少子高齢化などが原因で建設業界は人手不足が続いています。
ビルやプラントなどでの作業を行う建設業界は危険が伴う仕事でありネガティブなイメージがあることから、事業展開に必要な人手を集めるのに苦労しているのが現状です。
本記事では建設業界の人手不足を解消する対策として人材派遣の活用法や注意点などを解説します。
さらに、特定技能外国人の活用についても触れているため、人材不足解消のための参考にしてください。
建設業界の人材不足の解消に人材派遣を活用するには?
建設業界の人材不足を解消する手段として人材派遣を活用することについて解説します。
建設業では建設業務への派遣が禁止されている
建設業界で人材派遣を活用する際には、建設業務への派遣が禁止されている点に注意しましょう。
建設業は他の業種と比較して労働災害の危険性が高く、責任の所在を明らかにする必要があり、派遣切りも起きやすい点が、派遣が禁止されている理由です。
土木や建築などの建設や保存、修理、変更、解体などの作業や準備に係る業務を人材派遣で対応することはできません。
幅広い業務で派遣業務が禁止されているため事前に確認しておきましょう。
また、施工管理などの業務で派遣された人材が、空き時間などに資材置き場の整理や片付けを行う、建築設備の点検をするといった作業も違法になります。
土木工事や建設工事の現場での作業は原則として人材派遣の活用は認められていないため、外部業者への発注や正社員の募集など別の方法で労働力を確保しなければいけません。
人材派遣はあくまでもオフィス業務における利用を中心に考えましょう。
人材派遣に関する各種制度を正確に理解した上で人材派遣を活用する計画を考える必要があります。
どの職種であれば派遣が可能か
建設の現場で人材派遣ができる主な職種として事務員やCADオペレーター、施工管理、設計などがあります。
営業やその他の技術者なども含めて、現場における需要に応じて派遣スタッフの活用が可能です。
建設業界の業務には高い専門性が求められるものが多く、求人を出して必要な技術のある人材を雇用するのは簡単ではありません。
人材派遣を活用すれば、それぞれの職種に要求されるスキルや資格を持った人材をスムーズに確保できます。
建設業界の人材派遣を活用するメリット
建設業界の人材派遣を企業が活用するメリットは以下の通りです。
- 採用のコストや手間を省ける
- 専門性の高い人材を短期間で確保できる
- 誤って禁止職種の派遣を受け入れずに済む
人材派遣会社が人材の選定から面接日程の調整まで行ってくれるため、採用にかかるコストや手間を省けます。
また、建設業界を専門とする派遣会社を利用すれば、専門性の高い人材を紹介してくれるため、即戦力を短期間で確保できます。
人材派遣は建設業界の人手不足の問題を解消するのに最適です。
建設業界でよくある派遣職種と必要なスキル
建設業界で労働者派遣が活用されている職種と必要なスキルを以下にまとめました。
建設業界で 活用される派遣職種 | 必要なスキル |
---|---|
事務員 | パソコンスキル簿記の知識事務処理能力コミュニケーション能力 |
CADオペレーター | パソコンスキルCADソフトを扱うスキル設計や製図の知識 |
施工管理 | 施工管理技士の資格マネジメント力対応力パソコンスキルコミュニケーション能力 |
設計 | パソコンスキルコミュニケーション能力デザイン力建築や建設に関する専門的な知識 |
ただし、建設業界では労働者派遣が認められている業務が限定されている点に注意が必要です。
建設業界の派遣会社選びと登録方法
建設業界で人材派遣を活用したい企業のために派遣会社選びのポイントや登録方法について詳しく紹介します。
派遣会社の実績と評判
これから派遣会社を選ぶ場合には実績や評判を参考にすることをおすすめします。
派遣会社の中にはサービスの質が悪い会社が含まれており、信頼できない会社と契約をするとトラブルになることがあるからです。
たとえば、派遣されてきた人材が事前に聞いていたスキルを有しておらず、仕事に支障をきたすケースがあります。
また、希望する人材や人数がいつまでたっても派遣されないというケースもあります。
派遣会社の評判を確認すれば、派遣されてくる人材の評価が分かるでしょう。
また、派遣会社を選ぶ際には創業してからどれくらいの実績があるのか調べることも大切です。
創業して間もない派遣会社はノウハウがなく、質の低い人材を提案される可能性があります。
創業してから10年以上の実績があり、多くの取引先に人材を派遣してきた派遣会社であれば、信頼性は高いです。
派遣会社のホームページをチェックして実績を調べてみましょう。
労働者派遣事業の許可を受けた正規の業者であるかの確認も大切です。
サポートと研修体制
派遣会社を選ぶ際にはサポートと研修体制の充実度について確認することも大切です。
派遣会社のサポートには、派遣人材へのサポートと派遣先企業へのサポートが含まれます。
派遣人材が安心して働けるように充実したサポート体制を構築しているならば、業務の質が高まるでしょう。
また、派遣先企業の要望に迅速に対応できて、定期的なフォローができる体制が整っているかどうかも重要になります。
派遣人材の質を担保するための研修体制の充実度もチェックしましょう。
建設業界で派遣人材を活用する場合は専門性を有しているかどうかが大きな問題になります。
充実した研修を受けられる環境のある派遣会社であれば、即戦力として活用できる人材が派遣される可能性は高いです。
派遣先に登録する方法
これから建設業界の企業が派遣人材を利用したいならば、派遣会社に派遣先として登録する必要があります。
派遣先として登録するまでの流れを以下にまとめました。
人材派遣を活用したいならば、まずは派遣会社を選定する必要があります。
対応エリアや専門性、登録者数などさまざまな要素を総合的に比較した上で自社のニーズに適した派遣会社を選びましょう。
建設業界向けのサービスを提供している派遣会社の中から比較することをおすすめします。
また、派遣会社の利用は無料ではなく、派遣料金が発生するため、料金を比較することも大事です。
派遣会社を選んだ後は問い合わせを行い、ヒアリングを受けます。
ヒアリングを受ける際には自社のニーズを明確にして正確に伝えておくことで、要望通りの人材の紹介を受けられるでしょう。
ヒアリングの内容に基づいて候補者がマッチングされるため、候補者の情報を確認します。
マッチングされた候補者に対して顔合わせや職場見学を実施して、問題がなければ契約締結です。
派遣スタッフを雇うには、派遣会社と労働者派遣基本契約や労働者派遣契約の締結が必要になります。
契約の際には、派遣料金や責任範囲、業務内容、就業場所などを明確に定めておくことが大事です。
契約を締結した後は、実際に建設業の現場に派遣社員を受け入れて業務に従事してもらいます。
建設業界で人材派遣を利用する際のポイント
建設業界の企業が人材派遣を利用する際に意識しておきたいポイントを解説します。
必要なスタッフの選定
派遣会社を利用する目的は、現場で不足している派遣スタッフを確保することです。
しかし、派遣先企業は派遣されるスタッフを選ぶことはできません。
派遣先企業が派遣会社と締結するのは労務の提供を目的とした契約であり、特定のスタッフを派遣することではないからです。
たとえば、事前に面接を行う、履歴書の提出を求める、派遣スタッフの属性を限定するといった行為は禁止されています。
派遣スタッフの一覧から検索して選ぶといったシステムにはなっていません。
どんなスタッフを派遣するのか実際に選定するのは派遣会社側です。
そのため、事前にしっかりと派遣会社と打ち合わせを行い、どのような能力を持ったスタッフを希望するのか正確に理解してもらうことが重要になります。
自社が必要とする派遣スタッフについて、スキルや経験、条件など細かな点までしっかりとすり合わせを行いましょう。
契約の管理と更新
人材派遣を活用する上では、派遣契約の管理や更新について対策を立てておく必要があります。
派遣スタッフが雇用関係にあるのは派遣元企業であり、派遣先が直接雇用しているわけではありません。
ただし、派遣先企業に指揮命令権と管理監督権があるため、適切な雇用管理を行うことが要求されます。
派遣先企業は派遣スタッフの勤怠管理をする必要もあり、派遣スタッフの状況を正確に把握しなければいけません。
契約終了日と更新日についての管理も派遣スタッフごとに行う必要があります。
すべて手作業で派遣スタッフの管理を行うと業務が煩雑になり、ミスも起きやすくなるため、派遣スタッフを管理するためのシステムの導入や管理業務のアウトソーシングなども検討しましょう。
派遣スタッフの安全衛生教育
派遣先の企業には、派遣スタッフに対して安全衛生教育を行うことが法律で義務づけられています。
安全衛生教育は労働災害を防ぐために必要なものであり、派遣スタッフやパート・アルバイトを含めてすべての労働者が対象です。
安全衛生教育として必要な内容は、労働安全衛生規則第35条によって全部で8号まで定められており、機械や安全装置などの取り扱い方法や作業手順、点検など多岐にわたります。
安全衛生教育の実施は自社で行う必要はなく、アウトソーシングすることが可能です。
安全衛生教育の実施方法としては講習会や出張講習などを依頼するか、通信講座などを受講させるという方法があります。
建設現場は他の業界と比較しても労働災害が起きやすいのが特徴であり、安全衛生教育は重要です。
派遣スタッフを受け入れる前に安全衛生教育の実施についても準備を進めておきましょう。
教育の内容について詳しくは以下のサイトをご覧ください。
派遣スタッフとのコミュニケーション
人材派遣を活用する上で派遣スタッフとのコミュニケーションは大きな課題になります。
基本的に派遣スタッフは自社のスタッフと同等の立場として接することが大切です。
担当者の方から積極的にコミュニケーションを取り、孤立感を覚えることなく働けるように配慮します。
派遣スタッフは名前で呼ぶことを心がけ、挨拶を徹底することで良好な関係を築けるでしょう。
業務上の悩みや不安などについて気軽にコミュニケーションを取れる場を設けるのも効果的です。
派遣スタッフとやり取りをする担当者を設置して支援する体制を整えておきます。
人材派遣を利用する際の注意点
人材派遣を利用したことで業務が属人化するケースがあるため注意しましょう。
派遣スタッフには契約期間が定められており、契約が終了したことで該当する業務のやり方を誰も分からなくなる事例があります。
派遣スタッフに専門性の高い業務を任せる場合は特に注意が必要です。
たとえば、派遣スタッフが在籍している間にマニュアルの作成をしておきます。
自社の従業員を通して業務の引き継ぎを行うことも重要です。
派遣スタッフは臨時で雇う存在であると理解しておき、人手不足の解消手段を別に考えておきましょう。
正社員の雇用が難しい場合や派遣できない建設の人材を確保したい場合は、特定技能外国人の利用といった対処法があります。
特定技能外国人を雇用するという選択肢がある
派遣スタッフでは対応できない分野の仕事をさせるために特定技能外国人を雇用するという選択肢があります。
以下では建設業務において特定技能外国人を活用することについて詳しく解説します。
特定技能外国人なら派遣ではできない業務を行える
特定技能外国人を活用すると派遣ではできない現場での業務を任せられます。
また、特定技能外国人であれば技術力のある若手の労働力の確保が可能です。
在留期間が満期になるまで働いてくれる可能性が高く、長期的に安定した労働力を確保できるため、採用や育成のコストを抑える効果も期待できます。
派遣スタッフの採用では対応できない部分について特定技能外国人がカバーできるため、実際に建設業界で活用が進んでいます。
建設業以外でも電気工事や製造業など専門職の携わる分野で特定技能外国人は全国的に利用されており、人手不足の解決策として効果的です。
特定技能外国人を受け入れる方法
建設業において特定技能外国人の受け入れにはさまざまなパターンがあります。
以下に特定技能外国人を受け入れる主な方法をまとめました。
- 技能実習生の在留資格を特定技能に切り替える
- 所定の試験を合格した外国人を特定技能で雇用する
- 特定技能外国人の転職希望者を雇用する
特定技能の在留資格を取得するには、技能試験と日本語能力試験の合格が必要です。
建設分野における技能試験は一般社団法人建設技能人材機構が開催しています。
技能試験では建設に関連する知識や技術を有しているか確認されます。
日本語能力試験は、日本語能力試験(JLPT)でN4レベル以上、または国際交流基金日本語基礎テストでA2レベル以上の合格が必要です。
また、特定技能外国人の受け入れ先として多数の条件のクリアが要求されます。
日本で働くのが未経験の外国人を雇用するケースが多いため、さまざまなフォローが求められます。
海外から日本へ移住したばかりの外国人であれば、職場だけではなく日常生活のフォローも必要です。
特に重要な条件は、一般社団法人建設技能人材機構への加入と建設特定技能受入計画の認定です。
詳しくは下記のページをご覧ください。
外国人への日本語教育のお悩みは日本語カフェにご相談を!
特定技能外国人を雇う際には、外国人への日本語教育が重要になります。
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建設業界の人材派遣活用法まとめ
本記事では建設業で人材派遣を活用するメリットや方法、注意点などについて解説してきました。
人材派遣を活用すれば、必要なスキルを持った人材をすぐに現場へ投入できます。
ただし、人材派遣では実際の工事現場における作業に従事させることはできません。
特定技能外国人を利用すれば、現場に勤務させることができ、人手不足の解消を期待できます。
人材派遣や特定技能外国人を効果的に利用して、建設業における人手不足の問題を解決しましょう。