高齢化と人手不足が深刻化している農業分野。
少子高齢化や世間からのネガティブなイメージにより、新たな農業の担い手が見つかりにくい状況にあります。
そこで本記事では、農業における人材不足の現状と原因、解決策について解説します。
人材確保のための効果的な取組や、新規就農者が活用できる支援金・助成金などにも触れているので、参考にしてください。
農業の人材不足・高齢化の現状
ここでは、農業における人材不足・高齢化の現状を解説していきます。
農業従事者数の推移
農林水産省が発表した「農業労働力に関する統計」によると、主に自営農業に従事している基幹的農業従事者数(個人経営体)は以下のように推移しています。
- 2022年…約130万人
- 2023年…約123万人
- 2024年…約116万人
このデータからは、わずか2年で10万人以上の農業従事者が減少していると分かります。
また、新規就農者数に関しても以下のように推移しており、農業従事者の減少に歯止めがかからない状態です。
- 2022年…約5.2万人
- 2023年…約4.6万人
- 2024年…約4.4万人
農業従事者の平均年齢の推移
同データによると、基幹的農業従事者(個人経営体)の平均年齢は以下のように推移しています。
- 2022年…67.9歳
- 2023年…68.4歳
- 2024年…68.7歳
農業では、人手が足りないだけでなく、平均年齢も上昇しているのです。
詳しくは下記の資料をご覧ください。
農業の人材不足の原因
農業では、なぜこれほど人材不足が深刻化しているのでしょうか。
ここでは、農業における人材不足の原因を3つに分けて分析し、解説しています。
高齢化・若者の都市部への流出
全国的に少子高齢化が問題視されている中、農地が多い地方では特にその傾向が強いです。
現在の農業従事者の多くが高齢者であるにもかかわらず、地方の若者は教育機会・就業機会の格差から都市部に流出してしまうため、次世代の後継者の確保が難しくなっています。
労働条件
労働条件の厳しさも、農業の人材不足に影響しています。
季節によっては休みをとりづらかったり、労働時間が長くなったりすることも多く、暑さや寒さが厳しい時期には農作業による身体的な負担が増える可能性も高いです。
また、年間を通して一定の仕事量があるわけではなく、収入が天候や市場の価格変動に左右されてしまう点も農業から遠ざかる人が増えている理由でしょう。
人材確保のためには、農業を安定した収入が得られる職として整備し、労働環境を改善していく姿勢が重要だと言えます。
もちろん、近年は高度な技術を導入し、農業従事者の負担が少なくなるよう努力されている面もあります。
ただ、そういった現代の農業が十分に理解されていないのが現状です。
知識・技術を持つ人材の確保が難しい
農業に従事するには様々な知識や技術が必要ですが、教育機会や育成機会の基盤が整っていない現場も少なくありません。
研修制度などを強化・充実させ、知識・技術を持つ人材を確保できる環境を整えていく必要があるでしょう。
丁寧な研修制度による人材育成は、定着率の向上に繋がります。
また、近年の農業にはIT技術やデータの管理などの知識が重要であるにもかかわらず、このようなスキルを有する若者が都市部の仕事に流れてしまうことも問題視されています。
農業分野で人材を確保するための効果的な取り組み
ここでは、人材確保に繋がる効果的な取り組みについて解説しています。
農業に特化したマッチングアプリ・サイトを活用する
人材不足に悩む農家の方は、「人材を募集しても人が集まらない」「働いてもらうまでに時間がかかる」という悩みを抱えている場合が多いです。
一方、農業に興味がある働き手も、「農業をやってみたいけれど、いきなり農業関係の仕事に就職するのはハードルが高い」「本業ではなく副業としてやってみたい」と感じています。
そんな両者をつなぐのが、通年ではなく短期間で働いてくれる人材を募集できる、農業に特化した人材マッチングアプリ・サイトです。
経営者は、作物の収穫時期などの忙しい季節に「一時的に人手が欲しい」と感じたときに、インターネットを通じて簡単に働き手を募集できます。
働き手側も手軽に応募できるため、農業に対するハードルが低くなります。
一時的にでも農業に参加する人が増えることにより、地域の活性化が見込めるのではないかと期待されている農業マッチングサービス。
アプリやサイトの利用者からは、
「一般の働き手と農家との接点を作り、可能性を広げてくれるサービス」
「日本の農業に希望と活気をもたらしてくれるのではないか」
「農業に興味があってもどうしたらいいか分からなかったので、一時的に農業アルバイトを体験できるサービスがあって嬉しい」
などの声が上がっているとのことです。
2020年から2021年にかけてコロナ禍でリモートワークが普及したこともあり、サービスの会員数は年々増加しています。
ネットでスマートに人材募集が完結する農業マッチングサービスは、農業における新しい人材募集の形としてこれからますます拡大し、成長していくと言えそうです。
また、マッチングサービスに限らず、人材募集の実施においては下記のポイントを意識すると良いでしょう。
- 採用したい人材を具体的にイメージする
- 求人募集は事実を分かりやすく記載する
- 職員や従業員の言葉などを含めつつ、応募者に職場内の雰囲気を伝える
- 他の求人と内容を比較して改善を図る
国の新規就農支援施策の活用
日本では、就農者のための様々な施策が行われています。
ここでは、国がしている新規就農支援施策に絞り、概要をまとめました。
就農準備資金
「就農準備資金」は、農業の研修を受ける新規就農者を対象にした資金補助制度です。
この支援金は、主に研修期間中の生活費として活用できます。
1人あたりの交付額は年間最大150万円で、交付期間は最長2年間です。
なお、国内での2年の研修に加え、将来の就農ビジョンとの関連性が認められる海外研修を行う場合は、交付期間が1年延長されます。
就農準備資金を活用するには、主に下記の条件を満たしている必要があります。
- 就農予定時の年齢が49歳以下である
- 新規で独立・自営就農、雇用就農または親元での就農を目指す意思がある
- 国や地方自治体が認定した農業法人や施設などでおおむね1年以上、1,200時間以上の研修を受ける予定がある
- 常勤の雇用契約を締結していない
- 生活保護など、生活費を支給する他の事業と重複して受給していない
- 申請時の前年の家族(世帯)全体の所得が600万円以下である
- 研修中の怪我などに備えて傷害保険に加入している
また、就農準備資金は原則返済不要ですが、下記に当てはまる場合は返済の対象となります。
- 交付期間の1.5倍の期間、就農を継続しなかった
- 研修を終えた後、1年以内に就農しなかった
- 研修をやめてしまった・適切な研修を行わなかった
詳しくは下記のページをご覧ください。
青年等就農資金
「青年等就農資金」は、地方自治体や農業委員会から「認定新規就農者」の認定を受けている新規就農者を対象にした無利子融資制度です。
この支援金は、農地・機械の購入や農業施設の整備、安定した収入が得られるようになるまでの生活費など、農業経営に必要な費用に充てるのが一般的です。
1人あたりの融資額は最大3,700万円(用途によって変動する)で、償還期限は17年以内、そのうち措置期間は5年以内に設定されています。
青年等就農資金を活用するには、主に下記の条件を満たしている必要があります。
- 45歳未満である
- 独立して就農することを目指している
- 経営改善計画を策定している
- 地方自治体や農業委員会から「認定新規就農者」の認定を受けているか、受ける予定である
詳しくは下記のページをご覧ください。
青年等就農資金|日本政策金融公庫
青年等就農資金(新規就農者向けの無利子資金制度)について:農林水産省
認定新規就農者制度について:農林水産省
経営発展支援事業
「経営発展支援事業」は、新規就農者の経営発展を目的とした資金補助制度です。
この支援金は、機械・施設や家畜、果樹・茶の新植などに活用できます。
1人あたりの交付額は最大1,000万円です。
経営発展支援事業を活用するには、主に下記の条件を満たしている必要があります。
- 独立・自営就農する認定新規就農者である
- 経営開始5年目までに農業で生計が成り立つ実現可能な計画である
- 親元で就農する場合は、5年以内に継承し、経営を発展させる計画の提出が必要
- 目標地図または人・農地プランに位置づけられている、もしくは農地中間管理機構から農地を借り受けている
- 本人負担分について、金融機関から融資を受けている
詳しくは下記のページをご覧ください。
経営開始資金
「経営開始資金」は、新規就農者の生活支援を目的とした資金補助制度です。
この支援金は、農業経営を始めてから安定した収入が得られるようになるまでの生活費として活用できます。
1人あたりの交付額は年間150万円で、交付期間は最長3年間です。
経営開始資金を活用するには、主に下記の条件を満たしている必要があります。
- 就農時の年齢が原則49歳以下である
- 独立・自営就農である
- 親元の経営の全てまたは一部を継承して就農する場合は、5年以内に継承し、かつ新規就農者と同等の経営リスクを負うと市町村に認められている
- 就農する市町村の目標地図または人・農地プランに中心経営体として位置づけられている(見込みでも可)、もしくは農地中間管理機構から農地を借り受けている
- 生活保護など、生活費を支給する他の事業と重複して受給していない
- 雇用就農資金による助成金の交付または経営継承・発展支援事業による補助金の交付を過去から現在まで受けていない
- 申請時および交付期間中の前年の世帯全体の所得が600万円以下である
なお、夫婦ともに就農する場合は、夫婦合わせて1.5人分が交付されます。
また、複数の新規就農者が法人を新設して共同経営を行う場合は、新規就農者それぞれに最大150万円が交付されます。
下記に当てはまる場合は交付停止になるため、注意しましょう。
- 交付期間中の前年の世帯全体の所得が600万円を超えている
- 青年等就農計画等を実行するために必要な作業を怠るなど、適切な就農を行っていない
加えて、交付期間終了後、交付期間と同期間以上営農を継続しなかった場合は返済の対象となることも覚えておきましょう。
詳しくは下記のページをご覧ください。
なお、農業に関わる他の支援制度の詳細については下記のページから検索・確認できます。
外国人材を採用する
農業分野の人材不足を解消するため、政府は外国人労働者の受け入れを推進する方針をとっています。
ここでは、農業分野で外国人労働者を受け入れるメリットや、幅広い業務に対応できる在留資格などを解説しています。
外国人労働者を受け入れるメリット
外国人労働者の受け入れには、以下のようなメリットがあります。
- 年単位の長期的な雇用が可能
- 在留資格によっては即戦力になる人材を雇用できる
- モチベーションが高く、若い労働力を確保できる
- 人口が少ない地方エリアでも採用しやすい
- 条件次第では助成金が支給される
なお、外国人が日本で働く場合は在留資格が必要です。
在留資格には様々な種類がありますが、人手不足の解消や労働力の確保を目的としているのであれば特定技能をおすすめします。
特定技能制度を活用したことで、人手不足を解消できた事例もあるのです。
在留資格「特定技能」とは
特定技能制度は、2019年4月に創設されました。
制度の目的は、「日本の人手不足を解消するために、技術・技能が一定水準に達している外国人労働者を雇用する」ことです。
在留資格「特定技能」を利用して就労している外国人は、「特定技能外国人」と呼ばれます。
特定技能制度の受け入れ対象は、需要が高く、人手不足が問題となっている以下の12の産業分野です。
- 農業
- 漁業
- 素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業
- 飲食料品製造業
- 航空業
- 自動車整備業
- 造船・舶用工業
- 建設業
- ビルクリーニング業
- 外食業
- 宿泊業
- 介護業
技能実習制度と混同されがちですが、外国人技能実習生は「日本の技術を海外に広める」ことを目的としているため、技術を必要としない単純作業ができません。
一方、特定技能制度は人手不足を解決するための制度なので、単純作業が可能です。
また、特定技能外国人は日本語の試験と技能評価試験に合格しているため、即戦力としての活躍が期待できます。
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「外国人材を採用したいけど、何から始めるべき?」
「雇用手続きが複雑すぎて対応できる自信がない…」
外国人労働者の採用を検討している担当者の方が、このように悩んでいるケースは少なくありません。
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- 3年間の技能実習を完了した経験者
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まとめ
本記事では、農業における人材不足の現状と原因、対策について解説してきました。
人材不足が深刻化している農業ですが、農業に特化したマッチングサービスや国の新規就農支援施策が注目されています。
また、外国人労働者の採用を検討する企業も増えてきています。
人材カフェでは外国人材の紹介や雇用手続きのサポート、就業開始後のフォローアップなどを行っているので、よろしければ上記のリンクからご覧ください。
人材確保のための仕組みを効果的に活用し、人手不足の解消を目指していきましょう。