育成就労制度を利用するメリットは?制度の特徴や注意点もわかりやすく解説

育成就労 メリット

2027年の施行が予定されている「育成就労制度」は、これまでの技能実習制度に代わる新たな外国人の雇用制度として注目を集めています。

人手不足が深刻化する日本において、外国人材を安定的に受け入れる仕組みとして期待されています。

この記事では、育成就労制度の基本的な概要から、技能実習制度との違い、利用するメリット、導入時の注意点まで、わかりやすく解説します

これから外国人材の受け入れを検討している方は、ぜひ参考にしてください。

目次

育成就労制度とは

技能実習から育成就労への転換をイメージした〇と×

育成就労制度は、日本の人手不足を解消するために創設される新しい在留資格制度です

これまで活用されてきた技能実習制度に代わり、外国人材が日本で継続的に働ける環境を整える目的があります。

ここでは、育成就労制度の基本的な概要、制度が誕生した背景、そして施行時期についてわかりやすく解説していきます。

育成就労制度の概要

育成就労制度は、特定の産業分野で外国人が働きながらスキルを習得し、将来的に特定技能人材として定着することを目指した仕組みです

原則として3年間の就労期間が設けられており、その間に特定技能1号レベルの技能と日本語能力を身につけることが求められます。

就労分野は、今後も人手不足が見込まれる業種に限定される予定で、具体的な職種や作業内容は特定技能制度と連携する形となる予定です。

また、これまでの技能実習制度と違い、転籍が認められるほか、就労開始前に日本語能力の基準を満たすことが求められます。

これにより、企業側にとっては基礎的な日本語でのコミュニケーションが可能な人材を受け入れられるというメリットがあります。

さらに、育成期間終了後は、スムーズに特定技能制度へと移行する流れが整備されているため、長期的な人材確保がしやすくなるでしょう。

育成就労制度ができた背景

この制度が導入されるに至った背景には、技能実習制度においていくつかの課題がありました。

まず、技能実習制度の本来の目的と運用実態に大きな乖離があることが長年指摘されてきました。

制度は、開発途上国への技術移転を目的としていましたが、実際には日本の人手不足対策として利用されており、制度の趣旨とのズレが問題視されていたのです

加えて、技能実習生の転籍制限や劣悪な労働環境による人権侵害も大きな社会問題となっています。

転籍が原則認められない仕組みは、ブラック企業による不当な扱いを助長する一因となっているとの批判もあります。

さらに、技能実習制度と特定技能制度の間に制度的なつながりが乏しく、外国人材が日本に長く定着することが難しい構造でした。

これでは企業にとって安定した労働力確保が難しく、また外国人材からも選ばれにくい国となってしまいます。

そのような背景の中で、より現実的かつ持続可能な外国人材の受け入れ制度として、育成就労制度の導入が決定されました。

育成就労制度の施行予定日は?

育成就労制度の具体的な施行日は、現時点ではまだ確定していません。

ただし、改正入管法が2024年6月21日に公布されたことを踏まえると、同法に基づく施行は3年以内、すなわち「2027年中」が期限となっています。

このため、2027年までに制度が本格的に始まると見込んで準備を進めておく必要があります

制度の詳細や運用方針については、今後の政府発表や関連資料の更新を随時確認する必要があります。

特に、これまで技能実習生を受け入れていた企業にとっては、移行時の扱いや新制度下での受け入れ条件などが変わる可能性があるため、早めの情報収集と社内体制の見直しが求められます。

参考:育成就労制度の概要|厚生労働省

育成就労制度の特徴

日本語能力試験の勉強に使う辞書

育成就労制度には、これまでの技能実習制度とは異なる複数の特徴があります。

外国人材が働きやすくなると同時に、企業にとってもより良い雇用環境が整うよう設計されています。

ここでは、特に重要なポイントを紹介します。

日本語能力の基準が設けられている

育成就労制度では、就労を開始する前に一定の日本語能力を持っていることが求められます。

具体的には、JLPT(日本語能力試験)N5レベル相当の知識が必要です

このような基準が導入された背景には、職場での円滑なコミュニケーションの必要性が挙げられます。

従来の技能実習制度では、日本語が全く話せない外国人材が多く、指示の誤解や作業ミスが問題となることがありました。

制度の見直しによって、基本的な日本語を理解できる人材が集まりやすくなると期待されています。

キャリアの見通しが明確になる

育成就労制度は、外国人材が特定技能人材へとステップアップしていくことを前提としています

原則として3年間の就労を通じて、特定技能1号レベルの技能を習得する仕組みになっており、単なる短期労働ではなく、長期的な雇用を見据えた制度設計です。

例えば、技能実習制度では原則的に実習終了後に帰国する流れが一般的でした。

一方で、育成就労制度は日本での継続就労やキャリア構築を前提としているため、企業側も中長期の戦力として人材を育成しやすくなります。

特定技能への移行には試験の合格が必要

育成就労から特定技能への移行を目指す場合、日本語試験と技能試験の合格が必要です

これは、外国人材の能力を客観的に評価し、一定の水準を満たしていることを保証するための措置です。

ただし、試験に不合格となった場合でも、同じ受け入れ先での就労を続けることが条件であれば、最長1年間の在留延長が認められます。

監理支援機関への移行により許可基準が厳格化

これまでの技能実習制度で、技能実習生や受け入れ企業を支援してきた監理団体は、今後「監理支援機関」へと移行し、より独立性の高い組織を目指す方針です。

過去には不適切な運営を行う監理団体の存在も指摘されており、これを受けて、育成就労制度では監理機関に対する許可基準が厳格化される予定です。

また、すべての監理支援機関に対し、外部監査人の設置が義務付けられる見込みです

こうした仕組みによって、不法就労の助長や人権侵害といった問題への対応がこれまでよりもしやすくなり、外国人へのサポートや保護も可能になると考えられます。

なお、現在活動している監理団体が新たに監理支援機関として機能するためには、再度の申請が必要になります。

審査の具体的な内容についてはまだ未発表のため、今後の動向を引き続き注視することが重要です。

転籍が認められている

育成就労制度では、外国人本人の意思による転籍が制度上可能になります

これまでの技能実習制度では、原則として転籍が認められておらず、それが原因で不当な待遇に苦しむ事例も見られました。

この制度改定により、外国人労働者の選択肢が広がるだけでなく、企業にも働きやすい環境づくりが求められます。

例えば、受け入れ側が職場環境を改善しない場合、人材が別の企業へ移ってしまうリスクが生じるため、より真剣に労働環境の整備に取り組む必要があるでしょう。

参考:育成就労制度の概要|厚生労働省

育成就労制度を利用するメリット

メリットを説明している女性

育成就労制度は、単なる外国人材の一時的な受け入れではなく、企業の中長期的な人材戦略に組み込める制度として注目されています。ここでは、企業側が育成就労制度を活用することで得られる代表的なメリットを紹介します。

長期的な雇用が可能になる

育成就労制度の最大の利点は、外国人材を長期的に雇用できる仕組みが整っている点にあります。

技能実習制度では、技能実習という在留資格が付与され、最長で5年(1号〜3号)働くことが可能でした。

しかし、その後は原則的に帰国が求められており、企業としても長期雇用が難しいという声がありました。

一方、育成就労制度では、原則3年の就労を通じて、特定技能人材への移行を目指します

そのため、制度として外国人材の定着を後押ししており、企業にとっては中長期での人材確保が見込めます。

基礎的な日本語能力のある人材を採用できる

育成就労制度では、就労開始時に一定レベルの日本語能力を求められます。

これまでの技能実習制度では日本語力に関する基準がなく、受け入れ後に意思疎通の難しさから業務が非効率になったり、誤解が生じたりするケースも多く見られました。

育成就労制度では、あらかじめ日常的な表現を理解できる程度の語学力を備えた人材を採用できるため、現場での基本的な会話や安全確認などがスムーズに行えるようになります。

とはいえ、N5レベルはあくまで入門レベルであり、専門用語や複雑な説明は通じにくいこともあります。

そのため、入社後も継続的に日本語力を伸ばす支援を行うことで、さらなる戦力化が期待できます。

育成就労制度を利用する際の注意点

転籍するための仕事探しをしている様子

育成就労制度は、企業にとって外国人材を計画的に受け入れるために有用な制度ですが、運用にはいくつかの注意点があります。

転籍されるリスクがある

育成就労制度では、外国人本人の希望による転籍が認められます。

これは、労働者の権利を尊重するために設けられた制度上の変更点であり、技能実習制度にはなかった新しい特徴です。

ただし、企業にとっては、せっかく育成した人材が他社へ転籍してしまう可能性があるという意味でもあります

例えば、職場の人間関係がうまくいっていなかったり、給与や待遇面に不満があったりすると、外国人材はより条件の良い職場を選ぶかもしれません。

このようなリスクを最小限に抑えるためには、受け入れ企業として職場環境の整備に力を入れる必要があります。

異文化理解のための研修を実施したり、外国人社員向けに相談できる窓口を設けたりするなど、早期離職や転籍を防ぐ工夫が求められます。

特定技能への移行には試験のサポートが必要

育成就労制度の就労期間は原則3年間ですが、その後も日本で働き続けるには「特定技能1号」への移行が必要です。

移行の際には、日本語試験と技能試験の両方に合格しなければなりません。

しかし、実務をこなしながら試験勉強を進めることは容易ではなく、試験に不合格となった場合には在留継続に制限がかかる可能性もあります。

たとえ再受験の猶予があっても、継続的な雇用が保証されるわけではありません。

このため、企業側は外国人材が試験に合格できるよう、就労期間中から学習の支援を行う必要があります

例えば、日本語講座の提供や、技能試験の出題傾向に対応した教材の配布、学習時間の確保などのサポートが挙げられます。

制度への理解と情報収集が必要

育成就労制度は、これまでの制度とは異なるルールや運用方法が多数存在します。

受け入れ企業としては、最新の法令やガイドラインを正確に把握し、制度の全体像を理解したうえで採用を進める必要があります

また、制度施行の時期や詳細な運用方針については今後変更される可能性があるため、最新情報の定期的なチェックも欠かせません。

育成就労制度のメリット まとめ

育成就労制度を利用して活躍する外国人

育成就労制度は、外国人材のキャリア形成と日本企業の人材確保の両立を目指して設計された制度です

制度の導入によって、長期的な雇用や日本語能力のある人材の確保が可能になる一方で、転籍リスクや試験支援といった新たな対応も求められます。

今後、制度の詳細や施行時期に関する情報は順次明らかになっていく見通しです。

早めに情報収集を行い、必要な準備を整えておくことが重要です。

人手不足への対応だけでなく、外国人材と共に成長できる職場づくりを進めるためにも、育成就労制度を正しく理解し、計画的に活用していきましょう。

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この記事を書いた人

三木 雅史(Masafumi Miki) 株式会社E-MAN会長
1973年兵庫県たつの市生まれ / 慶応義塾大学法学部法学科卒
・25歳で起業 / デジタルガレージ / 電通の孫請でシステム開発
・web通販事業を手掛ける
・2006年にオンライン英会話を日本で初めて事業化
・2019年外国人の日本語教育を簡単、安価にするため
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