特定技能と技能実習は、どちらも外国人が日本で働くための制度です。
日本の労働力不足を補うために施行されましたが、両者は目的や条件、在留期間などが異なります。
本記事では、特定技能と技能実習の違いを詳しく解説しますので、ぜひ参考にしてください。
日本の労働者の状況
まず、なぜ技能実習や特定技能の制度ができたのでしょうか。
現在日本では、労働者不足が深刻な問題となっています。
特に若者はホワイトカラー職(経営、事務、営業等)を好む傾向があり、ブルーカラー職(作業員、技術職等)への関心が低いことが一因です。
また、少子高齢化の影響もあり、特定の業種での労働者不足が顕著になっています。
こうした日本の人手不足を外国人材で対処するため、特定技能ビザ制度など外国人労働者を受け入れる制度が導入されました。
外国人労働者を単なる労働力とみなすのではなく、海外の人々と良好な関係を築きながら労働力を確保することが重要である状況です。
特定技能と技能実習の目的の違い
特定技能と技能実習は混同されがちですが、それぞれ目的が異なります。
特定技能は、日本の人材確保が難しい産業分野において、外国人労働者を受け入れて人手不足を補うための制度です。
各分野で外国人を働き手として招き、技能を習得してもらうことを目的としています。また、12分野いずれかの知識や技術を備えることが必要です
一方、技能実習は、日本で習得した技術を母国に持ち帰って広めてもらうことを目的とした、国際貢献のための制度です。
特定技能と技能実習の在留期間の違い
特定技能と技能実習の在留期間は以下のようになっています。
特定技能
特定技能は1号と2号で在留期間が異なります。
- 特定技能1号
日本に滞在して就労できるのは、ビザの更新を行ったとしても通算で5年間まで - 特定技能2号
最大3年ごとの更新で、更新回数は無制限
技能実習
技能実習も区分によって在留期間が異なります。
- 技能実習1号
実習1年目。日本に滞在できる期間は1年以内。実習できる職種には制限がない。 - 技能実習2号
実習2年目から3年目。日本に滞在できる期間は2年以内。 - 技能実習3号
実習4年目から5年目。日本に滞在できる期間は5年以内。移行対象職種は技能実習2号と異なる。
特定技能と技能実習の対象分野の違い
技能実習と特定技能は、作業内容や分野が異なります。
技能実習でできる受け入れ分野が、特定技能でも受け入れられるわけではありません。
特定技能
技能実習で受け入れている対象職種は、2023年12月時点で、88職種161作業です。
詳しくはこちらをご確認ください。
技能実習
特定技能は下記の12分野が対象となります。
- 介護
- ビルクリーニング
- 素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業
- 建設
- 造船・舶用工業
- 自動車整備
- 航空
- 宿泊
- 農業
- 漁業
- 飲食料品製造業
- 外食業
12分野以外にも各業界団体からの要望があった場合は、さらに追加される可能性があります。
追加が検討されている分野は、「コンビニ」「トラック運転手」「廃棄物処理」の3分野です。
特定技能と技能実習は途中で転職可能?
特定技能と技能実習は転職についての決まりにも違いがあります。
特定技能
特定技能は、原則として転職が可能です。
転職可能な条件は2つです。
- 転職先が特定技能の対象職種に該当する。
- 転職先の企業が、特定技能の受け入れ先として登録されている。
具体的には転職先の企業が、建設、造船・舶用、自動車整備、航空、宿泊業・サービス業、介護、ビルクリーニング、農業、漁業のいずれかの職種に該当する必要があります。
また、その企業が、特定技能の受け入れ計画の認定を受けていること、特定技能外国人を受け入れるに足る能力・体制を有していることが条件になります。
技能実習
一方、技能実習は、原則として転職ができません。
しかし、例外として、以下の場合には技能実習でも転職が認められることがあります。
- 受け入れ企業の倒産や解雇などのやむを得ない理由により、転職を余儀なくされた場合
- 受け入れ企業の労働基準法違反など、重大な問題がある場合
- 技能実習生の本人の健康上の理由により、転職を余儀なくされた場合
ここまで解説した内容を表にまとめました。
特定技能と技能実習には、目的や条件などさまざまな違いがあることがわかります。
特定技能 | 技能実習 | |
---|---|---|
目的 | 人手不足解消 | 国際貢献 |
条件 | 就労分野の知識や技術があること | 初心者でも受け入れられる |
在留期間 | 1号は最長5年間、2号は無制限 | 1号は最長1年、2号は最長3年、3号は最長5年間 |
転職 | 原則可能 | 原則不可 |
単純労働 | 可 | 不可 |
その他の違いとして、単純労働に従事できるかどうかという点があります。
特定技能は、単純労働を含む業務に従事できますが、技能実習は単純労働が禁止されています。
理由は、技能実習はあくまでも技能習得のための支援だからです。
一方、特定技能は労働力の確保が目的とされているため、単純労働も認められています。
まとめ
特定技能と技能実習は、日本の労働市場において重要な役割を果たしている外国人労働者受け入れの二つの主要な制度です。
両制度は似ているように見えますが、目的や条件、在留期間などに大きな違いがあります。
日本の労働市場の課題に対応するために重要な役割を果たしており、それぞれの制度が持つ特性を理解して利用することが大切です。