外国人に日本語を教える場面で、「説明したはずなのに伝わっていない」「何度も同じことを教えている」「学習が続かない」と感じたことはないでしょうか。
特に、外国人を採用している企業や現場では、日本語教育が担当者任せになり、負担が増えているケースも少なくありません。日本語教育というと、教え方や教材の工夫に目が向きがちですが、実際の現場では、それだけでは解決できない課題が数多くあります。
本記事では、外国人に日本語を教える際によくあるつまずきを整理しながら、「どう教えるか」以前に考えておきたい教育設計の視点について解説します。
\ 日本語学習システム/
【令和6年公式データ】日本語学習ニーズは拡大している

文部科学省の公的調査によると、国内外で日本語を学習する人の数は年々増加傾向にあり、令和6年時点でも高い水準を維持しています。技能実習生や特定技能人材、留学生、就労目的の外国人など、日本語学習の背景も多様化しています。
日本語学習者数は過去最大

近年の調査では、日本語学習者の総数は過去と比べても明らかに増加しています。
これは、日本語学習が趣味や教養の範囲を超え、就労や生活に直結する必須スキルになっていることを意味します。企業や受け入れ現場にとって、日本語教育は「できればやりたい支援」ではなく、「避けて通れない課題」になりつつあります。
一方で、学習者数の増加スピードに対して、日本語教育を担う側の体制が十分に整っているとは言えません。
教育機関・教師数の増加だけでは追いつかない現状
日本語学校や教育機関、日本語教師の数も一定程度は増えていますが、学習者の増加スピードに完全には追いついていないのが現状です。特に、企業内や現場で日本語教育を担うケースでは、専任の教育担当者を置くことが難しい場合も多く見られます。
その結果、日本語教育が現場任せになり、担当者の負担が増大したり、教育の質にばらつきが出たりする問題が生じています。これは個々の努力不足ではなく、教育を支える仕組みが追いついていないことが原因です。
こうした公式データが示しているのは、日本語学習ニーズが今後も継続的に存在するという事実です。だからこそ、日本語教育を一時的な対応ではなく、持続可能な形で設計する視点が求められています。

外国人の日本語教育で最初に整理すべき前提

外国人に日本語を教えるという話になると、「どの教材を使うか」「何から教えるか」といった具体的な方法論に意識が向きがちです。しかし実際には、その前に整理しておくべき重要な前提があります。
「何を教えるか」より「どこまで求めるか」を決める
日本語教育がうまくいかない原因の一つに、ゴールが明確に共有されていないことがあります。
たとえば、日常会話ができれば十分なのか、業務に必要な日本語を理解できればよいのか、あるいはJLPT合格レベルまで目指すのか。この到達点が定まっていないままでは、教える側も学ぶ側も何を基準に努力すればよいのか分からなくなってしまいます。
その結果、教える内容が担当者ごとに変わってしまったり、学習内容が断片的になったりといった状況が起こりやすくなります。成果が見えにくいため、学習そのものが途中で止まってしまうケースも少なくありません。
日本語教育は理想論ではなく、現実的なゴール設定から始める必要があります。
全員に同じ学習プロセスを当てはめない
もう一つ見落とされがちなのが、学習者一人ひとりの背景の違いです。
外国人と一口に言っても、日本に来たばかりの人もいれば、すでに日常会話がある程度できる人もいます。母国語の文字体系が日本語と大きく異なる場合もあれば、業務経験は十分でも日本語だけが課題というケースもあります。
それにもかかわらず、「とりあえず全員に同じ内容を教える」「時間がある人が、できる範囲で教える」といった形になってしまうと、学習効率は大きく下がります。
そうすることで、日本語教育は属人的な対応から脱し、無理なく続けられる取り組みへと変わっていきます。
さらに内容を深掘りし、指導のポイントや学習者の心理的な背景、現場での具体的な応用例を盛り込んでボリュームアップしました。単なる手順書ではなく、読み手が「なぜそのステップが必要なのか」を納得できるような、読み応えのある構成に仕上げています。

外国人の方に日本語を教えるための「4つの基本ステップ」

初めて日本語に触れる方や、まだ日本に来たばかりの方にとって、新しい言語を学ぶことは大きな挑戦です。指導の際は、常に相手の立場に立ち、スモールステップで達成感を積み重ねていくことを意識してみましょう。
文字の読み書きと正しい音に親しむ
日本語の土台となるのは、やはり「ひらがな」と「カタカナ」です。しかし、ただ文字を覚えるだけでなく、それがどのような「音」として発音されるのかをセットで丁寧に伝えていくことが重要です。
- ひらがな・カタカナをゆっくり、丁寧に
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まずは50音順に、読み方と書き順を確認していきます。特になぞり書きができる練習プリントなどを用意して、自分の手で形を覚える時間を大切にしましょう。
- 「音のルール」を体感してもらう
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日本語には、濁音(が・ぎ・ぐ…)や、小さい「つ」などの促音、さらに「きらきら」「きゃっ」といった拗音など、学習者にとって聞き分けが難しい音がたくさんあります。
例: 「切手(きって)」と「着て(きて)」の違い これらは、手拍子でリズムを取ったり、口の形を大きく見せたりしながら、その違いを「音の響き」として体験していただきましょう。
挨拶と日常表現
文字に少し慣れてきたら、次はコミュニケーションの第一歩です。職場で毎日使う言葉は、相手との心の距離を縮めるための大切なツールになります。
- 職場でよく使う挨拶の練習
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「おはようございます」「ありがとうございます」「お疲れ様です」など、基本的な挨拶を繰り返し練習します。単に言葉を覚えるだけでなく、どのような場面で、どんなお辞儀を添えて言うのかといった「日本のマナー」も一緒に伝えていきましょう。
- 自分のことを知ってもらう自己紹介
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「私の名前は〜です」「〜から来ました」といった自己紹介は、周囲との会話のきっかけを作ります。自分の背景を話せるようになると、学習者自身の自信にもつながります。
- 困ったときに自分を助ける言葉
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「これは何ですか?」「もう一度お願いします」など、わからないことを尋ねるフレーズを早めに習得することで、現場での「わからないまま進めてしまう」というリスクを減らすことができます。
視覚教材を活用してイメージを具体化
抽象的な言葉の説明だけでは、どうしても理解に限界があります。そんなときは、目に見える情報(視覚教材)を積極的に取り入れることで、理解のスピードがぐんと速くなります。
- 実際の道具や写真を使った「イメージ学習」
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特に工場や建設現場などで働く方には、実際に使用する工具、安全標識、作業場の写真などを見せながら説明するのが最も効果的です。「これ=この名前」という結びつきを直感的に作ってあげましょう。
- 動画やアニメーションの活用
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言葉のニュアンスや、日本特有の文化的な背景を伝えるには、動画教材も非常に役立ちます。ドラマのワンシーンや、仕事の流れを説明したビデオを見せることで、より「生きた日本語」を感じてもらえます。
間違いを恐れず、安心して「声に出す」練習
最後のステップは、学んだことを自分の言葉として発信することです。ここでは「正しく話すこと」よりも「伝えようとすること」を最大限に評価してあげてください。
- ロールプレイ
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「上司に報告する」「同僚に質問する」といった具体的な場面を設定して、会話の練習を行います。最初は台本通りで構いません。何度も口に出すことで、言葉が自然と体に馴染んできます。
- 「間違い」を「学びのチャンス」に変える
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学習者の方が言い間違えたときは、すぐに否定するのではなく、「あなたの言いたいことは伝わりましたよ」というメッセージをまず伝えます。その上で、「こう言うともっと自然になりますよ」と優しくフォローしてあげてください。
- 成功体験を積み重ねる
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実際に現場で学んだ言葉が通じたとき、それは学習者にとって何よりの喜びになります。「通じたね!」「今の言い方、とても上手でしたよ」とポジティブなフィードバックを送り続けましょう。


日本語が「伝わらない」場面で起きていること

外国人に日本語で説明をしているのに、思ったように伝わらないと感じる場面は少なくありません。何度も言い直したり、言葉を簡単にしたりしているのに、行動や理解に結びつかないケースもあります。
このような状況が起きると、「日本語力がまだ足りないのではないか」「もっと勉強が必要なのでは」と考えがちですが、必ずしもそれだけが原因とは限りません。多くの場合、問題は日本語そのものではなく、情報の受け取られ方にあります。
日本語が通じていても誤解が生まれる理由
日本語には、はっきり言い切らない表現や、相手の判断に委ねる言い回しが多く存在します。日本人同士であれば文脈や空気を読んで理解できますが、異なる文化背景を持つ人にとっては、判断が難しい場合があります。
たとえば、「できれば対応してください」「問題なければ進めてください」といった表現は、指示なのか提案なのかが分かりにくく、行動に迷いが生じやすくなります。こうした表現は日本語としては自然でも、必ずしも意図どおりに伝わるとは限りません。
また、上下関係や報告のタイミング、仕事の進め方に対する考え方も国や文化によって異なります。言葉だけを理解していても、その背景にある価値観が共有されていなければ、誤解が生まれる可能性があります。
「日本では当たり前」を前提にしない設計
文化や価値観の違いによるすれ違いを防ぐためには、「日本では当たり前」とされている考え方を前提にしないことが重要です。
日本語教育の場面では、言葉の意味だけでなく、その使われ方や意図も含めて伝える必要があります。なぜその表現を使うのか、どういう行動を期待しているのかを明確にすることで、誤解を減らすことができます。
これは個別に説明を増やすということではなく、最初から誤解が生まれにくい形で情報を設計するという考え方です。文化の違いを前提にした設計ができていれば、日本語が完全でなくても、意思疎通はスムーズになります。
日本語教育を成功させるためには、言語能力だけでなく、背景となる文化や価値観の違いにも目を向けることが欠かせません。


現場で日本語教育を抱えきれなくなっている理由

ここまで見てきたように、日本語教育には言語以外にも多くの配慮が必要です。しかし実際の現場では、こうした点を十分に考慮しながら教育を続ける余裕がないケースも少なくありません。
その結果、日本語教育が「誰かが空いた時間に対応するもの」になり、負担が特定の担当者に集中してしまいます。
属人的な指導が限界を迎えている
日本語教育を現場任せにすると、教える内容やレベル、進め方が担当者ごとに異なってしまいます。経験や得意不得意に左右されるため、教育の質が安定しにくくなります。
また、担当者が変わるたびに教え方が変わったり、引き継ぎがうまくいかなかったりすることで、学習者側も混乱しやすくなります。これは、教える側が努力していないからではなく、仕組みとして整っていないことが原因です。
教育を「仕組み」で支える必要性
日本語教育を継続的に行うためには、個人の努力に頼らず、仕組みとして支える視点が欠かせません。
誰が担当しても同じ基準で学習が進み、学習状況が可視化され、必要なサポートだけに集中できる状態をつくることで、現場の負担は大きく軽減されます。教育を属人化させないことが、結果的に学習者にとっても安定した学びにつながります。

日本語カフェ「会話トレーニングコース」が提供できる解決策

日本語カフェの「会話トレーニングコース」は、職場や日常で“話せる日本語”が身につくことを目的として設計された日本語学習サービスです。
単語や文法を知識として終わらせるのではなく、実際のコミュニケーションにつなげることで、現場でのすれ違いや負担を減らすことを目指しています。
教え続けなくても「話せる力」が育つカリキュラム設計
会話トレーニングコースでは、日本語教師が監修した実践型の動画講義を提供しています。N5〜N3レベルの学習者を対象に、日常会話や職場でよく使われる表現を、場面別に整理しているため、「何を、どのように話せばよいか」が分かりやすく構成されています。
学習者は動画を見ながら発音し、会話の流れを体感することで、覚えた日本語をそのまま現場で使いやすくなります。 現場で一つひとつ教えなくても、学習を自走しやすい点が特長です。
個々のペースで無理なく続けられる学習環境
学習はオンラインの動画形式で行われ、スマートフォン・パソコン・タブレットに対応しています。1回あたりの学習時間も短く、業務の合間や空き時間を使って取り組むことができます。
時間や場所に縛られず、自分の理解度に合わせて何度でも見直せるため、「分からないまま進んでしまう」「忙しくて続かない」といった状況を防ぎやすくなっています。
クイズと発話練習で「理解」を「会話」に変える
各講義の後には、内容を振り返るクイズが用意されており、短時間で理解度を確認できます。さらに、複数パターンの会話練習問題を通じて、実際に声に出すトレーニングを行うことで、知識を会話として定着させていきます。
「分かる」だけで終わらせず、「言える」「伝えられる」状態を目指した構成のため、実際の職場でも自信を持って話せる力が身についていきます。
管理の手間を最小限に抑える仕組み
学習状況は管理画面で一目で確認でき、誰がどこまで学習しているかを把握できます。進捗確認や声かけにかかる手間を減らし、必要なフォローだけに集中できるため、日本語教育が特定の担当者に依存しにくくなります。
外国人への日本語教育に不安や負担を感じている場合は、まずは現状を整理するところから始めてみませんか。 日本語カフェの「会話トレーニングコース」は、企業や現場ごとの課題に合わせた活用方法のご相談も可能です。
「自社の環境でも使えるのか知りたい」「どのレベルの学習者に合うのか確認したい」など、具体的でなくても問題ありません。日本語教育を無理なく続けられる形を一緒に考えさせていただきます。少しでもご興味がありましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。
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外国人への日本語教育 まとめ

外国人への日本語教育で大切なことは、学習者が職場や日常生活の中で安心して行動できるようになることです。そのためには、文法や単語を網羅的に教える前に、「どこまでできれば十分なのか」という現実的なゴールを共有しておく必要があります。
また、学習者の背景や経験、日本語レベルは一人ひとり異なります。全員に同じ内容を同じペースで教えるのではなく、必要な部分を必要な形で届けることが、無理なく続く日本語教育につながります。スモールステップで「伝わった」「話せた」という成功体験を積み重ねることが、学習の継続と自信を支えます。
現場で日本語教育を抱え込みすぎないことも重要です。属人的な指導には限界があり、教育を仕組みとして支える視点がなければ、担当者の負担は増え続けてしまいます。学習を自走しやすい環境を整えることで、教える側・学ぶ側の双方に余裕が生まれます。
日本語教育は、一時的な対応ではなく、外国人材と現場をつなぐための大切な土台です。「正しい日本語」よりも「伝わる日本語」を意識しながら、無理なく、長く続けられる形をつくっていくことが、これからの日本語教育に求められていると言えるでしょう。




