2018年には100万人以上が受験した、日本語能力試験(JLPT)。人気が高い試験なので、数えきれないほど多くの対策本が出版されています。
どの本を選べば良いのか分からず、困ってしまう方も多いのではないでしょうか。
この記事では、日本語能力試験(JLPT)の学習の流れ、おすすめしたい対策本について詳しく解説していきます。
日本語能力試験(JLPT)とは?
日本語能力試験(JLPT)とは、日本語を母語としない人の日本語能力を測定する試験です。
難易度はN1からN5までの5段階で、数字が小さくなるほど難しくなっていきます。最も難易度が高いN1の合格率は30%程度です。
試験は、文字・語彙・文法・読解・聴解の分野に分けられていて、マークシート方式が採用されています。
毎年7月と12月に行われ、日本国内はもちろん、世界各国で受験できます。
日本語のレベルを測る代表的な試験ということもあって人気が高く、2018年には100万人、2019年には116万人が受験しました。
また、合格すれば、日本企業に就職しやすくなる、日本の国家試験を受験するための条件を満たせるなど、様々な恩恵を受けられます。
日本語能力試験(JLPT)学習の流れ
ここでは、日本語能力試験(JLPT)に合格するための、具体的な学習の流れについて解説していきます。
①学習計画を立てる
前述したように、日本語能力試験(JLPT)の試験範囲は広く、文字・語彙・文法・読解・聴解の分野に分かれています。
また、合格には平均して400~500時間程度の勉強時間が必要だと言われているため、長期的な学習計画を立てていく必要があります。
まずは、「〇月はこの問題集に取り組む」「〇月からは過去問を解いていく」など、月単位の学習計画を立てましょう。
その後、週ごとに「この問題集の読解分野を〇ページ解く」など、具体的に計画を立てるとスムーズに学習を進められます。
②実際の試験問題に触れる
本格的な学習を始める前に、実際の試験問題を見てみましょう。
この時点では分からなくても問題ありません。
試験問題を見て、どんな問題が出るのか、自分の苦手な分野はどこなのかを確認することに意味があります。
③自分に合う対策本を選び、繰り返し解く
試験問題を確認したら、対策本に取り掛かります。
対策本はシリーズで出版されていることが多いですが、複数のシリーズを使い分けても良いでしょう。
おすすめの対策本は後述していますが、実際に書店に出向き、1冊ずつ見てみると自分に合う対策本を選びやすいです。
どの対策本を選ぶ場合も、まずは一通り取り組んで、間違えた箇所や不安な箇所に印をつけておきます。
2回目からは、印がついている箇所を重点的に解いていきましょう。
自分の苦手な問題を繰り返し解いていくことが、合格に繋がります。
④模擬試験に挑戦する
試験が近くなってきたら、模擬試験に挑戦しましょう。
本試験の際、問題を解く順番や時間配分を考える練習になります。
模擬試験には、対策本や過去問を用いて自宅で行う「自宅受験」と、会場で行われる「会場受験」があります。
もし会場に出向けるのなら、可能な限り会場で模擬試験を受けてください。
会場受験には、自宅受験にはない下記のようなメリットがあるからです。
本試験のスケジュールや緊張を体感できる
模擬試験は本試験と同じようなスケジュールで行われますし、持ち物や事前説明も本試験と同じです。
本試験の雰囲気を体感できるので、緊張にも慣れていけます。
時間配分を意識できる
会場受験では、トイレに立つタイミングや休憩時間の過ごし方などを意識して過ごせます。
自宅受験でも問題を解く際の時間配分は考えられますが、試験の全体的な時間配分を意識できるのは会場受験だけです。
⑤模擬試験を復習する
模擬試験の結果だけを見て終わるのは、あまりにももったいないです。
模擬試験を受けたら、できるだけ早く復習しましょう。
効果的な復習の方法は以下の通りです。
模擬試験時の時間配分を分析する
まずは、模擬試験での時間配分を思い返してみましょう。
模擬試験の記憶が鮮明なうちに、「この順番で解いたらもっと時間に余裕が持てた」「この分野に時間がかかりすぎてしまった」など、思い出したことを書いて、本試験での時間配分を考えます。
解けなかった問題を解き直す
解けなかった問題を解き直し、正解できるか確認します。
正解だった場合は「解けるだけの力は持っている」ということですし、解き直しても不正解だった場合は「きちんと理解できていない」ということです。
不正解だった問題は、答えを見て何度も解き直してください。本試験で同じような問題が出ても、対応できるようになるはずです。
そして、不正解だった問題や曖昧だった問題は、解説や答えと一緒に同じノートにまとめましょう。
手間取らずに見返せるので、時間が経っても復習しやすくなります。
解けた問題を分析する
解けた問題も見直してください。「偶然正解していた」という場合もあるので、解説を見ながら見直すと効果的です。
また、「どうして解けたのか」「解けた分野はどのように勉強していたのか」も分析すると良いでしょう。
分析で見えてきた自身の傾向が、苦手な分野や問題の勉強に応用できることもあります。
その後は、本試験まで苦手分野の学習を続けましょう。
実際の試験問題に触れられる対策本
ここでは、実際の試験問題に触れられる対策本を紹介していきます。
本格的に勉強を始める前の確認に使ったり、本番直前の模擬試験に活用したりしましょう。
日本語能力試験 公式問題集
出典:amazon
実際の試験で出題された問題を掲載した、唯一の公式問題集です。
2010年以降の試験問題の中から、各級ごとに試験1回分の問題がまとめられています。
また、認定の目安や問題の構成、よくある質問も掲載されており、日本語能力試験(JLPT)を受験するなら絶対に持っておきたい1冊です。
聴解のCDとスクリプトも付属しています。
日本語能力試験 20日で合格シリーズ
出典:amazon
実際の試験問題を元にした、文字・語彙・文法の問題を、各級ごとに20回分収録しています。
効率的に合格を目指せる、実戦練習問題集です。
毎日の学習におすすめしたい対策本
ここでは、毎日の学習におすすめしたい対策本を紹介していきます。
対策本によって内容は変わってくるので、無理なく続けられそうなものを選びましょう。
日本語総まとめシリーズ
出典:amazon
各級ごとに、読解・文法・語彙・漢字・聴解の分野別で発売されています。イラストが多く、見やすい対策本です。
学習項目と練習問題は見開きで掲載されており、学習項目のページを手がかりに、練習問題を解いていく形式になっています。
また、1日ごと、週ごとに学習する分量が決められているので、1日どれぐらい勉強すれば良いのか理解しやすいです。
毎日コツコツ取り組めば、2か月程度で1周できるように作られています。1週間ごとに復習としてまとめ問題が掲載されているのも嬉しいポイントです。
日本語能力試験(JLPT)の本試験と同じ形式の問題に取り組めるので、定期的に理解度をチェックして、学びを積み上げていけます。
簡潔な問題・解説に使いやすさを感じる学習者が多いです。
新完全マスターシリーズ
出典:amazon
各級ごとに、文法・語彙・単語・漢字・読解・聴解の分野別で発売されています。
日本語総まとめシリーズに比べて解説が詳しいので、しっかりと勉強していきたい学習者におすすめのシリーズです。
このシリーズのコンセプトは、「試験突破に必要な力を着実に養成すること」そして「総合的・実践的な日本語力の向上をはかること」。このコンセプトもあってか、全体的な問題の難易度は高いです。
文法は例文と説明、練習問題から構成されています。語彙・漢字はテーマごとに分かれているので、意味も覚えていくことが可能です。聴解・読解は、本試験と同じような問題が掲載されています。
また、本試験と同じ形式の模擬試験も収録されています。
必修パターンシリーズ
出典:amazon
各級ごとに、文法・語彙・読解・聴解の分野別で発売されています。
テキストと問題集をまとめた対策本なので、基礎からの実力と実践力の養成が期待できるシリーズです。
文法は「基礎編」「対策編」「模擬試験」の3つのパートに分かれています。
基礎編では、文法の中心となる助詞や副詞、接続詞、敬語を学習。対策編では、パターン別の問題分析とポイント解説で実践力を養います。
語彙や読解、聴解もパターンごとに練習問題が収録されているため、苦手な問題パターンに絞って繰り返し学習できるのが特徴です。
文法の付録「試験に出る言葉」では、文法問題によく出る語句をチェックできます。
Try!シリーズ
出典:amazon
各級ごとに、文法・漢字・読解・聴解分野の問題が1冊に収録されています。
「何冊も対策本を買いたくない」「気軽に対策できる1冊が欲しい」と考えている学習者におすすめのシリーズです。
場面別の会話や読み物で文法の使い方をイメージし、それぞれの文法項目を説明や例文、練習でチェックしていく形式です。
読解・聴解は、本試験と同じ形式の問題が採用されています。
模擬試験も収録されているので、この1冊で全体的な対策が可能です。
スピードマスターシリーズ
出典:amazon
各級ごとに、文法・語彙・読解・聴解の分野別で発売されています。
語彙力の強化や多くの例文や練習問題に触れること、効率よく学習できることなどに重点をおいた作りの対策本です。模擬試験も収録されています。
文法では、具体的な会話や文章で表現を学習。文系が使われる場面や状況、意味、用法などをとらえられます。
多くの文法項目が収録されているので、各級の合格に必要な文法をしっかりとカバーできるでしょう。
また、難しいと言われる敬語や副詞、接続表現などが集中的に取り上げられているのも嬉しいところです。
語彙では、テーマごとに知識がまとめられており、例文はもちろん、類義語や対義語などの関連語も紹介されています。
読解では語句や表現に焦点が当てられ、聴解では本試験の出題形式に沿った豊富な練習問題が収録されています。
英語・中国語・韓国語の部分訳がついている上、解説も丁寧なので、内容理解がスムーズです。
解答時間目安が設定されているため、制限時間内に問題を解く練習もできます。
ドリル&ドリルシリーズ
出典:amazon
N5とN4は全ての分野がまとめられており、N3以上は文法・文字と語彙・聴解・読解の分野別に発売されています。
問題数が多く、回ごとに少しずつ進められるのが特徴です。
丁寧な解説と翻訳がついているので、自習に活用できます。
「とにかくたくさん問題を解きたい!」と考えている学習者におすすめのシリーズです。
日本語パワードリルシリーズ
出典:amazon
各級ごとに、文字と語彙・文法の分野別で発売されています。
他の対策本を終えたあと、本試験の対策に使うと良いでしょう。
30セットの練習問題と、効率よく学習するための集中トレーニングで構成されています。
試験と同じ形式の問題が見開きで配置されており、1日10分程度のドリルを30日続けることで1周できる仕組みです。
直前対策!模擬試験用の対策本
ここでは、模擬試験用の対策本を紹介していきます。
日本語能力試験 模擬テストシリーズ
出典:amazon
各級ごとに、模擬試験1回分と音声CDが収録されています。
本試験と同じ出題形式が採用されており、科目ごとに問題冊子を取り外すことが可能です。
また、「正答数記入表」を使えば、自分の苦手分野を把握できます。
JLPT日本語能力試験 完全模試SUCCESSシリーズ
出典:amazon
各級ごとに、購入者特典のダウンロード模試1回分を含めた4回分の模擬試験が収録されています。
1冊で4回模擬試験が受けられるため、繰り返し模試を解いて出題形式や時間配分を掴んでいくことが可能です。
解説は易しい表現で書かれているので、負担なく集中して読み進められます。
英語・中国語・ベトナム語の部分訳もついており、独学でも学習しやすい作りです。音声は無料でダウンロードできます。
付録の「試験に出る重要語句・文型200」は、本試験直前の対策に利用できます。
対策本を上手に活用して、日本語能力試験(JLPT)に合格しよう
この記事では、日本語能力試験(JLPT)の学習の流れや、おすすめの対策本について解説してきました。
具体的な学習の流れは以下の通りです。
- 勉強を始める前に、月ごと・週ごとの学習計画を立てる
- 実際の試験問題に触れ、どんな問題が出るのか確認する
- 自分が無理なく取り組めそうな対策本を選び、苦手な箇所を中心に繰り返し解く
- 本試験が近くなったら、できれば会場に出向いて模擬試験を受ける
- 記憶が鮮明なうちに模擬試験の分析と復習をして、苦手分野の学習を続ける
日本語能力試験(JLPT)に合格するためには、「模擬試験の結果に一喜一憂しない」ことが大切です。
模擬試験はあくまで模擬試験。模擬試験の点数が良くても油断はできませんし、合格点に届いていなくてもその後の頑張りで巻き返せます。
対策本と模擬試験を上手く活用して学習を進めましょう。