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外国人介護士の受け入れ完全ガイド|4つの制度比較から定着支援・資格取得まで徹底解説

外国人介護士 受け入れ

日本の介護業界は、必要な介護職員の確保が国内人材だけでは極めて困難な状況に直面しています。この危機的状況を打破するため、外国人介護士の受け入れはもはや選択肢ではなく、必須の経営戦略となっています。

しかし、受け入れ制度の複雑さ、言葉の壁、そして採用後の定着支援に不安を感じている介護事業所様も多いのではないでしょうか。

本記事では、外国人介護士受け入れの4つの制度を比較し、受け入れ準備から配属までの具体的な流れ、そして最大の課題である「日本語力」を効率的に向上させる方法まで、実践的なノウハウを網羅的に解説します。さらに、介護福祉士資格の取得支援を通じて、外国人スタッフを単なる労働力ではなく、施設の中核を担う人材として長期的に育成するための具体的な戦略もご紹介します。

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目次

外国人介護士受け入れの現状と必要性

車椅子のシニアの女性と介護士

日本の介護業界を取り巻く環境は年々厳しさを増しており、外国人介護士の受け入れは、もはや選択肢ではなく必須の施策となっています。ここでは、なぜ外国人介護士の受け入れが必要なのか、現状のデータとともに解説します。

介護業界が直面する深刻な人手不足

日本は世界でも類を見ない速度で高齢化が進んでおり、2025年には団塊の世代が全員75歳以上になる「2025年問題」を迎えます。さらに2040年には団塊ジュニア世代が65歳以上となり、高齢者人口がピークに達する「2040年問題」が予測されています。

厚生労働省の「第8期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について」によると、2040年度には介護職員の必要数が2019年度比で約69万人増加すると試算されています。

厚生労働省の「第8期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について」の解説図
出典:厚生労働省「第8期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について」

しかし、少子化により労働人口そのものが減少している日本では、国内の人材だけでこの需要を満たすことは極めて困難な状況です

介護業界は慢性的な人手不足に直面しており、多くの施設では求人を出しても応募がない、あるいは採用してもすぐに離職してしまうという悪循環に陥っています。この状況を打破するために、外国人介護士の受け入れが解決策として期待されているのです。

外国人介護士を受け入れるメリット

外国人介護士の受け入れは、単なる人手不足の解消にとどまらず、施設運営や職場環境にさまざまなプラスの影響をもたらします。ここでは、具体的なメリットについて詳しく見ていきましょう。

MERIT

深刻な人手不足の解消

外国人介護士を受け入れる最大のメリットは、やはり人手不足の解消です。日本で働きたいと考えている外国人は多く、特にアジア諸国では日本での就労を希望する若者が数多く存在します。

外国人介護士は若い世代が中心であり、体力が必要な介護業務において大きな戦力となります。また、男性の求職者も比較的多いため、男女バランスを考えた採用がしやすいという特徴もあります。入浴介助や移乗介助など、身体的負担の大きい業務においても、若くて体力のある外国人スタッフは頼りになる存在です。

日本人の介護職員は女性が中心となっているため、力仕事が必要な場面では特定のスタッフに負担が集中しがちです。しかし、外国人男性スタッフが加わることで、業務負担の分散が可能となり、既存スタッフの身体的負担も軽減されます。

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地方施設でも採用が可能

日本人の介護職員は都市部での就職を希望する傾向が強く、地方の介護施設では求人を出しても応募がほとんどないという悩みを抱えているケースが少なくありません。しかし、外国人の場合は、都市部か地方かよりも、待遇や労働環境、サポート体制などを重視する傾向があります

そのため、条件次第では地方勤務を希望する外国人も多く、日本人では採用が困難だった地方の介護施設でも、外国人介護士の採用に成功している事例が数多く報告されています。住居の提供や生活支援など、きめ細かなサポート体制を整えることで、地方でも優秀な外国人材を確保することが可能です。

特に、施設が社宅を用意したり、通勤手段をサポートしたりすることで、外国人にとって働きやすい環境を整えることができます。都市部と比較して生活費が安いという地方のメリットも、外国人スタッフにとっては魅力的なポイントとなります。

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多様性のある職場環境の構築

外国人介護士の受け入れは、職場に多様性をもたらします。異なる文化背景を持つスタッフが加わることで、国際的な視点が導入され、職場全体が活性化します

日本人職員にとっても、外国人スタッフと一緒に働くことは大きな刺激となり、モチベーション向上につながります。言葉や文化の違いを乗り越えてコミュニケーションを取ることで、チームワークが強化され、職場の雰囲気が良くなったという報告も多く聞かれます。

また、外国人スタッフの真摯な仕事への姿勢や学習意欲の高さは、日本人職員にも良い影響を与えます。互いの長所を認め合い、学び合う関係が構築されることで、施設全体のサービス品質が向上していくのです。

外国人介護士受け入れの4つの制度を徹底比較

介護業界で働くために必要な制度

外国人が日本の介護現場で働くためには、4つの主要な制度があります。それぞれの制度には異なる目的と要件があり、施設の状況やニーズに応じて適切な制度を選択することが重要です。

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制度対象国・期間主な要件在留期間・更新
EPA(経済連携協定)インドネシア、フィリピン、ベトナム(2008年〜)母国で介護士資格または看護系学校卒4年目に介護福祉士国家試験に合格すれば延長可能
在留資格「介護」全世界(2017年〜)介護福祉士国家資格、日本語N2程度更新を続けることで永続的就労可能
技能実習制度開発途上国(介護職種は2017年追加)実習計画に沿った技能習得実習期間終了後、特定技能1号に移行可能
特定技能1号(介護分野)全世界(介護分野は2019年〜)日本語能力試験・介護技能評価試験合格(技能実習2号良好修了者は免除)最大5年(技能実習と合わせると最大10年)

①EPA(経済連携協定)に基づく受け入れ

EPA介護福祉士候補者は、経済連携協定に基づき、インドネシア、フィリピン、ベトナムの3カ国から受け入れる制度です。この制度は2008年から開始され、介護福祉士の資格取得を目的とした就労と研修を組み合わせた仕組みとなっています。

受け入れ要件は各国により異なりますが、看護系学校の卒業生または母国で介護士の資格を持っていることが条件となります。そのため、一定の介護知識を持った人材が来日することになり、即戦力としての期待も高まります。

最大の特徴は、入国後4年目に介護福祉士の国家試験を受験し、合格すれば在留期間を更新しながら永続的に働くことができますが、不合格の場合は帰国しなければならないという点です。そのため、受け入れ施設には国家試験対策を含めた適切な研修を実施する義務があります。

②在留資格「介護」

在留資格「介護」は、2017年に新設された比較的新しい在留資格です。この資格は、介護福祉士の国家資格を取得した外国人が対象となり、日本で介護職として働くことができます。

この在留資格の最大の特徴は、在留期間に制限がなく、更新を続けることで永続的に日本で働くことができる点です。また、家族の帯同も可能であり、他の在留資格と比較して非常に安定した雇用形態となっています。

取得には介護福祉士の国家資格が必須であり、日本語能力もN2レベルが求められます。そのため、専門性と日本語能力の両方を備えた人材を確保できるという大きなメリットがあります。

③技能実習制度

技能実習制度は、開発途上国への技術移転による国際貢献を目的とした制度です。介護職種は2017年に技能実習の対象に追加されました。

技能実習制度の特徴は、実習計画に基づいた技能の習得が目的であるため、訪問系サービスへの従事は認められていません。また、実習期間終了後は特定技能1号への移行が可能であり、さらに5年間日本で働き続けることができます。

受け入れ施設には、技能実習生への適切な指導や生活支援を行う義務があります。監理団体が定期的に訪問して指導状況を確認するため、制度に則った受け入れを行う必要があります。技能実習計画に沿った指導が求められるため、施設側には一定の管理負担が発生します。

④特定技能1号(介護分野)

特定技能1号は、国内人材の確保が困難な産業分野において、一定の専門性・技能を持つ外国人を受け入れるための制度です。介護分野は特定技能制度の対象分野の一つとして、2019年から受け入れが開始されました。

受け入れには、日本語能力試験と介護技能評価試験の両方に合格する必要があります。ただし、技能実習2号を良好に修了した場合は、これらの試験が免除されます。そのため、技能実習生として育成した人材を、特定技能に移行させて引き続き雇用するという流れが一般的になっています。

特定技能1号の在留期間は通算で最長5年間です。技能実習と合わせると、最大10年間同じ施設で働き続けることが可能となります。また、登録支援機関のサポートを受けることで、施設側の負担を軽減しながら外国人材を受け入れることができます。

外国人介護士受け入れの具体的な手順とフロー

企業が実践すべきN3合格支援の具体的な5つのステップ

外国人介護士の受け入れは、準備から配属まで複数のステップを踏む必要があります。ここでは、スムーズな受け入れのために施設が行うべき準備と、実際の受け入れフローについて詳しく解説します。

受け入れ準備:施設側がすべきこと

外国人介護士を受け入れる前に、施設側で整えておくべき体制は多岐にわたります。準備を怠ると、受け入れ後にトラブルが発生したり、外国人スタッフが定着しなかったりする可能性があります。

STEP

受け入れ体制の整備

まず最も重要なのが、外国人スタッフが生活するための住居の確保です。多くの外国人は来日時に日本国内に住居を持っていないため、施設側で社宅を用意するか、賃貸物件の契約をサポートする必要があります。住居だけでなく、冷蔵庫や洗濯機などの生活必需品も準備しておくと、外国人スタッフは安心して新生活をスタートできます。

次に重要なのが、日本語教育体制の構築です。入国時の日本語レベルは制度によって異なりますが、いずれの場合も継続的な日本語学習が必要です。施設内で日本語研修を実施するか、外部のオンライン講座を活用するかなど、具体的な学習方法を決めておく必要があります。

業務マニュアルについても、事前に見直しておくことが重要です。日本人職員向けに作成されたマニュアルは、専門用語や難しい表現が多く、外国人には理解しにくい場合があります。やさしい日本語に変換したり、図解を増やしたりして、外国人にも分かりやすいマニュアルを準備しましょう。

教育担当者の選定と育成も欠かせません。外国人スタッフの指導を担当する職員を事前に決めておき、外国人への指導方法や異文化コミュニケーションについて学んでもらう機会を設けることが望ましいです。

STEP

必要な届出と手続き

外国人を雇用する際には、ハローワークへの外国人雇用状況の届出が義務付けられています。雇用開始時と離職時に届出が必要となるため、忘れずに手続きを行いましょう。

在留資格に応じた各種申請も必要です。在留資格の変更や更新、就労資格証明書の取得など、制度によって必要な手続きが異なります。申請には時間がかかる場合もあるため、余裕を持って準備を進めることが重要です。

監理団体や登録支援機関との契約も、受け入れ前に完了させておく必要があります。これらの機関は、外国人スタッフの生活支援や就労支援を行ってくれるため、施設の負担を大幅に軽減できます。

STEP

日本人職員への事前説明

外国人スタッフを受け入れる前に、既存の日本人職員への説明も重要です。なぜ外国人を受け入れるのか、その目的と意義をしっかりと共有することで、日本人職員の理解と協力を得ることができます。

文化や習慣の違いについても、事前に理解を促進しておくことが大切です。宗教的な配慮が必要な場合や、コミュニケーションスタイルの違いなど、具体的な事例を交えて説明すると良いでしょう。

サポート体制についても明確に伝えておきます。誰が教育担当者となるのか、困ったときは誰に相談すれば良いのかなど、役割分担を明確にしておくことで、スムーズな受け入れが可能となります。

STEP

受け入れ環境のチェックリスト

受け入れ前に、ハード面とソフト面の両方をチェックしておきましょう。ハード面では、住居、必要な設備、ICT機器(翻訳アプリを使用するためのタブレットなど)が整っているか確認します。

ソフト面では、教育体制、サポート体制、相談窓口などが適切に構築されているかをチェックします。また、制度理解についても、在留資格の条件や法令遵守事項を施設内で共有しておくことが重要です。チェックリストを作成して、漏れがないように確認を進めることをおすすめします。

受け入れから配属までの流れ

実際の受け入れフローは、制度や外国人の状況によって異なります。ここでは、一般的な流れとそれぞれの注意点について解説します。

STEP

制度別の標準的なスケジュール

国内にすでに在住している外国人を採用する場合、受け入れ決定から勤務開始までの期間は約3〜4ヶ月が標準的です。在留資格の変更申請や、施設での受け入れ準備に時間を要するためです。

一方、海外から新たに外国人を呼び寄せる場合は、約5〜7ヶ月程度の期間が必要となります。現地での選考、在留資格認定証明書の申請、ビザの取得、渡航準備など、多くのステップを踏む必要があるためです。各ステップでの所要期間を把握し、逆算して準備を進めることが重要です。

STEP

在留資格申請の手続き

在留資格の申請には、多くの書類が必要となります。雇用契約書、施設の概要を示す資料、受け入れ計画書など、制度によって必要な書類が異なります。入国管理局への申請後、審査には通常1〜3ヶ月程度かかります。審査期間中は状況の確認ができる場合もありますが、基本的には結果を待つことになります。

注意点としては、申請書類に不備があると審査が長引いたり、最悪の場合は不許可となったりする可能性があります。監理団体や登録支援機関、または行政書士などの専門家のサポートを受けることで、スムーズな申請が可能となります。

STEP

入国後のオリエンテーション

外国人スタッフが日本に到着したら、まず生活オリエンテーションを実施します。銀行口座の開設、携帯電話の契約、住民登録など、日本で生活するために必要な手続きを一緒に行います。これらの手続きは日本人にとっては簡単でも、外国人にとっては大きなハードルとなるため、丁寧にサポートすることが重要です。

施設内オリエンテーションでは、施設の理念やルール、業務の流れ、安全管理などについて説明します。この段階では、やさしい日本語を使ったり、図や写真を活用したりして、確実に理解してもらえるよう工夫しましょう。

日本語研修も入国後すぐに開始することが望ましいです。継続的な学習により、業務に必要な日本語能力を早期に身につけることができます。オンライン講座などを活用すれば、外国人スタッフは自分のペースで学習を進めることができます。OJTについては、最初は簡単な業務から始め、徐々に難易度を上げていくことが重要です。教育担当者がマンツーマンで指導し、不安や疑問をすぐに解消できる体制を整えましょう。

問い合わせ窓口と相談先

外国人介護士の受け入れについて相談できる窓口は、複数存在します。

厚生労働省外国人介護人材の受け入れに関する総合的な相談窓口を設けています。
制度の詳細や最新情報について知りたい場合は、まずここに問い合わせると良いでしょう。
外国人技能実習機構技能実習制度に関する専門機関です。
技能実習生の受け入れを検討している場合は、この機構に相談することで、適切な監理団体の紹介や手続きの詳細について情報を得ることができます。
公益社団法人国際厚生事業団EPA介護福祉士候補者の受け入れを支援する機関です。
EPA制度の活用を考えている施設は、ここで、受け入れの流れや条件について詳しく知ることができます。
都道府県の相談窓口多くの自治体では、外国人介護人材の受け入れ支援事業を実施しており、セミナーの開催や補助金情報の提供などを行っています。
人材紹介会社外国人介護士の紹介を専門とする人材紹介会社では、受け入れ準備から配属後のサポートまで、トータルで支援を受けることができます。
初めて外国人を受け入れる施設にとっては、心強いパートナーとなるでしょう。

外国人介護士の受け入れで直面する課題と解決策

問題と解決を示す矢印付き標識。課題解決や意思決定、問題分析を表すビジネスや教育のイメージ。

外国人介護士を受け入れた多くの施設が、さまざまな課題に直面しています。しかし、これらの課題は適切な対策を講じることで克服可能です。ここでは、主な課題とその解決策について詳しく解説します。

最大の課題:言葉の壁

外国人介護士の受け入れにおいて、施設が最も大きな課題として挙げるのが言葉の壁です。日本語が十分に理解できないことで、様々な問題が発生する可能性があります。

コミュニケーション不足による業務への支障

利用者の要望を正確に理解できないことは、介護サービスの質に直結する重大な問題です。利用者が「トイレに行きたい」「痛い」などの基本的な訴えをしても、外国人スタッフが理解できなければ、適切な対応ができません。

また、急変時の対応が遅れるリスクも無視できません。利用者の容態が急変した際、日本語での報告や指示が理解できないと、初動対応が遅れてしまう可能性があります。緊急時こそ、迅速で正確なコミュニケーションが求められるのです。

さらに、チームケアでの情報共有も困難になります。申し送りやカンファレンスで交わされる情報を正確に理解できないと、チーム全体でのケアの質が低下してしまいます。情報の伝達ミスは、事故やトラブルの原因となりかねません。

専門用語の理解の困難さ

介護現場では、多くの専門用語が日常的に使用されています。「臥床」「褥瘡」「嚥下」「拘縮」などは、日本人であっても馴染みの薄い言葉であり、外国人が習得するにはさらに大きな負担となります。

加えて、医療用語の理解も大きな課題です。バイタルサイン、服薬、既往歴など、医療に関連する語彙は難解で、習得には時間を要します。これらを正確に理解していないと、利用者の健康管理に支障をきたすおそれがあります。

さらに、申し送り内容の把握にも影響が出ます。夜勤から日勤への引き継ぎなど、短時間で多くの情報を共有する場面では専門用語が頻繁に使われるため、理解が不十分だとケアの継続性に影響する可能性があります。

記録作成の負担

介護記録は業務の中でも特に重要ですが、日本語で正確に記録を残すことは外国人スタッフにとって大きな負担となります。自身が行ったケア内容を日本語で文章化することに時間がかかり、記録作成だけで予定以上の時間を要してしまうことも少なくありません。

また、文章表現そのものにも難しさがあります。単語の意味は理解していても、適切な文として組み立てることが難しく、意図が伝わりにくい記録になってしまうことがあります。さらに、敬語や適切な語彙の選択といった日本語特有の表現も、外国人にとっては大きなハードルとなります。

利用者・家族との意思疎通

利用者とのコミュニケーションにおいても、外国人スタッフはさまざまな困難に直面します。高齢者特有の方言や言い回し、古い表現は、標準的な日本語を学んできた外国人には理解しづらいことが多く、特に地方の施設では方言の影響が大きいため、会話が円滑に進まないことが頻繁に起こります。

また、利用者側が外国人スタッフに不安を抱くケースもあります。「きちんと理解してくれているのか」「自分の要望は伝わっているのか」といった不安から、外国人スタッフを避けてしまう利用者も見られます。

言葉の壁を克服するための対策

言葉の壁は外国人介護スタッフにとって大きな課題ですが、適切な対策を講じることで十分に克服可能です。以下では、現場で実践しやすい効果的な取り組みについて具体的に紹介します。

継続的な日本語教育の実施

まず最も重要なのは、継続的な日本語教育を行うことです。入国時点で日本語レベルがN4やN5であっても、継続的に学習を続けることで、業務に必要なレベルへ着実に引き上げることができます。

特に、定期的な日本語研修は大きな効果があります。週に1〜2回、業務時間内に研修の時間を設けることで、外国人スタッフは継続して学習に取り組めるようになります。研修内容には、日常会話だけでなく、介護現場で頻繁に使われる専門用語や現場特有の表現も取り入れると良いでしょう。

さらに、オンライン学習ツールの活用も有効な手段です。時間や場所を選ばず利用できるため、通勤時間や休憩時間にも学習が可能で、忙しい介護職員にとって大きな助けとなります。このようにして、効率よく日本語力を伸ばす環境を整えることが重要です。

業務マニュアルの工夫

また、業務マニュアルを外国人スタッフにも理解しやすい形に工夫することも効果的です。難しい漢字や専門用語をやさしい日本語に言い換えるだけでも理解度は大きく向上します。例えば、「臥床」を「ベッドに寝ている」、「離床」を「ベッドから起きる」と説明するなど、分かりやすい表現に置き換えることがポイントです。

必要に応じて、マニュアルの多言語化を取り入れることもできます。ただし、全てを母国語で説明してしまうと日本語習得の機会を奪う可能性があるため、重要な部分のみ補足的に母国語を併記する方法が望ましいでしょう。

さらに、図解や写真を積極的に使うことで、言葉だけでは理解しづらい内容も視覚的に伝えやすくなります。体位変換や移乗介助など、身体を使う業務については、特に写真やイラストを用いたマニュアルが効果を発揮します。

教育担当者の配置

外国人スタッフ専任のメンターやチューターを配置することも有効な支援策です。いつでも相談できる相手がいることで、外国人スタッフは安心して業務に臨むことができます。

また、定期的な面談を実施することも大切です。週に一度、あるいは月に一度でも、一対一で話せる場を設けることで、小さな疑問や悩みを早期に解決でき、問題が深刻化する前に対応できます。これは離職防止にもつながります。

文化・生活習慣の違いへの配慮

言葉の壁以外にも、文化や生活習慣の違いから生じる課題があります。これらの違いを理解し、適切に配慮することで、外国人スタッフが働きやすい環境を作ることができます。

宗教的配慮

外国人スタッフの中には、イスラム教などの宗教を信仰している人もおり、職場では宗教的背景への理解と配慮が不可欠です。イスラム教徒の場合、豚肉やアルコールを摂取しないため、食事内容への注意が求められます。施設の食事提供や職員の懇親会などで宗教的に食べられないものが含まれる際には、代替メニューを用意するなどの工夫が必要です。

さらに、礼拝時間の確保も重要な配慮です。イスラム教徒は1日5回の礼拝を行うため、勤務中にも礼拝の時間と場所を確保する必要があります。休憩時間を調整したり、静かなスペースを提供したりすることで、信仰を尊重する姿勢を示すことができます。

また、宗教行事への理解も欠かせません。ラマダン(断食月)には日中の飲食ができなくなるため、体調に配慮した勤務調整が求められます。重要な宗教行事の際には休暇取得を柔軟に検討するなど、長期的に働きやすい環境づくりにつなげていくことが大切です。

コミュニケーションスタイルの違い

文化の違いはコミュニケーションにも表れます。日本人は曖昧で婉曲的な表現を用いる傾向がありますが、多くの外国人は明確で直接的な表現を好みます。そのため、「できれば〜していただけると助かります」よりも、「〜してください」と具体的に伝える方が理解されやすく、誤解も生じにくくなります。

また、上下関係の捉え方にも違いが見られます。日本では年功序列や上下関係を重視しますが、多くの国では能力主義が一般的です。こうした文化的背景を理解したうえで、日本の職場文化やルールを丁寧に説明することが求められます。

さらに、日本の職場で重視される「報告・連絡・相談」、いわゆるホウレンソウの徹底も必要です。この習慣がない国も多いため、なぜ必要なのか、どのような場面で行うのかを具体的に説明し、日常的に実践してもらえるよう支援することが大切です。

定着率向上のためのポイント

外国人介護士を受け入れても、すぐに離職してしまっては意味がありません。長く働いてもらうためには、様々な工夫が必要です。

明確な就労条件の提示

定着率向上の基本は、就労条件を明確に提示することです。給与体系については、基本給、各種手当、賞与などの項目を分かりやすく説明し、後々のトラブルを防ぐ必要があります。

勤務時間や休日についても同様で、シフト制の場合はシフトの組み方や希望休の扱いなどを具体的に伝えることが重要です。さらに、昇給・昇格の基準も明確に示すことで、外国人スタッフが将来の目標を描きやすくなり、働くモチベーションの向上につながります。

キャリアパスの明示

長期的なキャリアビジョンの提示も、定着支援に不可欠です。スキルアップに応じた処遇改善を行い、資格を取得したり新しいスキルを習得した際には、それに見合った昇給や役職登用を行うことで成長意欲を高められます。

また、「3年後には介護福祉士を取得し、在留資格『介護』に変更して長期的に働けるようになる」など、具体的なキャリアビジョンを共有することで、スタッフが目標を持って働ける環境を整えることができます。

定期的な面談・ヒアリング

月1回程度の個別面談を実施し、外国人スタッフの仕事状況や悩みを把握することも重要です。業務上の困りごとだけでなく、生活面での不安も早期に把握し、必要なサポートにつなげることで、問題が大きくなるのを防ぐことができます。

小さな不満や悩みも放置すると離職につながる可能性があるため、定期的なヒアリングは定着支援の重要な役割を果たします。

介護福祉士資格取得によるキャリアアップ支援

定着支援の中でも最も効果的なのが、介護福祉士資格の取得支援です。資格を取得すれば在留資格「介護」への移行が可能となり、長期的な雇用が実現します。

在留期間の制限がなくなることで、「いつか帰国しなければならない」という不安から解放され、長期的な人生設計が立てやすくなります。また、資格取得という明確な目標があることで、日々の業務や学習への意欲が高まり、成功体験は自信と成長意欲につながります。

さらに、介護福祉士の資格を持つ外国人スタッフは、組織の中核人材として活躍することができ、他の外国人スタッフのロールモデルとなる存在にもなります。結果として、組織全体の教育水準やサービスの向上にも寄与します。

施設ができる資格取得支援

外国人スタッフが介護福祉士試験に合格するためには、施設側の手厚いサポートが不可欠です。ここでは、具体的な支援方法について解説します。

実務者研修の受講支援

実務経験ルートで受験する場合、実務者研修の修了が必須となります。施設としては、受講費用の全額または一部を負担することで、外国人スタッフの経済的負担を軽減できます。

実務者研修は通常、数ヶ月間にわたって実施されます。そのため、研修参加への配慮として、勤務シフトを調整する必要があります。研修日に出勤を入れないようにしたり、研修後に夜勤を入れないようにしたりするなど、細やかな配慮が求められます。

学習時間の確保

外国人スタッフが十分な学習時間を確保できるよう、勤務シフトに配慮することが重要です。試験が近づいてきたら、夜勤の回数を減らしたり、連続勤務を避けたりすることで、体力的な負担を軽減し、学習に集中できる環境を整えましょう。

学習専用の時間・場所を提供することも効果的です。施設内に学習スペースを設け、参考書や過去問題集を自由に閲覧できるようにしておけば、外国人スタッフは空き時間を有効に活用して学習することができます。

また、残業時間の調整も必要です。恒常的に残業が多い状況では、学習時間を確保することができません。適切な人員配置を行い、外国人スタッフが定時で帰宅できる環境を整えることが重要です。

教材購入費用の補助

介護福祉士国家試験の準備には、参考書や問題集などの教材が必要です。これらの購入費用を施設が補助することで、外国人スタッフの経済的負担を大幅に軽減できます。

特に、過去問題集は試験対策で最も効果的な教材の一つです。複数年分の過去問を繰り返し解くことで、出題傾向をつかみ、実践力を高めることができます。

外国人向け試験対策講座の活用

独学で介護福祉士試験に合格することは容易ではありません。特に外国人の場合は、日本語と試験内容の両方を理解する必要があるため、専門講座の受講が合格への近道となります。

外国人がつまずきやすいポイントを理解している講師による指導は非常に効果的です。どのように学習を進めれば効率的か、どこで誤解が生じやすいかなどを把握したうえで指導してくれるため、学習効率が大幅に向上します。

動画講義を活用した繰り返し学習も重要です。一度では理解できない内容も、繰り返し視聴することで着実に理解が深まります。オンライン講座であれば、自分のペースで復習できるため、外国人スタッフの学習スタイルに非常に適しています。

日本語能力向上と介護福祉士対策に「日本語カフェ」eラーニング講座

日本語カフェのトップ画面

介護現場では日本語教育の必要性を理解していても、実施には多くの課題があります。まず、専門の日本語講師を採用したりスケジュールを調整したりする手間が大きく、人件費の負担も無視できません。さらに、常に忙しい介護の現場では、研修のために外国人スタッフを業務から外すことが難しく、業務と教育の両立が実現しにくい状況です。

また、どの教材を使い、どのように学習を進めれば効果的なのかといったノウハウが施設に十分ないことも、多くの時間と労力を必要とする原因となっています。加えて、外国人スタッフそれぞれの日本語レベルや進捗状況が異なるため、個別に管理しながらサポートすることも容易ではありません。

このように、講師の確保から運営管理、教育の効率化、個別指導まで、多くの課題が積み重なっていることが、現場で日本語教育が進まない大きな理由となっています。

「日本語カフェ」JLPTコース

日本語カフェのJLPT N3合格コースのトップ画面

「日本語カフェ」JLPTコースは、現場の負担を大幅に減らしながら、外国人スタッフの日本語力を着実に伸ばせるよう設計されたオンライン学習プログラムです。専門講師による高品質な教材をもとに、レベル別に最適化されたカリキュラムで学習を進められるため、施設側は講師の採用や研修スケジュールの調整といった煩雑な業務から解放されます。

また、スタッフはスマホやタブレットで自分のペースで学べるため、業務と両立しながら無理なく継続でき、短期間で成果につながりやすい点も大きな特徴です。施設・学習者の双方にとってメリットの多い、日本語教育の新しいスタイルです。

一流講師が監修した高品質カリキュラム

レベル別に体系化されているため、初心者〜上級者まで迷わず学べます。

動画講義+ドリルで効率的に習得

わかりやすい講義と豊富な演習で、インプットとアウトプットをバランスよく強化。

リスニング・長文対策も充実

本番形式の問題やシャドーイング素材で実践力を養えます。

スマホ・PC・タブレット対応

スキマ時間に学べるため、忙しい介護職でも無理なく継続できます。

学習状況を一目で管理

進捗や弱点を把握しやすく、適切なフォローが可能です。

★合格実績★

ゼロから3ヶ月でJLPT N3に合格

合格実績

「日本語カフェ」で学習したフィリピン人受講者4名は、日本語学習未経験からわずか3ヶ月の学習で、日本語能力試験(JLPT)N3に全員合格しました。2025年4月に学習を開始し、1日平均6時間の自主学習を継続した結果、6月にはN5・N4を突破。そして7月には、通常半年以上かかるといわれるN3レベルに到達しました。

実際の試験結果では、文字語彙・文法読解・聴解のすべての分野で合格点をクリアしており、「日本語カフェ」のカリキュラムが短期間で成果を出せることを証明しています。

一般的に学習効果のばらつきやモチベーション維持に課題がある日本語教育ですが、明確な合格目標と効率的な学習設計により、4人全員が同時にN3合格を果たしました。

\ 実績多数!/

介護福祉士を目指せる「介護福祉士 受験対策講座」

介護福祉士合格講座のトップ画面

介護福祉士を目指せる「介護福祉士 受験対策講座」は、日本語力の土台を固めた外国人スタッフが、国家試験合格まで確実にステップアップできるよう設計された講座です。試験範囲を網羅した動画解説に加え、豊富な過去問演習やわかりやすい解説によって、基礎から応用力まで段階的に身につけることができます。

指導するのは外国人支援に精通した介護福祉士講師で、つまずきやすいポイントを丁寧にフォローしてくれるため、学習効率が大幅に向上します。さらに、24時間いつでも学習できるため、忙しい介護職員でも無理なく継続でき、短期間で合格レベルへ到達できる実践的なプログラムです。

外国人指導に慣れた介護福祉士講師が担当

つまずきやすいポイントを押さえた丁寧なサポート。

動画+演習で必要内容を完全網羅

出題範囲をすべてわかりやすく解説し、過去問で実践力を強化。

4ヶ月で合格を目指せる設計

効率重視の短期集中カリキュラム。

24時間いつでも学習可能

夜勤やシフト制でも自分のペースで学べます。

日本語学習も併用サポート

文法や語彙の強化を続けながら試験対策が進められます。

合格実績

このたび、当社支援機関を通じて学習を続けていた外国人介護職の方が、見事「介護福祉士国家試験」に合格されました!
外国人受験者にとっては言語の壁もあり、合格は決して簡単なものではありません。それでもこの方は、目標に向かってコツコツと努力を積み重ね、見事に合格を勝ち取りました!

当社支援の外国人介護職の方
■ 介護福祉士を目指した理由

「日本で安心して長く働き、家族を支えたい」という強い思いから、介護福祉士を目指しました。
資格を取れば、より安定した働き方ができ、将来的なキャリアアップにもつながると考えたからです。

■ 1日3時間、仕事と両立しながらの学習

勉強は約1年前からスタート。
本業の合間や休日も使いながら、毎日3時間以上コツコツと学習を積み重ねていきました。
特に役立ったのが、支援機関から紹介された「日本語と介護のビデオ教材」です。
スマホでいつでも見られるため、通勤時間や休憩時間も有効に使え、自分のペースで理解を深めることができました。
ビデオで全体の流れを理解した後に問題集を解き、間違いを丁寧に復習することで、確実に実力がついていくのを実感できました。

■ 教材だけでなく、現場からも学ぶ

教科書や試験対策アプリも活用しつつ、職場の先輩に積極的に質問し、現場での経験を通じて実践的な知識も習得していきました。
学習と仕事の両立は決して簡単ではありませんが、「自分を信じて、最後まであきらめないこと」が何より大切だったと振り返っています。

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外国人介護士の受け入れ まとめ

外国人による介護の様子

外国人介護士の受け入れは、深刻化する介護業界の人手不足を解消する重要な施策です。本記事では、EPA、在留資格「介護」、技能実習、特定技能という4つの受け入れ制度の特徴と選び方、受け入れ準備から配属までの具体的な流れ、そして受け入れ後の課題と解決策について解説してきました。

受け入れにあたって最も重要なポイントは、継続的な日本語教育と介護福祉士資格取得への支援体制です。言葉の壁は外国人介護士が直面する最大の課題であり、これを克服しなければ業務の円滑な遂行も、利用者との良好なコミュニケーションも実現できません。また、介護福祉士の国家資格を取得することで、在留資格「介護」への移行が可能となり、在留期間の制限なく永続的に雇用できるようになります。

しかし、介護現場で業務を行いながら効率的に日本語教育を実施するのは容易ではありません。日本人講師の採用・管理には手間とコストがかかり、個々の学習進捗を把握するのも困難です。

そこでおすすめなのが、日本語カフェの「JLPTコース」と「介護福祉士 受験対策講座」です。まずJLPTコースで日本語能力試験N2レベルの合格を目指し、その後、介護福祉士受験対策講座で国家資格取得を目指すステップが最も効果的です。オンライン学習なので、スキマ時間を活用して自分のペースで学習でき、管理画面で学習状況を一目で確認できるため、施設側の負担も大幅に軽減されます。

外国人スタッフに長く働いてもらい、施設の中核を担う人材として成長してもらうためには、受け入れ時の準備だけでなく、受け入れ後の継続的な支援が重要です。ぜひ本記事の内容を参考に、外国人介護士の受け入れと育成に取り組んでいただければ幸いです。

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この記事を書いた人

三木 雅史(Masafumi Miki) 株式会社E-MAN会長
1973年兵庫県たつの市生まれ / 慶応義塾大学法学部法学科卒
・25歳で起業 / デジタルガレージ / 電通の孫請でシステム開発
・web通販事業を手掛ける
・2006年にオンライン英会話を日本で初めて事業化
・2019年外国人の日本語教育を簡単、安価にするため
 日本語eラーニングシステムを開発、1万人超の外国人が日々学習中

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