日本で働くことを目指す外国人にとって、日本語能力を証明する検定は、就職や転職の際に重要なアピールポイントとなります。
また、外国人を受け入れる企業にとっても、日本語能力は円滑なコミュニケーションや業務遂行に不可欠な要素です。
この記事では、外国人が受験できる主要な日本語検定を5つ厳選し、それぞれの特徴や難易度、採用に役立つポイントについて詳しく解説します。
日本語能力試験(JLPT)

日本語能力試験(JLPT)は、国際交流基金と日本国際教育支援協会が主催する、世界で最も受験者数の多い日本語検定です。
日本語を母語としない人を対象に、日本語能力を測定することを目的としています。
- 国際的な認知度
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世界約80の国と地域で実施されており、グローバルな認知度が非常に高いです。
- レベルの細分化
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N1からN5までの5つのレベルに分かれており、学習者のレベルに合わせた受験が可能です。
N1が最難関で、N5が最も易しいレベルとなります
- 能力測定
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言語知識(文字・語彙・文法)、読解、聴解の3つの技能を測定します。
- 試験内容
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マークシート形式で、記述問題はありません。
- 試験日程
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年2回(7月、12月)実施されます。
日本語能力試験の難易度とレベルの目安
JLPTの難易度は、N1が最も高く、N5が最も易しくなっています。
一般的に、N2レベル以上を取得していれば、日本での就職に有利になると言われています。
特定技能外国人の場合は、N4レベル以上が求められることが多いですが、業種や職種によって必要なレベルは異なります。
- N1
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幅広い分野の高度な日本語を理解し、複雑な話題についても流暢にコミュニケーションできるレベルです。
大学や大学院での学習、研究活動、専門性の高いビジネスシーンで求められる日本語能力です。
- 語彙数: 10,000語~
- 漢字数: 2,000字~
- N2
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中上級レベルの日本語能力です。
日常会話やニュースなどで、話し手の意図や論理的な関係を理解でき、新聞記事や評論、エッセイなど、やや抽象的な内容の文章を理解できます。
- 語彙数: 6,000語~8,000語
- 漢字数: 1,000字~1,500字
- N3
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日常会話は問題ないレベルです。
日常的な場面で日本語を理解し、簡単なコミュニケーションができるレベルです。生活に必要な日本語能力を備えていると言えるでしょう。
- 語彙数: 3,000語~4,000語
- 漢字数: 600字~800字
- N4
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基本的な日本語を理解できるレベルです。
簡単な日常会話や指示理解が可能ですが、複雑な内容の理解やスムーズなコミュニケーションにはまだ課題が残ります。
- 語彙数: 1,500語程度
- 漢字数: 300字程度
- N5
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日本語学習の初歩的な段階です。
ごく基本的な日本語を理解できるレベルで、簡単な挨拶や自己紹介、身の回りの物の名前などが理解できる程度です。
- 語彙数: 800語程度
- 漢字数: 100字程度
日本語能力試験(JLPT)は、日本企業が外国人採用時に日本語力を評価する重要な指標です。
N4を取得すれば、日常会話や基本的な業務指示を理解できると判断され、特定技能の在留資格取得がスムーズになります。
また、N3以上を持つ応募者は、より複雑な指示や顧客対応が可能になり、業務の効率向上につながります。

国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)

国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)は、国際交流基金が主催する、主に就労目的で来日する外国人を対象とした日本語基礎テストです。
2019年4月に創設された比較的新しい試験ですが、特定技能ビザの申請要件の一つとして認められているため、近年注目度が高まっています。
- 日本の生活に特化した日本語能力を測定
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日本の生活環境で円滑にコミュニケーションを行うために必要な日本語能力を測定することに特化しています。
日常生活での場面を想定した問題が多く出題されるため、日本での生活に必要な日本語能力を効率的に測ることができます。
- 国際的な基準に準拠
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CEFR(ヨーロッパ言語共通参照枠)のA2レベル相当とされており、国際的な基準に準拠しています。
CEFRは、言語能力を評価するための国際的な指標として広く用いられており、JFT-Basicの国際的な通用性を示す根拠となっています。
- コンピューターベースドテスト(CBT)で利便性が高い
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全国各地のテストセンターで、コンピューターを使って受験するCBT形式を採用しています。
試験日程が豊富で受験者の都合に合わせて受験しやすいのがメリットです。また、試験結果も比較的早く判明します。
国際交流基金日本語基礎テストの難易度
JFT-Basicの難易度は、JLPTのN4とN5の間くらいと言われています。
特定技能ビザの申請要件として認められているため、特定技能外国人を受け入れる企業にとっては、必須とも言える指標です。
JFT-Basicの合格は、日本語能力に関する最低限の基準を満たしていることを示す証明となります。
ただし、合格はあくまでも基礎レベルの日本語能力の証明です。
業務に必要な日本語能力を向上させるため、入社後の日本語学習サポート体制(例:日本語研修、OJTでの指導など)を整備することが望ましいです。
参考:国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)公式サイト

実用日本語検定(J.TEST)

実用日本語検定(J.TEST)は、日本語検定協会が主催する、日本語を母語としない人を対象とした日本語能力検定です。
実践的な日本語能力を重視: ビジネスや日常生活で必要となる実践的な日本語能力を測ることを重視しています。
- 初級者から上級者まで受験可能
- A-Cレベル試験(上級)、D-Eレベル試験(初級~中級)、F-Gレベル試験(入門)の3種類がある。
- 日本語能力試験(JLPT)よりも細かいレベル分けがされており、実力をより正確に測定可能。
- 試験は聴解と読解で構成され、実生活やビジネスシーンで使う日本語能力を測定。
- JLPT(年2回)よりも頻繁に受験可能
- A-Cレベル試験・D-Eレベル試験は年6回、F-Gレベル試験は年2回実施
実用日本語検定(J.TEST)の難易度とレベルの目安
- A-Cレベル試験(上級者向け)
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CEFR C2~C1レベル、日本語能力試験N1相当
- 対象:上級者
- 満点:1000点
- 認定基準:600点以上で認定
- 評価
- 特A級(930点以上)
- A級(900点以上)
- 準A級(850点以上)
- B級(800点以上):
- 準B級(700点以上)
- C級(600点以上)
- D-Eレベル試験(初級~中級者向け)
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CEFR B2~B1レベル、日本語能力試験N2~N3相当
- 対象:初級~中級者
- 満点:700点
- 認定基準:350点以上で認定
- 評価
- D級(500点以上)
- E級(350点以上)
- F-Gレベル試験(入門者向け)
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CEFR A2~A1レベル、日本語能力試験N4~N5相当
- 対象:入門者
- 満点:350点
- 認定基準:180点以上で認定
- 評価と対応レベル:
- F級(250点以上)
- G級(180点以上)
実用日本語検定(J.TEST)と日本語能力試験(JLPT)の違い
実用日本語検定(J.TEST)は、実践的な日本語能力を測る試験で、ビジネスや日常会話など、実際に使う日本語力を評価します。
一方、日本語能力試験(JLPT)は、日本語の知識や理解度を測る試験で、語彙・文法・読解の学習成果を確認するのに適しています。
ビジネスや日常会話向けの実践的な日本語を測りたいなら実用日本語検定(J.TEST)、学習成果を証明したいなら日本語能力試験(JLPT)が適しています。

BJTビジネス日本語能力テスト

BJTビジネス日本語能力テストは、日本漢字能力検定協会が主催する、ビジネスシーンで必要となる日本語能力を測定するテストです。
ビジネス日本語の能力を測るテストで、日本企業への就職に有利な資格です。
- ビジネスシーンに特化
- オフィスでのコミュニケーション、ビジネス文書の作成、会議での発言など、ビジネスシーンで必要となる日本語能力を測定することに特化しています。
- スコア形式
- 合否判定ではなく、0点から800点までのスコアで評価されます。
- コンピューターベーステスト(CBT)形式で、スコアは当日わかります。
BJTビジネス日本語能力テストの難易度とレベルの目安
ビジネスシーンに特化しているため、一般的な日本語能力だけでなく、ビジネスマナーやビジネス語彙の知識も必要となります。
- J1+(600〜800点以上)
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高度なビジネス日本語運用能力があります。
- J1(530〜599点)
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ビジネス会話を正確に理解できます。
- J2(420点~529点)
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日常的なビジネス会話が理解できます。
- J3(320点~419点)
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簡単なビジネス会話が理解できます。
- J4(200点~319点)
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ゆっくり話せば簡単なビジネス会話が理解できます。
- J5(200点未満)
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ビジネス日本語の実践的な運用能力はまだ不足しています。
また、スコア以外に、聴解・聴読解・読解の各ジャンル別のランクが1~7で判定されます。
BJTは、ビジネスシーンでの日本語能力を客観的に評価できるため、オフィスワークや営業職など、ビジネス日本語が必要となる職種で外国人を受け入れる際に非常に有効な指標となります。

TOPJ実用日本語運用能力試験

TOPJ実用日本語運用能力試験は、日本語を学ぶ外国人向けに開発された試験です。
語彙や文法などの基礎能力に加え、日本社会や日系企業の文化・習慣の理解力も測定します。
試験は初級から上級までのレベルがあり、実生活や仕事での適応力を高めることを目的としています。
- 日本文化への理解を重視
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日系企業などのビジネス場面を取り上げ、日本社会や文化への理解力を測定します。
- 生きた日本語を問題に使用
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実際のコミュニケーションで使われる日本語を問題に取り入れています。
- 年に6回実施
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就職活動や留学準備の時期に合わせて、年間6回試験を実施しています。
TOPJ実用日本語運用能力試験の難易度とレベル別の目安
TOPJは、初級・中級・上級の各レベルに分かれており、それぞれのレベルはCEFR(ヨーロッパ言語共通参照枠)の基準と対応しています。
- 上級A(C2)
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あらゆる日本語話者のレベルに柔軟に対応でき、速さや話し方の癖に関わらず、会話や討論を問題なく理解し、適切に反応できます。
- 上級B(C1)
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学会や職場の会議で自身の考えを論理的かつ明確に表現し、議論を進めることができます。
- 上級C
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高等教育機関での研究協議や討論、専門分野の著書や論文の理解、職場での高度なビジネス文書のやり取りが可能です。
- 中級A(B2)
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学校や職場で専門的な話題や議論に参加し、相手と十分なコミュニケーションを取ることができます。
- 中級B
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自身の環境で意見交換や情報提供ができ、比較的身近な話題であれば議論に参加できます。
- 中級C(B1)
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日常的な会話で要点を把握し、十分なコミュニケーションが可能です。
- 初級A-4(A2)
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日常生活の身近な話題について、基本的なコミュニケーションが取れます。
- 初級A-5(A1)
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自分や他者の基本的な情報を伝えたり、簡単な質問に答えたりすることが可能です。
- 初級B
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日常的なニーズに関するごく簡単な語や表現を理解し、単語レベルでのやり取りが可能です。
- 初級C
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日本語に興味を持ち、ひらがな、カタカナ、漢字に慣れ親しみ、簡単な挨拶ができます。
TOPJは、語彙・文法だけでなく、日本社会や職場での適応力も測るため、仕事で使える日本語力を証明できます。
また、日本社会のマナーやビジネス習慣の理解も試験範囲に含まれるため、業務にスムーズに適応できるどうかも測れます。

外国人が受ける日本語検定のまとめ

この記事では、外国人が受験できる主要な日本語検定を5つ紹介しました。
それぞれの検定には特徴や難易度が異なります。
企業は、採用する職種や業務内容、求める日本語レベルに合わせて、適切な検定を選択し、外国人の日本語能力を評価することが重要です。
また、検定結果だけでなく、面接や実技試験などを通して、実際の業務遂行能力を総合的に判断することで、よりミスマッチの少ない採用に繋げることができるでしょう。
日本語能力は、外国人が日本で活躍するための重要な基盤となります。
適切な日本語能力を持つ人材を採用し、入社後の日本語学習や異文化理解をサポートすることで、外国人の活躍を促進し、企業の成長に繋げていきましょう。

