なります。
特定技能1号(機械金属加工)の取得要件
特定技能1号は、特定産業分野に属する相当程度の知識又は経験を要する技能を必要とする業務に従事する外国人向けの在留資格です。
在留期間は通算で最長5年です。
主な要件は以下の通りです。
- 製造分野特定技能1号評価試験に合格していること。
- 日本語能力試験(JLPT)N4以上、または国際交流基金日本語基礎テストに合格していること。
試験対策と学習のポイント
製造分野特定技能1号評価試験は、各分野の専門知識に加えて、日本語での読解力も求められます。
- 学科試験対策
- 過去問題集を繰り返し解き、出題傾向を把握しましょう。専門用語は日本語と母国語の両方で理解を深めることが重要です。
- 日本語能力対策
- 日常会話だけでなく、業務に関連する専門用語や指示を理解できるレベルの日本語力を目指しましょう。JLPTの公式教材やオンライン学習ツールを活用するのがおすすめです。
特定技能2号(機械金属加工)の取得要件
特定技能2号は、特定産業分野において熟練した技能を必要とする業務に従事する外国人向けの在留資格です。
特定技能1号からの移行が基本で、在留期間に上限がなく、要件を満たせば家族の帯同も可能になります。
主な要件は以下の通りです。
- 特定技能2号評価試験およびビジネス・キャリア検定3級、または技能検定1級(機械金属加工関連)に合格していること。
- 機械金属加工分野において3年以上の実務経験があり、かつ複数の人を管理・指導した経験があること。

特定技能「機械金属加工」の外国人材を受入れるには?

日本の企業が特定技能「機械金属加工」の外国人材を受け入れるためには、いくつかの要件を満たし、所定の手続きを行う必要があります。
受入れ企業の要件と注意点
特定技能外国人を受け入れる企業は、「特定技能受入れ機関」と呼ばれ、以下の基準を満たす必要があります。
| 法令順守 | 過去5年間に労働・社会保険・出入国管理関係法令等に違反がないこと。 |
|---|---|
| 財政状況 | 外国人材を安定的に雇用できる経営基盤があること。 |
| 支援体制 | 外国人材が日本で安心して生活・就労できるよう、適切な支援計画を策定し、実行できる体制があること。 日本語学習機会の提供 生活オリエンテーションの実施 相談・苦情への対応 住居確保の支援 その他、生活支援など |
これらの支援業務は、自社で行うか、または登録支援機関に委託することも可能です。
特に初めて受け入れる企業や、支援業務に不安がある場合は、登録支援機関の活用が推奨されます。
特定技能外国人の採用プロセス
特定技能外国人の採用プロセスは、主に以下のステップで進みます。
- 自社で直接募集するか、人材紹介会社や海外の送り出し機関を通じてマッチングを行います。
- 技能実習2号を修了した外国人材や、国内で既に特定技能の資格を持つ外国人材を採用することも可能です。
- 日本人と同等以上の報酬、労働条件であることが求められます。
- 業務内容、労働時間、賃金、休日などを明確にした雇用契約書を作成します。
- 外国人材が日本にまだいない場合、企業側が代理で、地方出入国在留管理局に「在留資格認定証明書」の交付を申請します。
- 必要な書類
- 雇用契約書
- 支援計画書
- 企業の登記事項証明書
- 決算書
- 外国人材のパスポートのコピー
- 学歴・職歴を証明する書類
- 試験の合格証明書 など
- 在留資格認定証明書が交付されたら、外国人材は自国で査証(ビザ)を申請し、日本へ入国します。
- 入国後、地方出入国在留管理局で在留カードの交付手続きを行います。
- 日本に既に在留している外国人材の場合は、「在留資格変更許可申請」を行います。
雇用後の支援義務とポイント
特定技能外国人を受け入れた企業には、外国人材が日本で円滑に生活し、業務に専念できるよう、継続的な支援を行う義務があります。
この支援は、外国人材の生活の安定と早期の職場適応を促し、離職を防ぐ上で非常に重要です。
| 生活オリエンテーションの実施 | 日本のルール、公共機関の利用方法、緊急時の連絡先などを説明します。 |
|---|---|
| 相談・苦情への対応 | 定期的な面談を通じて、仕事や生活上の悩みを聞き、適切なアドバイスや支援を行います。 |
| 日本語学習機会の提供 | 必要に応じて日本語教室の情報提供や、学習教材の手配などを行います。 |
| 住居確保の支援 | 住居探しや賃貸借契約のサポートを行います。 |
| 行政手続きの同行 | 必要に応じて、役所への手続きなどに同行し、サポートします。 |
| 定期的な報告義務 | 四半期に一度、出入国在留管理庁へ活動状況を報告する必要があります。 |
これらの支援を適切に行うことで、外国人材は安心して日本で働き続けることができ、企業にとっても長期的な労働力確保に繋がります。


特定技能の受け入れ事例を紹介

特定技能制度を活用し、外国人材を機械・金属加工分野で受け入れている企業は全国に広がっています。
以下では、実際に特定技能外国人を雇用し、戦力化や定着に成功している企業の事例をご紹介します。
それぞれの企業が抱える課題や現場の工夫も含め、現場でのリアルな取り組みが見えてきます。
トヨタグループの鉄鋼メーカーで、社員約3,000人規模のうち特定技能外国人が53名在籍しています。技能実習を自社で修了したインドネシア人やタイ人らを中心に特定技能へ移行し、鍛造工場でのプレス機による鍛造作業や製品の品質検査、電子部品工場での最終検査業務を担当しています。
特定技能外国人は技能実習生のリーダー兼ロールモデルとしても機能しており、後輩実習生に母国語で作業指導や相談対応を行うことで教育の円滑化に貢献しています。社内では人事部や指導員による日本語会話研修、社外でもOBボランティアの日本語教室参加を支援し、生活面の相談体制も整備しています。
こうした取り組みにより、特定技能社員は「即戦力」として評価されており、現場の生産性向上や若手人材の定着に効果を上げています。
バルブや大型金属構造物、油圧機器などを製造する中堅企業(社員163名)で、ベトナム人の特定技能社員37名を受け入れています。元技能実習生を中心に溶接・組立といった現場作業に従事させており、社内の外国人比率は約2割に上ります。
特定技能への移行者が多いことで、日本での生活や職場文化を理解した人材が即戦力として活躍している点が特徴です。日本人ベテラン社員が多い職場ですが、若いベトナム人社員たちは高い技能と向上心で信頼を得ており、多国籍な職場環境が社内の刺激にもなっています。
従業員20名の鋳物工場で、水道管用部品や産業機械部品の鋳造を行っています。インドネシア人とタイ人の特定技能社員7名を受け入れており、いずれも鋳造作業の経験を積んだ元技能実習生です。実習修了後に一度帰国した者から「もう一度働きたい」との要望があり、特定技能制度の開始を機に再受け入れした経緯があります。
特定技能外国人は主に鋳造工程全般を担当し、数か月ごとに原料投入→鋳造→仕上げまで工程ローテーションを組んで技能の幅を広げています。社内ではフォークリフト資格の取得支援や、適性に応じた担当業務の拡大を行い、本人の意欲を引き出す工夫をしています。
また日本語能力向上のため、週1回の社内クラスで初級者にはN5漢字を指導し、上級者向けにはN2・N3合格を目指す勉強会を曜日別に開催するなど手厚くサポートしています。社員同士で各国料理を教え合う食事会や地域の祭り参加など交流も深め、職場の一体感醸成にも努めています。
その結果、特定技能社員は日本語力が高いだけでなく業務改善の提案や実習生向けマニュアル自主作成など主体性も発揮し、将来的には全体リーダーとして期待されるまでになっています。年配の日本人社員が多い中でも外国人と和やかに協働しており、「若い外国人が高齢者を気遣ってくれる」という良好な職場関係が築かれている点も成功要因とされています。
よくある質問(FAQ)

特定技能「機械金属加工」に関して、よくある質問とその回答をまとめました。
特定技能「機械金属加工」まとめ

特定技能「機械金属加工」は、日本の製造業が抱える人手不足の解消と、外国人材のキャリアアップを同時に実現する、非常に重要な在留資格です。
この在留資格は、鋳造、機械加工、溶接といった多岐にわたる専門的な金属加工技術を対象としており、日本のものづくりを根幹から支える役割を担っています。
外国人材にとっては、日本で安定して働き、高い技術を身につけ、さらには特定技能2号へ移行することで永住や家族帯同の道も開ける大きなチャンスです。
一方、受入れ企業にとっても、優秀な外国人材を確保し、生産性を向上させるための有効な手段となります。
適切な支援体制を構築し、外国人材が安心して働ける環境を提供することが、双方にとっての成功の鍵です。
手続きについて不明な点がある場合は、各地域の出入国在留管理局や、信頼できる登録支援機関、行政書士事務所などに連絡して相談することをおすすめします。



