日本語能力試験(JLPT)のN5レベルは、初心者が日本語の基礎を学ぶ最初のステップです。
この試験に合格することで、基礎的な日本語文法や語彙を理解し、簡単な会話や読み書きができる能力が証明されます。
中でも文法は、試験合格だけでなく日常会話がスムーズにできるようになるためにも特に重要です。
この記事では、効率的にN5 文法を学ぶ方法を紹介するとともに、学習をサポートするおすすめ教材やサービスを説明します。
N5 文法の概要
N5 文法とは?
JLPT N5の試験では、日常生活で使う基礎的な文法について出題されます。
しかし、基礎的なものとはいっても初心者にとって、何が基礎的なのか、どこまで覚えるとよいのかを判断するのは、案外難しいものです。
まずは、後述する「押さえておきたい基本の文法」にあるシンプルな文型や表現を理解し、使えるようにすることを目標に学習しましょう。
N5 文法を学ぶメリット
N5 文法を学ぶことに、どんなメリットがあるのか、気になりませんか?
なんとなく会話ができればいいんじゃない?と考える方もいるかもしれません。
でも、N5レベルの文法を学ぶと以下のようなことができるようになるので、試験を受ける、受けないにかかわらず知っておくと役に立ちます。
- 挨拶が出来るようになる
- 自分の意見や意思を伝えることが出来るようになる
- 実際にあった出来事について話をすることが出来るようになる
- 会話に必要な最低限の文法を学ぶことが出来る
- 今まで学んできた「ひらがな」「カタカナ」「漢字」などをどうやって使うのかを知ることが出来る
- 試験での読解や聴解問題を解くためにも必要となる
押さえておきたい基本の文法
押さえておきたい文型は、肯定文とその派生形の否定文、疑問文、そして、日常生活でよく使われるお願いをするときに使う依頼文です。
そして、重要な文法で使う基本的な言葉と動詞の基本的な活用形を押さえておきましょう。
基本の文型
- 肯定文(〜です。~ます。)
- 否定文(〜ではない。〜じゃない。〜ではありません。~じゃありません。)
- 疑問文(肯定文+か?)
- 依頼文(~てください。)
※他にもいろいろな文型がありますので、基本の文型を押さえたら次に進みましょう。
文法で使う基本的な言葉
- 助詞:名詞や動詞と結びつけるのに使う
- 副詞:程度や心情などを表し、文の意味をより豊かに表現するときに使う
- 接続詞:語と語、節と節、文と文などをつなぐときに使う
- 接尾語:語の後ろにつけて、意味を付け加えたり、品詞を変化させるときに使う
※他にもいろいろな文法の言葉がありますが、まずは基本を押さえましょう
動詞の活用
- ます形、て形、ない形の基礎
※他にも動詞の活用形はありますが、最初は上記の活用を押さえましょう
それぞれ解説しますので、文法が苦手な方は、まず以下の内容から始めてみましょう。
基本の文型
<肯定文:〜です。〜ます。>
最もシンプルな文型です。
日常会話で誰に対しても使用でき、丁寧な表現でもあります。
たいていは「主語+動詞」で簡単な物事の説明や自己紹介をする際に使います。
- 「〜です。」簡単な物事の説明や自己紹介で使います。
(例)
これは本です。
私は学生です。など
- 「~ます。」動詞によって行動や目的地などを表現します。
(例)
電車に乗ります。
私は勉強します。など
<否定文:〜ではない。〜じゃない。〜ではありません。じゃありません。>
否定の文型として試験によく出てきますのでぜひマスターしましょう。
上記の肯定文を基にその内容を否定するための表現です。
- 「〜ではありません。」丁寧な表現の否定形です。
(例)
肯定文:それは私の傘です。
↓
否定文:それは私の傘ではありません。
<疑問文:肯定文+か?>
肯定文を基にその内容を質問する際に使う表現です。
- 「〜ですか?~ますか?」簡単な質問をする際に使います。
(例)
これは何ですか?
今夜勉強しますか?など
<依頼文:~てください>
丁寧な依頼の表現です。
動詞の活用形も学習し、日常生活でも上手に活用できるよう学習しましょう。
(例)
肯定文:窓を閉めます。
↓
依頼文:窓を閉めてください。
文法で使う基本的な言葉
文法で使う基本的な言葉として「助詞」「副詞」「接続詞」「接尾語」などがあります。
N5ではこれらの基本的な使い方を学習します。
これらをマスターすることにより、日本語表現の幅が広がり、自然な文章を作成できます。
また、日常生活でも、論理的かつ豊かな表現が可能になり、大人として自然な会話ができるようになります。
<助詞:名詞や動詞と結びつけるのに使う>
助詞は、日本語の名詞や動詞などと結びついて、文の意味や構造を分かりやすくする単語のことです。
助詞は活用しない言葉で、自立語の後について語句同士の関係を示したり、意味を付け加えたりします。
まずは、日常でもよく使う以下の助詞を使えるように練習しましょう。
(例)「が」「を」「に」「で」「へ」「と」など
<副詞:程度や心情などを表し、文の意味をより豊かに表現するときに使う>
副詞は、文の意味をより具体的に、豊かに、正確に伝えるために重要な役割を果たします。
初級レベルでは、程度や基本的な情態を表す副詞を中心に学習するのが一般的です。
(例)
「たくさん」「少し」「ゆっくり」「いきなり」「おそらく」など
<接続詞:語と語、節と節、文と文などをつなぐときに使う>
接続詞は語と語、節と節、文と文をつなぐ品詞で、文章の論理的な流れを作り出す役割を果たします。
接続詞の主な特徴は、
- 自立語であること
- 単独で用いること
- 活用しないこと
です。
(例)「だから」「しかし」「そして」「または」「ところで」など
<接尾語:語の後ろにつけて、意味を付け加えたり、品詞を変化させるときに使う>
接尾語は、語の後ろにつけて、意味を付け加えたり、品詞を変化させることができます。
その他、元の言葉から派生した新たな語を作り出す場合もあります。
(例)
「高い(形容詞)→ 高さ(名詞)」
「基本(名詞)→ 基本的(形容動詞)」
「子供(名詞)→ 子供っぽい(形容詞的な意味を付け加える)」など
動詞の活用:「ます形、て形、ない形」の基礎
動詞は、基本から形を変えて使用することが多いものです。
中でもよく使われる形が以下の3つの形「ます形、て形、ない形」です。
日常生活でもよく使われるので、練習しながら活用を体感して学習できるでしょう。
<ます形:丁寧な表現>
(例)
「話す→話します」
「見る→見ます」
「来る→来ます」など
<て形 :「て/で」で終わる形>
(例)
「話す→話して」
「見る→見て」
「来る→来て」など
<ない形:「ます形」の『ます→ない』にすることが多い表現>
(例)
「話す→話します→話さない」
「見る→見ます→見ない」
「来る→来ます→来ない」など
試験の形式
日本語能力試験のN5の場合、言語知識(文字・語彙)の問題の回答時間は20分、言語知識(文法)は読解問題と合わせて出題され、回答時間が40分、聴解問題は30分です。
文法問題の出題数は17問、読解問題の出題数は5問、合計22問の問題数を40分で解く必要があるため、集中力が必要です。
問題は選択形式で、例文の中から適切な文法や語彙を選びます。
まぎらわしい選択肢が用意されているので、何度も練習問題などを利用して、正解を選べるように学習しましょう。
例えば、日本語カフェでは「読む」「書く」「聞く」「話す」のスキルを組み合わせた練習問題がたくさん用意されているため、
試験対策にとても向いています。また、JLPTのホームページ上でも、問題例などの情報が公開されています。
積極的に活用しましょう。
\ 問題例を見てみよう! /
効率的な学習方法:N5 文法のマスター術
(1) 文型ごとに例文を作って学ぶ
学習の初期段階では、一つひとつの文型をしっかり理解することが大切です。
例えば、次のようにアプローチしましょう。
<「~は~です」を使った文型の場合>
- 「私は学生です。」
- 「この部屋は広いです。」
- 「図書館はあちらです。」
- 肯定文:私は学生です。
- 否定文:私は学生ではありません。
- 疑問文:あなたは学生ですか?
<「行く」を含む例文>
- 「明日、学校に行きます。」
- 「友達と一緒に買い物に行きます。」
どの例文も単なる暗記ではなく、実際の会話で使ったり、本やチラシ・インターネットの読み物の中で見つけたりといった練習をするとより効果的です。
できるだけ身近にあるツールを上手に活用して学習に役立てましょう。
(2) 学習スケジュールを立てる
学習スケジュールは、目標達成と継続的な学習への鍵となります。
計画を立てることで、時間を上手に使うことができるようになり、学習の習慣が身につきます。
また、学習計画を作ることで、自分の目標が明確になるため、無駄なく効率的に知識を増やすことに集中できます。
以下にN5 文法初心者向けの学習スケジュールを紹介しますので、参考にしてください。
毎日少しずつ学ぶことが、大きな成長につながることでしょう。
N5 文法初心者向けの学習スケジュール例
期間 | 実施内容 | |
---|---|---|
1~2ヶ月目 | 基礎を固める | |
目標 | 基本文型を理解し、例文作成ができる | |
具体的な 学習内容 | ・文型や文法の項目を確認する ・例文を覚える ・簡単な日本語の読み物を音読する ・自分で簡単な例文を作成する | |
3~4ヶ月目 | 応用練習する | |
目標 | 読解と聴解を練習し、文法を実践的に使えるようにする | |
具体的な 学習内容 | ・問題集やドリルを週に2~3回解く ・リスニング教材を使い、聞き取った文法を確認する ・自分で作成した例文を声に出して練習する | |
5~6ヶ月目 | 実践練習をする | |
目標 | 総復習し、試験の形式に慣れる | |
具体的な 学習内容 | ・問題文の特徴を知り、正しい選択をすることに慣れる ・ドリル問題を制限時間を設けて解く ・模擬試験を1ヶ月に2回程度実施、力試しをする ・日常生活またはオンラインツールを使い、会話練習を行う |
上記のように大まかな学習計画を立てたら、使用している教科書や動画教材などの大体のページや項目を割り振ってみましょう。
あとは日数で割ると一日あたりの学習量が算出され、個別のスケジュールができあがります。
簡単にオリジナルスケジュールができそうな気がしませんか?
ぜひ試してみてください。
おすすめ教材:N5 文法学習に役立つアイテム
N5 文法を効率的に学ぶためのおすすめ教材を以下にまとめました。
それぞれ特徴があるので、自分に合ったツールを選んで、活用しましょう。
書籍類はAmazonからの配送や書店で手軽に手に入ります。
インターネットで検索して探してみましょう。
(1) 『みんなの日本語 初級』シリーズ (スリーエーネットワーク 編著)
- 日本語の文法を体系的に学べる書籍で、教師や自学自習向けの解説が充実しています。
- 初級者向けに文型や例文が丁寧に解説されており、文法を基礎から学べます。
- 英語だけでなく、中国語版やベトナム語版など多言語対応しています。
(2) スピードマスター N5 文法 (桑原 里奈 (著), 小野塚 若菜 (著) Jリサーチ出版)
- 試験直前の対策に最適なドリル形式の教材です。
- 試験形式に慣れるため、模擬試験形式の問題を解く訓練ができます。
(3) 『Try! 日本語能力試験N5 文法から伸ばす日本語』(アスク出版)
- 初心者でも分かりやすい解説と、具体的な例文が豊富です。
- 近年、音声CDから音声ダウンロード形式に移行して使いやすくなっています。
(4) オーディオ教材
- 文法と聴解力を同時に伸ばすためのオーディオブック。
- 日本語カフェのeラーニングは、ワークシートだけでなく音声教材も充実しています。
(5) アプリ:役立つおすすめアプリ
- スマートフォンやタブレットで簡単に文法学習ができます。
- 通勤・通学中など、隙間時間を活用して学習が可能です。
日本語カフェを活用したおすすめの学習方法
「日本語カフェ」は、日本語学習者が、教室などに通わなくても実践的な学習を行えるeラーニングです。
特にN5レベルの初級学習者にとっては、音声やドリルなどが豊富にあり、仕事をしながらでも自分のペースで学習を進められる点がおすすめです。
以下におすすめポイントを紹介しますので、参考にしてください。
大人の学習者に最適なeラーニング教材
母国語の文法に関して知識を持つ大人が言語学習する場合、母国語での説明が欠かせません。
特に内容が複雑になりやすい文法では、論理的に意味が分かることで理解が深まることも多いものです。
日本語カフェの文法動画では、日本語以外に14の母国語を選んで学習できます。
また聞き取りに問題がある環境でも理解ができるよう、字幕も表示できるようになっています。
ですから、自分の理解しやすい言語を選んで学習すると、より効率よく学べるように工夫されています。
豊富な音声教材・ドリル・試験
eラーニングの中では、たくさんの場面を想定した音声教材が、ふんだんに提供されています。
家事をしているときや電車に乗っているときなど、スキマ時間に何度もリピートして聴くことにより、聴解力を養うことができます。
また、ドリルの量も豊富に用意されているうえに、テスト形式もあるため、試験に向けた力試しもできます。
試験に向けての文法学習ポイントと対策
(1) 文型を実際に使う
例文をただ覚えるだけではなく、学習した文型を日常の場面で積極的に使う練習が必要です。
会話はもちろん、文字で書いて自分で声に出して読むなど、毎日生活する中で自然な文章が定着するよう使いましょう。
(2) 試験対策に特化した反復練習
試験前には、模擬試験を数回実施して、出題形式に慣れることが大切です。
公式の問題集や市販書籍の問題集・ダウンロードサイトの問題集などを利用し、試験と同じ流れで時間を計って練習しましょう。
時間に余裕を持って問題が解けるように、解答のスピードアップが必要です。
そのためには、間違った問題を復習して正しい解答を覚えるようにしましょう。
分からなくて迷ったり悩んだりしている時間こそが、タイムロスになるからです。
(3) 試験合格のためのチェックリスト
試験直前になると不安になります。
合格のためにどのようなことに気を付けて学習すればよいかチェックリスト例を紹介しますので、このまま使用しても自分なりにアレンジしてもよいので参考にしてください。
チェック項目 | チェック欄 |
---|---|
すべての文法項目を学び、復習しましたか? | |
語彙リスト確認し、覚えていない単語を復習しましたか? | |
模擬試験を少なくとも3回以上実施しましたか? | |
リスニング教材を毎日10分以上使っていますか? | |
アプリやeラーニングなどを活用して実践練習を行っていますか? |
また、試験直前の1週間〜10日間は、以下の項目に集中するとよいでしょう。
- 語彙と文法を総復習する
→ 特に文法は、文型や助詞、動詞の活用に関してしっかり復習しましょう。
- 読解問題を1日2〜3問解く
→ 読解問題には必ず文法に関する問題がありますので、きちんと理解しましょう。
- 聴解問題を音声教材で確認する
→ 聴解問題も文法を理解していることが、重要なポイントです。
苦手な音や語尾の活用について十分確認し、集中して聴けるようにしましょう。
まとめ
N5 文法の学習は、日本語を使えるようになるための第一歩です。
この記事で紹介した学習方法やリソースを活用し、N5合格に向けて学習してみませんか?
日本文化を楽しむためだけであれば、試験の合格が必須ではありません。
しかし、正しい文法や語彙力を身につけることにより、さらに理解が深まることは言うまでもありません。
また、紹介している「日本語カフェ」のサポートを受ければ、さらに効果的な学習が可能です。
さらに、日本の会社で働きたい、特定技能制度を利用したいという外国人の中には、N4、N3とさらに上のレベルを目指す人もいるはずです。
まずはこの機会にN5合格へ向けての行動を起こし、日本語を使って本当にやりたいことができるよう、日本語のスキルを高めましょう!