日本語を学ぶ外国人学習者は年々増加しています。日本語教育の現場では、留学生、技能実習生、ビジネスパーソン、オンライン学習者など、さまざまな目的と背景を持つ人たちが学んでいます。授業形態も対面・オンライン・ハイブリッドなど多様で、これから日本語教師を目指す人にとって、柔軟な対応力が求められる時代です。
しかし、「日本語を話せる=日本語を教えられる」ではありません。教えるとは、知識を伝えるだけでなく、学習者の理解を支える行為です。文法・語彙・発音・文型の使い方などをどのようにわかりやすく導くかが重要です。
そのために必要なのが、「教え方」の基礎です。本記事では、初心者向けに、日本語教育の理論・実践・振り返りをバランスよく学べるおすすめの書籍3冊を紹介します。
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「日本語を教える」とはどういうことか

「教える」とは、知識を教えるだけではなく、理解を“導く”ことです。授業で文法や語彙を説明するだけでなく、学習者が日本語を使って自分の考えを表現できるように導くことが求められます。
日本語を教える現場では、母語・文化・目的の異なる外国人学習者が同じクラスにいます。
そのため、単に文法知識を教えるだけでなく、背景文化や場面意識を含めて伝える力が大切です。たとえば「すみません」「ごめんなさい」「失礼します」といった表現は、場面によって使い分けが必要です。
また、オンライン授業では、相手の反応が見えにくく、雰囲気づくりや参加を促す方法に悩む教師も多いです。こうした課題を乗り越えるには、授業運営の方法や指導技術を体系的に整理しておくことが重要です。

教え方を身につけるステップ

教え方を学ぶには、「理論→観察→実践→改善→繰り返し」というサイクルが欠かせません。ここでは、初心者日本語教師が授業力を高めるための4つのステップを紹介します。
まずは、第二言語習得理論(SLA)や教授法の基礎知識を理解することから始めましょう。なぜ学習者が間違えるのか、なぜある文法が定着しにくいのかを理論的に考えることで、指導の根拠が明確になります。
代表的な教授法には、以下のようなものがあります。
- 直接法(日本語だけで教える)
- タスク中心法(実際の場面で使う練習)
- コミュニカティブ・アプローチ(伝わる力を重視)
優れた教師の授業を観察することは、教え方を学ぶ近道です。オンライン動画や研修、大学の模擬授業などを見て、導入・練習・活動の流れをつかみましょう。とくに、学習者の反応を引き出す発問(質問)や説明の仕方に注目すると、実際の授業設計にすぐ応用できます。
理論を知ったら、まずは実践してみます。ボランティア授業、外国人への会話パートナー、日本語教室などで、実際に教える経験を積みましょう。授業後には「何がよかったか」「どこを直すか」を記録します。この振り返りノートは、教員としての成長に直結する貴重な教材になります。
理論→実践→振り返り→再実践のサイクルを回すことが、日本語教師の成長の鍵です。試験勉強や講座で得た知識を現場で試し、また理論に戻って確認する。この繰り返しが実践的な知識を作り上げます。

日本語の教え方がわかるおすすめの本を紹介

初心者におすすめの日本語教育関連の書籍を3冊紹介します。授業の流れ、文法の教え方などについて、さまざまな角度から日本語教育の基礎を学べます。
改訂版 日本語の教え方ABC(寺田 和子 著)

日本語教師養成講座レベルの授業構成や教授法の基本を、やさしく整理した定番書です。導入・練習・活動の流れを豊富な例とともに具体的に紹介しており、授業全体の構成をイメージしやすくなっています。
特に、初めて授業を設計する方でも、どのように説明を組み立て、どのタイミングで練習を入れると効果的かが理解しやすい内容になっています。
また、授業中に起こりがちなつまずきや、学習者の反応に合わせた進め方など、実際の現場を意識したアドバイスも多く含まれています。授業の準備や模擬授業の練習にも役立ち、「日本語をどう教えるか」を体系的に学びたい方にぴったりの一冊です。
初級日本語文法と教え方のポイント(市川 保子 著)

初級レベルの文法を1項目ずつ丁寧に解説し、文法知識だけでなく「授業でどのように教えるか」という実践的な視点からまとめられた教師用ハンドブックです。
文法の導入例や練習方法、活動の進め方が具体的に示されており、教えるときに迷いやすい「どう説明すればわかりやすいか」「どんな例文を使えば効果的か」といった悩みを解決してくれます。
また、文法項目ごとに「教えるときのポイント」や「学習者が間違えやすい点」なども書かれており、授業準備の参考書としても非常に実用的です。授業経験が浅い方にも理解しやすく構成されています。
初級を教える人のための日本語文法ハンドブック(庵 功雄 著)

日本語文法を理論的に整理しながらも、専門的になりすぎず、現場で教える日本語教師の立場に立って書かれた基礎書です。
文法の背景や用法の違いを明確にし、「なぜこの言い方は正しくて、あの言い方は不自然なのか」といった疑問に、理論と実例の両面からわかりやすく解説しています。
また、学習者の誤用例をもとにした解説や、指導の際に使える説明のヒントも豊富に掲載されており、自分の知識を整理したい教師や、より深い理解を目指す方に役立ちます。
文法を再確認したいベテラン教師にも、初級指導をこれから始める方にもおすすめできる、まさに“教える人の基礎固め”にぴったりの一冊です。

本を活かすための工夫

どんなに優れた本でも、実際の授業で使ってみなければ、自分の教え方にはなりません。ここでは、本を読んだ内容を現場で活かすための、具体的な“行動化”のステップを紹介します。
読むだけで終わらせない
本を読むときは、ただ目を通すのではなく、「どのアイデアを自分の授業に使えるか」という視点で読み進めることが大切です。各章の中で印象に残った導入例や練習方法、説明の工夫などをメモしておき、授業後には「実際に使えた」「思ったより伝わらなかった」といった結果を振り返りましょう。
おすすめは、文型・語彙・場面・活動の種類ごとにページを分けて一覧化する方法です。たとえば「〜と思います」の導入アイデアや「て形」を教えるときの説明例などを、見やすくまとめておくと、授業前の準備時間を短縮できます。
また、授業中に学習者がどんな反応をしたか、どの説明で理解が深まったかなどを具体的に書き足すと、次の授業で同じミスを防げるだけでなく、より効果的な指導につながります。
他の教師と情報交換する
同じ教材や同じ本を使っていても、教師によって教え方や活動の工夫はまったく異なります。SNSや日本語教育関連のサイト、オンラインコミュニティなどでは、実際の授業で「この本のこの章を試してみた」という実践報告やアイデア共有が活発に行われています。
そうした情報をチェックすることで、自分が気づかなかった新しい視点や指導方法に出会えることがあります。たとえば、同じ文型を教える場合でも、導入の順番や例文の出し方を少し変えるだけで、学習者の理解度が大きく変わることもあります。
また、他の教師と感想や質問を共有することで、「自分だけが悩んでいたわけではない」と安心できるのも大きなメリットです。日本語教師という仕事は、どうしても個人プレーになりがちですが、同じ目標を持つ仲間との情報交換は、モチベーションの維持にもつながります。

日本語の教え方の本まとめ

「日本語を教える」という行為は、言語知識と教え方の両輪で成り立っています。今回紹介した3冊は、初心者教師が理論と実践の橋渡しをするための基礎教材です。
読む → 試す → 振り返る → また読む。この繰り返しこそが、日本語教師としての成長の近道です。教える力は、経験とともに磨かれていきます。最初から完璧な授業を目指す必要はありません。
大切なのは、「どうすればもっと伝わるだろう」「この文法はどんな例で説明すればいいだろう」と考え続ける姿勢です。そうした日々の小さな試行錯誤が、確かな自信と指導力につながっていきます。
また、授業で出会う学習者一人ひとりが、あなたにとっての“教材”でもあります。学習者の反応や質問から新しい気づきを得ることで、自分自身の理解も深まっていくでしょう。
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