育成就労制度で求められる日本語能力は?技能実習との違いや制度の概要も紹介

育成就労 日本語能力

日本では、少子高齢化による人手不足が深刻化しており、労働力の確保が急務となっています。

これまで、外国人材の受け入れには技能実習制度が多く利用されてきましたが、制度の目的と実態の乖離や人権上の課題などが指摘されてきました。

こうした背景を受けて、令和7年中に新たに「育成就労制度」が導入される予定です。

この制度は、特定技能制度と連携しながら、外国人材の育成と長期的な雇用定着を目指すものです。

この記事では、育成就労制度の概要や、育成就労制度で求められる日本語能力の要件等をわかりやすく解説します

目次

育成就労制度とは?

工場で働く特定技能外国人

育成就労制度では、外国人材を原則として3年間受け入れます。そして、その間に特定技能1号に必要な知識や技術を習得してもらい、特定技能制度へ移行して日本での継続的な就労を目指す制度です。

これまでの技能実習との最も大きな違いは、人材の確保と長期的な雇用を目的としている点にあります

従来の技能実習は、国際貢献として技能を開発途上国へ移転するという建前のもとに運用されていましたが、実態としては外国人を労働力として扱う場面が多く、制度の趣旨と実態との乖離や人権問題などが課題とされてきました。

そのため、技能実習制度を廃止し、改正出入国管理法により新たな在留資格として育成就労制度が設けられることになりました。

育成就労制度では、外国人材が安心して働き続けられるようにするため、勤務先の転籍が一定の条件下で認められます。

これにより、パワハラや過重労働などの環境が悪化した場合でも、本人の意志で職場を変えることが可能となり、外国人材の権利保護が大きく向上します。

また、支援する団体の名称は、監理支援機関へと変更されます。

外部監査人の設置が義務づけられるほか、職員の適切な配置や相談対応の体制など、登録にあたっての要件が厳しく定められています。

さらに、特定技能制度との制度的な連携が強化されていることから、企業にとっても外国人材を長期的な視点で育てていくことができ、採用から定着まで一貫した育成が可能となります

こうした点から、育成就労制度はこれからの日本の雇用と外国人労働者の共存にとって重要な役割を果たすと考えられます。

育成就労制度は、特定技能1号と同じ以下の産業分野で導入される予定です。

特定技能1号の産業分野
  1. 介護
  2. ビルクリーニング
  3. 工業製品製造業
  4. 建設
  5. 造船・舶用工業
  6. 自動車整備
  7. 航空
  8. 宿泊
  9. 農業
  10. 漁業
  11. 飲食料品製造業
  12. 外食業
  13. 自動車運送業
  14. 鉄道
  15. 林業
  16. 木材産業

参考:
特定技能1号の各分野の仕事内容|出入国在留管理庁
育成就労制度|出入国在留管理庁

育成就労制度で求められる日本語能力

日本語で書かれた本

育成就労制度では、一定レベルの日本語能力が要件となっています。

日本語能力試験(JLPT)の「N5」レベル以上、またはそれに相当する日本語教育の講習を受講・修了していることが条件となります

日本語能力試験のN5レベルとは、ひらがな、カタカナ、および日常生活で使われる基本的な漢字を理解できる水準を指します。

例えば、職場などの業務現場で、ゆっくりと話される短い会話の中から必要な情報を聞き取り、簡単な文章を読んで理解できるような能力が求められます。

これまでの技能実習制度では、日本語能力に関する明確な基準が存在せず、現場での支援や指示がうまく伝わらないことで、トラブルや事故などが問題となってきました。

育成就労制度ではこの課題を踏まえ、言語能力を最低条件として制度化することにより、より安全かつ円滑な雇用関係の構築を図っています。

企業側としては、この日本語能力の基準をクリアした人材を受け入れることで、スムーズな業務指示が可能となり、結果として作業効率や職場の安全性の向上にもつながります。

ただし、日本語能力がN5レベルのままだと、職場で少し難しい仕事を任せるときに支障が出る可能性が高いです。

そのため、受け入れる企業は、採用後に外国人材がさらに日本語を学べるようにサポートを続けることが大切です

参考:育成就労制度|出入国在留管理庁

日本語能力試験N5合格に必要な日本語レベル

日本語能力試験の勉強

日本語能力試験のN5で求められる日本語レベルや、問題例を紹介します。

日本語能力試験とは?

日本語能力試験とは、日本語を母語としない人を対象に、日本語の理解度を測るための公式な試験です

通称「JLPT」とも呼ばれ、日本国内だけでなく、世界各国で実施されています。

この試験では、主に「読む力」と「聞く力」が問われます。

出題内容は日常会話や文章の理解が中心で、「話す力」や「書く力」は評価の対象にはなっていません。

日本語能力試験は、N1からN5までの5段階に分かれており、N1が最も難しく、N5が最もやさしいレベルです。

N5は基本的な語彙や文法を理解できるかを確認するもので、初学者向けの内容になっています。

一方、N1では高度な読解力や複雑な聴解力が求められ、ビジネスや学術分野での活用が想定されています。

日本語能力試験は、進学や就職、在留資格の申請にも活用されており、多くの外国人にとって日本での生活やキャリア形成に欠かせない試験の一つです。

N5で求められる日本語レベル

日本語能力試験N5認定の目安は、以下のように定められています。

N5認定の目安
基本的な日本語をある程度理解することができる

【読む】
ひらがなやカタカナ、日常生活で用いられる基本的な漢字で書かれた定型的な語句や文、文章を読んで理解することができる。

【聞く】
教室や、身の回りなど、日常生活の中でもよく出会う場面で、ゆっくり話される短い会話であれば、必要な情報を聞き取ることができる。

引用:N1〜N5認定の目安|日本語能力試験 JLPT


このように、N5レベルでは日常的な表現や簡単な会話の理解が中心となっており、日本での生活や職場の基本的なコミュニケーションに対応できる初歩的な日本語力が求められます

N5の試験で出題される問題例

ここでは、実際にN5の試験でどのような問題が出題されるのかを紹介します。

問題例2
問題例3
問題例4
問題例
問題例1

引用:問題例 N5|日本語能力試験 JLPT

N5の合格に必要な点数

日本語能力試験のN5に合格するためには、「総合得点」と各分野の「区分別得点」の両方で基準を超える必要があります

まず、総合得点の満点は180点で、合格するためには80点以上が求められます。

さらに、分野ごとの基準として、

  • 言語知識(文字・語彙・文法)および読解:120点満点中38点以上
  • 聴解(リスニング):60点満点中19点以上

これらの基準点をそれぞれ満たすことが必要です。

例えば、総合得点が85点であったとしても、聴解が19点未満であれば不合格になります。

逆に、全ての区分で基準点をクリアしていれば、総合得点がギリギリの80点でも合格となります。

参考:日本語能力試験の合格点と基準点|日本語能力試験 JLPT

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育成就労に求められる日本語能力 まとめ

日本語での会話をイメージした吹き出し

育成就労制度は、新たな在留資格制度として令和7年中に施行される予定です。

特定技能制度と連動しながら、段階的な育成とキャリア形成を重視した仕組みが整えられようとしています。

制度では、外国人材の権利保護や職場での安定した定着を図るため、転籍の柔軟化や支援体制の厳格化も盛り込まれています。

また、日本語能力試験N5レベル相当の言語スキルが要件となっており、企業側にも継続的な学習支援の姿勢が求められます。

制度開始後は、これまでよりも透明性と実効性のある外国人受け入れが進み、日本社会と外国人労働者との共生を後押しする重要な制度になると期待されています

制度が導入される前に、内容を正しく理解し、受け入れ準備を進めることが重要です。

特定技能制度の詳細については、今後、関係機関からの告知がある予定なので、最新の情報を随時確認しながら、制度開始に向けた体制づくりを進めていきましょう。

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この記事を書いた人

三木 雅史(Masafumi Miki) 株式会社E-MAN会長
1973年兵庫県たつの市生まれ / 慶応義塾大学法学部法学科卒
・25歳で起業 / デジタルガレージ / 電通の孫請でシステム開発
・web通販事業を手掛ける
・2006年にオンライン英会話を日本で初めて事業化
・2019年外国人の日本語教育を簡単、安価にするため
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