近年、日本の多くの企業が人材不足の解消や技術継承のため、東南アジアをはじめ多くの国から外国人を積極的に受け入れ雇用しています。
本記事では、外国、特にフィリピンから人材を雇用するまでに必要な書類・手続きの流れ・代行サービスなどについて、くわしく解説していきます。
フィリピン人を雇用するための申請手続きの流れ
まずフィリピン人を雇用するのに必要な申請・手続きについて、解説します。
フィリピン人を日本で受け入れるには、次の3つの手続きが原則として必要です。
- MWO(旧POLO)申請
- OEC(海外就労証明書)取得
- フィリピン人の在留資格申請と査証(ビザ)取得
MWO(旧POLO)申請とは、雇用するフィリピン人の「OEC」(海外就労証明書)の取得を目的とした必要な手続きのことを言います。
「OEC」取得がないと、フィリピン人の在留資格が取得できない・フィリピン人は出国審査時に出国を拒否されます。
MWO申請をすると、MWO認証許可を受けて、フィリピン人を採用できる日本の企業としてフィリピン政府機関から認定・登録されます。
また在留資格申請手続きについては、受け入れるフィリピン人の在留資格別に、申請手続きが異なります。
フィリピン人を雇用する際の、主な在留資格は次の4つです。
- 高度専門職(1号・2号):教授・研究・教育など
- 技術・人文知識・国際業務:エンジニア・英語教師など
- 特定技能(1号・2号):介護・飲食料品製造業など
- 技能実習(1号・2号・3号)
フィリピン人を雇用する時には、必ず「ビザ取得」・「MWO申請」をメインに手続きを進めていきましょう。
また「OEC」取得は、次のようなケースでは不要なので、注意してください。
- 就労ビザでない在留資格で在留する場合(留学等)
- 日本人の配偶者・定住者・永住者の在留資格で在留する場合
- フィリピン人の帰国時の場合
反対に、次のケースでは「OEC」取得が必須です。
- 就労可能ビザで在留する場合
- 留学ビザから就労ビザに変更する場合
- 日本で転職する場合
次にフィリピン人を含めた外国からの人材を雇用するまでの流れについては、大きく次の2とおりに分かれています。
- 技能実習・留学など、その他の在留資格をもって日本国内に既に在留している場合
- 海外から特定技能の在留資格を持って新規で日本で就労する場合
フィリピン人雇用までの流れについて、上記2つのケース別にくわしく解説されています。
引用:出入国在留管理庁「受け入れ機関の方」(2024年11月9日現在)
MWO申請手続きの概要
MWO申請手続きは、次のとおりの流れです。
- 受入企業(管理団体)がMWO(旧POLO)に必要書類を作成・提出する
- MWOから認証を受ける
MWOが認証企業に対してフィリピン人を採用する活動ができると認めること
- MWO認証後、フィリピン送出機関を通じてDMW(移住労働者省)に登録する
- OEC(海外就労証明書)を受ける
「MWO」の旧制度は「POEA」(フィリピン海外雇用庁)と「POLO」(フィリピン海外労働事務所)の2当局を通じてフィリピン人の海外雇用の手続きをしていました。
POEA・POLOなどのフィリピン当局は組織改編をうけ、現在MWOにまとめられて、手続きする窓口は一本化しました。
POEAとは、海外で働くフィリピン人の雇用を促進し、フィリピン人の権利を保護するフィリピン現地の政府機関です。
またPOLOとは、POEAの海外拠点のことで日本にも設置され、現地での雇用条件の確認・手続きを行います。
フィリピン政府機関「MWO」(移民労働局)について
MWOとは、「DMW」(移住労働者省)の出先機関として、日本で働くフィリピン人の権利を守る活動をおこなうフィリピンの政府機関です。
MWOは日本において、「MWO東京」(在東京フィリピン共和国大使館移住労働者事務所)と、「MWO大阪」(在大阪フィリピン総領事館移住労働者事務所)の2つのMWO拠点があります。
またDMWとは、旧「POEA」(フィリピン海外雇用庁)のことを言います。
DMWは、フィリピン人労働者の保護や海外労働の手続き、エージェント会社の監督、雇用主の情報登録などをおこなうフィリピン政府機関です。
フィリピン政府機関「POEA」の役割
旧「POEA」(フィリピン海外雇用庁)はフィリピン人労働者の海外就労を管理・海外雇用主の雇用条件審査・海外就労証明書(OEC)の発行を行う機関でした。
2022年に「DMW」(移住労働者省)に統合され、フィリピン人の権利保護・福利促進を目的として機能しています。
MWO申請手続きの各段階の詳細
フィリピン人を雇用する際に必要なMWO申請の詳細は、次のとおりです。
- POEA登録エージェントと契約
- 必要書類の提出
- 書類審査
- 面接日程通知と面接実施
- 許可書類の送付
- POEA登録手続き・認定証交付
- 在留資格申請とビザ手続き
- 日本入国
MWO申請に必要な書類とMWO申請の内容
MWO申請には、送出機関(フィリピン側)の選定・募集取り決めの締結が必要です。
送出機関に対しては、基本的に申請書類の記載を含めて必ず英語対応が求められます。
そのため、英語に自信のない担当者様は、MWO申請代行・サポートなどのサービスを利用し、提携送出機関を紹介してもらうとスムーズに許可申請が可能です。
ここからは、MWO申請に必要な具体的な書類について説明します。
MWO申請時に必要な書類一覧
MWO(旧POLO)申請に必要な書類は次のとおりです。
- MWO申請書
- ビジネスライセンス・許可証
- 会社概要
- 登記簿謄本(履歴事項証明書)(法人の場合)
- 営業許可証・納税証明書(個人事業主の場合)
- 職務内容、義務、責任のリスト、職種の説明
- 受入機関とフィリピン送出機関の間の協定書
- 送出機関のPOEAライセンスのコピー
- 送出機関のオーナーのパスポートのコピー
- 受入機関/送出機関の代表者パスポートのコピー
- 求人票
- 給与明細
- 雇用契約書
各種申請様式は、次のサイトから「MWO大阪ダウンロード様式」を参照ください。
MWO申請書類作成の注意点とポイント
書類作成の注意点は以下のとおりです。
- MWO申請の基準などに関連するガイドラインなどの情報公開がないこと
- MWO担当官の裁量で必要書類の訂正・追加などの指示がバラバラなこと
- 上記必要書類には、すべて英語翻訳添付が必要なこと
- MWO申請許可までの必要日数は長くなること
- 申請書類等に誤字・不備・訂正などがあれば、再提出を求められること
書類作成のポイントとしては、英語翻訳と日本語書類の整合性・翻訳ミスがあると申請書類全体の信頼が落ち、申請から許可をもらうまで半年以上かかるケースもあります。
受け入れ申請からフィリピン人出国・雇用開始までは余裕をもってスケジュールを組みましょう。
MWO申請書類提出のタイミングと提出先
MWO(旧POLO)申請書類提出は、フィリピン人を採用する前段階で提出しましょう。
理由は、MWO認証を未取得の会社がフィリピン人を直接雇用して採用活動を行うことは違法だからです。
MWO申請書類は、次の2事務所に提出してください。
- 「MWO東京」(在東京フィリピン共和国大使館移住労働者事務所)
- 「MWO大阪」(在大阪フィリピン総領事館移住労働者事務所)
提出する登記簿謄本などの書類は交付日から3カ月を過ぎると書類の取り直しが必要なので、注意しましょう。
レターパックなど郵送で提出後、約15営業日でフィードバックがあります。
MWO担当官からは、追加書類・翻訳の訂正などが1~2回求められることが多いようです。
MWO申請は、書類の訂正などを重ねて時間をかけて何度も審査を受ければ、承認を受けることが可能です。
日本の受け入れ企業は、申請にかかる期間・人材担当者の業務時間・長期化による影響(シフト組み・生産性など)をよく考慮して、自社で行うor専門の代行業者を利用するか?を判断しましょう。
MWO申請手続きをサポートする機関や代行サービスの活用
MWO申請手続きの流れ・申請書類・英語翻訳などが業務の負担になる・知識がないと思われる企業の人材担当者は、サポート・代行サービスを利用しましょう。
ここからは、代行サービスなどについて、くわしく説明します。
行政書士や代行業者の役割
フィリピン人の受け入れの手続きで必須のMWO申請・在留資格申請~ビザ発給までを行政書士や代行業者がサポートを代行で手続きします。
企業の担当者だけでMWO申請手続き・英語翻訳などに自信がない場合は、行政書士事務所・代行サービスを検討しましょう。
フィリピン人をスピーディーに確実に雇用することが可能です。
MWO申請一括サポートの内容と利用方法
MWO申請手続き全般を代行するサポートの内容は、次のとおりです。
- 申請書類の英語翻訳作成
- 各種申請書類の記載例
- 記載内容の添削
- MWO審査での訂正サポート
- MWO面接時の通訳対応
- 送出機関の紹介 など
一括サポートを利用するには、まず相談窓口あてにメール・電話などでコンタクトを取り、サポート内容・料金・所要期間・実績・保証の有無などを確認しましょう。
信頼できるMWO申請代行サポート会社の選び方
適切な代行サポート会社を選ぶには次のポイントが大事です。
- 行政書士や外国人雇用支援業者などのプロによるサービスであること
- 迅速・確実に申請手続きが可能な業者であること
- サポートできる部分と自社でやる部分を明確にすること
- MWO審査の訂正対応などの追加対応・料金を把握すること
代行サポートを選ぶ際は費用面も大事ですが、サービスの内容・担当者との相性・レスポンスの速さなども含めて一番良いなと感じる代行サポート会社を選びましょう。
MWO申請手続きにかかる費用と時間
MWO申請手続きにかかる費用と時間については、代行会社・行政書士事務所などによって幅があります。
ここからは、おおむねの費用・必要日数を解説していきます。
MWO申請手続きにかかる費用の目安
MWO申請についての代行費用は10万円~25万円ほどです。
代行費用の内訳は次のとおりです。
また次の内容については、別途実費が必要です。
- 公証人による認証手続き(公証人役場・11,000円)
- 郵送費・面接などの交通費
MWO申請手続きに必要な時間の見積もり
MWO申請から認可が下りるまでの期間は、通常半年~10カ月ほどかかると言われています。
フィリピン人をスムーズに雇用するためにも、全体の流れを把握したうえで、自社でできない手続きを明らかにして、必要なサポートだけ、たとえば英語翻訳・面接通訳などを利用すると手続きがスムーズにいくでしょう。
MWO申請費用や時間を削減する方法
MWO申請については、英語での情報など分からないことが多いので、フィリピン人の受け入れが初めての企業は、ノウハウ代・時間代と考えてプロの行政書士・サポート会社などの代行サービスを利用するのがおすすめです。
MWOで一度手続きを経験すれば、2回目の受け入れの際、フィリピン人雇用の法改正などがなければ、同様に自分たちで手続きを進めることが可能でしょう。
MWO申請サポートの案内について
MWO申請サポートでは、ここまでに解説してきたフィリピン人雇用に必要なMWO申請で、60日かかると言われる申請を最短3日で申請することなどが可能なサービスを提供しています。
たとえばフルパッケージのMWOサービスプランは「98,000円」とリーズナブルな手数料で、次のとおりのサポートが受けられます。
- 送出機関の紹介
- 記入解説動画
- 英語翻訳
- メール・電話サポート
- MWO面接通訳手配
ほかにもサポート体制が充実しており、安心・確実・お手頃な料金でMWO申請を支援可能です。
資料請求ほかについて、下記のリンクから確認ください。
日本に在住しているフィリピン人を雇用する方法について
これまでは、フィリピンから日本に来てもらいフィリピン人を受け入れるケースでの手続きを説明してきました。
ここからは、現在日本に在住しているフィリピン人を雇用するための手続きなどについて解説していきます。
日本に在住中のフィリピン人を雇用する際は、MWO申請などの手続きは必要か?
基本的には、すでに就労ビザを取得して日本に在住するフィリピン人を雇用する際にMWO申請は必要です。
ただし、次の在留資格を取得して日本に在住するフィリピン人の雇用については、MWO申請は不要です。
- 企業内転勤
- 永住者
- 定住者
- 日本人の配偶者
- 特定活動(就労が許可されていないもの)
フィリピン人を受け入れた後のフィリピン人とのトラブル防止で、注意しておくこと
日本人と宗教・文化・生活習慣などが違い、日本での生活・ルールなどになじむまでに時間が必要ですが、次の点に注意しましょう。
- 人前で叱らないこと
プライドの高い人が多いので日本式ではなく個別に指導しましょう。
- 遅刻や無断欠勤などに注意すること
管理団体とともに日本のルール・マナーをもって問題点を指導しつつも、良好な関係を構築しましょう。
まとめ
フィリピン人雇用の申請に必要な手続きの流れなどについては、理解できたでしょうか?
申請書類の準備・翻訳などが「難しい」「時間がかかりそうだ」と感じた企業様は申請手続きを簡単・スムーズに進めるためにも、信頼できるサポートを受けることも必要でしょう。
本記事で案内した情報を参考にし、ぜひ効率よく申請を進めましょう。