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日本語指導とは?対象別の指導方法・ポイント・現場で役立つ実践例を解説

日本語 指導

グローバル化が進む現代社会において、日本語指導の重要性はますます高まっています。外国人児童・生徒、留学生、外国人労働者など、日本語学習を必要とする人々は年々増加しており、教育現場や地域社会では効果的な日本語指導が求められています。

本記事では、日本語指導の基本的な定義から、対象者別の指導方法、現場で実践できる具体的なアプローチまで、日本語指導に関わるすべての方に役立つ情報を網羅的に解説します

これから日本語指導に携わる方、すでに現場で活動されている方、いずれにとっても実践的な知識を得られる内容となっています。

\ 日本語学習システム/

目次

日本語指導の定義と必要とされてている背景

「にほんご」のブロックとノート、ペンが並ぶ日本語学習をイメージした明るい写真。

日本語指導の基本的な概念を正しく理解することは、効果的な指導を行う第一歩です。ここでは日本語指導の定義や、現代社会において日本語指導が必要とされる背景について詳しく解説します。

日本語指導の定義

日本語指導とは、日本語を母語としない人々や、日本語能力に課題を抱える人々に対して、日本語の習得を支援する教育活動を指します。単に言語としての日本語を教えるだけでなく、日本社会で生活し、学び、働くために必要なコミュニケーション能力を育成することが目的です。

日本語指導には、日常生活で使用する基本的な会話から、学校での教科学習に必要な学習言語、ビジネスシーンで求められる専門的な日本語まで、幅広い領域が含まれます。学習者の年齢、背景、学習目的に応じて、適切な指導内容や方法を選択することが重要です。

また、日本語指導は言語教育にとどまらず、日本の文化や習慣、社会的なルールの理解も含めた総合的な支援活動としての側面を持っています。言語を通じて、学習者が日本社会に適応し、自己実現を図れるよう支えることが日本語指導の本質といえるでしょう。

日本語指導が必要とされている背景

日本社会における日本語指導の必要性は、複数の社会的背景から生まれています。

  1. 在留外国人の増加

法務省の統計によれば、日本に在留する外国人数は年々増加傾向にあり、それに伴い日本語学習を必要とする人々も増えています。技能実習生、留学生、永住者、日本人の配偶者など、多様な背景を持つ外国人が日本で生活しており、彼らが社会に適応し、自立した生活を送るために日本語指導は不可欠です。

  1. 教育現場における課題

外国にルーツを持つ児童・生徒の増加により、学校現場では日本語指導を必要とする子どもたちが増えています。これらの子どもたちが学習内容を理解し、学力を身につけるためには、適切な日本語指導が必要です。日本語能力の不足は学力格差につながる可能性があり、教育機会の平等を保障する観点からも日本語指導は重要な役割を果たします。

  1. 労働市場における需要

人手不足が深刻化する中、外国人労働者の受け入れが拡大しており、企業では外国人社員が円滑に業務を遂行できるよう日本語研修を実施するケースが増えています。職場でのコミュニケーション能力は業務効率や安全性にも直結するため、企業にとって日本語指導は重要な投資となっています。

日本語指導の主な内容

日本語指導の基盤となるのは、言語の4技能である「聞く」「話す」「読む」「書く」の育成です。これらの技能はそれぞれ独立したものではなく、相互に関連しながら発達していきます。

「聞く」

「聞く」力は、日本語を理解する基礎となります。音声の識別、語彙の認識、文法構造の把握、文脈からの意味推測など、さまざまな要素が含まれます。初級段階では日常的な挨拶や簡単な指示を聞き取ることから始まり、上級では講義やニュースなど複雑な内容を理解できるようになります。

「話す」

「話す」力は、自分の考えや気持ちを日本語で表現する能力です。発音の正確さ、適切な語彙や文法の使用、場面に応じた表現の選択などが求められます。初級では自己紹介や簡単な質疑応答、中級では説明や意見交換、上級では議論やプレゼンテーションができることを目指します。

「読む」

「読む」力は、文字情報から意味を理解する能力です。ひらがな、カタカナ、漢字の習得に加え、文章構造の理解、語彙力の拡充、読解スピードの向上などが課題となります。日常的な掲示物やメールから、新聞記事、専門書まで、段階的に読解力を高めていきます。

「書く」

「書く」力は、文字を使って自分の考えを表現する能力です。文字を正しく書く技能、文法に則った文を作る力、論理的に文章を構成する力などが必要です。メモや短い文から始まり、手紙、レポート、論文へと段階的に書く内容を高度化していきます。

これら4技能をバランスよく育成することが、総合的な日本語能力の向上につながります。

日本語指導の方法とアプローチ

黒板とオレンジ色の椅子が並ぶ教室の風景。日本語教師を目指す初心者向けの学習や授業準備のイメージに最適な写真。

日本語指導には多様な方法とアプローチがあり、学習者の特性や学習環境に応じて適切な方法を選択することが効果的な指導につながります。

レベル別指導(初級・中級・上級)

日本語能力は学習者によって大きく異なるため、レベルに応じた指導を行うことが重要です。一般的には初級・中級・上級の3段階、またはさらに細分化したレベル設定が用いられます。

初級レベル

初級レベルでは、日本語の基礎を固めることが目標です。ひらがな・カタカナの読み書き、基本的な漢字(100〜300字程度)の習得、基礎文法の理解、日常会話で使う基本語彙(1000〜2000語程度)の習得などが中心となります。自己紹介、買い物、道を尋ねるなど、生活に密着した場面での簡単なコミュニケーションができることを目指します。

指導方法としては、絵カードやジェスチャーを多用した視覚的な支援、繰り返しによる定着、ロールプレイを通じた実践練習などが効果的です。初級段階では学習者の母語を活用した説明も有効な場合があります。

中級レベル

中級レベルでは、より複雑な表現や抽象的な内容を扱います。漢字は500〜1000字程度、語彙は4000〜6000語程度まで拡大します。敬語の基本や、意見を述べる、理由を説明する、提案するなど、より高度なコミュニケーション機能を習得します。

中級では、新聞記事やニュース、簡単な物語など、まとまった文章を読む活動が増えます。また、短い作文やレポートを書く練習も行います。日本語だけで授業を進めることが基本となり、日本語を使って日本語を学ぶ「直接法」が主流です。

上級レベル

上級レベルでは、ネイティブに近い日本語能力の獲得を目指します。漢字2000字以上、語彙10000語以上の習得が目標です。複雑な文章の読解、論理的な文章の作成、フォーマルな場面での適切な言語使用などを学びます。

上級では、ディスカッションやディベート、プレゼンテーション、学術論文の読解と作成など、高度な言語活動が中心となります。言語そのものの学習よりも、日本語を使って何かを学ぶ、日本語で何かを達成する活動に重点が移ります。

個別指導と集団指導の違い

日本語指導には個別指導と集団指導の二つの形態があり、それぞれに利点と課題があります。

個別指導

個別指導は、一対一で学習者の個別のニーズに対応できる点が最大の利点です。学習者の理解度に合わせてペースを調整でき、つまずいている箇所を丁寧に指導できます。学習者が恥ずかしがらずに質問できる環境でもあり、発話の機会も豊富に確保できます。

また、学習進度が大きく異なる場合や、特定の課題に集中的に取り組む必要がある場合にも個別指導が適しています。

集団指導

一方、集団指導では、同じレベルの学習者が集まってクラスで学ぶ形態です。クラスメートとの交流を通じて、日本語を使ったコミュニケーションの実践練習ができる点が利点です。ペアワークやグループワークを通じて、自然な会話の流れを体験できます。

また、他の学習者の発言を聞くことで、自分とは異なる表現方法を学んだり、間違いから学んだりする機会もあります。仲間と一緒に学ぶことで、モチベーションの維持にもつながります。

集団指導の課題は、学習者間の能力差への対応です。同じレベルに分類されていても、個々の得意・不得意は異なります。また、発話の機会が個別指導に比べて限られるため、授業設計の工夫が必要です。

多くの現場では、個別指導と集団指導を組み合わせたハイブリッド型の指導が行われています。通常は集団で学び、必要に応じて個別のサポートを提供するアプローチが、効率性と効果性のバランスを取ることができます。

ICT・教材を活用した日本語指導

ICT(情報通信技術)の発達により、日本語指導の方法は大きく広がっています。デジタル教材やオンラインツールを活用することで、より効果的で柔軟な指導が可能になっています。

オンライン日本語学習アプリやウェブサイトでは、文字練習、語彙学習、文法練習、聴解練習など、様々な学習コンテンツが提供されています。ゲーム感覚で学べるアプリは、学習意欲を高めるのに効果的です。自分のペースで繰り返し学習できる点も、デジタル教材の利点です。

動画教材も有効なツールです。YouTubeなどのプラットフォームには、日本語学習のための多様なコンテンツが公開されています。ネイティブスピーカーの発音を繰り返し聞いたり、日本の生活や文化を映像で理解したりすることができます。

オンライン会議システムを活用した遠隔指導も普及しています。地理的な制約を超えて、専門的な指導者による支援を受けられるメリットがあります。画面共有機能を使えば、教材の提示も容易です。

翻訳アプリや辞書アプリも、学習の補助ツールとして有用です。分からない語彙を即座に調べられることで、学習の流れが中断されにくくなります。ただし、機械翻訳に過度に依存せず、自分で考え、表現する力を育てることのバランスが重要です。

デジタル教材の利点は多いですが、対面でのコミュニケーションや、紙の教材を使った学習も依然として重要です。ICTと従来の教材・方法を適切に組み合わせることで、より効果的な日本語指導が実現できます

やさしい日本語を使った指導方法

「やさしい日本語」とは、外国人にも分かりやすいように配慮した日本語のことです。1995年の阪神・淡路大震災をきっかけに考案された概念で、災害時の情報伝達手段として注目されましたが、現在では日常的なコミュニケーションや教育現場でも広く活用されています。

やさしい日本語の基本原則には、簡単な語彙を使う、文を短く切る、漢字にはふりがな(ルビ)をつける、外来語や略語を避ける、主語を明示する、能動態を使う、二重否定を避けるなどがあります

例えば、「本日は悪天候のため、開催を見合わせます」という文は、「今日は天気が悪いです。だから、やりません」と言い換えることができます。このように、難しい語彙や複雑な構文を避けることで、日本語学習者にも理解しやすくなります。

日本語指導の現場では、教師が指示や説明をする際にやさしい日本語を使うことで、学習者の理解を助けることができます。特に初級段階の学習者には、やさしい日本語での説明が不可欠です。

また、教材作成においても、やさしい日本語の原則を適用することで、学習者にとって理解しやすい教材を作ることができます。学校の配布物やお知らせを、やさしい日本語版で作成する取り組みも広がっています。

ただし、やさしい日本語だけに頼りすぎると、学習者が通常の日本語に触れる機会が減り、上達が妨げられる可能性もあります。学習者のレベルに応じて、適度に難しい日本語にも触れさせ、徐々にレベルアップを図ることが重要です。

日本語指導を行う際のポイント

人差し指を立ててポイントを説明している笑顔の女性

効果的な日本語指導を行うためには、いくつかの重要なポイントを押さえておく必要があります。

学習者の背景を理解する

日本語指導において、学習者一人ひとりの背景を理解することは極めて重要です。学習者の母語、文化的背景、教育歴、来日理由、生活環境などは、学習の進み方や課題に大きく影響します。

母語の言語体系は、日本語学習に影響を与えます。例えば、中国語や韓国語を母語とする学習者は、漢字圏出身であるため漢字の学習で有利な面がありますが、発音や文法では固有の困難を経験します。一方、英語やスペイン語などを母語とする学習者は、文字の習得に時間がかかりますが、外来語の理解は比較的容易です。

教育歴も重要な要因です。母国で十分な教育を受けてきた学習者は、学習方法を理解しており、抽象的な概念の理解も早い傾向があります。一方、学習経験が限られている学習者には、学習習慣の形成から支援する必要がある場合もあります。

来日の理由や経緯も、学習意欲や目標に影響します。自ら選んで来日した留学生や就労者と、親の都合で来日した子どもでは、学習へのモチベーションが異なる場合があります。また、難民や人道的配慮による在留者の場合、トラウマやストレスが学習の障壁となることもあります。

これらの背景を理解した上で、個々の学習者に適した指導計画を立て、必要な配慮を行うことが、効果的な日本語指導につながります。

無理のない目標設定

日本語指導では、学習者の現状と将来の目標を見据えた、現実的で達成可能な目標設定が重要です。目標が高すぎると挫折につながり、低すぎると成長が停滞します。

短期目標と長期目標を組み合わせた段階的な目標設定が効果的です。例えば、長期目標として「1年後に日本語能力試験N3に合格する」を設定し、そのための短期目標として「今月はひらがな・カタカナを完全にマスターする」「3ヶ月後には日常会話で基本的な受け答えができる」などの具体的な目標を設定します。

また、学習者自身が目標設定に関わることも重要です。教師や指導者が一方的に目標を決めるのではなく、学習者の希望や必要性を聞き取り、一緒に目標を設定することで、学習への主体性と責任感が育ちます。

定期的に目標の達成度を確認し、必要に応じて目標を見直すことも大切です。学習が順調に進んでいる場合は目標を引き上げ、困難が生じている場合は目標を調整するなど、柔軟な対応が求められます。

モチベーションを保つ工夫

日本語学習は長期にわたるため、学習者のモチベーションを維持することが非常に重要です。モチベーションが低下すると、学習効果も大きく下がってしまいます。

まず、成功体験を積み重ねることがモチベーション維持の基本です。小さな達成であっても認めて褒めることで、学習者は自信を持つことができます。「できた」という実感が、次の学習への意欲につながります。

モチベーションを保つために効果的な方法
  • 成功体験を積み重ねる
  • 学習内容を学習者の興味や必要性と結びつける
  • 学習方法に変化をつける
  • 仲間との交流を取り入れる
  • 学習の進捗を可視化する
  • 教師や指導者が情熱を持って指導する

これらの方法を実践することで、学習者は学習の意義を実感しやすくなります。例えば、趣味や仕事に関連したテーマや実生活で使える内容を取り入れることで、日本語が「使える知識」であると感じられるようになります。

また、ゲームや歌、動画、フィールドワークなどを取り入れて学習方法に変化をつけると、学習への飽きを防ぐことができます。さらに、同じ目標を持つ仲間との交流や日本人とのコミュニケーションを通して、日本語を使う楽しさを感じることができます。

加えて、学習記録やポートフォリオを活用して学習の進捗を可視化することで、自分の成長を実感し、継続的な学習意欲につながります。教師や指導者が前向きで熱意を持って指導する姿勢も、学習者のモチベーションを高める重要な要素です。

日本語指導でよくある課題と対策

日本語指導の現場では、様々な課題に直面します。これらの課題を理解し、適切な対策を講じることが重要です。

  1. 学習の停滞

学習が一定期間進むと、急に上達が感じられなくなることがあります。これは学習の自然なプロセスの一部ですが、学習者は不安や焦りを感じます。

対策

学習方法を変えてみる、新しい教材を試す、より実践的な場面で日本語を使う機会を増やすなどがあります。また、小さな進歩にも目を向け、長期的な視点で学習を捉えることを学習者に伝えることも大切です。

  1. 母語の影響

母語の文法や発音、語彙の影響で、日本語の習得に困難が生じることがあります。例えば、英語話者は「あなたは学生ですか」を”Are you a student?”の語順で理解しようとし、混乱することがあります。

対策

学習者の母語と日本語の違いを明確に説明し、意識的に正しい形を練習する機会を多く設けることです。また、間違いを恐れずに発話する雰囲気を作り、間違いを学習の機会として捉えることも重要です。

  1. 学習時間の不足

特に働きながら学ぶ社会人や、家庭の事情を抱える学習者は、十分な学習時間を確保できないことがあります。

対策

短時間でも継続的に学習できるよう、スマートフォンアプリや短い動画教材など、隙間時間を活用できる学習リソースを紹介することです。また、学習の優先順位をつけ、最も必要な内容に焦点を絞る効率的な学習計画を立てることも有効です。

  1. 文化的違いからくる誤解

言語の背後にある文化的価値観の違いから、誤解やコミュニケーションの問題が生じることがあります。

対策

言語指導と共に文化理解の要素を取り入れ、なぜそのような表現をするのか、文化的背景を説明することです。また、異文化間の違いは「正しい・間違い」ではなく「異なる」ものであることを伝え、相互理解を促進します。

  1. 自信の欠如

間違いを恐れたり、完璧を求めすぎたりして、実際のコミュニケーション場面で日本語を使えない学習者もいます。

対策

間違いは学習の一部であることを伝え、失敗を恐れない雰囲気を作ることです。また、成功体験を積み重ね、「伝わった」という実感を持てる機会を多く設けることで、自信を育てます。

日本語指導の現場例

黒板にチョークで書こうとしている手の写真。日本語教師の授業や教育スキルをイメージした教材向け画像。

日本語指導は様々な場面で実践されており、それぞれの現場に応じた工夫や特徴があります。

学校現場での日本語指導

学校現場における日本語指導は、外国人児童・生徒の教育保障において極めて重要な役割を果たしています。文部科学省の調査によれば、公立学校に在籍する日本語指導が必要な児童・生徒数は増加傾向にあり、多様な対応が求められています。

学校での日本語指導には、主に「取り出し指導」と「入り込み指導」の二つの形態があります。

取り出し指導

取り出し指導は、通常の授業時間中に対象児童・生徒に別室に移動してもらい、個別または小集団で日本語指導を行う方法です。日本語能力が限られている初期段階では、集中的に日本語の基礎を学ぶことができる効果的な方法です。

入り込み指導

入り込み指導は、通常学級の授業中に、日本語指導担当者や支援員が教室に入り、個別に支援を行う方法です。クラスの一員として授業に参加しながら、必要な部分でサポートを受けられる利点があります。友達との関係構築や、学級への帰属意識を育む上でも重要です。

多くの学校では、これら二つの方法を組み合わせた指導を行っています。初期段階では取り出し指導の比重を高くし、日本語能力の向上に伴って徐々に入り込み指導へシフトしていく段階的なアプローチが一般的です

また、教科担当教師と日本語指導担当者が連携し、教科学習に必要な語彙や表現を事前に指導する「プレ学習」や、授業後に内容を確認する取り組みも行われています。

学校現場では、母語支援員や通訳の活用も重要です。特に初期段階では、母語を使って学校生活のルールや学習内容を説明することで、理解が深まります。また、保護者とのコミュニケーションにおいても、母語支援は不可欠です。

地域・ボランティアによる日本語指導

地域の日本語教室は、外国人住民の日本語学習を支える重要な場となっています。全国各地で、市民ボランティアが中心となって日本語教室が運営されており、多くの外国人が参加しています。

地域の日本語教室の特徴は、生活に密着した実践的な日本語を学べることです。買い物、病院受診、銀行手続き、子どもの学校とのやり取りなど、実生活で必要な場面を想定した学習が中心となります。教科書的な日本語だけでなく、地域で実際に使われる表現や方言にも触れられます。

また、日本人住民との交流の場としても機能しています。日本語を学ぶだけでなく、日本人と友人関係を築いたり、地域の情報を得たりする場となっており、社会参加のきっかけにもなっています。

地域の日本語教室の運営形態は多様です。自治体が主催するもの、国際交流協会が運営するもの、NPOや市民グループが自主的に運営するものなどがあります。多くの教室では、参加費を無料または低額に設定し、誰でも参加しやすい環境を提供しています。

指導方法も教室によって様々です。テキストを使った体系的な学習を行う教室、対話を中心とした自由なスタイルの教室、特定のテーマ(例:子育て、仕事)に焦点を当てた教室など、それぞれに特色があります。

ボランティアによる指導の課題としては、指導者の専門性のばらつき、運営の継続性、学習者の多様なニーズへの対応などがあります。これらの課題に対して、自治体や国際交流協会が指導者向けの研修を実施したり、教材を提供したりする支援も行われています。

企業研修での日本語指導

企業における日本語研修は、外国人社員が業務を円滑に遂行し、職場に適応するための重要な支援です。グローバル化が進み、外国人材の採用が増える中、多くの企業が日本語研修を実施しています。

企業での日本語研修の特徴は、ビジネス場面に特化した内容であることです。電話応対、メールの書き方、会議での発言、報告書の作成、プレゼンテーションなど、業務で実際に必要となる日本語スキルを重点的に学びます。

また、業界や職種特有の専門用語の習得も重要です。製造業であれば生産管理や品質管理に関する用語、IT業界であればシステム開発に関する用語など、業務遂行に直結する語彙を優先的に学習します。

日本のビジネスマナーや企業文化の理解も、研修内容に含まれます。報告・連絡・相談の重視、時間厳守、名刺交換の作法、会議でのふるまいなど、日本の職場で期待される行動様式を学びます。

企業研修の実施形態は多様です。入社時の集中研修として、数週間から数ヶ月の期間、業務時間中に実施される場合があります。また、業務開始後も、週に数回、業務後や休日に継続的な日本語クラスを設けている企業もあります。

外部の日本語学校や専門機関に研修を委託する企業もあれば、社内で日本語研修担当者を配置している企業もあります。最近では、オンライン研修やeラーニングシステムを活用し、柔軟に学習できる環境を整える企業も増えています。

企業側の課題としては、業務と研修のバランス、投資対効果の測定、研修内容の業務への適用などがあります。効果的な研修のためには、人事部門、現場の管理職、日本語研修担当者が連携し、外国人社員の実際のニーズに応じた内容を提供することが重要です。

オンライン日本語指導の活用例

新型コロナウイルス感染症の拡大を契機に、オンラインでの日本語指導が急速に普及しました。現在では、感染症対策だけでなく、地理的制約を超えた指導の可能性や、学習の柔軟性という観点から、オンライン指導は日本語教育の重要な選択肢となっています。

オンライン指導の最大の利点は、場所を選ばずに指導を受けられることです。遠隔地に住む学習者でも、都市部の専門的な指導者から学ぶことができます。学校現場では、日本語指導の専門家が少ない地域でも、オンラインで外部の専門家の支援を受けられる体制が整いつつあります。

また、録画機能を活用すれば、授業を後から見返して復習することができます。聞き取れなかった部分を繰り返し聞いたり、一時停止してメモを取ったりできるため、学習効果が高まります。

個人レッスンのプラットフォームでは、世界中の日本語教師と学習者をマッチングするサービスが提供されています。学習者は、自分の都合の良い時間に、希望する教師から学ぶことができます。教師側も、在宅で指導できるため、柔軟な働き方が可能になります。

一方、オンライン指導には課題もあります。通信環境の不安定さ、画面越しのコミュニケーションの限界、学習者の集中力の維持などが挙げられます。また、初級レベルでは、文字の書き方を指導したり、発音を細かく確認したりする際に、対面指導の方が効果的な場合もあります。

効果的なオンライン指導のためには、双方向性を重視し、一方的な講義にならないよう工夫することが重要です。チャット機能での質問、ブレイクアウトルームを使った小グループ活動、オンラインホワイトボードを使った協働作業など、様々なツールを活用して、学習者の積極的な参加を促します。

また、オンラインとオフラインを組み合わせた学習も注目されています。通常はオンラインで学習し、定期的に対面で交流会や発表会を行うなど、それぞれの利点を活かしたアプローチが効果的です。

日本語の指導に役立つ資格・スキル

スキルを象徴するキーボードキーのクローズアップ画像。

日本語の指導に携わる上で、特定の資格やスキルが求められる場合があります。ここでは、日本語指導者に関連する資格とスキルについて解説します。

日本語教師に関する資格

日本語指導を専門的に行うためには、いくつかの資格や要件があります。

日本語教師の国家資格化2024年4月から「登録日本語教員」という国家資格制度が開始されました。
この制度により、日本語教師の質の保証と社会的地位の向上が図られています。
登録日本語教員になるには、国が実施する日本語教員試験に合格し、実践研修を修了する必要があります。
日本語教員養成課程
(420時間)
大学や日本語教師養成機関で提供される420時間の養成課程を修了することも、日本語教師としての基礎資格の一つです。
日本語教育の理論、教授法、実習などを体系的に学ぶことができます。
日本語教育能力検定試験日本国際教育支援協会が実施する日本語教育能力検定試験は、日本語教師として必要な知識や能力を測る試験です。
合格することで、日本語教育に関する専門的な知識を持つことの証明となります。
大学での日本語教育専攻大学で日本語教育を主専攻または副専攻として学ぶことも、専門性を高める道です。
言語学、教育学、文化人類学など、幅広い学問的基盤の上で日本語教育を学ぶことができます。

ただし、資格が必須かどうかは、指導を行う場や立場によって異なります。日本語学校など認可を受けた教育機関で教える場合は、上記のいずれかの資格が必要ですが、ボランティアとして地域の日本語教室で支援する場合や、企業内で同僚に教える場合などは、必ずしも資格は必要ありません。

日本語指導者に求められるスキル

資格以上に重要なのは、実際の指導場面で必要となるスキルや資質です

コミュニケーション能力

学習者の話を丁寧に聞き、理解しようとする姿勢が重要です。特に、言語的・文化的背景が異なる学習者とのコミュニケーションでは、共感力や柔軟性が求められます。また、わかりやすく説明する能力、学習者のレベルに応じて言葉を選ぶ能力も必要です。

教材作成・選定能力

既存の教材をそのまま使うだけでなく、学習者のニーズに合わせて教材をアレンジしたり、オリジナル教材を作成したりする能力が役立ちます。実物、写真、動画、ゲームなど、多様な教材を効果的に活用するスキルも重要です。

異文化理解力

学習者の文化的背景を理解し、尊重する姿勢が不可欠です。日本の文化と他国の文化を相対的に捉え、違いを受け入れることが求められます。文化が異なることによって生じる誤解に、適切に対応する能力も必要です。

観察力・分析力

学習者がどこでつまずいているのか、何が理解できていないのかを見抜く観察力が重要です。また、学習者の間違いのパターンを分析し、効果的な指導方法を考える分析力も求められます。

忍耐力と柔軟性

言語学習には時間がかかり、すぐに成果が見えないこともあります。学習者のペースを尊重し、根気強く支援する忍耐力が必要です。また、計画通りに進まない場合でも、状況に応じて柔軟に対応する力も重要です。

未経験でも日本語指導はできる?

日本語指導に興味があるが、経験や資格がない場合でも、携わる方法はあります。

地域のボランティア日本語教室では、資格や経験を問わず、支援者を募集していることが多いです。まずはボランティアとして活動を始め、実践を通じて学んでいくことができます。多くの日本語教室では、ボランティア向けの研修や勉強会を実施しており、基礎的な知識や技能を学ぶ機会が提供されています。

また、「会話パートナー」として、学習者と日本語で会話する交流活動から始めることもできます。教師というよりは友人として、自然な会話を通じて学習者の日本語力向上を支援する役割です。これは特別な技術や知識がなくても始められ、貴重な実践経験となります。

企業で働いている場合、職場の外国人同僚に日本語を教える機会があるかもしれません。業務で使う日本語を教えることは、専門的な日本語教育の知識がなくても、業務知識を活かして行うことができます。

ただし、本格的に日本語教師を職業とする場合や、学校などの教育機関で指導する場合は、前述の資格取得を目指すことが推奨されます。未経験から始めて、実践経験を積みながら、段階的に専門性を高めていくキャリアパスも可能です。

重要なのは、資格や経験以上に、学習者を支援したいという熱意と、誠実に向き合う姿勢です。これらがあれば、未経験でも価値ある支援を提供することができます。

日本語指導の今後と課題

オンライン学習に必要なタブレットとパソコンを抱えている外国人男女

日本社会のグローバル化が進む中、日本語指導の重要性はさらに高まっています。今後の展望と課題について考察します。

外国人増加に伴う日本語指導の重要性

日本における外国人人口は今後も増加すると予測されています。少子高齢化による労働力不足を背景に、外国人労働者の受け入れは拡大傾向にあり、それに伴い日本語学習のニーズも高まっています。

2019年に創設された特定技能制度により、介護、建設、農業など14分野で外国人材の受け入れが進んでいます。これらの分野で働く外国人には、安全で円滑な業務遂行のために、一定レベルの日本語能力が求められます。職場だけでなく、地域社会での生活を送る上でも、日本語能力は不可欠です。

留学生の受け入れも継続的に進んでおり、大学や専門学校では留学生への日本語教育体制の整備が課題となっています。留学生が学校のカリキュラムをこなし、卒業後に日本で活躍するためには、アカデミックな日本語能力の育成が重要です。

また、国際結婚による外国人配偶者、その子どもたち、永住者など、様々な背景を持つ外国人住民が日本社会に定着しています。これらの人々が地域社会の一員として参加し、活躍するためには、継続的な日本語学習の機会が必要です。

今後、日本社会がさらに多様化する中で、日本語指導は単なる言語教育を超えて、多文化共生社会を実現するための重要なインフラとなります。外国人住民が日本語能力を身につけることは、社会参加の基盤であり、人権保障の観点からも重要な課題です。

教育現場・地域社会での課題

日本語指導の需要が高まる一方で、様々な課題も存在しています。

  • 指導者の不足

日本語指導を必要とする児童・生徒や成人の増加に対して、専門的な指導者の数が不足しています。特に、地方では日本語教師や支援者の確保が困難な地域もあります。学校現場では、日本語指導の専門知識を持つ教員が限られており、一般の教員が対応せざるを得ない状況も見られます。

  • 予算・リソースの制約

十分な日本語指導を提供するには、人件費、教材費、施設費などの予算が必要ですが、財政的な制約から十分な支援が提供できない場合があります。特に、中小企業や小規模な自治体では、リソースの確保が課題となっています。

  • 指導の質のばらつき

指導者の専門性や経験の差により、指導の質にばらつきが生じています。特に、ボランティアによる指導では、善意に基づいた活動であっても、効果的な指導方法が取られていない場合があります。指導者への研修や専門的なサポート体制の整備が求められています。

  • 学習者の多様性への対応

学習者の言語背景、年齢、学習目的、学習スタイルは極めて多様です。これら一人ひとりのニーズに応じた個別化された指導を提供することは容易ではありません。画一的なプログラムではなく、柔軟で多様な学習機会の提供が必要です。

  • 継続的な学習機会の不足

初級レベルの日本語教室は比較的多く存在しますが、中級・上級レベルの学習者が継続して学べる機会は限られています。また、学習者のライフステージや生活状況の変化に応じて、柔軟に学習を継続できる仕組みが不足しています。

今後求められる日本語指導の形

これらの課題を踏まえ、今後の日本語指導には以下のような方向性が求められます。

ICTの活用とデジタル化

オンライン指導、eラーニング、AIを活用した学習支援など、技術を活用した新しい指導形態の開発と普及が期待されます。これにより、地理的・時間的制約を超えた学習機会の提供が可能になります。また、学習者の進捗を記録・分析し、個別最適化された学習を提供するシステムの開発も進むでしょう。

地域との連携強化

学校、自治体、企業、NPO、ボランティア団体など、様々な主体が連携して、包括的な日本語学習支援体制を構築することが重要です。それぞれの強みを活かし、役割分担をしながら、学習者のライフステージに応じた切れ目のない支援を提供する必要があります。

日本語教育の質の保証

指導者の専門性向上のための研修体制の整備、指導方法や教材の開発・共有、効果的な実践事例の蓄積と発信など、日本語教育全体の質を高める取り組みが求められます。登録日本語教員制度の定着により、専門職としての日本語教師の社会的地位向上も期待されます。

多様なニーズへの対応

学習者の多様性を前提とした、柔軟で個別化された学習機会の提供が必要です。対面・オンライン、個別・集団、短期集中・長期継続など、様々な学習形態の選択肢を用意し、学習者が自分に合った方法を選べる環境を整えることが重要です。

社会全体での意識向上

日本語指導は、指導者だけの役割ではありません。外国人と接するすべての日本人が、やさしい日本語を使う、異文化を理解する、コミュニケーションの工夫をするなど、社会全体で外国人の日本語学習を支える意識を持つことが、真の多文化共生社会の実現につながります。

まとめ|日本語指導が果たす役割

ノートパソコンとノートを使って学習する二人の外国人。ペンを手に協力しながら勉強を進める様子。

日本語指導は、外国人児童・生徒、留学生、外国人労働者、帰国子女など、多様な背景を持つ人々が日本社会で生活し、学び、働き、自己実現を図るための基盤となります。

効果的な日本語指導には、学習者一人ひとりの背景やニーズを理解し、適切な方法とアプローチを選択することが重要です。聞く・話す・読む・書くの4技能をバランスよく育成し、生活日本語から学習日本語、専門的な日本語まで、段階的に能力を高めていく必要があります。

学校、地域、企業など、様々な現場で日本語指導が実践されており、それぞれの場に応じた工夫がなされています。対面指導に加えて、ICTを活用したオンライン指導も普及し、より柔軟で多様な学習機会が提供されるようになっています。

今後、日本社会のグローバル化がさらに進む中で、日本語指導の重要性は一層高まります。指導者の専門性向上、指導体制の整備、社会全体での意識向上など、取り組むべき課題は多くありますが、これらの課題に向き合い、より良い日本語指導の形を追求していくことが求められています。

日本語指導に携わるすべての人々の努力により、言語の壁を越えて、多様な人々が共に生きる社会の実現に近づくことができます。この記事が、日本語指導に関わる方、これから関わろうとする方にとって、実践の指針となれば幸いです。

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この記事を書いた人

三木 雅史(Masafumi Miki) 株式会社E-MAN会長
1973年兵庫県たつの市生まれ / 慶応義塾大学法学部法学科卒
・25歳で起業 / デジタルガレージ / 電通の孫請でシステム開発
・web通販事業を手掛ける
・2006年にオンライン英会話を日本で初めて事業化
・2019年外国人の日本語教育を簡単、安価にするため
 日本語eラーニングシステムを開発、1万人超の外国人が日々学習中

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