特定技能外国人総合保険とは?補償範囲や補償金額、加入時の注意点などを解説

特定技能外国人総合保険とは? 補償範囲や補償金額、加入時の注意点などを解説

人手不足解消の手段として、特定技能制度を利用した外国人の雇用を検討している事業者は少なくないでしょう。

しかし、異国の社会制度に明るくない人が、その地で長く生活し続けるのは簡単ではありません。

出入国在留管理庁がまとめた特定技能外国人の自己都合による離職状況によると、特定技能外国人の自己都合退職者は令和4年時点で2万人弱におよび、うち31%は帰国を余儀なくされています。

そこで今回は、外国人の受け入れを検討中の事業者向けに、ジェイアイ傷害火災保険株式会社が提供する「特定技能外国人総合保険」について解説します。

本保険はジェイアイ以外にも様々な会社から提供されていますので、あくまでもプランの一例として参考にしてください。

目次

特定技能外国人総合保険とは

特定技能外国人総合保険とは

特定技能外国人総合保険とは文字通り、特定技能制度で入国して働く外国人を対象とした民間保険です。

労災保険や健康保険のような加入義務はないものの、政府は外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策の中で、このような民間保険への加入を強く推奨しています。

以下で詳しく見ていきましょう。

在留資格「特定技能」を有する外国人労働者向けの保険

特定技能制度は、国内人材の確保を困難とする企業(事業主)が、一定の専門技能を持つ外国人を労働力として日本に受入れるために存在します。

具体的には在留資格「特定技能1号」を取得した外国人労働者向けに用意されているのが、特定技能外国人総合保険と呼ばれる民間保険です。

これを労災保険や健康保険と組み合わせることで、病気や怪我等にあたっての必要なお金を、まんべんなくフォローできるようになります。

労災保険や健康保険との違い

労働者を一人以上雇っている企業(事業主)には、労災保険や健康保険といった「社会保険」に加入する義務があります。

対する特定技能外国人総合保険は、国として加入を推奨はしているものの、定義上はあくまでも任意保険です。

また、両者の違いは義務の有り無しだけではありません。

労災保険が業務・通勤に起因する傷病のみをケアするのに対し、特定技能外国人総合保険は、日常生活の中で起きたトラブルを補償対象としています。

さらに、健康保険で医療費が70%控除されている所に特定技能外国人総合保険を組み合わせると、自己負担30%分を含めた医療費全額を免除できます。

特定技能外国人総合保険は、労災保険や健康保険で補償しきれない部分を一通りカバーできるため、任意といえども必ず加入すべき保険といえるでしょう。

技能実習生に対しては「外国人技能実習生総合保険」が個別に存在

技能実習制度は、発展途上国の外国人を最長5年にわたり実習生として雇用し、実地研修を受けさせる制度です。

特定技能の目的が人手不足解消なのに対し、技能実習制度はあくまでも、技術支援を通じた国際貢献を目的としています。

そして、技能実習生に対しては「外国人技能実習生総合保険」が用意されています。

本保険は、国際人材協力機構が提供し、監理団体や登録支援機関が実習生に代わって加入する「JITCO保険」です。

JITCO保険は、損保ジャパンや東京海上日動など様々な大手保険会社が引受しており、会社によって料金プランの細部が異なる場合があります。

ただし、補償内容そのものは、特定技能外国人総合保険とほぼ変わりません。

特定技能外国人総合保険の補償内容

特定技能外国人総合保険の補償内容

ここからは、特定技能外国人総合保険の具体的な補償内容を紹介していきます。

なお、同保険を提供している損保会社は複数あり、会社によって補償内容が一部異なる場合もあるのでご了承ください。

死亡一時金およびそれに伴う親族の来日費用

特定技能外国人総合保険では、被保険者が業務や通勤に無関係な事由で死亡した場合に、所定の一時金が支払われます。

支払われる保険金は、死因に関わらず一定です。

また、被保険者の死亡ないし危篤状態に伴い、家族や親族が来日する場合にも、渡航や滞在にかかるお金(救援者費用)が支給されます。

日常生活に起因する傷病の治療費

業務・通勤を原因とする怪我や病気の治療費は、労災保険によって全額控除されます。

しかし、日常生活中に生じたものに関しては、健康保険を適用しても治療費の3割は自己負担しなければいけません。

特定技能外国人総合保険に加入しておけば、自己負担分が追加で補償されるため、日常生活においても治療費負担をゼロにすることが可能です。

具体的には、日常生活中に怪我を負った場合に障害治療費用保険金、病気を患った場合に疾病治療費用保険金がそれぞれ支払われます。

また、特定技能外国人総合保険では、怪我に伴う後遺障害が残った場合に、死亡保険金と同様の一時金も受け取れます。

業務外で発生した第三者への損害賠償

特定技能外国人総合保険の補償範囲は、第三者への賠償責任にもおよびます。

具体的には日常生活中の事故により、被保険者が物損などのトラブルを起こした場合に、損害賠償が上限金額まで補償されます。

上限金額を超えない限り、被保険者の自己負担は一切ありません。

ただし、ケンカや犯罪行為など故意性があるものは保険適用外ですから、外国人を雇う際は日常生活に関しても教育を徹底するよう心がけてください。

特定技能外国人総合保険の主な契約プラン

ここからは、特定技能外国人総合保険の数ある契約プランの中から、株式会社ジェイアイ傷害火災保険(以下ジェイアイ)のプランを例として紹介します。

タイプ別の補償金額

ジェイアイが提供する特定技能外国人総合保険では、保険金額が以下のように細分化されています。

 死亡・後遺障害保険金傷害・疾病 治療費用保険金賠償責任保険金救援者費用等 保険金
タイプ1700万円最大100万円最大1億円最大300万円
タイプ21,000万円
タイプ31,500万円
タイプ4700万円最大300万円
タイプ51,000万円
タイプ61,500万円

金額の差はあれど、分類の仕方そのものは、他社の保険でもほぼ変わりません。

死亡や後遺障害に対する一時金がタイプごとに異なる一方、治療費用や賠償責任保険金はせいぜい2パターンというのが一般的です。

また、救援者費用に関しては、ほとんどの保険会社で全タイプ定額となっています。

タイプ別・契約期間別の保険料

ジェイアイ提供の特定技能外国人総合保険における、契約期間別の保険料は以下の通りです。

 契約期間1年契約期間2年契約期間3年契約期間4年契約期間5年
タイプ18,350円14,620円20,890円27,150円33,400円
タイプ210,050円17,580円25,130円32,670円40,200円
タイプ312,890円22,540円32,210円41,870円51,520円
タイプ48,650円15,150円21,640円28,120円34,600円
タイプ510,350円18,110円25,880円33,640円41,400円
タイプ613,190円23,070円32,960円42,840円52,720円

タイプ3とタイプ4の比較より、保険料を最も大きく左右するのは、死亡・後遺障害保険金であることが分かります。

タイプ3とタイプ6で保険料がほぼ変わらないことから、死亡・後遺障害保険金を最大額に設定するのであれば、治療費用なども最大化した方がコスパは高いといえるでしょう。

特定技能外国人総合保険を利用する際の注意点

特定技能外国人総合保険を利用する際の注意点

特定技能外国人総合保険を、公営の社会保険同様に給料から天引きするには、労使協定を別途結ぶ必要があります。

また、保険適用の例外や終了条件について、予め被保険者に覚えておいてもらうことも大切です。

以下で詳しく見ていきましょう。

給料からの天引きには労使協定が必須

労災保険や健康保険に関しては、企業側の一存で天引き可能ですが、特定技能外国人総合保険のような任意保険ではそうもいきません。

民間の保険料を給料から天引きする場合は、労働組合または従業員の代表者と、予め労使協定を締結しておく必要があります。

労使協定とは、労働者と雇用主の間に結ばれる、労働条件に関する書面契約です。

法定範囲を超えた時間外労働など、労働基準法から外れた雇用条件を設定するには、必ず労使協定を結ばなければいけません。

また、労使協定は一度結んだら終わりではなく、新たに人を雇うたびに都度周知する義務があります。

仮に雇用した外国人労働者が、民間保険料の天引きを事前に知らされていなかった場合、労働基準法120条に基づいて30万円以下の罰金が課せられるので気をつけましょう。

傷病の治療費が支払われないケースもある

特定技能外国人総合保険の補償内容のうち、傷害や疾病の治療費用に関しては、原因次第で補償対象外となる可能性もあります。

分かりやすい例としては、ケンカや自傷行為など、故意に負傷したと認められるケースが挙げられます。

もちろん、美容整形や妊娠出産など、傷病と無関係な治療にも保険は適用されません。

一方で分かりにくい例としては、歯科疾病の治療や、入国以前から患っている既往症の治療などが挙げられます。

特定技能外国人を採用するにあたっては、保険内容について事前に電話で説明を行い、入国後にも改めて講習を実施しておきましょう。

そうすれば、保険をめぐってトラブルが起きた場合に、企業側が周知責任を果たしていることを問題なく証明できます。

帰国手続きや在留資格変更を行うと、保険期間内でも契約が終了する

特定技能1号の在留可能期間は、日本に入国してから1年以内です。

一方、特定技能外国人総合保険には、保険責任期間という別個のスケジュールが適用されます。

具体的にはまず、出国手続きを完了した時点で、直ちに保険の適用が始まります。

その後、母国への帰国手続きを完了するか、もしくは在留資格の変更を行うと、その時点で契約が終了するという仕組みです。

要するに、外国人労働者が休暇目的などで一時帰国すると、再入国時に改めて加入手続きをやり直さなければいけない可能性があります。

ジェイエイの場合は、再入国が出国後30日を超えない限り、保険責任期間が途切れることはありません。

この辺りの規約は保険会社によって異なるので、保険のパンフレットは必ず細部まで目を通すよう心がけてください。

まとめ

以上、特定技能外国人総合保険の補償内容、および加入にあたっての注意点について紹介しました。

本記事の内容をまとめると以下の通りです。

  • 特定技能制度を利用して日本で働く外国人向けに、「特定技能外国人総合保険」という任意加入の民間保険が存在する
  • 労災保険の適用外である日常生活中のケガや病気をカバーできるほか、健康保険の自己負担分の治療費も補償される
  • 補償金額や保険料は保険会社によって様々だが、一般的には死亡・後遺障害保険金の大小が保険料を大きく左右する
  • 実際に特定技能外国人を雇う際は、保険料の天引きに関する労使協定の締結、および治療費補償の例外や保険の終了条件についての事前講習が求められる

特定技能制度に興味がある事業者の方は、まず出入国在留管理庁が公開している特定技能ガイドブックに目を通し、雇用までの詳しい流れを習得してください。

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この記事を書いた人

三木 雅史(Masafumi Miki) 株式会社E-MAN会長
1973年兵庫県たつの市生まれ / 慶応義塾大学法学部法学科卒
・25歳で起業 / デジタルガレージ / 電通の孫請でシステム開発
・web通販事業を手掛ける
・2006年にオンライン英会話を日本で初めて事業化
・2019年外国人の日本語教育を簡単、安価にするため
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