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国際介護士とは?海外で介護の仕事をするために必要なこと

国際 介護士

近年、日本の介護業界では働き方そのものの多様化が進み、国内だけでなく海外でキャリアを築くという選択肢が注目を集めています。SNSやニュースでは「国際介護士」という言葉が取り上げられる機会も増え、若い世代を中心に「海外で介護の仕事をしてみたい」「世界で活躍できる介護士になりたい」という声が高まっています。

とはいえ、国際介護士として海外で活躍するまでには、語学力の向上、現地資格の取得、ビザ申請、文化理解など、多くの準備と段階を踏む必要があります。国内でのキャリアとは異なるプロセスが求められるため、「具体的に何をすればよいのか」「自分にも可能性があるのか」と不安を抱える人も少なくありません。

この記事では、国際介護士という働き方の意味や、海外で介護の仕事をするための具体的なプロセス、そして現実的なメリットと課題、日本と海外の介護の違いをまとめました

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目次

国際介護士とは?資格ではなく働き方の名称

杖を持つ高齢者とサポートする介護士の手元。国際介護士として海外で介護に携わるイメージ。

まず最初に押さえておきたいのは、「国際介護士」という言葉が特定の資格を表すものではないという点です。

厚生労働省や国際機関により定義された制度上の区分は存在せず、多くの場合、日本で経験を積んだ介護士が海外で介護や教育、日系高齢者サービスなどに従事する働き方を総称して、国際介護士という言葉が使われています

日本で介護福祉士を取得したからといって、すぐに海外の介護職として登録できるわけではなく、ほとんどの国で日本の資格をそのまま転用することはできません。しかし、介護福祉士としての経験や知識は、海外の施設でも“専門性を証明する材料”となり、採用の際に高く評価される傾向があります。

日本の介護スキルは、観察力・丁寧さ・多職種との連携能力などで定評があり、教育職や指導職で力を発揮する人も増えています。「海外介護士」という言い方もされますが、こちらも公式な分類ではありません。

国際介護士が活躍する3つのフィールド

車椅子の高齢者を介護士がサポートしながら屋外散歩する様子。介護や福祉サービスのイメージ。

海外で働くといっても、介護の現場は多様です。ここでは、国際介護士が実際に活躍している代表的な例を紹介します。

1 海外の介護施設・在宅ケアで働く

最も多いのが、現地の介護施設や在宅ケアで働くパターンです。日本で培った技術を活かしながら、異文化の中でケアに取り組む経験は、介護士として視野を広げる貴重な機会になります。

たとえば北欧では、利用者の自己決定権を尊重する姿勢が徹底しており、職員が「危ない」と感じても本人が望むなら、ある程度自由を尊重する文化があります。一方、アジアでは家族の意見が強く影響し、日本以上に家族中心でケアが決まることもあります。

さらに欧米では、看護助手のように医療行為に近い業務を担当するポジションが存在する国もあります。業務の境界線が日本とは違うため、最初は戸惑う人もいますが、その違いを理解し乗り越えること必要です。

2 介護教育・人材育成の分野で働く

アジア各国では高齢化が加速しているにもかかわらず、介護教育が追いついていない地域も多く、日本の介護技術を必要としている教育機関が増えています。日本の介護を体系的に学んだ講師が現地で指導にあたるケースは年々増えており、“教える介護士”として国際舞台で活躍する道が開けています

学校や研修センターで介護技術を教えるだけでなく、技能実習生やEPA介護士候補生に対する教育、日本式の介護理念を伝える役割を担うこともあります。単に技術を教えるのではなく、「なぜそのケアが必要なのか」という根本を伝えることが重視される点は、日本の介護に慣れた人にとって大きな強みとなるでしょう。

3 海外在住の日本人高齢者向けサービスで働く

東南アジアやオセアニアには長期滞在する日本人高齢者が増えており、言語や文化の壁を感じずに暮らしたいというニーズから、まだ数は少ないものの、日系の介護施設・訪問介護サービスが広がりつつあります

たとえばタイやマレーシアでは、日本語対応のサービスや日本食を提供する高齢者向け住宅が登場し、日本人介護士が現地スタッフと協力しながら支援を行っています。

この場合は、日本の生活文化や細かな習慣を理解していることそのものがサービスの価値になり、日本人だからこそできるケアが求められる場面が多くあります。

国際介護士になるメリット・デメリット

MeritとDemritと書かれたパズルのピース

海外で介護士として働くという選択肢は、介護人材の不足が世界的に進む中、海外は新しいキャリアの舞台として開かれつつあります。しかしその魅力の裏には、「行ってみて初めてわかる壁」も存在します。ここでは、メリット・デメリットを小見出しごとに整理しながら、より深く掘り下げて解説します。

【メリット】経験値も視野も大きく広がる

海外の現場は、日本とは異なる制度・文化・働き方が入り混じる環境です。その分、介護士として得られる刺激は膨大で、キャリアに大きな成長をもたらします。

1. 収入水準の向上とキャリアの透明性

オーストラリアやカナダなどでは、最低賃金自体が高く設定されているうえ、介護職の給与も比較的安定しています。さらに魅力的なのは、給与体系が明確に階層化されている国が多いという点です。

たとえば、

  • 経験年数
  • 資格レベル
  • 夜勤や週末の手当

が細かく反映されやすく、「努力したぶん昇給しやすい」環境が整っています。

また、介護分野での外国人労働者受け入れに積極的な国では、資格アップを支援する研修が提供されたり、永住権の獲得につながるケースもあり、将来の安定性を手に入れられる可能性も高まります。

2. 語学力を実践的に鍛えられる

海外で働くということは、「仕事中は常に語学学習が続いている」ようなものです。

  • 利用者との会話
  • 医療・介護の専門用語
  • チームとのミーティング
  • 事故報告書やケア記録の記入

こうした場面を重ねるうちに、机の上の勉強では得られない実践的な語学力が身につきます。特に、緊急時の対応で素早くコミュニケーションを行う経験は、語学だけでなく判断力も磨かれ、日本での勤務にも大きな強みになります。

語学力が向上すると、渡航先を広げたり職場の選択肢を増やしたりできるため、自身の市場価値そのものが上がるというメリットも生まれます。

3. 多国籍チームで働くことで国際感覚が育つ

海外の介護施設には、さまざまなバックグラウンドを持つスタッフが集まります。フィリピン、インド、ネパール、ベトナム、欧米など、国籍や文化が入り混じる職場で働くと、自然と「コミュニケーションの幅」が広がっていきます。

  • 価値観の違いを尊重する姿勢
  • シンプルで伝わりやすい説明方法
  • 相手の文化的背景を踏まえた対応

こうしたスキルは介護現場だけでなく、どの国・どの業界でも役立つ普遍的な能力です。

また、多様な考え方を受け入れることで、自分の中の固定観念が柔らかくなり、介護士としての引き出しが増えるという成長も実感しやすくなります。

4. 多文化・多宗教のケア現場で得られる深い学び

海外の介護では、宗教観や価値観に基づくきめ細かなケアが求められます。

たとえば、

  • 礼拝の時間を尊重する
  • 食事の禁忌に配慮する
  • プライバシーや同性介助への考え方を理解する

など、日本とは異なる対応が必要な場面が数多くあります。

こうした経験は、利用者一人ひとりの背景を尊重する「パーソンセンタードケア」への理解を深め、介護観そのものを豊かにしてくれます。日本に帰国した際にも、より丁寧で多角的なケアができるようになり、施設から高く評価される傾向があります。

5. キャリアの選択肢が一気に広がる

国際経験は、それ自体が非常に強いキャリア資産になります。

海外での勤務経験を持つ介護士は、以下のような分野に進むケースが増えています。

  • 介護研修の講師・教育者
  • 外国人介護士の受け入れ支援コーディネーター
  • 医療・介護系の海外事業スタッフ
  • 国際福祉領域のNPOや企業での勤務
  • シニア向け海外サービスの企画・運営

このように、単なる介護職の枠にとどまらないキャリアパスが開けることは、国際介護士ならではの大きな魅力です。

【デメリット】ビザ・資格・語学という現実的な壁

一方、海外で働くには、必ず対策すべき課題があります。「意欲さえあれば行ける」というほど簡単ではなく、事前準備と情報収集が最も重要になります。

1. ビザ取得のハードルは国によって異なる

就労ビザは各国の経済状況や政策に左右されるため、基準が急に変わることもあります。

  • IELTSなどの語学試験のスコア
  • 介護の実務経験年数
  • 年齢制限
  • 一定以上の雇用契約(給与額)の提示
  • 雇用主によるスポンサー制度

など、クリアすべき条件が多岐にわたります。

また、ビザが取れても、更新時に「条件が変わってしまう」というリスクもあり、日本より制度変動が大きい国では注意が必要です。

2. 日本の資格はそのまま使えない

多くの国では、日本の介護資格が直接的な効力を持ちません。

そのため、

  • 現地の介護資格コースに通う
  • 国家試験を受ける
  • 実習を義務付けられる

といった手順が必要になります。費用や時間がかかるだけでなく、英語や現地語で授業を受けるため、学習の負担も大きくなります。

しかし裏を返せば、現地資格を取得するとキャリア安定性が一気に高まるという利点もあります。

3. 語学の壁は仕事のクオリティに直結する

一般的な日常会話ができても、介護現場では以下のような高度な語彙が必要です。

  • 医療用語
  • 事故や急変時の説明
  • 利用者の細かな症状の記録
  • チーム内での専門的議論

特に緊急時には、情報伝達が遅れることが命に関わることもあります。そのため、語学力不足は本人のストレスになるだけでなく、周囲のスタッフに負担をかける原因にもなり、徐々に孤立してしまう人もいます。

4. 日本の常識が通用しない文化的ギャップ

海外では、

  • 立ち入ってほしくないプライベート空間の範囲
  • 家族の介護への関わり方
  • 清潔の基準
  • ボディタッチの感覚

などが日本とは大きく違うことがあります。日本での「丁寧な気遣い」が、他国では「過干渉」と見なされることもあり、文化を理解していないとトラブルにつながる可能性があります。

こうしたギャップに適応するには、柔軟な思考と学ぶ姿勢が欠かせません。

5. 生活環境・メンタル面の負担

海外生活は、仕事以外の部分でも負担がかかります。

  • 住居探し
  • 保険や医療制度の理解
  • 交通手段の確保
  • 日本食の入手の難しさ
  • 家族や友人と離れる心理的負担

これらは積み重なると大きなストレスになり、適応障害やホームシックを経験する人も少なくありません。プライベートの安定が仕事の質にも直結します。

国際介護士になるための5つのステップ

窓辺で書類を持ち笑顔を見せる介護士。医療や介護の現場で働くスタッフのイメージ。

では実際に、海外で介護士として働くには何をすればよいのでしょうか。現実的なプロセスを5段階で整理します。

STEP

日本で基礎と経験を積む

海外でもっとも評価されるのは、日本でしっかり経験を積んでいることです。身体介護、生活支援、記録、認知症ケア、ターミナルケアなど、基礎が整っている日本の介護経験は強みになります。

特に特養や老健など医療ケアが必要な利用者が多い施設で働いた経験は、海外施設から高評価を受けやすい特徴があります。

STEP

 介護福祉士の取得で専門性を証明する

介護福祉士は海外の現地資格ではありませんが、「専門職として体系的に学んだ」という強い証明になります。教育分野に進む場合は必須条件とされることもあり、求人の幅が広がります。

将来的に管理職やチームリーダーとしてキャリアを築きたい場合にも、有効な資格です。

STEP

語学力を高める

介護の現場では、利用者の状態を正確に伝えたり、緊急時に指示を聞き取ったりする必要があります。現場で使う言葉は日常会話よりも専門性が高く、「pressure ulcer(褥瘡)」「aspiration(誤嚥)」などの医学英語を理解することが求められます。

英語圏の場合、ビザ取得のためにIELTS 5.5〜6.5程度を求める国が多く、語学の準備には時間をかける必要があります

STEP

短期の海外経験で環境に慣れる

ワーキングホリデー、語学留学、施設視察ツアー、短期ボランティアなど、短期的に海外を体験してみることはとても効果的です。

実際の施設を見たり現地の雰囲気を感じることで、自分に合った働き方や国のイメージがより明確になります。こうした経験が後の就労につながることも珍しくありません。

STEP

働きたい国の制度を調べて応募する

最後に、目標とする国の制度をしっかり調べ、必要な条件を満たしていくプロセスです。たとえば、オーストラリアではAged Careの現地資格が必要になったり、カナダでは州ごとに制度が大きく異なったりします。

給与水準、生活費、医療保険の仕組みなども国により異なるため、総合的な情報収集が欠かせません。

国境を越えて働く国際介護士という新しいキャリア

デスクに置かれた白い地球儀。海外や国際的な学び・仕事・留学をイメージさせるインテリア。

国際介護士という働き方は、資格ではなく「海外で介護の専門性を発揮する人たち」を指す、新しいキャリアの形です。海外で介護の仕事に挑戦するには、日本での経験、語学力の向上、現地資格の取得、ビザの準備など、多くのステップを踏む必要があります。

しかし同時に、異文化の中で得られる深い学びや語学力の向上、多国籍チームでの協働、収入・待遇の改善、教育職としての活躍など、国内では得られない大きなメリットもあります。

もちろん、ビザの壁や文化の違い、日本の資格がそのまま通用しないという現実的な課題も存在します。それでも、国際的に通用する介護士として成長し、世界で必要とされる力を身につけたい人にとって、海外で働く経験は大きな飛躍のチャンスとなるでしょう。

大切なのは、正確な情報を集め、自分の目指すキャリアと照らし合わせながら、一歩ずつ準備を進めていくことです。国際介護士として働く道は決して平坦ではありませんが、その先には、これまでの価値観が広がり、介護士としての可能性が一段と広がる未来が待っています。

「世界で介護をしてみたい」という思いを抱く人にとって、国際介護士という働き方は、新しい可能性への大きな一歩となるでしょう。

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この記事を書いた人

三木 雅史(Masafumi Miki) 株式会社E-MAN会長
1973年兵庫県たつの市生まれ / 慶応義塾大学法学部法学科卒
・25歳で起業 / デジタルガレージ / 電通の孫請でシステム開発
・web通販事業を手掛ける
・2006年にオンライン英会話を日本で初めて事業化
・2019年外国人の日本語教育を簡単、安価にするため
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