熟練した外国人労働者を受け入れ、日本の人手不足を解消するために設けられた制度が「特定技能2号」です。
これまで特定技能2号の外国人が従事できた分野は、建設と造船・舶用工業の溶接区分の2つだけでしたが、2023年に対象分野が拡大されました。
本記事では、拡大された特定技能2号の対象分野について詳しく解説します。
外国人が関連している特定技能制度とは
特定技能制度とは、2019年4月に開始された外国人の在留資格です。
日本国内で深刻な人手不足と認められている産業や業種を対象に、経験や技術がある外国人を受け入れています。
特定技能制度は「特定技能1号」と「特定技能2号」の2種類があります。
特定技能2号の対象分野が拡大された理由
日本政府が特定技能2号の対象分野を拡大することについて、正式に閣議決定したのには理由があります。
ここからは、拡大された理由について解説します。
拡大した背景として考えられる理由は以下の通りです。
- 特定技能1号の在留期間が通算5年と短い
- 日本国内の企業の人手不足
- 国外から優秀な人材を獲得するため
それぞれの理由について見ていきましょう。
特定技能1号の在留期間が通算5年と短い
理由の1つ目は、特定技能1号の在留期間が通算5年と短いためです。
特定技能制度の目的は、日本の人手不足が深刻になりやすい特定分野・業種の安定的な人材確保です。
日本国内で技術や経験を積んだ優秀な外国人材を5年で手放してしまうことで、再び人手不足になる可能性があります。
また、在留期間が5年と短いことで、優秀な人材を日本国内に呼び込めていないと考えられます。
特定技能2号は在留期間が無期限のため、外国人に長く働いてもらうことが可能です。
日本国内による企業の人手不足
将来的に日本企業の人手不足が予想されるため、解決策の1つとして拡大したとも考えられるでしょう。
すべての産業ではありませんが、日本国内では人材を募集してもなかなか集まらない業種があります。
特に人手不足に陥りやすい業種としては、時期や状況によって多くの働き手が必要になる旅館・ホテル、飲食業などがあり、その他にも少子高齢化の影響で若い働き手が少なくなっている業種があります。
国外から優秀な人材を獲得するため
優秀な外国人材は、日本だけではなく他の国々でも多く必要としているため、近年は先進国でも獲得競争が激化している状況です。
海外で働く日本人が近年増えているので、日本の人材不足はさらに加速することが予想されます。
特定技能2号の対象分野拡大は、多種多様なスキルを持つ外国人材を受け入れる窓口を開き、国力を高めるための重要な動きと考えられます。
特定技能1号と2号について
特定技能制度は、それぞれ特徴が違います。現状は特定技能1号の人材が国内に多く従事していますが、特定技能2号で働いている優秀な人材は少ないです。
- 特定技能1号の概要
- 特定技能2号の概要
それぞれの概要について以下で詳しく解説します。
特定技能1号の概要
特定技能1号は、14業種、12分野です。
実務の知識や仕事の経験、能力などの技能水準を認められた外国人が、現場や事業所で作業員として直接雇用され従事できる制度です。
特定技能1号の対象分野は以下の通りです。
- 農業
- 建設業
- 漁業
- 造船・船舶業
- 素形材・産業機械・電気電子情報関連産業
- 自動車整備業
- 宿泊業
- 介護業
- 航空業
- ビルクリーニング業
- 外食業
- 飲食料品製造業
特定技能1号は、在留期間の年数上限が5年と決められています。
在留期間は1年・6ヶ月・4ヶ月の期限があるため更新の申請が必要で、通算5年までの更新が可能です。
また、特定技能1号は家族の帯同ができません。
特定技能1号の外国人を採用した企業は外国人を支援する必要があり、過去2年間自社に特定技能1号の外国人が在籍していなければ、「登録支援機関」に支援委託をしないといけないというルールがあります。
特定技能2号の概要
特定技能2号は、特定の産業分野の技術や知識、経験以外にも求められる能力があります。
現場の工程管理や作業員の指導など、上位のポジションとして監督できる熟練した技能水準があると認められる必要があります。
また、特定技能2号は、特定技能1号と違い在留期間が無制限です。
在留期間の更新は、3年・1年・6ヶ月のいずれかで上限はありません。
特定技能2号では、要件がクリアできれば日本国内に家族が定住することでき、場合によっては永住権の要件を満たせる可能性があります。
また、特定技能2号の外国人は登録支援機関への委託が不要です。
特定技能2号へ移行した外国人材は日本で生活している期間が長く、安定した環境や能力が備わっていると考えられるので、支援は不要となっています。
2023年に新たに特定技能2号に追加された分野
ここからは、新たに追加された分野について紹介します。
特定技能1号の特定産業12分野のうち、造船・舶用工業と建設の2分野のみでしたが9分野追加されています。
追加された9分野は以下の通りです。
- ビルクリーニング業
- 素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業
- 自動車整備業
- 航空業
- 宿泊業
- 農業業
- 漁業業
- 飲食料品製造業
- 外食業
造船・舶用工業の(溶接区分以外)も、新たに受入れが可能になりました。
特定技能1号の特定産業分野になる「介護」は、専門的・技術的分野の在留資格があるため、特定技能2号の対象分野にはなっていません。
特定技能1号や2号を取得するには
特定技能1号と特定技能2号を取得する方法には違いがあるため、外国人材を自社に雇用したいと考えている事業者は事前に確認しておきましょう。
特定技能1号の取得方法
特定技能1号を取得するためには、以下の2つの方法があります。
- 特定技能測定試験と日本語能力水準試験の2つに合格する方法
特定技能試験では、特定分野ごとの試験内容になります。 - 技能実習2号から移行する方法
技能実習2号を「良好に修了」と評価されていること、特定技能1号へ移行する業務と技能実習で行った作業内容に関係があるか認められることが条件です。
技能実習2号から移行する際の特例として、試験が免除されるケースもあります。
免除されるための条件は、3年間の技能実習を良好に修了し、特定技能1号の業務内容と職種が関係していることが必要です。
特定技能2号の取得方法
現時点で特定技能2号を取得する方法は、特定技能1号からの移行のみです。
まずは特定技能1号を取得し、各分野の試験を受けて合格することで特定技能2号を取得できます。
特定技能2号へ移行するための試験は現在整備中ですが、建設分野、製造分野(素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業)など、試験日やサンプル問題が各専用ホームページで公開されています。
詳しくは下記を参照してください。
特定技能2号の人材を雇用するために
自社の人材不足を解決するためにも、特定技能を取得した外国人を雇用して活用したいと考えている企業も多いでしょう。
ここからは、採用を検討している企業が事前に準備することを解説します。
企業が外国人を雇用する前に準備することは以下の通りです。
- 自社の業種や業務内容が特定技能人材を雇用できるか確認する
- 雇用するために何が必要なのか情報収集をする
- 外国人人材に自社で従事するメリットを整理する
自社の業種や業務内容が特定技能人材を雇用できるか確認する
最初に企業として考えないといけないことは、自社の業種や業務内容が特定技能を取得した人材を雇用できるのか確認することです。
次に、外国人材を採用したらどのポジションの仕事を任せるのか決めることが大事です。
特定技能2号の外国人なら、作業現場の管理監督ができる能力があると認められているので、上手に活用できれば自社の成長や売上げUPにも大きく貢献してくれるでしょう。
雇用するために何が必要なのか情報収集をする
外国人材を雇用するために何が必要なのか、事前に情報収集しておきましょう。
外国人は文化や風習の違いなどが異なります。
外国人材が気持ちよく働ける環境を作り、自社で不自由なく従事できるような体制を整備する必要もあるでしょう。
また、自社での支援が難しければ、特定技能1号の雇用をサポートしてくれる「登録支援機関」に依頼する方法もあります。
登録支援機関は特定技能1号の人材をサポートする機関ですが、特定技能1号の外国人を雇用していて「登録支援機関」と契約している企業なら、契約先に相談してみるのもひとつの手です。
外国人人材に自社で従事するメリットを整理する
日本の少子高齢化は今後も進むため、人手不足はさらに深刻になると予想されます。
そのため、特定技能2号を取得して日本で働く外国人材は、将来的に増加してくるでしょう。
また、特定技能人材は国内で転職もできるため、年収や福利厚生などの良い条件を提示している企業に自社から転職することもありえます。
そのため、特定技能2号の優秀な外国人人材を獲得したなら、他社に転職させないために自社で従事するメリットを伝えて長期間働いてもらえるような関係を構築していきましょう。
今後さらに外国人を雇用する企業が増加すると予測されます。
今から自社で従事するメリットを整理しておき、いつでも特定技能2号の人材にアピールできる準備することをおすすめします。
まとめ
日本は将来的に少子高齢化が進むと考えられていて、現在よりもますます人材不足が懸念されています。
人手不足の課題を解決するためにも、外国人の優秀な人材に国内で気持ちよく働いてもらう必要があります。
特定技能2号の特定分野や業種を拡大しても、すぐには人材不足が解決できないかもしれませんが、将来的には日本人だけでなく外国人の労働力も必要です。
そのために、優秀な外国人人材が日本で長期間働ける仕組みや環境を整備する必要があるでしょう。