日本の農業分野では、従事者の高齢化や後継者不足が深刻化しています。
この人手不足の解決策として、専門的な技能を持つ外国人材の活躍に、日本社会から大きな期待が寄せられています。
中でも新たな在留資格「特定技能2号」は、熟練した技能と豊富な実務経験を持つ外国人にとって、日本国内での長期的なキャリアアップと安定した雇用を可能にする在留資格として、各方面から注目されています。
本記事では、農業分野における特定技能2号に焦点を当て、その制度概要、業務内容、申請に必要な要件、試験の詳細、手続きの流れ等について詳しく解説します。
日本の農業界でリーダー人材として活躍したい外国人の方、特定技能2号に関心のある農業関係者の方はぜひお読みください。


農業分野の特定技能2号とは

特定技能2号とは
特定技能2号は、特定の産業分野において、熟練した技能を要件とする外国人のための在留資格です。
特定技能 1号と比較すると、より高度な専門性と豊富な実務経験が必要とされ、現場の管理業務を担うことも可能となります。
特筆すべき点として、在留期間更新に上限がない点が、特定技能2号の大きな特徴として挙げられます。
これにより、外国人は日本国内で長期的なキャリア形成を実現することが可能となります。
加えて、特定技能2号の在留資格を持つ者(特定技能2号資格者)は、一定の要件を満たす場合、配偶者および子どもの帯同が許可されます。
家族の帯同は特定技能1号には認められていないメリットであり、家族と共に日本での生活を希望する外国人材にとっては、非常に大きなインセンティブとなります。
さらに、特定技能2号の在留資格で一定期間日本国内で業務に従事した後には、永住許可申請を行う道も開かれます。
もっとも、特定技能2号の在留資格を取得するためには、技能水準を測定する所定の試験に合格することと、十分な実務経験の証明が必須要件となります。
この要件をクリアすることで、特定技能2号資格者は、受入れ企業・事業者にとって即戦力として大いに期待できる人材と評価されるでしょう。
特定技能制度の詳細や運用状況については、農林水産省のwebサイト等で確認することが可能です。

特定技能2号 農業分野の業務内容
農業分野における特定技能2号では、業務区分が「耕種農業」と「畜産農業」の二つに分類されており、各区分においてより専門性の高い業務に従事することが求められます。
特定技能1号とは異なり、単純な農作業や畜産作業のみならず、現場管理や経営管理業務への関与も可能となる点が、特定技能2号の大きな特徴です。
特定技能2号の農業分野においては、単なる労働者としてではなく、農場経営や生産管理に深く関与することが強く期待されています。
これにより、農業現場におけるリーダーシップを発揮し、日本の農業の発展に貢献する人材となることが期待されます。
その一方で、高度な技能と豊富な実務経験が要件として要求されるため、技能測定試験合格に向けた十分な準備と、実務経験の着実な蓄積が特定技能2号取得には不可欠となります。
このように、特定技能2号の農業分野は、単なる労働力確保策に留まらず、日本の農業の発展を牽引する重要な人材育成を目的とした制度であると評価できるでしょう。
特定技能制度の利用は、農業経営の効率化や高度化を目指す上で、有効な選択肢となりえます。
- 耕種農業の業務内容
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耕種農業区分では、主に種子から育成し、作物を耕作し、栽培管理および収穫に関わる専門的な作業を担当します。
以下のような業務が内容として含まれます。
- 土壌改良や肥料散布作業
- 種子播種や苗の育成管理
- 栽培用資材および機械器具の操作、管理
- 収穫物の選果・調整・貯蔵・販売、出荷準備作業
- 農業現場における安全・衛生管理
- 管理業務(農場経営管理、品質管理、外国人材育成支援等)
特定技能2号資格者は、上記のような作業に加えて、作業工程全体の管理や、作業員への指導・教育といった業務も担当します。
これらの業務を通じて、農場の効率的な経営・運用に貢献することが、特定技能2号資格者に期待される役割です。
- 畜産農業の業務内容
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畜産農業区分では、家畜の飼養管理や畜産物の生産に関わる専門的な業務に従事します。
以下のような業務が内容として含まれます。
- 家畜への給餌や健康状態の管理
- 飼育環境の維持管理 (衛生管理を含む)
- 畜産物の集荷・選別・販売、出荷作業
- 畜産現場における安全・衛生管理
- 管理業務(農場経営管理、品質管理、外国人材育成支援等)
特定技能2号資格者は、これらの業務遂行に加え、より効率的な生産体制を構築するための管理業務にも携わります。
特に、家畜の健康管理や生産物の品質管理においては、専門的な知識と豊富な経験が不可欠です。

特定技能2号 農業分野の在留資格申請に必要な要件

特定技能2号の在留資格を申請するためには、以下の2つの要件を満たす必要があります。
実務経験
特定技能2号の農業分野で在留資格を申請するためには、一定水準以上の実務経験が要件として求められます。
具体的には、下記のいずれかの要件を満たすことが求められます。
- 2年以上の作業工程管理または作業員指導の実務経験を有すること
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例えば、農業法人や畜産農場において、他の従業員に対し指導・監督を行いながら業務を遂行した経験などが該当します。
要件として求められるのは、単に農作業や畜産作業をこなすだけでなく、現場管理者としての役割を担った実績です。
- 農業分野における3年以上の実務経験を有すること
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この要件は、作業員への指導や管理業務の経験がなくとも、農業または畜産農業分野での実務経験が3年以上あれば、申請資格を満たすものとします。
例として、耕種農業の現場で3年間野菜や果樹の栽培に従事した場合や、畜産農場で3年以上家畜の飼養管理業務に従事した場合などが該当します。
これらの実務経験は、日本国内での経験に限らず、外国での経験も一定の条件下で認められる場合があります。
ただし、実務経験を証明する書類の提出が必須であり、原則として日本語で記載された書類を準備する必要があります。
2号農業技能測定試験に合格
特定技能2号の在留資格を得るためには、2号農業技能測定試験への合格が必須要件となります。
この試験は、特定技能1号の試験とは異なり、より専門的な知識と高度な管理能力が評価される内容となっています。

農業分野の特定技能2号測定試験の概要

農業分野の特定技能2号測定試験(2号試験)は、耕種農業と畜産農業の区分ごとに、それぞれ試験範囲や内容、合格基準等が定められています。
以下に、各区分の試験概要を説明します。
耕種農業の試験範囲
耕種農業の試験(2号試験)では、主に作物の栽培管理に関する専門知識と実践的な技術が評価されます。
試験は、学科試験と実技試験によって構成され、主に以下の内容が出題範囲となります。
- 学科試験の範囲
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- 耕種農業の基礎知識(作物の種類や特性に関する知識等)
- 栽培環境(農業用施設・設備、資材、機械の操作・取り扱い等)
- 作物の栽培方法および管理技術
- 病害虫および雑草の防除対策
- 収穫、調整、貯蔵、出荷に関する知識
- 農業現場における安全・衛生管理
- 実技試験の範囲
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- 肥料や農薬の適切な使用方法および安全な取り扱い
- 種子および苗の適切な取り扱い
- 栽培環境管理、農業用資材・機械・装置の操作
- 病害虫の識別と適切な防除措置
- 収穫作業の正しい手順と効率的な実施
耕種農業の試験では、農場経営管理や生産物品質管理に関する設問も含まれており、単なる作業者としてではなく、現場管理者としての適性が評価される内容となっています。
試験対策情報や問題例等については、一般社団法人全国農業会議所のwebサイト等で確認することが可能です。
畜産農業の試験範囲
畜産農業の試験(2号試験)では、家畜の飼育管理に関する専門知識と実践的な技術が評価されます。
耕種農業試験と同様に、学科試験と実技試験によって構成されます。
- 学科試験の範囲
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- 畜産農業の基礎知識(家畜の種類と生理生態に関する知識等)
- 家畜の繁殖および生理に関する知識
- 適切な飼育管理方法(給餌方法、飼養環境整備等)
- 畜産現場における安全・衛生管理(家畜の疾病予防、衛生管理等)
- 実技試験の範囲
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- 家畜個体の取り扱い方法(適切な移動、観察技術等)
- 飼育管理技術、畜産用機械器具の操作
- 家畜の繁殖および生理に関する知識・実務
- 安全衛生管理の実践
畜産農業試験においては、特に家畜の健康管理や繁殖に関する専門的な知識が重視される傾向にあります。
農場全体の経営管理や衛生管理に関する設問も出題されるため、日々の業務を円滑に遂行するための総合的な能力が求められます。
試験対策情報や問題例等については、一般社団法人全国農業会議所のwebサイト等で確認することが可能です。
試験の申し込み方法
2号試験を受験するためには、まず受験資格を満たしていることを確認し、その後、申し込み手続きを行う必要があります。
申し込み方法の詳細や申請書類の様式等については、一般社団法人全国農業会議所のwebサイト等で確認することが可能です。
必要となる実務経験(2年以上の管理業務経験、または3年以上の実務経験)を証明するための書類を準備します。
「2号特定技能外国人実務経験証明書」と「誓約書」を、一般社団法人全国農業会議所へ提出します。
書類の様式は、全国農業会議所のwebサイトからダウンロード可能です。
一般社団法人全国農業会議所にて提出書類の審査後、申請ID(アプリケーションナンバー)が発行されます。
アプリケーションナンバーは、webサイトからの受験予約受付に必要となります。
試験日程を確認し、指定された予約受付サイトを通じて申し込みを行います。
予約受付サイトのアドレスや操作方法については、全国農業会議所のwebサイト等で確認してください。
試験の申し込み手続きは、時間に余裕をもって行うことが重要です。
特に、実務経験証明書類の確認には7日から10日程度の期間を要するため、試験直前の申し込みではなく、事前準備を十分に行う必要があります。
詳細な手続きの流れや注意点については、全国農業会議所のwebサイト等で必ず確認してください。
試験にかかる費用
2号農業技能測定試験の受験料は、1回あたり15,000円(税込)です。
試験申し込み後のキャンセルや日程変更は、原則として認められていません。
また、試験当日に欠席した場合でも、受験料の払い戻しは一切行われません。
受験を希望する方は、事前にスケジュールをよく確認し、確実に受験できるよう準備を進めてください。
詳細については、一般社団法人全国農業会議所のwebサイト等で確認することが可能です。
参考サイト:ASAT 2号農業技能測定試験
試験の合格率
特定技能2号の試験(2号試験)は、特定技能1号の試験(1号試験)と比較して難易度が高いため、合格率は相対的に低い傾向にあります。
2024年9月に実施された試験の結果に基づくと、合格率は以下の通りです。
試験区分 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|
耕種農業全般 | 345人 | 107人 | 約31% |
畜産農業全般 | 84人 | 48人 | 約57% |
耕種農業分野の合格率は約3割、畜産農業分野では約5割となっています。
畜産農業分野の方が合格率はやや高いものの、いずれの試験も、事前の十分な学習と周到な準備が不可欠である点は共通しています。
特に、試験問題は日本語で出題されるため、日本語能力の向上が合格への重要な要素となります。
このように、特定技能2号の試験は決して容易ではありません。
しかしながら、試験に合格すれば、日本での長期雇用が可能となり、キャリアアップの大きな機会に繋がるため、万全な試験対策を行うことが重要です。
試験合格に向けた支援情報や学習方法等については、一般社団法人全国農業会議所のwebサイト等で確認することが可能です。
参考サイト:農林水産省|農業技能測定試験の実施状況等について

農業分野の特定技能2号|まとめ

特定技能2号(農業分野)は、日本の農業界にとって、深刻な労働力不足の解消と技能レベルの向上という二つの側面から非常に重要な役割を担う制度です。
高度なスキルと豊富な経験を持つ外国人材の活躍は、国内農業の生産性向上や、ひいては食料自給率の向上にも大きく貢献することが期待されます。
特定技能2号の在留資格の取得は決して容易ではありませんが、長期的なキャリア形成、家族帯同の可能性、永住許可への道が開ける可能性など、多くのメリットがあります。
本記事が、特定技能2号(農業分野)制度への理解を深め、外国人材と日本の農業界双方の持続的な発展に貢献できれば幸いです。


