フィリピンからの労働者を雇用することに興味はあるけれど、どうやって送り出し機関を選べばいいのか、どんなプロセスで雇用できるのか、不安や疑問を抱えている企業も多いのではないでしょうか。
この記事では、フィリピンの送り出し機関に関する重要な情報をわかりやすく解説し、信頼できる機関の選び方とともに具体的なフィリピン人の採用プロセスを紹介します。
具体的には、以下の3つの内容を深掘りしていきます。
- 送り出し機関の基本情報と信頼できる機関を選ぶ際の具体的なポイント
- フィリピン人を採用するメリット
- フィリピン人を採用する際のステップと雇用時の注意点
この記事を読むことで、フィリピンの送り出し機関についての基本的な理解を深めるとともに、効率的にフィリピン人を採用する方法を学べます。
この記事を読めば自信を持ってフィリピンからの人材採用が進められるようになるでしょう。
フィリピン送り出し機関の基本情報
まずは送り出し機関の基本的な概要とフィリピンにおける送り出し機関の特徴について解説します。
送り出し機関とは
送り出し機関とは、海外から日本など他の国で働く労働者を送るための団体や企業を指します。
これらの機関は、海外の労働者が国外で働く際の手続きをサポートし、適正な労働条件が提供されるよう交渉する役割を担っています。
日本貿易振興機構によると、2023年10月末時点におけるフィリピンからの海外派遣労働者数は年間20万人を超え、年々増加傾向にあります。
これらの労働者は家事労働者、看護師、介護、技術職、建設業など様々な分野で活躍しています。
これは、送り出し機関を通じて海外へ労働力を供給することが、フィリピンの経済にとって重要な役割を果たしていることを示しています。
このシステムの効果は、労働者が安定した雇用を得ること、家族が経済的な支援を受けること、そしてフィリピン経済に海外からの送金が増えることにより国内経済が支えられることにあります。
このため、フィリピン政府は送り出し機関を通じた労働者の管理に非常に力を入れており、不正を行う機関には厳しい罰則が科されます。
フィリピンの認定送出機関
2017年に施行された外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律(技能実習法)により、現在はフィリピン人移住労働者省(DMW、旧POEA)によって認定された送り出し機関を介さない限り技能実習生の受け入れができなくなりました。
DMWは、労働者の権利保護と安全な労働環境の提供を目指し、送り出し機関に厳格な基準を設けて運営を監督しています。
また、同様に特定技能の制度を利用してフィリピン人を受け入れる場合にも、送り出し機関を介する必要があります。
フィリピンの送り出し機関を選ぶ際のポイント
フィリピンには現在200以上の送り出し機関が存在します。
送り出し機関の選定時に大切となるポイントについて確認していきましょう。
政府認定の有無
フィリピンの送り出し機関を選ぶ際、最も重要なポイントの一つが政府による認定の有無です。
上記の通りフィリピンでは現在、政府認定を受けていない機関を通じて技能実習生を受け入れることは出来ません。
そのため、送り出し機関検討時は、必ずフィリピン人移住労働者省(DMW)による認定を受けているかを確認しましょう。
※現在認定されている送り出し機関
送り出し機関担当者が日本語を話せるか
送り出し機関の担当者が日本語を話すことが出来るかどうかも、交渉を進める上で重要な要素と言えるでしょう。
日本語を話せない場合は、企業側担当者が英語に精通しているか、もしくは通訳を雇って交渉することになります。
送り出し機関の担当者が日本語を話すことが出来れば、連絡や交渉もストレスなくスムーズに進められるので、意外と重要なポイントです。
日本での駐在事務所の有無
日本に駐在事務所を持っているかどうかも、送り出し機関を選択する際の大きなポイントです。
駐在事務所があることで、先ほどの日本語での連絡や交渉の問題が解決される上、日本で働くフィリピン人労働者が入国後に、何か問題に直面した際に迅速な対応をすることができます。
また、日本国内におけるサポート体制が整っていることは、労働者が安心して働ける環境が提供されている証拠です。
駐在事務所は、就労ビザの手続き支援、労働環境のモニタリング、問題発生時の即時対応など、労働者のサポートの役割も担っています。
送り出し機関の規模と実績
送り出し機関が今までにどのような人材をどのくらい送出してきたのかの実績を確認することも非常に大切です。
会社側が望む人材の候補者を抱えているのか、その人材はきちんと教育がなされた人材か、また継続して受け入れを検討している場合には、安定して人材を供給できるのかなども確認する必要があります。
価格
送り出し機関の価格設定は機関によって大きく異なります。
一般的に、機関のサービス内容や提供するサポートの範囲に基づいて決定され、求人内容、職種、専門技能の要求度によっても異なります。
一概に値段が高いから質が良く、安いから質が悪いということでもないため、費用の内訳をしっかり把握し、適正かどうか判断することが大切です。
1社で判断することが難しいと感じた場合には数社を比較し、価格の妥当性について確認を行いましょう。
業務スピード
業務スピードも送り出し機関を選ぶ上で重要な要素です。
フィリピンと日本では慣習等の違いも相まって時間に対する感覚も異なります。
しかし送り出しプロセスには多くの書類作成等が含まれており、機関の対応スピードによってこちらの業務が止まってしまうこともしばしば発生します。
迅速な対応が可能な送り出し機関を選ぶことで、緊急の人材需要にも対応でき、スムーズな雇用が可能になるため、非常に重要です。
フィリピン人を採用するメリット
フィリピン人を雇用することには複数のメリットがあります。
ここではその代表的なメリットについて3点解説します。
教育レベルの高さ
2012年の教育制度改革以降、フィリピンでは初等教育6年、中等教育6年の基礎教育が行われており、これは東南アジア諸国の中でも高い水準となっています。
特に英語の教育に力を入れており、国内では英語が公用語として用いられています。
学校教育でも英語が主要な授業言語です。
このため、フィリピンから送り出される労働者は、国際的なビジネス環境でも活用できるコミュニケーション能力を備えていることが多く、人種が多様化した昨今の日本においても活躍できる場が多い傾向にあります。
国外労働への抵抗の少なさ
彼らが示す国外労働に対する抵抗の少なさも大きなメリットです。
フィリピンは世界有数の労働力輸出国であり、日本貿易振興機構によると2018年には国民の10人に1人が海外に移住しているほどです。
更にフィリピンは日本との関係が非常に良好で親日国としても知られています。
このような背景から、フィリピン人を日本で雇用することは両者共にストレスを作らず、円滑に業務を進めることができるため大きなメリットとなります。
若い労働者が豊富
フィリピンの労働市場の最大の特徴の一つは、その若さです。
フィリピン統計庁(PSA)の調査によると、2020年時点のフィリピンの平均年齢は25.3歳であり、これが国際的な労働市場での大きな強みとなっています。
日本における2020年当時の平均年齢が48.6歳(アメリカCIA発表のThe World Factbookより抜粋)であることを考えると、その若さ溢れる人口分布が伺えます。
若い労働者は新しい技術やトレンドに対応する能力が高く、学ぶ意欲も旺盛です。
これにより、彼らは様々な業界で即戦力として活躍することが可能となります。
フィリピン人採用ステップ・注意点
フィリピン人を雇用する際にはいくつかの守るべきルールや必要となる採用ステップが存在します。
雇用時には注意する点もあるため、その詳細について確認していきましょう。
フィリピン人雇用時のルール
フィリピンから労働者を日本に送り出す際には、大きく2つの独自ルールが存在し、これらを遵守することは法に則った採用活動を行うために不可欠です。
1つ目は上記で説明した「送り出し機関を通さない直接雇用の禁止」です。
一般的に海外の労働者を雇う際は現地送り出し機関の活用か、現地での直接スカウトの方法が用いられます。
しかしフィリピンでは直接スカウトを禁止しているため、雇用時には必ずDMW認定の送り出し機関を通す必要があります。
2つ目は「MWO・DMWに対して手続きを行う必要がある」という点です。
海外で働くフィリピン人の権利を守るため、企業はこれらの機関へ申請し、審査に通過する必要があります。
MWO、DMWについては次項で詳細に説明を行います。
フィリピン人雇用に関する主要機関について(DOLE、DMW(旧POEA)、MWO(旧POLO))
フィリピン人を日本で雇用する際には、重要な3つの機関がそのプロセスを監督しています。
これらの機関は、労働者の権利を守り、国際的な雇用基準に従った適切な処理を保証する役割を果たしています。
具体的な採用ステップの前に、各機関の役割について解説します。
DOLEは、フィリピンの労働政策を制定し、実行する責任を持つ政府機関です。
この機関は、労働者の権利と福利を保護し、雇用の機会を提供するためのさまざまなプログラムを実施しています。
海外で働くフィリピン人労働者に対しては、彼らが安全な環境で働けるように規制と支援を行います。
雇用したフィリピン人に対し不利益となる問題が発生した場合、この機関から企業に対し対応を要求する場合があるため企業側はしっかり認識しておく必要があります。
DMWは、海外で働くフィリピン人の福祉を守るための主要な機関です。
この機関の主な役割は、海外労働市場でフィリピン人の雇用を促進し、保護することです。
日本の企業がフィリピン現地からフィリピン人を雇用する場合、DMWの審査を通過していることが必要です。
また、前述の通り適切な送り出し機関を認定する重要な役割も担っています。
MWOは、フィリピン人労働者の保護と支援を目的とした各国の出張事務所で、日本では東京と大阪のフィリピン大使館内に所在しています。
これらの事務所は、フィリピン人労働者が適切な労働条件のもとで働いているかを確認し、労働者が直面する問題に対処するための支援を提供します。
また、労働者が自国法だけでなく、働いている国の法律にも適合するために指導も行います。
日本企業がDMWの審査を受けるためには、まずはこのいずれかの出張所で審査に通過する必要があります。
フィリピン人雇用時の流れ
フィリピン人を日本で雇用する際のプロセスは、多くのステップを含んでおり、これを理解することは雇用主にとって非常に重要です。
ここでは、フィリピン人を採用するための具体的な手順を説明します。
DMWのWebサイトを活用し、DMWで認定された送り出し機関と契約を結びます。
東京または大阪に位置するMWOに必要な書類を提出し、登録手続きを行います。
書類審査通過後、MWOにて面接を受けます。
面接通過後、MWOからの許可書類を受け取り、その書類を現地の送り出し機関へ送付します。
送り出し機関はDMWに書類を提出し、承認を得ます。
※承認されるとDMW認定印が押された書類が返送されます。
送り出し機関はフィリピン国内で人材を募集し、候補者と面接を行います。
日本の受け入れ企業は内定者と雇用契約を締結し、出入国在留管理庁へ在留資格認定証明書の交付申請を行います。
日本の受け入れ企業は在留資格認定証明書を現地の採用予定の労働者に送付します。
労働者は在留資格認定証明書とパスポートを用いてビザを申請します。
ビザが発行された労働者は、送り出し機関にて健康診断などの出国前手続きを行った後、海外雇用許可証を取得して出国の準備を整えます
フィリピン人採用における注意点
フィリピンから労働者を採用する際には、多くのメリットがありますが、いくつかの重要な注意点もあります。
これらを理解し、対策を講じることが成功への鍵です。
送り出し機関への手数料が高い
前述の通り、フィリピンから労働者を雇用する際は送り出し機関を通す必要があります。
そして送り出し機関の利用には候補者の募集、選定、必要な訓練、医療検査、ビザ申請手続きなど様々な手数料が発生します。
この費用は決して安価ではなく、1人あたり数十万円になることが一般的です。
また、MWOやDMWへの申請時には認定時や書類公布時に各種手数料が発生するため、その点についても留意しておくことが大切です。
すべての送り出し機関が安全ではない
フィリピンの送り出し機関は多岐にわたりますが、中には詐欺的な活動を行う悪質な機関も存在します。
正規のライセンスを持たない機関が提供する「安価な」労働力に惹かれることなく、DMWによって認可された信頼できる機関を選定することが不可欠です。
まとめ:フィリピン送り出し機関ガイド
フィリピンの送り出し機関について詳細に解説したこの記事を通じて、フィリピン人の採用プロセス、送り出し機関の選び方、そして採用する際のメリットや注意点を理解していただけたと思います。
以下に、この記事の主なポイントをまとめます。
- 送り出し機関の選定ポイント
DMW認定を受けていること、担当者が日本語が話せるかどうか、日本に駐在事務所が有ること、送出実績があること、価格が妥当であること、業務スピードが早いこと
- フィリピン人採用のメリット
教育レベルが高い、国外労働に抵抗が少ない、若い労働者が豊富
- フィリピン人の採用ステップ
MWOやDMWでの審査通過後にDMWに認可を受けた送り出し機関を利用することが必須
- 採用プロセスと注意点
送り出し機関の手数料や安全性の確認が必要
フィリピンからの労働者を採用する際には、これらのポイントを参考にして、信頼できる送り出し機関を慎重に選ぶことが重要です。
また、送り出しカフェのような送り出し機関の紹介会社を利用することにより、より効率的に送り出し機関選びをすることが可能になります。
適切な選択と準備を行うことで、採用プロセスがスムーズに進み、双方にとって有益な結果をもたらすでしょう。