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育成就労制度の職種はどうなる?制度の目的や技能実習の経過措置についても解説

育成就労 職種

日本の労働市場では、少子高齢化の進行により、さまざまな産業分野で深刻な人手不足が続いています。

特に介護、建設、製造業といった現場では、若年労働者の確保が難しくなっており、業務の継続や現場の維持そのものが大きな課題となっています。

こうした状況を受けて、政府は外国人材の受け入れ体制を見直し、より実践的かつ計画的に人材を育成・活用するための新たな在留資格として「育成就労制度」の導入を進めています。

育成就労制度は、これまで運用されてきた技能実習制度の課題を改善し、特定技能制度と連携することで、外国人材と受け入れ企業の双方にとって、より安定的で持続可能な仕組みを構築することを目指しています。

この記事では、育成就労制度の主なポイントや対象となる職種、技能実習の経過措置等について詳しく解説します

目次

育成就労制度の目的と背景

建設現場の作業員

日本では少子高齢化の影響により、多くの業種で深刻な人手不足が続いています。

こうした状況を受け、政府は外国人材を計画的に育成・活用する新たな制度として、育成就労制度の導入を進めています。

育成就労制度の目的

育成就労制度の目的は、外国人労働者を計画的に育成し、将来的に特定技能として活躍できる人材を確保することです。これにより、受け入れ企業は長期的に安定した労働力を確保しやすくなります。

背景には、日本国内の深刻な人手不足があります。特に製造業や介護、建設業などの現場では、若年層の労働者が減少しており、現場の維持が難しくなっています。

これを補うためには、外国人材の力を借りる必要があります。

育成就労制度では、あらかじめ日本語や業務に関する基礎的な教育を行い、段階的にスキルアップさせることで、現場に適応しやすい人材を育てる方針です。

このように、短期的な労働力の補充にとどまらず、長期的なキャリア形成を視野に入れている点が特徴といえるでしょう。

技能実習制度の課題

技能実習制度には、制度設計と実際の運用の間に大きなズレがあることが課題となっていました。

技能実習制度は、本来は「技能移転による国際貢献」を目的としていましたが、実際には人手不足を補うための労働力供給の手段として利用されているのが現状です

また、実習生の転職が制限されており、職場での不当な扱いから逃れられないケースも少なくありませんでした。

このような制度的な問題に対処するためにも、より柔軟で実用的な仕組みが求められていました。

育成就労制度はいつから?

育成就労制度は、2027年の施行が予定されています

2024年6月の法改正を受けて創設されましたが、正式な運用開始までは一定の準備期間が設けられています。

現在は、主務省令や分野別の方針策定が段階的に進められており、順次詳細が発表される見込みです。

なお、制度が開始されるまでの間に、受け入れを希望する企業は最新情報を継続的に確認し、準備を進めておくことが重要です。

とくに、外国人材の教育体制や就労支援の仕組みについては、早めの整備が求められるでしょう。

育成就労で対象となる職種

航空分野

育成就労制度で受け入れが想定されている職種は、原則として特定技能1号の対象分野と一致させる方針です

これにより、外国人労働者は育成期間を経てスムーズに「特定技能」へ移行しやすくなると期待されています。

育成就労で対象となる予定の分野

現時点で育成就労制度の対象となると見られているのは、特定分野1号の対象となっている以下のです。

16分野
  1. 介護
  2. ビルクリーニング
  3. 工業製品製造業
  4. 建設
  5. 造船・舶用工業
  6. 自動車整備
  7. 航空
  8. 宿泊
  9. 自動車運送業
  10. 鉄道
  11. 農業
  12. 漁業
  13. 飲食料品製造業
  14. 外食業
  15. 林業
  16. 木材産業

ただし、国内での育成になじまない分野については、対象外となるとされています。

したがって、今後設定される分野別運用方針や省庁の発表を注視しておくことが重要です

参考:育成就労制度の概要|出入国在留管理庁・厚生労働省

技能実習の職種のうち対象外になるもの一覧

現在、技能実習の対象職種は以下のようになっています。

技能実習の職種
引用:技能実習制度 移行対象職種・作業一覧(91職種168作業)|厚生労働省

上記の職種のうち、現時点で育成就労で対象外となる職種は以下の通りです。

ただし、今後の特定技能の業務範囲の拡大や新たな産業分野の追加に伴い、将来的に育成就労の対象産業分野に含まれる可能性もあります。

スクロールできます
【漁業分野】
職種作業
漁船漁業棒受網漁業
スクロールできます
【建設分野】
職種作業
さく井パーカッション式さく井工事
ロータリー式さく井工事
冷凍空気調和機器施工冷凍空気調和機器施工
建具製作木製建具手加工
石材施工石材加工
石張り
タイル張りタイル張り
サッシ施工ビル用サッシ施工
防水施工シーリング防水工事
ウエルポイント施工ウエルポイント施工
築炉築炉
スクロールできます
【その他の分野】
職種作業
紡績運転前紡工程
精紡工程
巻糸工程
合ねん糸工程
織布運転準備工程
製織工程
仕上工程
染色糸浸染
織物・ニット浸染
ニット製品製造靴下製造
丸編みニット製造
たて編ニット生地製造たて編ニット生地製造
婦人子供服製造婦人子供既製服縫製
紳士服製造紳士服製造
下着類製造下着類製造
カーペット製造織じゅうたん製造
タフテッドカーペット製造
ニードルパンチカーペット製造
帆布製品製造帆布製品製造
布はく縫製ワイシャツ製造
座席シート縫製自動車シート縫製
家具製作家具手加工
印刷オフセット印刷
グラビア印刷
製本製本
プラスチック成形ブロー成形
紙器・段ボール箱製造印刷箱打抜き
印刷箱製箱
貼箱製造
段ボール箱製造
陶磁器工業製品製造機械ろくろ成形
圧力鋳込み成形
パッド印刷
リネンサプライリネンサプライ
コンクリート製品製造コンクリート製品製造
宿泊接客・衛生管理
RPF製造RPF製造
鉄道施設保守整備軌道保守整備
ゴム製品製造成形加工
押出し加工
混練り圧延加工
複合積層加工
空港グランドハンドリング航空貨物取扱
客室清掃

技能実習の経過措置

技能実習生の文字が書かれた積み木

技能実習制度には経過措置が認められており、育成就労制度が施行された後も、一定の条件を満たせば引き続き技能実習を行うことが可能です

ただし、技能実習制度のルールが適用されるため、新たに育成就労制度に移行するわけではありません。

また、施行後に技能実習を開始することには制限があります。

技能実習の経過措置
引用:育成就労制度の概要|出入国在留管理庁・厚生労働省

以下のようなケースの場合に、引き続き技能実習を継続することが認められています。

制度の施行日より前に技能実習を開始している

育成就労制度の施行日よりも前にすでに日本へ入国し、現時点で技能実習を行っている場合は、施行日を過ぎてもそのまま技能実習を継続することができます

この場合、実習内容や計画はあくまでも技能実習制度に基づいて運用されるため、新制度に切り替わることはありません。

企業や監理団体にとっては、すでに実習が始まっていることから、大きな変更なく制度終了まで実施できる点がメリットといえるでしょう。

ただし、今後の人材受け入れ計画を立てる際には、新制度の内容も踏まえた見直しが必要です。

施行日前に技能実習計画の認定申請を行っている

育成就労制度の施行日前に技能実習計画の認定申請を済ませているケースです。

この場合、申請された技能実習計画に基づき、施行日以降でも技能実習生としての入国が認められる可能性があります。

ただし、実習の開始時期は、施行日から3か月以内である必要があります

この経過措置により、急な制度変更によって受け入れ予定の人材が来日できなくなるといった事態を防ぐことができますが、いずれは育成就労制度への対応が必要になります。

育成就労制度の主なポイント

ポイントを説明する管理職の男性

育成就労は、技能実習に代わる新たな制度であり、職種のほかにも以下のような点が違います。

日本語についての要件

育成就労制度では、日本語能力試験のN5に合格するか、出入国在留管理庁が認定する日本語教育機関で、N5相当の日本語講座を受講することが必要となる見込みです

また、育成就労から特定技能1号へ移行する際には、日本語能力試験のN4に合格する必要があるため、さらなる日本語能力の向上が求められます。

転籍についての変更

これまでの技能実習制度では、原則として転籍(他の受入れ機関への移動)は認められておらず、実習生が不適切な労働環境に置かれていたとしても、自由に職場を変えることができないという大きな課題がありました。

このため、労働環境や待遇に問題があっても、実習生が声を上げにくい構造が存在していたのが現実です。

育成就労制度ではこうした課題に対応するため、転籍のルールが見直され、大幅に緩和される予定です。

やむを得ない事情がある場合に限定されていた転籍について、その対象範囲を明確化し、転籍の判断や手続きがより柔軟に行えるようになります

さらに、本人の意思による転籍も一定の条件のもとで可能となり、働く側の選択肢が広がることが期待されます。

監理・支援体制の見直し

育成就労制度では、制度全体の透明性と公正性を高めるため、監理・支援体制の強化も重要なポイントとして位置づけられています。

これまでの技能実習制度においては、監理団体と受入れ機関の間に癒着や不適切な関係が指摘されるケースもあり、制度の信頼性に疑問が持たれることがありました。

これに対し、育成就労制度では、外部監査人の設置を義務づけるなど第三者によるチェック体制が導入される予定です

これにより、不正や不透明な運用を未然に防ぎ、制度の健全性を担保することが目的です。

さらに、受入れ機関と密接な関係にある役職員の関与を制限するなど、監理支援機関(現在の監理団体に代わる新たな組織)の独立性と中立性を確保するための措置も講じられます。

こうした見直しにより、外国人材が安心して働ける環境づくりが推進され、受入れ機関側にもより適切な対応が求められることになります。

参考:改正法の概要(育成就労制度の創設等)|法務省

育成就労制度の職種|まとめ

育成をイメージした植物の苗

育成就労制度は、技能実習制度の問題点を改善し、特定技能制度と連携しながら外国人材を計画的に育成・活用するための新しい制度です

この制度では、日本語能力に関する要件が強化されており、入国時には日本語能力試験N5相当の語学力が求められるほか、将来的に特定技能1号への移行を見据えたさらなる日本語力の向上も必要となります。

また、従来は原則として認められていなかった転籍が、一定の条件を満たせば可能になるなど、制度運用に柔軟性が持たされているのも特徴です。

さらに、監理・支援体制についても、公正性や透明性の確保を目的に外部監査の導入や関係者の関与制限などが盛り込まれており、制度全体の信頼性を高める設計となっています。

対象となる職種は特定技能1号の分野に準じており、一部の技能実習職種は対象外となりますが、今後の見直しによって拡大される可能性もあります。

育成就労制度は2027年の施行が予定されており、それまでは現行の技能実習制度に一定の経過措置が設けられています。すでに技能実習を開始している場合や、施行日前に計画の認定申請を行っているケースでは、引き続き技能実習制度の枠内での受け入れが可能です。

新制度の施行に向けて、受け入れを検討している企業や関係機関は、制度の詳細な運用方針や最新情報に常に注意を払い、外国人材の教育体制や就労支援の整備を早めに進めていくことが求められます。

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この記事を書いた人

三木 雅史(Masafumi Miki) 株式会社E-MAN会長
1973年兵庫県たつの市生まれ / 慶応義塾大学法学部法学科卒
・25歳で起業 / デジタルガレージ / 電通の孫請でシステム開発
・web通販事業を手掛ける
・2006年にオンライン英会話を日本で初めて事業化
・2019年外国人の日本語教育を簡単、安価にするため
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